歴史を継ぐ者達

nekura

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第一部

序章

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序章:旅立ちのネロ
ヴェロニカ・ネロは、華美とは程遠い、古いアパートの一室で静かに暮らしていた。彼女の人生は、代々受け継がれてきた「ネロの血筋」という重荷を背負った、孤独なものだった。幼い頃から、歴史の教科書に描かれた祖先の暴君ぶりに心を痛め、自身の出自を隠すように生きてきた。
ある日、彼女の祖父が亡くなった。祖父は生前、ヴェロニカにこう語っていた。「歴史に書かれていることだけが、真実とは限らない。もし、お前が本当にネロの子孫であることを誇りに思うなら、自分の目で真実を確かめてこい。」
祖父の遺品の中から、ヴェロニカは一枚の古びた地図を見つけた。それは、ローマから東へと続く、古代の街道が記されたものだった。地図の余白には、祖父の震える手でこう記されていた。「ネロの光は、この道の先にあり。」
ヴェロニカは、自身のアイデンティティを巡る旅に出ることを決意する。彼女は故郷ローマを離れ、たった一つのリュックサックと祖父の地図、そして小さなリラのペンダントを胸に、旅を始めた。
最初の目的地は、かつてネロが治めていたギリシャの小さな町だった。町の図書館で、ヴェロニカは一冊の古文書を見つける。そこには、ネロが暴君として恐れられる一方で、芸術や文化を愛し、人々を熱狂させたという記述があった。町の人々も、ネロがこの地で開いた音楽祭について、誇らしげに語る。
しかし、旅は順風満帆ではなかった。ネロにまつわる話を聞きつけ、彼女の出自を疑う者、好奇の目で見る者もいた。ヴェロニカは、そうした人々の偏見に傷つきながらも、祖父の言葉を胸に、旅を続ける。
旅の途中、彼女は様々な人と出会った。祖父の友人の歴史家、ネロの時代の文献を研究する学者、そして、ネロが建てた建築物の修復に携わる職人。彼らとの出会いを通して、ヴェロニカは、歴史が持つ多面性を知る。一つの出来事にも、様々な解釈や視点があることを学んだ。
彼女は気づく。旅の目的は、祖先を美化することではなく、ありのままの真実を受け入れることなのだと。そして、自身の内にある「ネロの血」は、暴君の血ではなく、芸術や文化を愛した情熱の血なのだと。
ヴェロニカは、いつしか「ネロの子孫」という重荷から解放されていた。彼女の旅は、真実を探求する旅から、自分自身を受け入れる旅へと変わっていたのだ。
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