上 下
15 / 34
初期ダンジョン

15

しおりを挟む
恥じらいとかはないらしい、、。
まぁ、守護者とは言え魔物だし。

アカーシャの持っていた装備品を魔力を消費して生成し与えると黙々と着替えを終える。

最低値の能力だった守護者はアカーシャの能力をそのまま引き継いでいる。
魔物は一般的に人間やエルフなどよりも身体能力が高い傾向にある。
その分、知能が低いのだけれど。

守護者もアカーシャの能力を引き継いだが身体能力はアカーシャのそれより向上している。
コアの能力で能力値を数値化できればいい楽なのだが、、そういった機能はないのであくまで感覚的に判断される部分だ。

また、属性については魔物らしく変化した。
元のデータと比較すると以下の通りだ。

種族:ハイエルフ→なし
年齢:483才→0才(人の年齢に置き換えると15才の肉体年齢)
名前:アカーシャ・ノウン・エルマ→守護者(名無し)
身長:162cm→156cm
体重:54kg→50kg
属性:光・月・水・氷・精霊→ 闇・月・土・火
魔法習熟度:マスタリー→ジェネラル

年齢は単純に守護者の年齢が0才だからだろう。肉体年齢が若返ったのは、コアである僕自身も生まれたてのひよこなので、そこに引きずられた結果だ。
身長も同様に低くなっているが、体重の変化はあまりない。
見た目の印象は華奢だが、、これは筋量の密度が単純に高くなったと考えられる。

また、属性はダンジョンらしく光が闇へ、また土関連の操作ばかりしたせいだろうか。水と氷が土と火へと変化している。

魔法習熟度はマスタリーからジェネラルに変化している。
能力をコピーしたとはいえ、経験が0なのだから当然の結果かもしれない。
ジェネラルレベルは魔導士と名乗れる一般的なレベル、平均的な習熟度である。
0からスタートしているのに平均的に使えるというだけでちょっとしたチートだ。

あと気になるのは、、、”名無し”だろう。

「名前かぁ、、。」

そうつぶやくと守護者は分かりやすく期待の眼差しを僕へ向け、、すぐに無表情へ切り替える。
その反応は意外だった。守護者にも人格のようなものはあると想像していたけど、無機質なものだと思っていたのだ。

話せるようになったし、、僕は一人で引きこもれる程度には人恋しさなど感じない性格立ち自認している。
それでも、、ちゃんとコミュニケーションがとれるんだとしたら?
そう考えると少し顔がにやけてしまう。

ん?

守護者はそんな僕をみて顔を赤くしうつむく。。
先ほどの反応をみてニヤニヤしてる性格の悪い子とでも思われたのだろうか。

「いや、違うんだ。これからは話ができるし、、守護者の君に感情らしきものがあることがわかって少し嬉しかったんだよ。」

僕は素直に白状する。
言葉にしなくても伝わる、なんて事はコアと守護者の関係であっても成り立たない事は今実証された。
伝えるべきは伝えるべきなのだ。変に格好つけても良い事はない。

それをきいた守護者はおずおずと、、言葉を発する

「造物主様。ハイエルフの能力を得た際に記憶を継承いたしました。その過程で感情を獲得した、、と考えられます。」

「なるほどね、、。感情の獲得もそうだけど、記憶まで継承できたのはいいね。周辺地理や探索者の事もわかる?」

「は、はい!多くの知識を得る事ができましたので、外部の情報についてはご期待に沿えるかと存じます。」

「それはいい。時間はある事だし、外の事を教えて欲しい。頼りにしているよ。」

「き恐縮でございます。造物主様の、ご、ご期待に応えられるよう精一杯頑張りまりゅ、、、す。」

かんだ!今、かんだよね?僕はあまりにも嬉しそうに、、ニヤニヤしていたのだろう。

「うぅ、、」

無機質だった人形から、こんなにも表情豊かになるとは!

