孤独の修理士

常盤 遊

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第一話 孤独な修理士と機械好き

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「あ~~くそ!めんどくせぇ!」



自分の手先が思うようにいかなくてイライラする。



「あいつら、散々やりやがって!」



そう言いながら、俺はボロボロになった戦闘ロボットを修理する。


真夏の太陽が俺を強く照らす。



・・暑。


俺は修理中の機械を建物の影にひきづり込んで作業を続ける。


「何がどうなってこうなったんだっけ?」


俺は、何があったか思い出す。


そう。100年も前の戦争兵器のロボットが今世界中で暴走していて、そのロボットが日本で初めて発見されたのが半年前。



そのロボットは人間を殺せという戦時中の命令に今も従っているという。


そんな暴走ロボットを破壊し,国民を守ることをしているのが対戦闘兵器協会。


そしておよそ10分前そのロボットがさっきそこで暴れ出した。


それをその協会のやつが制止させた。(正確には破壊した。)



そうだ。こいつがそのあとこれを放置してどこかに行ったから、こうして俺が直してるんじゃないか。



全く。物事の後片付けはキチッとやれって教わらなかったのかよ。



そう思いながら、俺は作業を続ける。



ウィィィィィィィィン



ウィィィィィィィィン





よし!あとは接続する線を繋ぎ合わせて固定すれば、、、




「あっ!」



突然背後から声がした。一瞬驚いたが何もなかったかのように振り向く。




すると,そこには高校生ぐらいの男が立っていた。



「どうした?500円玉でも見つけたか?」


俺はそう聞いた。



でもそれは間違いだったんだ。



俺はこの時、何も言うべきではなかった。



いや,この時にはもうすでに遅かったのかもしれない。



「いや、違いますよ!」



その男の子は近づいてきて,修理中の機械を指差して言う。



「これ!この部品!今世界を襲っている。戦闘ロボットのやつですよね!僕、初めて見ました!」


そいつはひどく興奮していた。


「え、、、あぁ。まぁそうだな。それがどうした?」


こんなものに興味があるのかと,疑問に思った。


「知らないんですか!この!これですよ!このパーツ!これひとつで熱センサーを作動させ,弾丸軌道予測、高速演算、超継続電池、それ以外にも、たくさんの機能がある!感動しませんか!こんなものにですよ!」


「はぁ。」



なるほど、こいつただの機械オタクか。


「今は作業中なんだ。見てもいいけど、ちょっと静かにね。」


俺はそう言って作業に戻る。



「あっはい。すみません。ちょっと興奮しちゃって。」


ふぅ。びっくりしたがこれでようやくこの作業が終わる。


俺はゆっくり線を接続させる。


「あの、あなたって協会の方ですか?」


「僕、聞いたことがあるんです。戦闘以外にも戦闘の後始末をする機関があるって。」


そいつはまた聞いてくる。



こいつ静かにって意味知らないのか?


「あぁ。あとで答える。」


俺は集中する。あとは固定だけだな。



「あの、その作業が終わったら、僕もその機械触っていいですか?」


よし。無視だ無視。


俺は手を突っ込んでパーツを固定させる。



ガチャン



「よっしゃー!」



終わった。ようやくだ。邪魔は入ったが、流石は俺!あのボロボロだったやつが完璧にビフォーアフター!新品さながらになってやがる!


「おお!すごい無茶苦茶硬い。流石は戦闘兵器だ!」


そいつは普通に戦闘ロボットに触る。


「おいおい。素人が変にいじっちゃまた壊れるぜ。」


俺はそいつに手をどけるように言う。



「大丈夫ですよ。戦闘用なのでこんなんで壊れたりはしません。」



俺は少しイラッときた。



「あのなぁ。そういうことじゃなくて。お前が機械に詳しいのはわかったから。俺はもう仕事終わったんだ。だから、俺はもう帰るぞ。」



「あの、仕事中に色々すみませんでした。」


そいつは深々と頭を下げた。


「あぁ。」



俺はそう言い残してこの場を後にした。










そのあとは,ラーメン屋に行って、スーパーで買い物して、俺たちの拠点としている6階建ビルのエレベーターで、2階の機械修理会社スズキと書かれた階に止まった。



「ただいまっす。」



俺はドアを開けて中に入る。



先生は、薄暗い部屋で,1人,パソコンを叩いていた。


「先生ただいまっす。」


そういうと,パソコンを打つのをやめ、こちらを向いた。



「おう。修お帰り。」



この人は、鈴木先生。俺の機械系全般の先生で、今は,この戦闘兵器保護協会の会長をしている。この人は機械を直すのも作るのも得意だ。


「で、どうだった。収納くんバージョン3の性能は。」



俺はキャリーケースを開けて、中から,さっき修理したロボットを取り出す。


「なかなかいいよ。前のと比べたら。でも,元々がでかいのが少し気になるかな。ラーメン屋行った時、観光客みたいになってたからな。これと同じ性能でもう少しサイズを小さくできればもう言うことなしかな。」



「ほほぅ。なるほど。サイズか,」



鈴木先生は,メガネを光らせて、パソコン打ちに戻る。



「俺はもー疲れたよ。今日だけで3台も修理した。俺はもう寝るよ。」



俺はソファに横になる。



「あぁ。おやすみ。」



そういうと,先生は,部屋の明かりを消した。


カーテンで締め切られた部屋は途端に真っ暗になる。


「俺が真っ暗じゃないと寝られないとは言ったけど。ここまでしなくていいぜ。」



俺は体を一度起こして言う。



「ふっふっふ。実はこのメガネ、暗視レンズ付きだ。このレンズの性能を試したいから、私はこれでいい。」


「そう。なら俺は遠慮なく寝させてもらうぜ。」



あー疲れた、、、



俺は体を寝かして、目を閉じた。











ジリリリリリリリリ!



壊れかけの目覚まし時計のような音に驚き、俺は目が覚めた。


「なんだ、、。 人が気持ちよく寝てたのに。」


俺は眠い目を擦りながら体を起こす。


「どうやらこの近くで戦闘ロボットが発砲したようだ。」


先生はロボット探知機の音を止める。


「お疲れのところ悪いが行ってきてくれ。私は今手を離せない。」


「ハァ~。」


俺は深いため息をする。


そしてソファから立ち上がる。


「まぁ人命がかかってるんだ。しょうがない。」


俺は急いで準備を済ませると駆け足で建物を出た。






外に出ると,辺りはすでに暗くなっていた。


・・実は俺、結構寝てたのか、、


俺は左腕につけている探知機を見る。


そこには,暗い画面に、自分の現在地と、ロボットの位置が光っていた。


・・結構近いな、、、


パアッッッン! パアッッッン!



途端に大きな音がした。



これは急がないと。



素早く走り出す。



ここは直進。次左、、



無駄なくロボットのいる地点に向かう。



・・しかし全然人がいない。少し妙だな。



人気のなさに不思議に思いながら、最後の突き当たりを曲がる。



すると,そこには戦闘体制のロボットが1体いた。



・・こいつだな、、



俺は勢いよくそのロボットに近づく。



ロボットが俺に気づくより先に俺は道路に突き飛ばした。


ドドッッッ!


ザァァァァァ!



ロボットが地面に転がる。



「大丈夫か?怪我は?」



俺は地面に倒れ込んでいる襲われていた人に聞く。




「あ、、、あ!あなたは!」



ん?



俺は思考が一瞬止まった。



・・この声、、まさか、、、



俺はおそるおそる振り返る。


すると,



「やっぱり!今日の機械直してた人!」




鬱陶しいくらいの大きな声が俺の脳を揺らした。


「くっそ。めんどくさい!」



俺は負けずに大きな声で返した。



そうこうしている間に、ロボットは立ち上がってこちらを物色している。



・・こいつはとりあえずあとだ。先にこっちのロボを片付ける。



俺はロボを見つける。



ロボは目がついているようなデザインではないが、目があっている気がする。



「あの!危ないですよ!」


後ろからまた大きな声がした。


「僕はともかく、あなたまで死んじゃいますよ。」



そう言うこいつはボロボロだ。



服はところどころ破けているし,靴も片方ない。



「専門の、協会の人に任せましょう!あなたが機械修理ができるのは知ってます!でも、、、」



「俺じゃあ勝てないってか?」



俺は大きな声で聞き返す。



急に大きな声をだしたためか、その高校生は驚いて、何も言わなかった。



「そういえばお前。俺に聞いたよなぁ。俺が何者かって。」



「あとで答えると言ったが、忘れてたぜ。」



俺はズボンのポケットからマッチを取り出し、火をつける。



「俺は協会の戦闘員でも、後始末だけの下っ端でもない。」


火のついたマッチを右手に持って、もう一度ロボットを見る。


「ただの一人孤独の修理士だ。」



マッチを誰もいない右前方に投げると同時に左側から大回りでロボットに近づく。 



ロボットは人間でいう心臓付近を変形させ、銃口を向ける。



パアッッッン! パアッッッン!



弾丸がマッチの燃えている部分をかき消した。



・・流石戦闘兵器!惚れ惚れするくらい正確だ!



・だが,それが仇になった!


俺はロボの死角に入り、左肩付近に蹴りをいれる。


ガァァァァァン!


・先生作鉄製靴だ。重い代わりに,破壊力抜群!


