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ある休日の話(有栖視点)
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目を覚ますと、昼近くだった。
今日は仕事がないので安心して寝ていたのだが、さすがに寝すぎた。
テーブルミラーを覗くと髪の毛が鳥の巣みたいに爆発していたので、櫛を使って丁寧に梳かした。うなじの辺りでひとまとめにすると、家用の適当な服に着替えて部屋を出る。
階段に向かう途中、遊紗がベランダでしゃがんでいるのが見えた。何をしているのか気になったが、顔を洗った後に聞くことにして、顔を洗いに向かう。
1階に降りると、冴木が茶を飲んでいた。
「あ、有栖。おはよう。よく寝たね」
「……おはよ。寝すぎた」
顔を洗って戻ってくると、冴木が朝飯だったであろうものを用意してくれていた。
「遊紗くんが作ってくれていてね。温めておいたから食べるといいよ」
「わかった。助かる」
遊紗はいつもバランスのいい食事を作ってくれる。遊紗が作るものなら毎日同じものでもいいのに、律儀に毎回違う献立を組んでくれるところが嬉しくもあり、申し訳なくもあった。
食べ終わって自分で皿を洗って、歯を磨いてから2階に上がる。遊紗はまだベランダにいた。
時折チカチカと太陽光が反射しているので、鏡か何か持っているのかもしれない。
ベランダの戸を開けて、彼の後ろに立っても彼は気付かなかった。
出会ったばかりの頃を思い出し、懐かしい気持ちになる。あの時も彼は手元の蛾やら蜘蛛やらに集中していて、声をかけるまで全然気付かなかったのだった。
何をしているのか気になって、上から手元を覗いてみる。
手には虫眼鏡を持っていて、その下に何か書かれた紙が敷いてあった。
影が差したことで遊紗が上を見上げて、俺と目が合った。
「あ、有栖。起きたんだね」
「ああ、おはよう。……それは、何をしているんだ?」
「おはよう……え? ああ、これか。これはね、宝の地図を作ってるんだ」
宝の地図?
俺が全く訳が分からずに眉を顰めていると、遊紗が手元の紙を渡してくる。
どこかの地図が印刷されたそれは、ところどころが茶色くなりボロボロになっていて、確かに海賊映画などに出てくる宝の地図みたいだった。
「確かにそれっぽいな」
「でしょ?」
「でもどうやって作っているんだ? そもそも何で作っているのかも気になるが」
「何でっていうのは単に暇だから。で、作り方はね、虫眼鏡でこうやって……」
彼は紙を俺の手から取ると、陽の当たる場所に置いた。そこに虫眼鏡をかざす。虫眼鏡によって光が一点に集められ、集まった部分から煙が上がり始める。しばらくすると、徐々に焼けてきて紙に穴が空いた。
「ほら。これを繰り返して、それっぽくしていくの」
「へえ……面白いな」
「暇なら、有栖もやる?」
「…………そうだな。たまにはそういう時間があってもいいかもな」
遊紗に言われるまま、俺はパソコンから適当な地図を打ち出して、それに虫眼鏡をかざしてみる。虫眼鏡を近づけたり遠ざけたりして、焦点を紙の燃やしたい部分に合わせる。焼き加減を調整するのは難しいが、それが結構楽しい。紙1枚がようやく焼けるくらいの熱なのでボヤ騒ぎの心配もない。
結局1時間くらいそれをやって、遊紗も満足したらしいので1階に降りて昼飯の準備をする。
俺はさっき食べたので、冴木と遊紗の分だ。
スパゲティを作る遊紗を手伝って、パスタを茹でている彼の横でベーコンを炒めて卵黄とペコリーノチーズを用意する。
パスタの水切りは彼の腕が貧弱過ぎて危なかったので、俺が代わりにやった。やったあとはベーコンの油を溶いた卵黄とチーズと混ぜて温め、ベーコンの方にはパスタを加えて炒める。
あとはパスタにチーズのソースを絡めれば、カルボナーラの出来上がりだ。
遊紗に教えて貰ったサイトの通りに作ったのだが、めちゃくちゃ美味しそうだったので俺も少し貰った。
食べたあとはトランプを出してきて3人でやった。定番のババ抜きから七並べ、神経衰弱まで色々やった。冴木は顔に出やすいためかなり弱かったが、遊紗は全く顔に出ないため強かった。
ババ抜きはほとんど遊紗が勝ち、冴木が負けた。俺はひたすら真ん中だった。
遊紗はなんだかんだ何でも出来る奴で、どうしてあんなに自己肯定感が低いのかよく分からなかった。
やはり彼を暴行していた奴らに原因があるのだろうか。
あの男からは『あの3人から遊紗を助けたのはアンタだろ。そこは感謝している。だがボコったのはオレだ』というLINEも貰った。
両親がいない彼はずっと苦労してきた。だから、もっと過去の話も聞くべきだろう。何が彼をそうさせたのか、だんだん知っていく必要がある。
次はボードゲームを買ってみよう。コーヒーや茶を飲みながら、チェスとかダイヤモンドとかやるのもいいかもしれない。
会話も弾みそうだしな。
――――――――――――†
(端書き)
