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第3章 神と接触

第29話 魔神とユウキ

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===魔神視点==================

 ユウキと『戯神』が激闘を繰り広げている間、妾は辺りの魔素を、ユウキに迷惑がかからないように吸収し、やっと立ち上がれるところまで回復した。これも"ハイパーヒール"をかけてくれたユウキのお陰じゃな。

「さて……、これからどうすれば……」

(ドゴォーーン!!!)

「うおっ!」
 突如聞こえた爆音と爆風が妾を襲う。

「一体何が……」
 爆風が吹き終わった後、顔を起こして向こうで立ち込めている砂煙を見る。すると、砂煙から右手を無くした『戯神』が現れた。

「よしっ!!これでユウキの……!」
 『戯神』がやられているところを見て、喜んでいると、ユウキが何やらこっちに走って向かって来てる。

「何故こっちに……?なっ!!」
 不可解なユウキの行動に違和感を覚え、辺りを見渡すと、こっちに光の玉が向かってきておった………!

===ユウキ視点=================

「はあぁぁっ!」
 魔神の前に立ち、魔神に迫ってた光の玉を日本刀で斬りつけた。だが、光の玉は爆発せず、霧散した。『聖魔術師』もいなくなっていた。

「ふふっ、それじゃあ」
 『戯神』は嘲笑うかのように笑うと、後ろの空間に逃げ込もうとする。

「させるかっ!」
(ドシュッ)
 俺は奴を追おうと、重たい体をたきつけて走り出そうとした矢先、胸から黒い刃が現れた。その刃は血塗られて、血が地面に滴り落ちていた。

「は?」
 俺は訳が分からなくて、振り返るとそこには、目に光が無くなった魔神が魔素で作った刀を俺の胸に突き刺していた…。

「アッハッハ!僕がそいつを操れる可能性は考えなかったのかい?本当はそのまま魔神にトドメを刺させて連れて行きたかったんだけど、今ので魔力切れだ。君も分かるだろう?僕の支配領域が狭まっていくのが……。まあ、今日は久しぶりに楽しかったからそのお礼として受け取って♪それじゃあ!バイバイ!!」
  『戯神』は散々喋りまくった後、さっさと真っ白な空間に入り、その出入り口はすぐに跡形も無く消えてしまった……。それと同時に奴の支配領域は消えていき、そして魔神の意識も元に戻ってきたのか、目に光が戻ってきて………

「……………はっ!……妾は何故立っておる?…………っ!ユウキ!?どうして妾はユウキに刃を刺しているんじゃ!?」
 意識が戻った瞬間、魔神は慌てふためいてしまった。まあ、気がついたら他の人を刺していたら誰でも驚くよな……。という事は奴に操られている間は意識は無くなるって事か………。

「……まあ、落ち着いて。っ!……とりあえず……剣を…とって……」
 俺は口の端に血を滴らせながら、自分の容体を、魔力を通して見る。これは心臓を見事に貫かれているな……。血が抜けて意識も不安定になってきた。

「わ、わかったわ」
 魔神は魔素で出来た剣を霧散させる。剣が消えると、一気に体の中央に穴が空いているのが嫌でも実感させられる。

「"ハイパーヒール"」
 俺は取り敢えず、心臓を修復させた。本当は血管や皮膚も塞ぎたかったが、それは"身体強化"で自己治癒力を高めて、治す。だが、これを使うとさっきまで高めていた免疫力が一時的に低くなるから、毒の回りが……!

「ぐぅっ!!と、取り敢えず、魔神!これから俺は寝るから、後は頼んだ……!」
「ちょっ!!まっ!待つのじゃ……!!」
 俺は焦る魔神を無視して、いち早く傷口を塞ぎ、免疫力を高めてから、意識を手放した………。

===守姫視点==================

「「「………………………!!!」」」
 私と技姫と攻武はリリとルルがティフィラ様とエルガ様相手の修行を見ていました。すると、突如私達に、いやご主人様に変化が現れました。
 これは……!でも…そんな……!!
 私達3人の神妙な顔に、リリとルルはおろか、ティフィラ様までこっちに心配そうに来ました。

「どうかされました?守姫さん」
 心配している3人を代表してリリが私に聞いてきました。これは…言わない訳にはいきませんよね……。

(この事態は、皆で共有した方がいざという時に動きやすいかと……)
(まあ、黙っとく訳にはいかねぇよな。これは……)
 私の心境を素早く察した技姫と攻武は、私達だけの念話で話しかけてきました。どうやら、伝えないといけないと思ったのは、2人も同じみたいでしたね……。

「今……ご主人様からの魔力供給量が大幅に少なくなりました………」

「「「……………!!!」」」

「そっ、それってどういう……」
 リリが恐る恐る、予想はできているけど、この予想が外れて欲しいと言わんばかりの目で聞いてきました。

「……考えたくありませんが…………ご主人様の身に何かあったのだと思います…」
 こればっかりは嘘を言っても仕方ありません……。

「そっ、そんな……」
 リリはその場で座り込み、ルルも驚きのあまりに直立不動に…。ティフィラ様はふらりと倒れそうになり、それを私が支えます。………ライバルとはいえ、ご主人様のですからね。
 
 一同が暗い雰囲気に包まれる中、 
「落ち込むティフィラも中々……!」
 空気の読めないエルガ様の声で、私達は八つ当たりと言わんばかりに一斉に襲いかかりました………。
 

===魔神視点==================

 妾とユウキは今、森の奥にひっそりとあった洞窟の中にいる。
 ユウキは苦しそうに呻きながら寝ており、妾はそのユウキに膝枕をしてやり、手を体の至る所に当てていた。
 
 勿論、ユウキの体をペタペタ触るのには理由がある。
 今、ユウキの体をむしばんでいる毒は、体の細胞を自身と同じ毒素に変換させ、増殖していく恐ろしい毒だ。そんな毒を体外に出すと、今度は妾が感染してしまう。幸い、その毒は空気中と感染した体内中のみしか活動出来ないから、その毒が蝕んでいる所は触れられる。
 毒が蝕んでいる所をペタペタ触って、妾はその場所の毒に濃縮させた魔素をぶつけ、毒素を消し、消毒のような事をしておる。この消毒法の凄い所は、魔素が毒を倒すと、さっきまで毒にやられていた細胞に魔素が吸収され、その部分のみじゃが、その部分の治癒力等が活性化するのじゃ。
 つまり、毒も消せて、細胞も良くなる一石二鳥の消毒法なのじゃ!
 無論、これは誰にでも出来る訳では無い。というか、妾が持つ『魔素支配』が無ければ出来ん。それに時間もかなりかかるし、集中力がかなりいるから、戦闘中には使えんしな。

「せめてこれぐらいせんとな……。恩返しと謝罪の気持ちを込めて……………!」
 『戯神』が帰ってから、かれこれもう1日が経った。勿論、飯は食べておらん。睡眠は最低限はとっておる。1日のほとんどは消毒に回しておる。じゃが、まだ三分の一……。もっと頑張らねば……!

>>>ユウキ視点>>>>>>>>>>>>>>>>>

「ん、ん~~ん」
 俺は眩しい朝日を浴びて目を覚ます。不安定な所で寝たからか身体中が痛い。背中に石が当たっていることから、ここが外だと言うことは分かったが、なら頭の後ろにある柔らかいものは何だ?
 目を開けた瞬間、カクッ、カクッとなりながら寝ている魔神の顔が見えた。というか俺、魔神に膝枕されてたのかよ………。

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 朝、目が覚めると手に女の子のアレが……!なんて事は実際あり得ませんよね!?ね!?ね!?
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