空のない世界(裏)

石田氏

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《第3幕》13章 終わらない戦場

05

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これまでのあらすじ~
 
 真紀は、山吹とブライアン失踪の捜索で児童養護施設に行き、手掛かりを探していた。しかし、そこは施設がらみで行われた人体実験で悲惨な目にあった子ども達の霊が住み着いた、曰く付きの場所だった。
 そして、その子ども達の霊によって閉じ込められた真紀は、無惨な死をとげる。
 しかし、真紀が次に目を覚めたその世界は天国でもあの世でもなく、別世界だった。
 そこでは、地球にアンノウン・ウォーという未知の生命体による襲撃に苦戦しながらも、百年以上も続く戦争が今も行われていた。

 働かない、働けない者は追放

 厳しい世界で、真紀は軍に入隊することとなる。そして、現在。真紀は、突然変異の大型アンノウンと交戦中だった。


ーーーーーー


「それで、どうする?真紀の言うことが確かかどうか今確かめることは出来ない。例え、そうだとしたらこれ以上の砲撃は意味がないってことになる」
「なら、どうするんだ?あの時みたいにやるか?」
「待ってアイザ、アッシュ。あの〈戦艦〉作るのにどれくらいかかるの?」
「期間か?まぁ、だいたい一年に二機がせいぜいだろうな」
成る程。第1拠点の上が救助を出さない本当の理由が分かった気がした。そして、私達が出動することをとめなかった理由も。
 第3拠点が乗りきった時の借りにでもしたいのだろうか。 一機の被害でも、第2拠点が全く救助に出さなかった時の差をつけて、言い訳でも何でもするんだろう。恐らく第2拠点は第1拠点が救助を出したことは知らない筈だ。何せ、正式な任務ではないからだ。
 とにかく、むやみに機体損失は攻防の損失にもなる。あの時みたいに機体を砲台に使うなんてことは、本来避けるべきなんだろう。
(ふきちゃんがいたら何て言ったんだろう)
 正直、こんな面倒なことはふきちゃんが考え、真紀は頭の中お花畑にして、蝶々でも見ていればよかったのだ。
 でも、そうもいかなくなって、そしたらいつの間にかリーダーになって……
 そんなことを考えていると、アイザが真紀の肩を揺すった。
「おい、しっかりしろ」
「はっ!」
「確かにお前の言うことには理解出来るが、今は躊躇している場合じゃないぞ。結局のところ、手段とやらはそれしかないだろ。仕方がないだろ。それより一機の損失を考えているうちに、それ以上の被害が出てるんだ。もう選択肢はないはずだ」
確かに、アイザの言う通りだった。一機の損失を考える以前に、もう被害は出ている。勿論、それは分かっていた。だが、真紀にはそれでも、それを拒む理由があった。
「おい、今のでさっきいた第3拠点の〈戦艦〉が全滅したぞ。多分アイツ、わざと俺らだけ残したんだ。仲間を引きずって呼び寄せたから、怒ってるんだ!」
「どうするんだ、真紀!」
アッシュとアイザが叫んでせまる。他の皆も、同じ意見のような顔をしていた。
 確かに、それをいつまでも拒んではいられなかった。
「分かった。じゃあ今からこの爆弾のアイコンを押して発動させる。皆は待避の準備を」
「了解」
真紀はアイコンをタッチした。本来はアイザの説明通り画面が変わって、タイマーの設定画面が出るんだろうけど、画面に出たのはエラーという文字。唯一の操作は、タイマー無しで直爆破ボタンのみ。
「はぁ……機械音痴の私でも、メンテナンスの不備に気づいた一番のきっかけが、重要設定にエラーとか出てること。いくらなんでも分かっちゃうよ。こんな大事なことに不備が起きるとかあり得ないんだけど……」
真紀は誰にも聞こえないように独り言を呟いた。当然、残されたのはこの戦艦だけ。誰かがボタンを押さなければこの戦いは終わらない。そして、そのボタンを押そうと自ら犠牲になって残ろうとするメンバーがこの中にいた。
 おそらく、全員が残るだろう。そこで、これまた終わらない言い争いが起きて、結局誰かが残ることになったとしても、犠牲者が出ることに変わりはなかった。なら、自分を選ぶまでだった。それなら、メンバーにいちいち言う必要もない。
 あとはうまく皆を騙し、皆を無事に逃がしてからスイッチを押せばいい。
「はぁ、また私死ぬのか」
別に死ぬのが怖くないわけではない。怖いし、誰かに変わって欲しいと思っている。しかし、真紀は考えてしまった。この世界に来た理由を。本来、死んで天国か地獄に行く筈の自分が、再び別世界で生かされた理由を。
 重要な役割があるからこそ、私が送り込まれたのだと。
 勿論、こんな宗教的な考えは今までの真紀にはなかった。でも、一度死を経験してしまうと、こんなにも変わるのかと思えてしまうほど、真紀は宗教的思考を持つようになった。
 多分、本来行くべき死後の世界を考えた時から生まれたのかもしれない。
「真紀、皆準備完了だ」
「うん、分かった」
