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第5話 きっかけはあの流行の・・・

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「はあ。本当に魔界にいるんだな」
 たらふく豪華な晩ご飯を食べ終え、奏汰はルシファーとともに庭へと出ていた。そう、七面鳥が歩いているという庭だ。そこにはバラ園があって、色とりどりの綺麗なバラが咲き乱れている。その先に見える景色は、どう考えても異世界だった。
 何だろう、中世ヨーロッパ的な?
 しかも奥にこのルシファーの城より大きな城がそびえている。あれが、ご近所だというサタンかベルゼビュートの屋敷か。
「何を今更そんなことを言っているんだ。当たり前だろ。お前は現実を受け入れるのに時間が掛かりすぎる」
「・・・・・・」
 非難してくるルシファーに、こんな現実をそうホイホイと受け入れられるかと奏汰は睨んだ。
 考えてみなさいよ。起きたら横にルシファー。帰ってきたら家は魔界に接続。そんな非現実を現実とすぐに受け入れられほど、人間の脳みそは柔軟に出来ていない。
「なんでだ。俺様が読んだ本の主人公はみんなあっさり受け入れていたぞ」
「おい、何を読んだ? いや、何となく察しているが、何を読んだ?」
 奏汰は思わずルシファーに掴み掛かってしまう。すると、ルシファーがめっちゃ嬉しそうに笑った。
 いや、スキンシップを図ってるんじゃないんだよ。奏汰はさらに睨む。
「可愛いなあ」
「おい」
「ああ。読んだ本な。リゼロってやつとゲートだっけ? 自衛隊のやつ。あと色々。獣医が転生するやつもあったな」
「・・・・・・」
 うん、何となく解っていたけど、今はっきり転生って言ったな。要するに転生ネタばかり読んでいたな、この野郎。
 奏汰は思わずルシファーの着ている高級そうなスーツをぎゅっと握り締めてしまう。
「あ、逆にサタンが現代に転生ってのがあって、俺様も試してみようって思ったんだよね」
「それ、働く魔王のやつだろ」
「そうそう」
 解ってるじゃんとルシファーは嬉しそうだが、現状、オタクな会話しかなされていない。ってか、やっぱりそうか。って、なんで気軽に俺もやってみようになるんだ、このバカ!
「転生したら、っていうか人間界に行ったら悪魔じゃなくて日本人になっちゃうのかと戦々恐々としたものだが、普通だったな。おかげで話はスムーズだ」
「まったくスムーズじゃねえし、なんで俺に目を付けてるんだ」
「え? 一目惚れ」
「っつ」
 服を握り締めている至近距離で、一目惚れとにこっと笑って言われて、不覚にも奏汰はキュンとなってしまった。
 なんでだよ。俺は男は射程外だぞと首をぶんぶん横に振る。きっとこの悪魔の呪いだ。じゃなきゃ、キュンとかしねえ。
 しかし、そんな一人悶える姿にルシファーがキュンとしちゃう。
「可愛いな、奏汰。照れた」
「照れてない」
「またまた」
 ぐりぐりと頭を撫でられて逃げようとする奏汰と、逃がすかとぐりぐり撫でるルシファー。
 そんな姿を屋敷の中から見守っていた執事のベヘモスは
「お幸せそうですなあ」
 とずれた感想を述べていたのだった。
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