廃嫡王子のスローライフ下剋上

渋川宙

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第52話 立ち向かう覚悟

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 この国が平和であるためには、やっぱり政権が安定していなければらない。
 万が一、シャルルがそのまま王太子になるのだとしても、やっぱり、すぐに戦争が起こるような状況にはならないようにしたい。
「それはずっと考えているんだけど、俺が出て行っても殺されるだけだし、悩ましいよなあ」
 二階の部屋に入ってから、どう思うとアンドレたちに意見を求める。彼らは俺のワガママに付き合ってくれているようなものなのだ。今後の方針はしっかり相談すべきだろう。
「王子様が納得する形が一番じゃないの? 俺たちはどこでも生きていけるから、どういう状況になっても生きていけるし」
 ねっ、とアンドレが部屋に集まっているシモンとマリナ、そしてシュリに向けて同意を求めた。ちなみにキキはまだ爆睡中、ピーターも寝てしまっていた。
「確かにそのとおりよ。最終的に船に乗って遠くに行くってなってもオッケーだし、レオが王宮に戻るってなってもオッケーよ」
 マリナが指で丸を作りながら、にこっと笑ってくれる。
「ううん。王宮に戻ることが可能なのかは解らないけど、ともかく、宰相に関して何とかしたい。それは考えているんだ。たぶん、シャルルが俺を追放しようって思ったのも宰相のラオドールの入れ知恵だろうし、話をややこしくしている大元だと思う」
 俺はあいつだけはぎゃふんと言わせないと気が済まない気分になっていると、正直に打ち明けた。
 ぶっちゃけ、ショックの大部分は信じていた弟のシャルルが先陣切って俺を廃嫡に追い込んだという点だ。それ以外について、旅をしながら考えていくと、ラオドールは許せんという気分になった。
「まあ、国王から王子様に執政が変わって一番困るのは宰相だよね。国王にでもなった時、お前入らないって首を切れる人は国王なんだもん。それまでの不正を見抜かれれば、自分の居場所がなくなるって焦ったはずだよ」
 アンドレは切り崩すのはそこでいいと思うと頷く。
「となると、レオが直前まで行っていた政治で、拒否した案件が怪しいわけで、それを調べるのが重要になってくるな」
 シモンは調べられるかとシュリを見る。すると、シュリは協力するわと笑った。
「ついに私の異能をレオに披露する時が来たみたいね」
 蠱惑的な笑みに、俺はなぜか顔が引き攣った。一体何をする気なのだろうという怖さを感じたせいだ。
「情報を掴むのは私たちに任してくれれば、何とかなるわ。これから王宮に近づくけど、レオは大丈夫なの?」
 最大限に協力するけれども、心の傷は大丈夫なのかとマリナは俺を見る。
「たぶん、大丈夫。俺、この旅で色んな人たちを見てきて・・・・・・この人たちの生活を守りたいって、強く思ったんだ。それは簡単なことじゃないけど、ケイルやその奥さんのような悲劇を全部食い止めることは無理だけど、でも、ちゃんと平和を守りたいんだ」
 俺はあの酒場での出来事、そして、メルロが言った言葉がずっと頭の中にあったと正直に告げる。そして、後悔のない選択は、やはり全部を投げ捨てて自分が逃げることじゃないと思うようになっていた。
「羊飼いの生活や農民の生活を間近で見ていたら、俺たちの兄弟ゲンカなんて小さなことで、でも、そのせいでこの人たちの生活を崩してしまうかもしれないって解ったんだ。だから、最低限の責任は取りたい。今、すぐに戦争が起きるという危難が去ったのならばなおさら」
 俺が思いを吐き出すと、パチパチとシモンが拍手をしてくれた。それに続いて、アンドレもマリナも、そしてシュリも拍手を送ってくれる。
 誰かに意見をして拍手をされる。それは、ちょっと前まで当たり前だったことだった。しかし、ここでの自分の演説も、そして送られる拍手も、今までとは全く重みが違う。
「俺、やれるだけやってみる」
 追放されて三か月ほど。俺はようやく、追放された原因に立ち向かう覚悟が出来ていたのだった。
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