一生のお願い

ゐづも

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消えたかったけど

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そろそろ大丈夫そうだね?
続きを話そうか。

俺は泣き止んだ後、自分勝手な行動のせいで君に迷惑をかけ、立場逆転してしまった事を理解した。そうしてまた、「ごめんなさい」と繰り返した。君はそれを静かに聞いていたが、少しした時口を開いた。
「…ありがとう。」
ただ一言だけ。それだけを言った。小さな小さな声で。俺は訳が分からなかった。だって考えてもみなよ、俺が自殺の邪魔をして挙句泣きじゃくって君を困らせた。迷惑だと罵声を浴びせられる事はあっても感謝される事なんて、無いだろう。そんな考えが見て取れたのか君は今までで一番優しい顔をして、俺に話してくれた。

「君にとって僕ってそんなに大切だったのだね?僕は…もう何回もバイトの面接をして何回も落ちているんだ。恥ずかしい話だね。そうして、それを続けているうちに僕は本当にいらない人間なのだろうと、思ってしまってね。どうにも、首吊りは怖くて出来なかったのだよ。でも、電車なら一瞬なのだから…そう考えて何度も飛び込もうとしたのだよ。何本も見送った。君が止めた時、あの時に行けそうな気がしたのだよ。それを…止められて…最初は…君を殺したくなるくらい恨んだよ、正直ね。でも、君のとめた理由を聞いていたら何だか嬉しくなってしまってね。君にとって僕はそれ程大切な存在なのだろう?君に必要とされた…僕……。物凄く、嬉しいんだよ今は。だから…ありがとう。」

俺は恥ずかしさと、生きていてくれた嬉しさで赤面し、また泣いた。あの時、このままずっと時が止まってしまえば良いのにと思ったよ。この胸が暖かくなる感じや安心した感じが心地よくてね。気が付くと君もまた、俺と同じように泣いてたね。お互い、心の底から泣けて、「悲しい」「良かった」「嬉しい」を出せたんだ。二人で気が済むまで泣き続けた。

その後は泣き疲れて、食欲も湧いてきたんだ。頼んでいたポテトをもう一度、頼みそれを二人で分け合って食べた。俺にとっては最高の時間だったよ。…その感じだと君も同じみたいだね?

ファミレスから出て、俺達はハメを外して遊びまくった。ゲーセンでプリクラとやらも、撮ったよね?驚くくらい目が大きくなって別人だったな。実はあの時のプリクラ、まだしっかり残してあるんだ。ほら、ね?
沢山甘いものを食べて、そうしてお揃いの服まで買った。明日はこれを着ていこう、と約束をしてその日は別れたね。

次の日、泣き腫らした目をした二人の男が同じ学校に同じ服で居た。俺達だ。周りは不思議そうにしてたけど、楽しかったな。
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