58 / 66
第58話 王族の異能が複雑すぎる
しおりを挟む
「結局解らずか」
「ええ。王族の血と混ざったことで、異能も何らかの変異をしているのかもしれないわね。そして、何らかの発動条件があるのかも」
シモンの問いに答えつつ、解らないわとマリナは腕を組む。が、俺は地面に突っ伏したままだ。
どこかに秘密がないかとあちこち触るのは構わないが、せめて股間を触る前に一言欲しかった。
「ぐう」
俺は色んな意味を込めて唸ってしまう。そんな俺を、アンドレが面白がって棒で突き始めた。
「止めろ」
「いやいや。いいですねえ、王子様」
「良くねえよ。もうちょっと雰囲気があれば別だったけどな」
「あらやだ。あんなのが好み? 許嫁のクリスティーヌ姫が泣いちゃうよ」
「お前なあ」
俺がぎっと睨むと、そのアンドレの脳天に一発拳が落ちる。もちろん、やったのはマリナだ。
「廃嫡騒動を起こさせたってことは、レオがピンチになる必要があったのかもね」
で、それまでの会話をさらっと無視して、話題を変えてくれた。これほど怖いことはないので、俺は起き上がると
「命の危機になると発動するとか?」
真面目に訊ねる。
「そう。でも、発動したのは、すでにレオが日常的に使いこなしていたと思われる身体強化だけ。ううん。何か違う感じね」
マリナは、それでも俺に異能があることがポイントとされている今、何かあるはずだと悩んでいる。それは俺も同じで、このまま強靱な肉体を持っていますだけでは、世間を納得させられないと理解していた。
「廃嫡かあ」
そして改めて、その言葉の意味を考えていた。
普通に考えて、それはもう、お前には王位継承権はないと断言することのはずだ。それがどういうわけか、ねじ曲がって俺にはまだ王位継承権があることになっている。これだけでも不思議だ。
「あれ? ってことは、シャルルにはないのか。異能。同じ王族なのに」
「あっ」
「そうだ」
俺の呟きに、それが不思議だと、その場にいた全員がぽんと手を叩く。シャルルが王太子になれない理由は異能が無いからだ。これはどういうことだろう。
「つまり、王族総てが力を持っているわけじゃないってことだな」
「で、レオのように眠った状態の人と、本当にない人がいる」
「それは直系の兄弟間でも起こりえる、か」
「ますます解んねえ」
ややこしくなってないかと、俺は王族の異能問題で禿げそうだと本気で思っていた。
「国后様」
「お久しぶりですね、クリスティーヌ」
さて、話題に出て来た許嫁のクリスティーヌは、久々に王宮を訪れていた。というのも、再びレオナールを王太子にという動きが現われたからだ。
「もう、何が何だか解らず、こうしてやって来てしまいました」
そのクリスティーヌはまだ黒いドレスを身に纏ったままだ。状況が不確定であるからこそ、そう素直には喜べない証拠だろう。
「ええ。そうね。私も色々と驚くことの連続です。それに、このままだとシャルルがどうなるのか、というのも不安です」
「ああ」
ローラの呟きに、クリスティーヌは困惑の表情を浮かべることしか出来ない。クリスティーヌはレオナールのことだけを考えていればいいが、二人の母親であるローラは、この騒動で必ずどちらかを失ってしまうのだ。その心の中は色んな感情がせめぎ合っていることだろう。
「もちろん、廃嫡騒動という政変を起こしたのはシャルルです。それで自らが王座を得ようとしたのだから、それなりに罰が与えられるべきでしょう。しかし、あの子も、そしてレオナールも異能が関わっているなんて知らなかったのです。それを思うと」
理不尽ですねと、ローラは泣き顔のまま微笑むことしか出来ない。
「異能」
そしてクリスティーヌも、この事実に困惑してしまう。そして、自分の未来の夫が未知の力を持っているということに、僅かだが恐怖もあった。
「あなたは、別の誰かを選んでもいいのですよ」
クリスティーヌの怯えに気づき、ローラは優しく告げる。しかし、クリスティーヌはすぐに首を横に振った。
「いいえ。異能を恐れること、それが間違っていたのですね」
そして気丈にもそう問い返した。それにローラは頷くと
「ひょっとしたら、大戦後、異能を持った事実を隠し続けた罰なのかもしれませんね」
溜め息とともにそう呟いていた。
「ええ。王族の血と混ざったことで、異能も何らかの変異をしているのかもしれないわね。そして、何らかの発動条件があるのかも」
シモンの問いに答えつつ、解らないわとマリナは腕を組む。が、俺は地面に突っ伏したままだ。
どこかに秘密がないかとあちこち触るのは構わないが、せめて股間を触る前に一言欲しかった。
「ぐう」
俺は色んな意味を込めて唸ってしまう。そんな俺を、アンドレが面白がって棒で突き始めた。
「止めろ」
「いやいや。いいですねえ、王子様」
「良くねえよ。もうちょっと雰囲気があれば別だったけどな」
「あらやだ。あんなのが好み? 許嫁のクリスティーヌ姫が泣いちゃうよ」
「お前なあ」
俺がぎっと睨むと、そのアンドレの脳天に一発拳が落ちる。もちろん、やったのはマリナだ。
「廃嫡騒動を起こさせたってことは、レオがピンチになる必要があったのかもね」
で、それまでの会話をさらっと無視して、話題を変えてくれた。これほど怖いことはないので、俺は起き上がると
「命の危機になると発動するとか?」
真面目に訊ねる。
「そう。でも、発動したのは、すでにレオが日常的に使いこなしていたと思われる身体強化だけ。ううん。何か違う感じね」
マリナは、それでも俺に異能があることがポイントとされている今、何かあるはずだと悩んでいる。それは俺も同じで、このまま強靱な肉体を持っていますだけでは、世間を納得させられないと理解していた。
「廃嫡かあ」
