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第55話 妥協点はある
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陰摩羅鬼が根城にしているのは、学校から五百メートルほど離れた、鈴音もお祭りで来たことがあるお寺だった。
「ここにいるんだ」
「まあ、仏教に関係する妖怪だからな」
正体が解れば居場所はすぐに掴めると、健星は溜め息だ。とはいえ、健星にしても陰摩羅鬼が関わっていたというのは意外過ぎた。あそこで口裂け女と出会えなければ、なかなか解決しなかったのではないか。
「ううん。その陰摩羅鬼はどうして私が王になることに反対なの?」
これから会いに行くのはいいが、なぜ反対されているのか解らなければ対処のしようがない。
「ああ、そうだったな。陰摩羅鬼はさっきも説明したように人の死体から生まれるものだ。つまり現世にいないと次の世代が生まれないと思っているんだろう。それで、政権交代で半分は人間の入っている者が王になることに反対、というところだろうな」
「へえ」
「まあ、ぶっちゃけ妖怪は人間によって作り出されたものだし、人間がいなきゃ成り立たない。人間界にいたいっていうのは当然の話だ。が、江戸時代とは違うんだということを理解していない奴が多くて困る」
最終的にいてもらっては困るというのが健星のスタンスだった。それに鈴音も、気づかないように生活してくれるならまだしも、出て来られるとねえと頬に手を当てる。
「そう、その点が問題なんだ。俺だって無害な奴まで冥界に引っ立てるつもりはない。ただ、ルールを守れということだ。脅かしてもいいが、きゅうりは盗むなというのと一緒だ」
「そうよね。今まで河童が川に住んでいたなんて気づかなかったし」
鈴音もその考えには賛成と大きく頷いた。では、ここにいるらしい陰摩羅鬼はどうなのだろうか。
「墓場にいる分には問題ないだろう。もしくは、死体の気が必要ならば葬儀場だな。とはいえ、出て来ちゃ困る」
「ああ、なるほど」
「出る場合も寺限定とかだよな」
健星も鈴音が現われたことで考える余裕が生まれているのか、妥協策をぽんぽんと出している。それにユキは感心し
「そういうのを、ちゃんと王になられる鈴音様とお伝えすればいいってことですね」
と呟く。
「まあ、そうだな。俺が言うとすぐに反発する奴がいるから毎度バトルになるだけで、現実問題、俺だって妖怪みたいなもんだから、圧政をしたいわけじゃない」
ユキの言葉に、ふんと鼻を鳴らしつつも、本音を漏らす健星だ。なるほど、人材不足で余裕がないから締め付けが強くなっていただけだと。
ここでも、あっさり健星が王になるのを諦めて鈴音を推す理由があったのだ。自分の意見を通しつつもクッション材になる人が欲しかった。
「なるほど。お母さんが策士だっていうのはよく解ったわ」
平和解決には鈴音しかいない。そう思って、隠していた娘の存在を月読命に漏らし、狐や狸たちに大騒ぎさせたに違いない。
「ふん。今更だな」
それに健星は解りきったことを言うなと不機嫌だ。
「ま、まあ。そういう妥協案をお伝えしに行きますか」
鈴音はその態度が駄目なんだってと思いつつ、陰摩羅鬼のいる寺へと足を踏み入れたのだった。
「ここにいるんだ」
「まあ、仏教に関係する妖怪だからな」
正体が解れば居場所はすぐに掴めると、健星は溜め息だ。とはいえ、健星にしても陰摩羅鬼が関わっていたというのは意外過ぎた。あそこで口裂け女と出会えなければ、なかなか解決しなかったのではないか。
「ううん。その陰摩羅鬼はどうして私が王になることに反対なの?」
これから会いに行くのはいいが、なぜ反対されているのか解らなければ対処のしようがない。
「ああ、そうだったな。陰摩羅鬼はさっきも説明したように人の死体から生まれるものだ。つまり現世にいないと次の世代が生まれないと思っているんだろう。それで、政権交代で半分は人間の入っている者が王になることに反対、というところだろうな」
「へえ」
「まあ、ぶっちゃけ妖怪は人間によって作り出されたものだし、人間がいなきゃ成り立たない。人間界にいたいっていうのは当然の話だ。が、江戸時代とは違うんだということを理解していない奴が多くて困る」
最終的にいてもらっては困るというのが健星のスタンスだった。それに鈴音も、気づかないように生活してくれるならまだしも、出て来られるとねえと頬に手を当てる。
「そう、その点が問題なんだ。俺だって無害な奴まで冥界に引っ立てるつもりはない。ただ、ルールを守れということだ。脅かしてもいいが、きゅうりは盗むなというのと一緒だ」
「そうよね。今まで河童が川に住んでいたなんて気づかなかったし」
鈴音もその考えには賛成と大きく頷いた。では、ここにいるらしい陰摩羅鬼はどうなのだろうか。
「墓場にいる分には問題ないだろう。もしくは、死体の気が必要ならば葬儀場だな。とはいえ、出て来ちゃ困る」
「ああ、なるほど」
「出る場合も寺限定とかだよな」
健星も鈴音が現われたことで考える余裕が生まれているのか、妥協策をぽんぽんと出している。それにユキは感心し
「そういうのを、ちゃんと王になられる鈴音様とお伝えすればいいってことですね」
と呟く。
「まあ、そうだな。俺が言うとすぐに反発する奴がいるから毎度バトルになるだけで、現実問題、俺だって妖怪みたいなもんだから、圧政をしたいわけじゃない」
ユキの言葉に、ふんと鼻を鳴らしつつも、本音を漏らす健星だ。なるほど、人材不足で余裕がないから締め付けが強くなっていただけだと。
ここでも、あっさり健星が王になるのを諦めて鈴音を推す理由があったのだ。自分の意見を通しつつもクッション材になる人が欲しかった。
「なるほど。お母さんが策士だっていうのはよく解ったわ」
平和解決には鈴音しかいない。そう思って、隠していた娘の存在を月読命に漏らし、狐や狸たちに大騒ぎさせたに違いない。
「ふん。今更だな」
それに健星は解りきったことを言うなと不機嫌だ。
「ま、まあ。そういう妥協案をお伝えしに行きますか」
鈴音はその態度が駄目なんだってと思いつつ、陰摩羅鬼のいる寺へと足を踏み入れたのだった。
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