58 / 72
第58話 全国行脚を前に
しおりを挟む
「ということで、大国主命様に協力して頂きたいのです。主上、連絡をお願いできますか」
半日後、健星は月読命にそう奏上していた。横でそれを聞く鈴音は、本当に全国行脚する気だと遠い目。今日は女房装束を着ていないのに、ずんと身体が重く感じる。
「いいよ。可愛い鈴音の頼みだ。どんと任せなさい。それにしても鈴音が来てからみんな楽しそうでいいねえ。羨ましいよ。やはり、次の王は鈴音だなあって思う」
で、月読命、鈴音の顔を見ながらにこにこそんなことを言う。一体何なんだ、この人は。
「半妖という部分だけを聞き及んでいる者は反発していますが、それ以外は概ね、鈴音を王と認めております」
健星も上々の出来ですと満足そうだ。おかげで前回と違って言葉遣いが丁寧である。まったく、こいつもこいつで困った奴だ。
「それはよかった。健星のサポートも上手くいっているってことだね。じゃあ、そろそろ恋が芽生えたりした」
「あ?」
しかし、そんな丁寧な言葉遣いも、月読命の余計な一言で吹っ飛ぶ。おい、仮にも王様相手にそれは駄目でしょ。鈴音は呆れていたが
「なんだあ、まだなのか。苦難を共に乗り越えて行くことで恋心も燃え上がるものだぞ。吊り橋効果って言うんだろ」
月読命はそれくらいでは気にしない人だった。いや、千年近くもこんな感じの健星を相手にしているんだから、まあ、当然の慣れというやつか。しかし、なんで吊り橋効果なんて言葉を知っているんだろう。
「馬鹿なことばかり覚えていないで、ちゃんと現世を勉強してくれれば、今回のような面倒なことは起こらなかったのに」
健星、そんな月読命にしっかり苦言を呈す。何なんだ、この王と宰相は。
「いやいや。無理無理。根本が違うもん。俺にスマホは理解出来ないよ」
「いや、知ってんじゃん」
「そりゃあ、気にはなるもん。でもねえ、それと現世の変化を掴むのは別問題でしょ。難しいよ、現世。単純じゃないよ。科学って凄いよ」
月読命、健星の凶悪な睨みにも怯まずマイペースを貫く。さすがは王様だ。鈴音はこの部分だけ見習いたいものだと、本気で思う。
「まあ、いいです。ともかく、全国の雑多な、それも現世に居座るつもりの妖怪たちを把握するまたとないチャンスです。ここで明確なルールを示しておくことで、今後の治世も楽になりますし、時期王の顔を一発で覚えてもらえる機会になります。明日から始めますから、ちゃんと大国主命様に話を通しておいてください。あの方の協力を得られたら、沖縄と北海道以外は楽に移動できます」
健星、そんなことよりもとしっかり釘を刺す。
「えっと、それって神社を利用して移動するってこと?」
しかし、鈴音は根本的なところを確認していなかったとそう質問。
「そうだ。神社というのは異界とアクセスしやすい。よって、この冥界とも接続している場所だ。しかし、普段は神域だからそう簡単には出られない。そこにいる祭神の協力が必要だ。というわけで、すでに協力を表明している陰陽頭を祀る神社がある京都から行くぞ」
「えっ、今から?」
「今からに決まってるだろ。あと三週間で全国の都道府県を回るんだ。サクサク進めないといけない。しかも妖怪調査込みだぞ。ああ、途中に鬼退治も挟まるしな」
「くっ、本当に学校に行けないパターンだ。急性胃腸炎にされちゃう」
鈴音、月読命がくすくすと笑う中、思い切り頭を抱えてしまうのだった。
半日後、健星は月読命にそう奏上していた。横でそれを聞く鈴音は、本当に全国行脚する気だと遠い目。今日は女房装束を着ていないのに、ずんと身体が重く感じる。
「いいよ。可愛い鈴音の頼みだ。どんと任せなさい。それにしても鈴音が来てからみんな楽しそうでいいねえ。羨ましいよ。やはり、次の王は鈴音だなあって思う」
で、月読命、鈴音の顔を見ながらにこにこそんなことを言う。一体何なんだ、この人は。
「半妖という部分だけを聞き及んでいる者は反発していますが、それ以外は概ね、鈴音を王と認めております」
健星も上々の出来ですと満足そうだ。おかげで前回と違って言葉遣いが丁寧である。まったく、こいつもこいつで困った奴だ。
「それはよかった。健星のサポートも上手くいっているってことだね。じゃあ、そろそろ恋が芽生えたりした」
「あ?」
しかし、そんな丁寧な言葉遣いも、月読命の余計な一言で吹っ飛ぶ。おい、仮にも王様相手にそれは駄目でしょ。鈴音は呆れていたが
「なんだあ、まだなのか。苦難を共に乗り越えて行くことで恋心も燃え上がるものだぞ。吊り橋効果って言うんだろ」
月読命はそれくらいでは気にしない人だった。いや、千年近くもこんな感じの健星を相手にしているんだから、まあ、当然の慣れというやつか。しかし、なんで吊り橋効果なんて言葉を知っているんだろう。
「馬鹿なことばかり覚えていないで、ちゃんと現世を勉強してくれれば、今回のような面倒なことは起こらなかったのに」
健星、そんな月読命にしっかり苦言を呈す。何なんだ、この王と宰相は。
「いやいや。無理無理。根本が違うもん。俺にスマホは理解出来ないよ」
「いや、知ってんじゃん」
「そりゃあ、気にはなるもん。でもねえ、それと現世の変化を掴むのは別問題でしょ。難しいよ、現世。単純じゃないよ。科学って凄いよ」
月読命、健星の凶悪な睨みにも怯まずマイペースを貫く。さすがは王様だ。鈴音はこの部分だけ見習いたいものだと、本気で思う。
「まあ、いいです。ともかく、全国の雑多な、それも現世に居座るつもりの妖怪たちを把握するまたとないチャンスです。ここで明確なルールを示しておくことで、今後の治世も楽になりますし、時期王の顔を一発で覚えてもらえる機会になります。明日から始めますから、ちゃんと大国主命様に話を通しておいてください。あの方の協力を得られたら、沖縄と北海道以外は楽に移動できます」
健星、そんなことよりもとしっかり釘を刺す。
「えっと、それって神社を利用して移動するってこと?」
しかし、鈴音は根本的なところを確認していなかったとそう質問。
「そうだ。神社というのは異界とアクセスしやすい。よって、この冥界とも接続している場所だ。しかし、普段は神域だからそう簡単には出られない。そこにいる祭神の協力が必要だ。というわけで、すでに協力を表明している陰陽頭を祀る神社がある京都から行くぞ」
「えっ、今から?」
「今からに決まってるだろ。あと三週間で全国の都道府県を回るんだ。サクサク進めないといけない。しかも妖怪調査込みだぞ。ああ、途中に鬼退治も挟まるしな」
「くっ、本当に学校に行けないパターンだ。急性胃腸炎にされちゃう」
鈴音、月読命がくすくすと笑う中、思い切り頭を抱えてしまうのだった。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる