婚約者のいる殿方を横取りした令嬢の末路

弥生

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「幼馴染は特別で誰にも邪魔を出来ない関係なの」
 もう耳にたこが出来た伯爵令嬢マドレーナ・モーリアの口癖を聞かされた令嬢達は気付かれないようにため息をついた

 幼馴染が気心知れた存在なのは理解出来る、しかし彼女の口振りでは“幼馴染=恋人”と言う方程式が出来ている気がして仕方がない
 幼い頃に婚約者が決まる貴族も多いので自動的に婚約者が幼馴染になる事はある
 勿論たまたま恋人になった人が幼馴染だったと言う事もある
 しかし『幼馴染だから恋人になる』と言う事は有り得ないのだ

 幼馴染で男女の人数が合わないときはどうなるのだ?6歳の頃から10年間同じクラスだったクラスメート達も全員幼馴染に当てはまるのではないのだろうか?全員恋人とか狂気の沙汰だ
 そうなったら22人の夫と18人の妻と言う大所帯に成ってしまう

 もう1つ気になる事が彼女の言う『幼馴染』がクラスメートの誰かではなく他の殿方のようなのだがそれが何処の誰なのか皆目見当もつかないのである
 何度かそれとなくどのような殿方なのか尋ねた事があるのだがはぐらかされるだけに終わった

「マドレーナ様の仰る幼馴染とはどなたなのでしょうか?」
 マドレーナがいなくなった後その場にいた令嬢達が会話を続ける
「夜会やお茶会でもそれらしき方を見た事はありませんわ」
「他国の方なのでしょうか?ですがマドレーナ様とそこまで交流のある殿方はいらっしゃったかしら?」
「もしかしたらその幼馴染はマドレーナ様のお心の中だけにおられる方ではありませんか?」
「そんなまさか」
「おほほ、イヤですわそうですよね…」
「…」

 マドレーナの幼馴染が妄想の中の存在ではないかと言う考えまで出てきたが、その場にいた全員がそれを完全に否定する事が出来なかった
 そしてその考えが当たらずといえども遠からずである事を知る者はいないのであった
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