「あまり畏まった話方はしないでいい。僕は造物主かもしれないけど、コアだけで生存はできないし、守護者がいてこそのコアなんだから。君は僕を最優先にしてくれれば、それだけでいい。」

「はい!当然、造物主様を最優先に尽くします!」

「尽くすって、、まぁ、そうなんだけど。もっと砕けた話方をしてくれた方が気兼ねしなくていい。そうだな、、、君は最初の守護者で特別だ。今後、新たな守護者や魔物が僕に付き従うことになる。彼らの前ではたてて欲しいけど二人の時は対等に話してほしい、、かな。」

「そんな、、特別だなんて、、ありがとうございます。わかりました。造物主様をお守りします。」

「そうだね、期待してるよ。後は、、やはり呼び名は欲しいね。」

その一言でビクッと肩を震わせ緩みそうになる頬を必死に引き締める彼女はそれでも期待の眼差しを向ける。

んん、、、期待は裏切れない。
名付けか。
語感で選んでも良いだろうが、、やはり造物主としての思いというか、守護者への役割に見合う名前を付けてやりたい。

ダンジョンという世界をこれから二人で築き上げる、そう考えると僕らは創造主のようなものだ。
古の創造主から名前を拝借するのもいいけど、、でもなぁ、、やつら神々なんだよな。
この世界のダンジョンは富と名声を与え、同時にそれ以上の魂を刈り取るのが宿命だ。
神々なんて気分次第で造物を壊すわ殺すわ、それでいて絶対的に崇めろなんていう超絶メンヘラだ。(私見)
誑かしはしても殺しはしない悪魔の方がよっぽど平和的だっていうね。

閑話休題

名付けかぁ、、、ん~~~。

期待を胸に、、もじもじしながら待つ守護者さん。
僕はこの子にどうあって欲しいのだろう?

僕を守護するべき存在なのだからもちろん最強であって欲しい。
ただ、、最後までくるような熟練した探索者にたった一人の守護者が守り切れるものだろうか?
多くの、そう考えると暴力的な強さを求めても限界はあるし、それはつまり負ける可能性はどう育成したとしても拭えないという事だ。
今後、コアレベルが上がって守護者が増えればもちろん前線に出てもらうのだけど、最初の守護者である彼女には常に傍に控えて欲しいのが本音だ。
なら、辿を目指すほかない。
その意味で、彼女が戦う状況になった時点で負けなのだ。

対等な立場で僕を支える存在、他の守護者とは違う”自分自身”を持ち、その上で僕を支える存在。
それが僕が彼女に求める理想なのかもしれない。

自分自身か、、見た目は精霊に近いハイエルフの彼女には、精霊にちなんだ名前が似合うかもしれない。
エインセル、自分自身を意味する妖精。

でもそれだと種族名みたいなもんだしな。

エイン、、、なんか呼びづらい。

敵に対しては残酷であれという意味で、絶対悪であるアンラ・マンユは?

アンラ、、マンユ、、マユ?でもなんか違う気がする。

ブツブツと考えを口にしながら考えは堂々巡りを繰り返す。答えのない禅問答かよ。

名付けのセンスなんてないよ。。

名前を付けられる本人を置き去りにしてもしょうがない。かといって自分で決めさせる訳でにはいかないからな。
守護者さんをおもむろに抱き寄せると頬を包むように手を当てる。

美しい見た目とは裏腹に、、、血のような赤黒い瞳。
きっとこの子はどのような凄惨をまき散らしても、場違いに見るものを魅了するのだろう。

幻想的な闇夜に浮かぶ月のように、少し青みがかった銀髪、人が神話や物語を作りたくなる月の魅力がわかる。
その月の裏側は死の世界。生命の存在を許さない闇が広がる、、ふと口をつく。

「・・・ツクヨミ」

その瞬間、守護者の存在感が大きく増したように感じ、、同時にその肉体へ魔力が粒子のシャワーとなって降り注ぐ。

「ツクヨミ、、素敵な名前です。」

・・・・・・・

・・・えっ?

「ツクヨミ、、うん、君はツクヨミだ。」

結局神話の、、月の神の名前を付けてしまったようだ。

守護者さん改め、ツクヨミのステータスを確認する。



種族:エインセル・アンラ・マンユ
年齢:0才(人の年齢に置き換えると15才の肉体年齢)
名前:ツクヨミ
身長:162cm→156cm
体重:54kg→50kg
属性:光・月・水・氷・精霊→ 闇・月・土・火
魔法習熟度:マスタリー→ジェネラル


名付けは成功、、、んん???

「種族が、、、バグってる?」

「バグってるってなんですか!?」

「いや、こんな種族いないだろ?」

「はい、いません。でも名付けられた時に、、造物主様からこうあれという想いが伝わりました。その想いに応えるように創造されたのだと思います。」

「創造って、、、いくらなんでもそんな簡単に種族なんてできるものか?」

「私の知識によると、、過去、ダンジョンから新種の種族が発見されたことはあるみたいです。1度だけですが、、、。」

「前例はあるのか。なら、、まぁ、いいか。身体に変化はない?」

「そうですねぇ、、」

そういうと自分の身体をあちこち触りながら確認する。

「特に変化はありませんね。ただ、潜在能力というか、、覚醒する事で何か新しい力を得られるような予感がします。」

「種族が影響しているのかな?まぁ、、悪い結果にはならないと思うし、様子見だなぁ」

「悪いなんて、、良い結果しかないですよ。創造主様のなされたことですから。」

そういうとほのかに頬を染めてチラッと横目に、、、あざとい。あざといが、、かわいいので許す。

「あの、、私からもいいですか?」

「なんだい?」

「創造主様には、、その、、お名前はないのでしょうか?」

「あー、、そういえば。今まで必要性を感じなかったから。名前ってコアの名前ってことになるのかな?特になくても困らないけど、いちいち創造主様って呼ばれるのもむずがゆい、、な。かたっ苦しいというか、まぁ好きに呼んでくれていいぞ」

「そうゆう事では、、、」小さく不満そうにつぶやく。

「とはいえ、さすがにツクヨミに名付けされるのも違うきがするし、僕は僕自身の名前なんてどうでもいいんだよね。だから、創造主様は仰々しいからもうちょっとフラットな感じで、、適当に読んでくれたらいいよ」

むちゃぶりもいいところである。ちょっとしたモラハラというかなんというか。
造物であるツクヨミにとって主人の名づけなど考えられない、不敬以外のなにものでもないだろう。
でも本当に、、ツクヨミの名前を考えるのだってめんど、、、困難を極めたのだ。自分の名前なんかどうでもいい。

「そ、、それでは、、、恐れながらマスター、もしくはご主人様ではいかがでしょうか?」

「そうだね。マスターって響きは部下から呼ばれたいかも。」

「では、マスターとお呼びいたします。」と一礼するツクヨミ。

「いや、ダメだ。」

「えっ?」否定されると思っていなかったツクヨミは悪い方向に深読みしたのか目に見えて落ち込んだ表情に変わる。

「いや、部下っていうのは、、、なんというか前線で探索者を撃退する役割という意味だよ。ツクヨミは僕の側仕え
として、唯一、傍らに居て良い存在だろ。だから部下とは違うかな、と。だから、ツクヨミが僕を呼ぶ時はご主人様の方がいいな。」

完全に趣味の領域だ。美しくかわいらしい側仕えなんだから、マスターって響きよりご主人様の方がいい。なんならご主人様♡でもいい。冗談だ。

「そんな、えっと、、、はい。。ご、、ご主人様。」

ツクヨミは本当にダンジョンの守護者だろうか?という疑いたくなるほどの笑顔で僕をそう呼んだ。
しおりを挟む

処理中です...