戦闘兵器のボディが崩れ,接続線が見える。


シュュ!



その瞬間を見逃さず、俺はポケットのカッターナイフでそれを切った。


プシュ~~。


途端にロボの動きが止まった。



「ふぅーー。」


俺は安全を確認すると,地面に倒れ込んだ。



・・いや,これで終わりじゃない。


・・協会の連中が来る前に、退散しないと。


俺は急いで起き上がると、持ってきた収納くんにさっきのロボットを詰めた。


「あ、、、あの!助けてもらってありがとうございます!」


その高校生は,深々と頭を下げた。


・・このおじき、見るの今日で2回目だなぁ。


「いいよ。いいよ。無事だったし問題なし。俺は帰るから,帰り道気をつけて。」


俺はそう言うと,もう一度寝たかったので、すぐに帰った。





「ただいま。」



俺はオフィスに入り,すぐにソファに寝転ぶ。


「おお。ご苦労。ゆっくり休んでくれ。」



先生はパソコンをいじりながら言う。打つ速さ的にアイデアが浮かんでいる最中なんだろうな。



俺はそう考えながら,目を瞑る。



カタカタカタカタカタカタ



パソコンの音がオフィスに鳴り響く。



方カタカタカタカタ、、、、



カタカタ。




急に音が止まる。



すると,先生が、途端に、




「修、お前の客か?」



と俺に聞いた。



俺はびっくりして、目を開け、入り口を見ると,扉が開いていて、そこにさっきの高校生が立っていた。



「はぁ?」



俺はたまらず声が漏れた。



すると,そいつは、



「大光高校1年7組、古川勇吾です!年齢は16。趣味は機械いじりです!よろしくお願いします!」


急に自己紹介を始めた。



俺は状況がうまく理解できなかった。



すると,先生が、



「おおー!君か。もうこんな時間だから,明日来るのかと思ったよ。」


と言い、そいつを中に向かい入れた。



「なぁ。先生。どういうことだ?」



俺はたまらず先生に聞く。



「あぁ。修と私だけじゃ回らなくてね,ここは、戦闘兵器保護協会としているが,表向きは,ただの機械修理会社だ。
修は日中いないだろう。だから、他にも人手が欲しいと思ったんだよ。」



そう言って先生はポスターを見せる。



そこには,機械修理のアルバイト!
機械に詳しい人,好きな人求む!
年齢、性別は不問。


と書いてあった。



・・確かに俺と先生だけじゃこの会社は回っていかないというのはわかってたけど、、


「てことは,こいつが明日からここのアルバイトってことかぁ?」


「あぁ。そういうことだ。」


先生はそう言って笑う。



「あの!すみません!僕、住むところがなくて,ここに住んでも良いと聞いたのですが、、、」


そいつは先生に問いかける。


「うん。賃貸住居ありってポスターに書いてるしね。このビルは,2階から上に住めるように私が自費で購入している。好きな部屋に住んでくれ。」


「ありがとうございます!」



変わらず大きい声で,荷物を置いてきますと上の階に行った。



「なぁなぁ大丈夫なのか?」



俺はそいつが上に行ったのを確認してから、先生に言う。



「アルバイトを雇うっていうのは賛成だ。このビルに住むっていうのは,俺もお世話になってる身だから、何も言えない。でも、危ないんじゃないか。さっきロボットに殺されかけてたの、あいつだぞ。」



「そ,そうなのか。じゃあ、あの子はお前が何者なのか知っているのか。」



先生は、目を丸くして言う。



「あぁ。知っているぜ。間違いなく。」



どっちかっていうと、俺が名乗った気もするけど、まぁいいだろ。



「じゃああの子にはこの仕事の危険性を話した方がいいな。」


先生はメガネを外して椅子に座る。



すると,ちょうど、古川勇吾、、さっきのやつが降りてきた。



「なぁ。ちょっと聞いて欲しい。」


俺が呼びかけると,すぐに勇吾は,近くに来て座った。

「ここは機械修理会社。仕事は主に客の機械の修理。家電、電子機器、時計。出張もある。これがお前に手伝ってもらう仕事。」


勇吾は静かに聞いている。


・・あれ?邪魔してくると思ったんだが、、、まぁ成長したってことにしとこう。



「ここからが重要!お前もたぶん薄々気づいてるだろうが、ここは,裏向きは,戦闘兵器保護協会。この世界を襲っている戦闘ロボットを保護しようって団体だ。保護方法は,お前も見た通り。
一度壊して,直す。それだけだ。」



「直す作業は大丈夫だが、壊すことに危険性がついてくる。だから,危ないってことは先に行っておく。さっきも死にかけただろ。やめたかったら先に言え。」


勇吾を見る,すると、少しばかり,興奮していた。


「止めるなんて!もったいないですよ!そんなの!住居もらって!好きなことできて!給料ももらえる!最高ですよ!」



なんだこいつ、話聞いてたか?



「お前死ぬかもしれないんだぞ。殺されるんだぞ戦闘ロボットに。」



「僕、一度機械に殺されてみたかったんです!」



その言葉と生き生きとした顔を見て、



・・こいつ、やべー奴だ,



と俺は確信した。



「僕、今日の午前、あなたに会った時、あなたの修理技術を見て,只者じゃないと思ったんです。あなたは凄い人です!」


そいつはまた興奮している。


「ほら,今って機械系が好きだって言いづらいじゃないですか、、、。ロボットに家族を殺された人もいる。日常を壊された人もいる。僕のお母さんのお父さんも,戦争で戦闘ロボットに殺されてて,。




だから,今日,あなたに会った時,機械のこといっぱい喋っちゃて,変な奴だって,また白い目で見られると思ったんですけど,何も言われなくて,」



そいつは俯いて話す。


声は段々と小さくなっていった。


「作業してたのに、邪魔しちゃったなと申し訳なさも感じたんですけど,それ以上に、機械が好きなありのままの自分を初めて全部さらけ出せた気がして、嬉しかったんです。生きてるって感じました。」



そいつは顔を上げて、またいつもの大きい声で言った。



「だから、僕は,好きなことをしたい。この場所なら、それができると思いました!」


そいつは、まっすぐな眼で俺を見た。


そして、その瞳の中には,暗い顔をした俺が写っていた。


「本当にできるのか?」



「やります!」



「死ぬかもしれなくても?」




「はい!」




「そうか、、」


きっと何を言ってももう無駄なんだろうな。



俺は窓の外を見る。


外では,月がとても綺麗に光っていた。



「対戦闘兵器協会は,100年前の戦争で使われていた戦闘兵器の暴走を止めるために設立された。


俺も最初はそこの戦闘員だった。


俺たちは世界中を飛び回ってた。


仲のいい奴がいたんだ、、


あんまり強くないし,馬鹿なやつなんだけど,


すげー優しかったんだ。


そいつが以前、


戦闘ロボットってなんだか,可哀想じゃないって俺に言ったんだ。


俺は最初は何言ってるかわからなかった。


でも、人間に勝手に作られて,そのプログラムに従っているだけなのに,どうして,勝手に壊されるんだろうって,


勝手に作られて,勝手に憎まれて,壊される。


僕はできることなら,ロボット達も救いたいんだ。 と,



それを聞いて,俺はそんなこと考えられる余裕がないって、言ったんだ。



でもその後,そいつは別の任務で死んだ。


勇敢な最期だったと聞いた。



その知らせを聞いた時,俺は自分の本当にしたかったことに気付いたんだ。


俺は戦闘兵器を壊したいんじゃない。


大切な人々を守りたいんだ。


修理したロボットは,人を守るようにプログラムしている。


俺はこいつらと一緒に守りたいものを守る。


だから俺は,協会をやめて先生の会社に入った。」


すると,先生は温かいお茶を飲みながら懐かしむように言う。


「ここも始めはただの修理会社だったけどねぇ。


その話を聞いて,僕も協力することにしたんだよ。


表向きはただの平会社だけど、うらでは世界を守れる可能性がある。


なんだかワクワクするだろ。」



「俺たちは,人々もロボットも救う。
こんな夢物語の理想論を達成するためには,人手はいくらあっても足りない。


だから、、



お前も一緒に手伝ってくれると助かる。」



俺はそう言って手を伸ばした。



すると,すぐに手を握ってきた。



その目は今までで、1番輝いていた。



「今まで否定され続けた俺の好きなことが,世界を守れるかもしれない、、、


絶対やります!やらせてください!」



そのあと、なんやかんやあって、勇吾は,先に寝に行った。



「お前の過去のことを聞いたのは久しぶりだよ。」


先生が眠たそうにあくびをしながら言った。



「うん。俺も久しぶりだよ。」



そう言って俺は立ち上がる。



「一時は,めんどくさくなると思ったけど、でもまぁよかったよ。人手が増えて。」


そう言うと,俺もあくびがでてきた。


・・途中で起こされたからな。 
むっちゃ眠い。


「じゃあ先生おやすみ。」



「おやすみ。」



俺は眠たい目を擦りながら、階段を上がって俺の部屋に入る。


そして,ベッドにダイブする。


・・明日からどうなるかな、あいつ仕事あんまりできなさそうに見えるんだよなぁ。

なんだか急に不安になった。


・・先生がフォローしてくれるか。最悪俺が教えれば、、


そんなことを考えているうちに、俺の意識は、真っ黒な底のない海に沈んでいった、、、

































































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