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救済の旅
20.定期報告
しおりを挟む【プルルル……プルルル……プルルル……プルルル……ただいま戦闘中です。お掛け直し頂くか、発信音の後にメッセージをどうぞ……。プツッ】
黄金の受話器が、神々しい光を放って豊の目の前に顕現するが、事態はそれどころではなかった。
「あぁぁぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁ!」
陽の光もまばらな森の深くから、草木をかき分け大木をなぎ倒し、暴力の化身ともいえる剛毛の猛獣が二人目掛けて襲い掛かる。
その怒りは何処から湧き出ているのか、際限はないのか、新たな木々が繊維を引きちぎられ、バキバキと悲鳴を鳴らす度、豊たちの背筋に冷たいものが走る。
【グレイトワグマ】―――――――
ワグマと呼ばれる熊型モンスターの上位種
体高は二メートル程あり、腕力耐久力共に優れ
その攻撃は一撃で木々を薙ぎ倒す。
前足が長い為下り坂は動きが遅い。
――――――――――――――――
深緑の森で、グレイトワグマに追い回されている二人は
ただ闇雲に走り回っている訳ではなかった。
「ごしゅじんさま! 今です!」
抱えたロシィの合図で大きくジャンプ。豊の巨体に似合わぬ跳躍力が、グレイトワグマを一瞬だが怯ませる。足を踏み入れたその先には、深さ三メートルの落とし穴が用意してあった。
「グワァァァァ!!」
見事落とし穴にはまったグレイトワグマに追撃の罠。
豊が結んだロープを解くと、木の枝に滑車で吊るしておいた超巨大スパイクボールが一直線に襲い掛かる。重力とスパイクにより、グレイトワグマは絶命した。
「思ったよりも、罠が強力だったかもしれないな……」
それもそのはず、落とし穴の下にも無数のスパイクが敷き詰められており
グレイトワグマは、上と下から串刺しにされたのだ。
「ドラミングの威嚇って相手に我を失わせるくらい怒らせるの……? こわっ……」
グレイトワグマを誘導するために【ドラミング】で威嚇を行った結果、相手は想像を遥かに超えて怒りを露わにした。そのおかげか、即席の罠でも十分な効果が認められたのである。
「三メートルは、さすがにほりすぎでしたかね?」
「こりゃ持ち上げるのに苦労しそうだなぁ……」
豊はまず、落とした巨大スパイクを回収。ロシィに指示を出し、
スパイクトラップの解体。
その間、第四の術【時を駆ける創造】で周りの素材から頑丈な柱を作り、打ち立て
ブランコの主軸の様な形の装置を作る。これにあらかじめ用意しておいた定滑車と動滑車を複数組み合わせた特製滑車をつける。この複雑な機構のおかげで重量を分散し、少ない力でグレイトワグマの巨体を持ち上げるのだ。
ロープを用いてロシィをグレイトワグマの所まで下ろし、
目標を念入りに縛り上げ、先程の装置で吊り上げる。
吊り上げた後、ロープを木に結び付け、血抜きをしながら落とし穴を埋める。
あとは、荷車に目標を下ろして装置を解体。第四の術を用いて柱を材料に戻し
一トンオーバーの獲物を持ち帰った。
近くの町の冒険者組合に持ち込み、解体と売却。討伐依頼達成の手続きを済ませて
一旦宿へと向かう。町一番の風呂付き高級宿で身体を洗い、部屋で一息つく二人。
「飯にしようロシィ。今日はエビフライとチキン南蛮のタルタルソース丼にしよう、あとコーラな」
「やりました! やりましたぞ! ごしゅじんさま!」
ロシィは長い旅で言葉を憶えたが豊の影響で、たまにオタ口調が出る様になった
一心不乱に本日の丼を味わう二人。
【プルルル……プルルル……ガチャ、あっ、女神様だ】
黄金の受話器を手に取る。
『さっきは戦闘中にゴメンね~。私もユタカ青年を常に見ていられる訳じゃなくてさぁ~あっ、食べてて大丈夫だよ。コレ、念話だし』
「定期報告ですかな? 女神様」
『そうそう、ついさっきね、人類幸福度が五パーセントになったの!』
「それはおめでとうございます。女神様」
『センキューセンキュー! 今回は能力アンロックされたわよ! 後で能力を確認しておいてね! きっと役に立つわよ!』
「御意」
『今回はロシィちゃんの分も能力アンロックされたみたいなんだけど、やっぱり私の加護の繋がりなのかしらね~。使い方はユタカ青年に全て任せるわ!』