スプラトゥーン3発売決定しましたね。
楽しみです。
今日は仕事がないので安心して寝ていたのだが、さすがに寝すぎた。
テーブルミラーを覗くと髪の毛が鳥の巣みたいに爆発していたので、櫛を使って丁寧に梳かした。うなじの辺りでひとまとめにすると、家用の適当な服に着替えて部屋を出る。
階段に向かう途中、遊紗がベランダでしゃがんでいるのが見えた。何をしているのか気になったが、顔を洗った後に聞くことにして、顔を洗いに向かう。
1階に降りると、冴木が茶を飲んでいた。
「あ、有栖。おはよう。よく寝たね」
「……おはよ。寝すぎた」
顔を洗って戻ってくると、冴木が朝飯だったであろうものを用意してくれていた。
「遊紗くんが作ってくれていてね。温めておいたから食べるといいよ」
「わかった。助かる」
遊紗はいつもバランスのいい食事を作ってくれる。遊紗が作るものなら毎日同じものでもいいのに、律儀に毎回違う献立を組んでくれるところが嬉しくもあり、申し訳なくもあった。
食べ終わって自分で皿を洗って、歯を磨いてから2階に上がる。遊紗はまだベランダにいた。
時折チカチカと太陽光が反射しているので、鏡か何か持っているのかもしれない。
ベランダの戸を開けて、彼の後ろに立っても彼は気付かなかった。
出会ったばかりの頃を思い出し、懐かしい気持ちになる。あの時も彼は手元の蛾やら蜘蛛やらに集中していて、声をかけるまで全然気付かなかったのだった。
何をしているのか気になって、上から手元を覗いてみる。
手には虫眼鏡を持っていて、その下に何か書かれた紙が敷いてあった。
影が差したことで遊紗が上を見上げて、俺と目が合った。
「あ、有栖。起きたんだね」
「ああ、おはよう。……それは、何をしているんだ?」
「おはよう……え? ああ、これか。これはね、宝の地図を作ってるんだ」
宝の地図?
俺が全く訳が分からずに眉を顰めていると、遊紗が手元の紙を渡してくる。
どこかの地図が印刷されたそれは、ところどころが茶色くなりボロボロになっていて、確かに海賊映画などに出てくる宝の地図みたいだった。
「確かにそれっぽいな」
「でしょ?」
「でもどうやって作っているんだ? そもそも何で作っているのかも気になるが」
「何でっていうのは単に暇だから。で、作り方はね、虫眼鏡でこうやって……」
彼は紙を俺の手から取ると、陽の当たる場所に置いた。そこに虫眼鏡をかざす。虫眼鏡によって光が一点に集められ、集まった部分から煙が上がり始める。しばらくすると、徐々に焼けてきて紙に穴が空いた。
「ほら。これを繰り返して、それっぽくしていくの」
「へえ……面白いな」
「暇なら、有栖もやる?」
「…………そうだな。たまにはそういう時間があってもいいかもな」
遊紗に言われるまま、俺はパソコンから適当な地図を打ち出して、それに虫眼鏡をかざしてみる。虫眼鏡を近づけたり遠ざけたりして、焦点を紙の燃やしたい部分に合わせる。焼き加減を調整するのは難しいが、それが結構楽しい。紙1枚がようやく焼けるくらいの熱なのでボヤ騒ぎの心配もない。
結局1時間くらいそれをやって、遊紗も満足したらしいので1階に降りて昼飯の準備をする。
俺はさっき食べたので、冴木と遊紗の分だ。
スパゲティを作る遊紗を手伝って、パスタを茹でている彼の横でベーコンを炒めて卵黄とペコリーノチーズを用意する。
パスタの水切りは彼の腕が貧弱過ぎて危なかったので、俺が代わりにやった。やったあとはベーコンの油を溶いた卵黄とチーズと混ぜて温め、ベーコンの方にはパスタを加えて炒める。
あとはパスタにチーズのソースを絡めれば、カルボナーラの出来上がりだ。
遊紗に教えて貰ったサイトの通りに作ったのだが、めちゃくちゃ美味しそうだったので俺も少し貰った。
食べたあとはトランプを出してきて3人でやった。定番のババ抜きから七並べ、神経衰弱まで色々やった。冴木は顔に出やすいためかなり弱かったが、遊紗は全く顔に出ないため強かった。
ババ抜きはほとんど遊紗が勝ち、冴木が負けた。俺はひたすら真ん中だった。
遊紗はなんだかんだ何でも出来る奴で、どうしてあんなに自己肯定感が低いのかよく分からなかった。
やはり彼を暴行していた奴らに原因があるのだろうか。
あの男からは『あの3人から遊紗を助けたのはアンタだろ。そこは感謝している。だがボコったのはオレだ』というLINEも貰った。
両親がいない彼はずっと苦労してきた。だから、もっと過去の話も聞くべきだろう。何が彼をそうさせたのか、だんだん知っていく必要がある。
次はボードゲームを買ってみよう。コーヒーや茶を飲みながら、チェスとかダイヤモンドとかやるのもいいかもしれない。
会話も弾みそうだしな。
――――――――――――†
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スプラトゥーン3発売決定しましたね。
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