メロディーライン

めりぃさん

文字の大きさ
上 下
5 / 68
◆はじまりの歌◆

◇ひとめぼれ。2◇

しおりを挟む



そこには先客がいたみたいで。
わたしはそっと陰に隠れた。
体育座りして、そっと顔をのぞかせると、そこには先生がいた。


先生?!こんなとこで何を…。
もしかして先生も夕焼けを見てるの?
わたしがそんな事を考えてると、先生は息を吸って歌い出した。



♪いつか君を幸せにできるように
    いつか君を救えるように
    その時まで僕は君を
    好きでいると誓うよ



鳥肌が立った。
聞いてるだけで涙が出た。
低くて、でも繊細で綺麗で。
そんな先生の歌が聴けて嬉しかったと同時に、それがラブソングである事が悲しくもあった。

だって…先生には好きな人がいるって証拠だから。
今日初めて会ったばかりなのに、こんなに夢中になるわたしが嫌だ。


これは気の迷い。
どれだけ自分に言い聞かせても、涙が止まることはなかった。
もう、帰ろう。
そう思い、いきなり立ち上がると貧血で頭がくらくらしてきた。
そしてそのままドアにぶつかり、わたしの体は投げ出される。

「いった…!!」

最悪だ、よりによって投げ出されたのはドアの外。そう、屋上に投げ出されたのだ。
もちろん先生の視線は倒れたわたしの方へ。
なんて恥さらしなの…

「え、ちょ…大丈夫か?!」
先生は必死に駆け寄って来た。
「はい…少し貧血で…」
先生は不思議そうな顔をしながらも

「よかった…。」

と言って先生は微笑んだ。
その微笑みは夕日が照らされて、本当に綺麗だった。それだけで涙が溢れてきた。
「ちょ…!!どうした…?!」
慌てて心配する先生の腕に手を添えてわたしは言った。


「先生の歌は…わたしを泣かせる。」



「え…?」
困惑する先生を無視して


「明日も…聴きたい。」


と言い残し屋上を後にした。






しおりを挟む

処理中です...