「それで、降りる順番だがどうする?」
「前回と同じでいいと思う」
皆は真紀の提案に賛成した。
「はぁ、また走行中から飛び降りなきゃいけないのか」
アッシュは溜め息交じりに言った。皆は聞かなかったことにして、エラが最初に外の風景の目の前に立った。
「前回と同じ速度だから、今回は楽勝ね」
そう言って、飛び降りた。
「もしかして、俺に向けて言ったのか?」
アッシュは皆に聞いたが、早く行けと目線を送る。
「あー、分かったよ」
アッシュはそう叫んで、勢いで行こうとしたが踏みとどまった。
「やっぱり無」
「早く行け」
アッシュが「無理だよ」と言う前に、アイザはアッシュを後ろから蹴り飛ばした。
 アッシュの姿がなくなると、ルビーが次に目の前に立った。
「じゃあ、先に行くわね」
「あぁ」
アイザがそう言うと、ルビーは意味ありな笑みをしながら飛び降りた。
「何故アイツ笑ったんだ?」
「さぁ?」
雫はそう言って、前に出た。そして、後ろを振り返り、アイザをもう一度見ると
「鈍感だね。アイザに気があるってこと」
「俺にか?」
雫は両肩を上に持ち上げ、呆れた顔をした後、雫は飛び降りた。
「なぁ、何でアイツ呆れた顔したんだよ」
するとコリンズがあらわれ、
「人生の先輩として一言。女性の気持ちは察しなきゃだめだ」
「はぁ!?面倒だな。口があるんだから言葉にして言えよ」
するとコリンズも呆れた顔して、アイザをあとにして飛び降りた。
「よし、お前は何も言うなよ」
「言わないよ。それに、私もよく分からない」
「そうなのか!良かったよ、俺だけ取り残されたのかと思ったよ」
「それよりアイザ、先に行って」
「ん?どうした。順番じゃ、次は真紀のはずだぞ」
「ほら、私リーダーだから」
「そうか。確かに真紀はリーダーだもんな。なら、分かるだろ。リーダーはメンバーを置いて死んじゃいけねぇ」
真紀は驚いた。
「俺が気づかないと思ったか?俺はだてにリーダーやってた訳じゃない。さっきのアイツらのことは読めないが、嘘とか何かを隠しているときはだいたい気づくさ」
「私がアイザと初めて会った時とは大違いなこと言ってない?」
「あの時か。確かにお前と初めて会った時は、正直危険だとは思わなかったよ。だから、何でこんな所にいたのか不思議だった。とにかく、危険だとは思わなかったが、信用は出来なかった」
「でも、アンノウンはターミネーターみたいに人間には変身しないでしょ?」
「ターミネーター?」
「あ、ごめん。こっちの世界の映画の話。『空のない世界』が出現するかなり前に上映された映画なんだけど、世界が滅びかかった後、その映画を復元して上映したのを見たの。機械が人間に化けて人に潜り込むみたいな感じだった気がする。私、全シリーズ見てないから」
「成る程、それは怖いな。だが、真紀の想像通り奴らは人間には化けない。だが、アンノウン・ウォーを変異させてる人間がいる情報があるんだ」
「え?アンノウン・ウォーは人類の天敵でしょ」
「そうだ。これは極秘情報で他のメンバーは知らない。とにかく、お前と会った時は信用出来なかったんだ」
「分かった、信じるよ。本当のことも言う」
「タイマーが起動しないんだろう」
「知ってたんだ……」
「あぁ」
「じゃ」
「諦めてくれ。俺を説得出来るのか?」
真紀は首を横に振った。
「じゃあ、今度はって!」
真紀は顔にパンチをくらわした。アイザは鼻を押さえて後ろによろける。
「こいつ、正気か!?」
「説得出来ないなら、これが一番」
「まぁ、確かに分かりやすいが」
 アイザは何か言いたげだが、口を出さなかった。おそらく女相手に、しかも自分より小さい相手に手は出せないとでも言おうとしたのだろう。だが、アイザは真紀のバカな考えを止めることなら躊躇しないと、意を決して構えた。
 二人が互いに向かい合う。
「こんな時に、こんなことする場合じゃないんだがな」
「私らバカだから、空気読めないんだよね」
その瞬間、二人は笑う。それこそバカみたいに。そして、
「おおおぉぉーー!!」
「うりゃああぁーー!!」
二人の拳は互いに顔面を狙うが、最初の拳は互いに避け、空振りに終わる。その直後、真紀は蹴りをアイザの横腹を狙うが、アイザはそれも避けた。
「やっぱり真紀は女だな。女は皆、足が飛んでくる。本当に分かりやすい」
「何さ、男が最初に出すのは大抵拳なのも分かってたよ」
「そうかい」
すると、突然アイザは突進してきた。さすがの真紀も、アイザが突進して来ることは予想出来ず、そのまま押され壁に激突する。
「あっ!!」
苦しい。だが、あの時の苦痛よりかは明らかに楽だった。自分が殺される前の苦痛に比べれば。そう思うと、真紀はアイザの突進に耐えられた。
「私を止めたいなら、これくらいやらないと!」
真紀は、アイザが突進した際に奪った銃を彼に向けた。
「はぁ、これはたまげた」
「銃なんてアンノウンに効かないのに、何で持ってたの?」
「それより、銃の使い方分かるのか」
真紀は自分が持っている銃を見た。
「分からない。使ったことないから」
真紀は銃を外に放り投げた。

ドーン!

「くっ!」
「うっ!」
どうやら、オートでアンノウンに向けて前進していたのが、アンノウンの触手に激突したらしい。
 触手は、〈陸潜艦〉を巻きつきミシミシと潰そうとしてきた。
 アイザは、激突の衝撃からたち直した。
「どうやら、時間のようだ。どうする?」
そう真紀に聞こうとした時、そこに彼女の姿はなかった。
「ん?どこ行った!?」
「おりゃあ!」
すると、アイザの後ろに回り込んでいた真紀が、アイザの不意を狙うように襲いかかった。真紀は平手でアイザの首筋を狙った。しかし、アイザは後ろからの攻撃をもかわしてみせた。
「ナメるな!後ろから襲いかかることくらい予想出来る」
アイザは、すかさず拳を振り上げた。それは、真紀の顎に直撃した。
 顎が外れそうになりかけ、真紀は痛みで涙目になりながらもアイザを睨んだ。

バキッ!

 アンノウンの触手に捕まった〈陸潜艦〉は、確実に破壊されつつあった。
「おい、真紀。奴は時間をかけて俺達を潰そうとしてる。これが何を意味するか分かるか?もう時間はない。どっちにしても、どちらかが逃げ切る時間は残されていないんだ」
「もしかして、それが狙い!?」
「そうだ。こんなバカなことして、犠牲者が一人増えたのも、こうなることを狙ってのことだ」
「バカじゃないの」
「おい。それ、お前が言うか。とにかく、一人でいかせたりはしない」
「どうして、そんなことを?」
「どうせ、説得しても無駄だと分かっていたからだ。だから、最後までついていってやるってことだ。まぁ、まだあの時は諦めてなかったがな。
 お前は十分頑固だったってことだ」
「バカなの?」
「おい、何度も言うなって」
「そんなことで死ぬなんて、バカ以外何があるの」
「まぁ、ないな」
「はぁ……」
真紀は、大きなため息と共に、床に座りこんだ。
「疲れたよ」
「おいおい、遺言とかいいのかよ」
「早くやって」
「なんか、あっさりしてるな」
「別に。ただ、アイザが地獄に落ちることは今知った気がする」
何度も言うが、アイザはバカだった。一人ではいかせないとか、ルビーがいるのにこっちに来てまでする価値なんてなかったのに。
 仲間は大事だが、死ぬ時も一緒なのはいい気はしない。
「じゃあ、いくぞ」
アイザはそう言って指を伸ばすが、真紀は別のことを考えていた。
 地獄と天国である。又は死後の世界、あの世である。真紀は真っ暗になった先にある世界を考えていた。
 アイザはそうとは知らず、爆弾ボタンを押した。
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