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拓海のターン2
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放課後
川辺を二人で歩く。
『キスをするなら誰もいないところじゃないと』
そんなことを佐倉が言ったもんだから授業時間全てを潰して良さそうな場所を必死でググって今ここに居る。
三月の川辺は土の匂いが水気を含んでなんとなく甘い気がする。新たに草が生い茂り、ところどころに小さな花も咲き始めているせいかもしれない。
このまま黙って歩いていると緊張感が増幅しそうで
「..桜の開花予想は今月の下旬だってこの場所検索したとき書いてあった」
思いついたことをポツリと言ってみる。
「へぇーそーなんだー俺、桜好きなんだよなー」
まだ見ぬ満開の桜を想像しているのか佐倉が嬉しそうにそう言った。
俺もずっと好きだったサクラが...
忘れもしない。高校の入学式の日。
そこには、一面ピンクに染まる春しかなかった。
日差しの柔らかさも、風の暖かさも、淡い青空も、全てが春に相応しい。
春以外の存在が許されていないかのような、そんな美しい日だった。
一際強く吹いた風が、精一杯空へと伸ばされた枝と、ピンク色の髪を揺らす。
舞い散る桜の花弁と
「...ピンクの天使」
誰に聞かせるでもない言葉だった。
春だけがあるこの光景に、彼の美しい姿は相応しかった。
周囲の音が遠ざかる。宇宙に放り出されたかのような静寂の中で、彼の瞬きの音が聞こえたような気がした。
後に分かったピンクの天使の名前は佐倉陸。
それは俺の一目惚れだった。
それは俺の初恋だった。
その日からずっと俺は佐倉が好きだった...
過去に思いを馳せながら現在に視線を戻す。
目の前の桜の木は今はまだ黒っぽい枝が空に向かって伸びてるだけ。
でもよーく目を凝らして見れば、枝についた蕾の先がやや淡く色を変えつつある。
真冬と変わらずただ沈黙してるようでいて、決してそうじゃないことが分かる。
この黒っぽくごつごつとした幹の中に、薄桃色が詰まってる。
俺の心にその姿が重なる。
俺の心の中には秘めた思いがたくさん詰まってる。
そんなことを思いながら連なる桜の木を眺め再びゆっくりすぎるくらい緩やかな歩調で佐倉と川沿いを歩く。
時折蹴飛ばした小石が小さな音を立てる。
川のかすかな水音。烏の声。そのほかは不思議なくらい静かで行き交う人は誰も居なくて。怖いくらいの二人ぼっち。
世界に佐倉と俺だけ
このまま一生の思い出に残る..
ざぁぁ……と風が木々を鳴らして通り過ぎ、はらりはらりと枯れた葉っぱが舞い堕ちて
「まさか...」
風に紛れて唐突に呟いた佐倉の言葉。
それに気づいて俺は歩みを止め
俺のスクールバッグの紐を握りしめる佐倉も必然的に歩みを止める。
「..まさかなに?」
何か言いたげな佐倉に視線を落とす。
「まさかさ、俺が堕天使になるなんて思ってなかった」
「堕天使?」
「俺、言ったろ、拓海が口説いて落ちない奴はいないって」
「あ、うん言ってたね」
「その通りになって、俺がお前に堕ちたじゃん」
「...佐倉が俺に、それってつまり」
「ストップ、ストップ!」
俺の言葉を遮って佐倉は握り締めていたスクールバッグの紐から手を離し俺の口元へと両手を伸ばす。
「それ以上言うな、これが俺なりの精一杯のお前の告白に対する返事だから、だまって受け取れ!」
俺の視界いっぱいに顔まで桜色にした天使が映る。
そんな嬉しい言葉が貰えるなんて。思ってもみなかった。
でも俺だって
佐倉に言いたい。今まで言えなかった秘めた思いがいっぱいいっぱいある。
だから俺の口元にある佐倉の両手を優しく摘みとって
「俺は、毎日、毎秒、佐倉に堕ちてる」
咄嗟に出た言葉はえらくカッコつけたセリフみたいになってしまった。
「拓海、ナルシスト過ぎ」
そういって思わず苦笑いする佐倉に釣られて俺も失笑した。
少し春を感じる優しい風がそんな俺達の頬を撫でる
桜の芽吹く前の
この日
この時
この瞬間
「ここなら」
佐倉の合図のようなその言葉と、視線を切り替える、まばたきと、香る微かな春の匂いと。
触れ合う前のこんなあれこれが、初恋の甘酸っぱさを連れて俺の心をくすぐる。
返事の代わりに俺は佐倉の両手を優しく掴んだまま身体をそっと傾け寄せる。
照れながら
ハニカミながら
佐倉が目を閉じる。
近づけた俺の顔。
気配を瞼の裏で感じているのか佐倉の長い睫毛が微かに震えてる。
彼に一目惚れして二年
思いが通じて
今日
好きという気持ちを込めて
俺は佐倉の唇に自分の唇を重ねた。
川辺を二人で歩く。
『キスをするなら誰もいないところじゃないと』
そんなことを佐倉が言ったもんだから授業時間全てを潰して良さそうな場所を必死でググって今ここに居る。
三月の川辺は土の匂いが水気を含んでなんとなく甘い気がする。新たに草が生い茂り、ところどころに小さな花も咲き始めているせいかもしれない。
このまま黙って歩いていると緊張感が増幅しそうで
「..桜の開花予想は今月の下旬だってこの場所検索したとき書いてあった」
思いついたことをポツリと言ってみる。
「へぇーそーなんだー俺、桜好きなんだよなー」
まだ見ぬ満開の桜を想像しているのか佐倉が嬉しそうにそう言った。
俺もずっと好きだったサクラが...
忘れもしない。高校の入学式の日。
そこには、一面ピンクに染まる春しかなかった。
日差しの柔らかさも、風の暖かさも、淡い青空も、全てが春に相応しい。
春以外の存在が許されていないかのような、そんな美しい日だった。
一際強く吹いた風が、精一杯空へと伸ばされた枝と、ピンク色の髪を揺らす。
舞い散る桜の花弁と
「...ピンクの天使」
誰に聞かせるでもない言葉だった。
春だけがあるこの光景に、彼の美しい姿は相応しかった。
周囲の音が遠ざかる。宇宙に放り出されたかのような静寂の中で、彼の瞬きの音が聞こえたような気がした。
後に分かったピンクの天使の名前は佐倉陸。
それは俺の一目惚れだった。
それは俺の初恋だった。
その日からずっと俺は佐倉が好きだった...
過去に思いを馳せながら現在に視線を戻す。
目の前の桜の木は今はまだ黒っぽい枝が空に向かって伸びてるだけ。
でもよーく目を凝らして見れば、枝についた蕾の先がやや淡く色を変えつつある。
真冬と変わらずただ沈黙してるようでいて、決してそうじゃないことが分かる。
この黒っぽくごつごつとした幹の中に、薄桃色が詰まってる。
俺の心にその姿が重なる。
俺の心の中には秘めた思いがたくさん詰まってる。
そんなことを思いながら連なる桜の木を眺め再びゆっくりすぎるくらい緩やかな歩調で佐倉と川沿いを歩く。
時折蹴飛ばした小石が小さな音を立てる。
川のかすかな水音。烏の声。そのほかは不思議なくらい静かで行き交う人は誰も居なくて。怖いくらいの二人ぼっち。
世界に佐倉と俺だけ
このまま一生の思い出に残る..
ざぁぁ……と風が木々を鳴らして通り過ぎ、はらりはらりと枯れた葉っぱが舞い堕ちて
「まさか...」
風に紛れて唐突に呟いた佐倉の言葉。
それに気づいて俺は歩みを止め
俺のスクールバッグの紐を握りしめる佐倉も必然的に歩みを止める。
「..まさかなに?」
何か言いたげな佐倉に視線を落とす。
「まさかさ、俺が堕天使になるなんて思ってなかった」
「堕天使?」
「俺、言ったろ、拓海が口説いて落ちない奴はいないって」
「あ、うん言ってたね」
「その通りになって、俺がお前に堕ちたじゃん」
「...佐倉が俺に、それってつまり」
「ストップ、ストップ!」
俺の言葉を遮って佐倉は握り締めていたスクールバッグの紐から手を離し俺の口元へと両手を伸ばす。
「それ以上言うな、これが俺なりの精一杯のお前の告白に対する返事だから、だまって受け取れ!」
俺の視界いっぱいに顔まで桜色にした天使が映る。
そんな嬉しい言葉が貰えるなんて。思ってもみなかった。
でも俺だって
佐倉に言いたい。今まで言えなかった秘めた思いがいっぱいいっぱいある。
だから俺の口元にある佐倉の両手を優しく摘みとって
「俺は、毎日、毎秒、佐倉に堕ちてる」
咄嗟に出た言葉はえらくカッコつけたセリフみたいになってしまった。
「拓海、ナルシスト過ぎ」
そういって思わず苦笑いする佐倉に釣られて俺も失笑した。
少し春を感じる優しい風がそんな俺達の頬を撫でる
桜の芽吹く前の
この日
この時
この瞬間
「ここなら」
佐倉の合図のようなその言葉と、視線を切り替える、まばたきと、香る微かな春の匂いと。
触れ合う前のこんなあれこれが、初恋の甘酸っぱさを連れて俺の心をくすぐる。
返事の代わりに俺は佐倉の両手を優しく掴んだまま身体をそっと傾け寄せる。
照れながら
ハニカミながら
佐倉が目を閉じる。
近づけた俺の顔。
気配を瞼の裏で感じているのか佐倉の長い睫毛が微かに震えてる。
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