「あ、女神様ひとつお願いが。今後、僕の偽物が出てきた時の為に、対策としてパッと見で誰もがわかる、証みたいなのが欲しいのですが、何か案はありませんか?」
『ん~、私ってばウッカリ、自分の神としての痕跡を一切残さなかったから……最初に渡した証は誰も知らないだろうし、謂れの能力も無いし……あ、でもアレよ、ユタカの【過剰なる糧】アレはこの世界の概念の外からきた体現魔術だから、唯一無二の証明になるわ。かの有名なイエスもパンとぶどう酒の奇跡を持ち合わせていたし!』
「それだと僕いつか磔にされるんじゃ……」
『大丈夫よぉ~! ユタカ青年の手腕で、大きな後ろ盾を作れば最終的に力で全部解決よ! 人心掌握術はお手の物でしょ?』
「雑過ぎる……」
『アンタの世界の歴史書ちょっと読んだけど、理不尽は力でなんとかするしかないわ、巧く立ち回れないものは食い物にされる。コレが世界のルールだもの』
「みんなが幸せに暮らせたらいいのに……」
『ホント、そのとおりね……じゃ! 私仕事に戻るから! またね!』
「はい、お疲れ様でーす」
【ガチャ、ツーツー……】
「神託ですか? ごしゅじんさま」
「あぁ、フォルトゥナ様はいつも唐突なんだ。困っちゃうよ」
本日の丼を食べ終えた後、ロシィと一緒に能力値を確認をする。
豊はそこそこ成長していたし、ロシィはレベル四となりスキルが開花していた。
戦闘スキル初心
トラップ作成
マジカルバックパック
これらに加えて【僅かなフォルトゥナ神の加護】が備わっていた。
「やったなロシィ! マジカルバックパックってことは、名前からしてアイテムをたくさん持てる系統の技能だぞ! 旅が楽になる!」
「やりました! かみさまのかごもあります!」
早速、スキルの詳細をカードで確認する。
【マジカルバックパック】――――
背負っているバックパックに約10倍の荷物が入る様になり
総重量は1/100になる。旅をした距離により熟練度上昇し
容量が増えて軽くなる。
――――――――――――――――
「コレで討伐依頼が楽になるな!」
【ロシィはマジカルバックパックを選択しスキルを習得した】
「よ~し! 今から新しいバックパック買いに行くぞ!」
「はい! ごしゅじんさま!」
町の細工屋へと向かい、新しいバックパックを選ぶついでに
装備の一新を行う。豊の靴と鎧も長旅ですっかりくたびれていた。
「店主、革の鎧と靴を。それと、この子に合うバックパックを見せてくれ」
「ハイ、どうもいらっしゃいませ。ご予算はいかほどに致しましょう」
「鎧と靴合わせてギルダム銀貨三十枚以内、バックパックは五枚以内で」
かなりの額を掲示した豊に対し、店主の対応が二段階ほど上がった。
「それでしたら、こちらのハイリザードの皮と鱗から作った鎧と、ボアファンゴ革製ブーツなど如何でしょうか?軽くて長持ち、防水加工済みです。セットでギルダム銀貨二十四枚となります」
「ん~……ナイフベルトも付けてくれない?」
「そうですね……バックパックもご購入頂けましたらお応えできます」
「わかった。ロシィ、好きなのを選びな」
店主の案内で、バックパックの棚に行くロシィ
数多くある鞄の中で彼女の目を引いた品があった。
「これはバフロウ革を、持ち手と底に使用し、ラビィの毛皮と厚手の綿で作った作品【ラビィバック】ですね。このラビィのアタッチメントをちょっと押すと、パカっと蓋が開く作りなんですよ。画期的でしょう? 丁度ギルダム銀貨で五枚になります」
「へぇ、面白いなぁ~。ロシィ、コレにするか?」
「これ、気に入りました! とっても可愛いです!」
「じゃあさっきのと合わせてお願いします」
「お買い上げありがとうございます、よろしければ今装備していらっしゃる鎧と靴を買い取りさせていただきますが如何致しますか?」
「じゃあ買い取りで」
「かしこまりました」
結果買い取り額を差し引いて、ギルダム銀貨二十七枚の取引となった。
店主は笑顔で二人を見送った。
「ごしゅじんさまありがとうございます! コレでわたしは、もっとお役立ちできます!」
「期待しとるぜぇ~ロシィ~!」
「は~い!」
二人の両手はがっしりと組まれ。そのまま宿屋に帰り食事を楽しんだ。
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