そして改めて、その言葉の意味を考えていた。
普通に考えて、それはもう、お前には王位継承権はないと断言することのはずだ。それがどういうわけか、ねじ曲がって俺にはまだ王位継承権があることになっている。これだけでも不思議だ。
「あれ? ってことは、シャルルにはないのか。異能。同じ王族なのに」
「あっ」
「そうだ」
俺の呟きに、それが不思議だと、その場にいた全員がぽんと手を叩く。シャルルが王太子になれない理由は異能が無いからだ。これはどういうことだろう。
「つまり、王族総てが力を持っているわけじゃないってことだな」
「で、レオのように眠った状態の人と、本当にない人がいる」
「それは直系の兄弟間でも起こりえる、か」
「ますます解んねえ」
ややこしくなってないかと、俺は王族の異能問題で禿げそうだと本気で思っていた。
「国后様」
「お久しぶりですね、クリスティーヌ」
さて、話題に出て来た許嫁のクリスティーヌは、久々に王宮を訪れていた。というのも、再びレオナールを王太子にという動きが現われたからだ。
「もう、何が何だか解らず、こうしてやって来てしまいました」
そのクリスティーヌはまだ黒いドレスを身に纏ったままだ。状況が不確定であるからこそ、そう素直には喜べない証拠だろう。
「ええ。そうね。私も色々と驚くことの連続です。それに、このままだとシャルルがどうなるのか、というのも不安です」
「ああ」
ローラの呟きに、クリスティーヌは困惑の表情を浮かべることしか出来ない。クリスティーヌはレオナールのことだけを考えていればいいが、二人の母親であるローラは、この騒動で必ずどちらかを失ってしまうのだ。その心の中は色んな感情がせめぎ合っていることだろう。
「もちろん、廃嫡騒動という政変を起こしたのはシャルルです。それで自らが王座を得ようとしたのだから、それなりに罰が与えられるべきでしょう。しかし、あの子も、そしてレオナールも異能が関わっているなんて知らなかったのです。それを思うと」
理不尽ですねと、ローラは泣き顔のまま微笑むことしか出来ない。
「異能」
そしてクリスティーヌも、この事実に困惑してしまう。そして、自分の未来の夫が未知の力を持っているということに、僅かだが恐怖もあった。
「あなたは、別の誰かを選んでもいいのですよ」
クリスティーヌの怯えに気づき、ローラは優しく告げる。しかし、クリスティーヌはすぐに首を横に振った。
「いいえ。異能を恐れること、それが間違っていたのですね」
そして気丈にもそう問い返した。それにローラは頷くと
「ひょっとしたら、大戦後、異能を持った事実を隠し続けた罰なのかもしれませんね」
溜め息とともにそう呟いていた。
0
あなたにおすすめの小説
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
最弱Sランク冒険者は引退したい~仲間が強すぎるせいでなぜか僕が陰の実力者だと勘違いされているんだが?
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
冒険者のノエルはSランクパーティーの荷物もちだった。
ノエル自体に戦闘能力はなく、自分のことを足手まといだとすら思っていた。
そして、Sランクになったことで、戦うモンスターはより強力になっていった。
荷物持ちであるノエルは戦闘に参加しないものの、戦場は危険でいっぱいだ。
このままじゃいずれ自分はモンスターに殺されてしまうと考えたノエルは、パーティーから引退したいと思うようになる。
ノエルはパーティーメンバーに引退を切り出すが、パーティーメンバーはみな、ノエルのことが大好きだった。それどころか、ノエルの実力を過大評価していた。
ノエルがいないとパーティーは崩壊してしまうと言われ、ノエルは引退するにできない状況に……。
ノエルは引退するために自分の評判を落とそうとするのだが、周りは勘違いして、ノエルが最強だという噂が広まってしまう。
さらにノエルの評判はうなぎのぼりで、ますます引退できなくなるノエルなのだった。
他サイトにも掲載
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。
森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。
一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。
これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので無双はじめたら、元仲間が落ちぶれていきました〜
里海慧
ファンタジー
「カイト、お前さぁ、もういらないわ」
魔力がほぼない最低ランクの最弱ハンターと罵られ、パーティーから追放されてしまったカイト。
実は、唯一使えた魔法で伝説の魔獣王リュカオンと融合していた。カイトの実力はSSSランクだったが、魔獣王と融合してると言っても信じてもらえなくて、サポートに徹していたのだ。
追放の際のあまりにもひどい仕打ちに吹っ切れたカイトは、これからは誰にも何も奪われないように、最強のハンターになると決意する。
魔獣を討伐しまくり、様々な人たちから認められていくカイト。
途中で追放されたり、裏切られたり、そんな同じ境遇の者が仲間になって、ハンターライフをより満喫していた。
一方、カイトを追放したミリオンたちは、Sランクパーティーの座からあっという間に転げ落ちていき、最後には盛大に自滅してゆくのだった。
※ヒロインの登場は遅めです。
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる