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初期ダンジョン
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「どう見る?」
「そうですね。平民にしては衣服の質が悪いですし、、スラムの人間かもしれませんね。」
「2人、、か。ここで2人を捕らえたら誰か探しにくるかな?」
「んー、、さすがに判断出来かねます。」
「だよなぁ」
見るからにチンピラ風の2人だが、会話の流れから先頭の男は部下だろうか?ダンジョンを疑ってるというよりは、、外へ繋がる通路かどうかを疑っている訳か。
都市攻略するなら、こんな絶好の抜道があれば容易に攻められるから他国の工作とでも思っているのか?だとしたら、スラムの人間というのがよくわからない。
しばらく観察していると1人はめんどくさがってから先に帰るようだ。こいつは見逃すべきか、、捉えるべきか。
「いかがいたしますか?」
「悩ましい、、が、見逃そう。叫び声は反響して相当遠くまで響きそうだし完全に外へ出たらもう1人を捉えよう。」
「かしこまりました。」
さて、、完全に素人っぽいし、本来は簡単に捕らえられるだろう。
戻ったチンピラBが外へ脱出して5分程経過している。
そろそろいいだろう。
チンピラAの前方に落とし穴に見立てた通路を構築、塞ぐように薄い土壁を作成する。頭で考えただけで構造が変わるのだから、ダンジョンはチートだ。
何も疑う事なくチンピラAが土壁の上を通る、その瞬間土壁を消去。
「あひっ」
あっさり通路に落ちていくチンピラA。
死んでも困るので深さはないが急な事だ着地もうまく出来ずにうずくまって悶えている。足の骨が折れたかな?
「ツクヨミ、後は頼んだよ。」
「仰せのままに。」
ツクヨミの返事をまって転送すると、次の瞬間にはチンピラAを、見下ろす位置に移動している。
思ったんだけど、ツクヨミを転送し攻撃、すぐ転送して離脱を繰り返すだけで大抵の探索者は全滅するのでは??
SFなんかワープするの見る度に思って飛んだよね。敵の艦隊に爆発物でもワープさせればいいじゃんって。。
なんてバカな事を考えているとツクヨミは魔法でチンピラAを眠らしたようだ。
落とし穴の通路を再び塞ぐと閉じ込めた空間をいつもの流動する土で覆い、牢屋まで誘導し、、確保完了。
洗脳前にこいつ自身の情報が欲しいが自今はあまりないと考えて良いだろう。
「どうされるのですか?」
「拷問して情報を聞き出すよ。」
ダンジョンに設置された罠や魔物は基本的に与えられた役割を自動でこなすものだ。魔物なら侵入者を攻撃するし、その手段は本能に任される事になる。
そこにコアの意志が介在すると、本来とは異なる動きで獲物を始末する事ができるようになるし、更に強力に縛ればコアの意志を憑依させることも出来る。
ちなみに、憑依したからと言って特殊能力が使えるとか今日からされる事はない。なので、コアの能力が高くなければ素人同然の動きで弱体化する事もあるので基本的にわざわざ憑依するコアはいない。
今回は夢喰いに僕が憑依する事で拷問する予定だ。
「では行ってくるよ。」
「行ってらっしゃいませ。」
立眩みのように暗転する感覚と共に見えない回路を伝って僕の意識が夢喰いに憑依する。
と同時に僕自身の肉体は消えたはずだ。本体の僕が身体を持っていたのはコアの分体として趣味で作った身体を動かしていたのだ。丸く動けない球体で生きるのは流石に味気ないというか、、、。
で、分体は意識が憑依する事で保たれているので、他に憑依すると身体が霧散し魔力に戻るという仕組み。
ちなみに憑依した魔物が殺された場合、僕の意識は強制的にコアに戻されるので心配はない。
夢喰いに憑依した僕は早速能力を発動する。
夢は自由だ。本来あり得ないような事も全て実現可能だ。本来の自分ではあり得ないような英雄の物語を体験する事もできるし、空を自由に飛び立つ事もできる。
そんな制限も際限もない夢の世界で、悪意をぶつけられるとしたら?
夢何日も過ごしたような壮大な夢を見た事はあるか?夢の世界には時間の概念さえあやふやなのだ。
チンピラA、名前はホセ。16歳の若者でスラム育ち。頭は良くないが、スラムで育っただけあり悪意に底がない事をよく知っている。
椅子に縛り付けられたホセの目の前にはおぞましい姿の怪物が立っている。手には鋸を持っており、先程なら何度も何度もホセの指や腕、足、胴体、、あらゆる場所を切断し続けている。
やめてくれ!その叫びは届かない。
切り離された脚、血が噴水のように噴き出したかと思えば肉が盛り上がり始め激痛と共に脚が生えてくる。
何度も何度も、、何のためにこんな酷い事をするんだ?!
その問いかけに答えはない。
その怪物は飽きたのか今度は別の獲物、、刃渡り30cm程の鋭い歪曲したナイフを取り出すと躊躇いなく腹を縦に切り割くと内臓が堰を切ったようにボトリと落ちる。
なんで!なんで俺は、、俺は死なないんだ!!
ホセは終わりのない拷問への答えを欲していた。
耐える理由のない苦痛、理不尽、終わりの見えない絶望。
虚な視線が怪物を捉える、、、そこには怪物はいなかった。
「、、、グレン。なんで、兄貴が??」
グレンは見た事もないような無邪気な笑顔で
「まだまだ終わりにはしねーよ。」
そう言うとまた、、、終わりもなく繰り返される拷問が続く。
兄貴が笑う。笑う、、笑う。
——ふと、冷たい土の感触に気がつく。
ここは?
見慣れぬ場所だった。土壁に覆われた部屋に鉄格子が嵌められている。
部屋の隅に小さな見た事もない花。それが、ポツンと咲いている。
なんて、可憐で、、美しいのだろう?
ホッとした瞬間、あの拷問の日々が爆発したように意識を埋め尽くす。身体が震えだす。頭がおかしくなりそうだ。
あれは、、あれが夢だったのか?現実だったのか?
自分の体を見る。
手も脚もある、、、あるが、これはいつ生えた?
度重なる拷問の強烈な記憶はホセの意識だけではなく無意識までも深く根差し、花の魔物の効力で精神は過剰反応を抑えられず夢と現実の区別などつかなくなっていた。
またいつアイツが俺を拷問しにくるのか?あれがはじまるのか?
その考えがよぎった瞬間、息が、、、鼓動が、、心臓が爆発するんじゃないかと思えるほど痛く激しく。
誰か、、誰か助けて、、、。
ホセは声を出す事もできず過呼吸に苦しむ。
霞む視界の先に気付くと人影が現れる。
「ひぃっ」
思わず短く悲鳴をあげるホセ。
「大丈夫ですよ。あなたが倒れていたので保護しました。ただ、、何者かわからないため牢に入れさせていただきましたが。」
それは美しい声だった。気遣うような、少し遠慮した声音。
改めて見ると、、そこには美しいエルフが佇んでいる。
だが、、味方、、なのか?わからない。ただただ怖い。ホセは思考を放棄し、ただただ震える。
「かなり、、酷い目にあったのですね。」
そう言うと女は牢に入ってくる。相変わらず震える身体を抱き締めるように、守るように小さくなるホセ。躊躇うように一瞬止まるが小さく微笑むとその女エルフは優しくホセの肩に触れる。
じんわりと拡がる温もりわ感じたホセは、そのあまりの優しさに慟哭するように泣き続ける。
ひとしきり泣いたホセに女エルフは問う。
「あなたの事を教えてください。保護するにしても皆を説得できないので、、大丈夫。あなたは助かったのですよ。」
あなたは助かった、その言葉はどんな魔法よりもホセを癒す言葉だった。
助かった?俺は助かった、、助かったんだ!
やった!俺は、、!!
「ただし、正直に聞かれた事に答えてください。でなければ、あなたを保護し続ける事はできむせんよ。」
「そんな、わかった!何でも聞いてくれ!なんでも答えるから、おれを見捨てないでくれ!」
「いい子ね」
ホセは女エルフの手を掴み拝むように、或いは祈るように必死に懇願する。
気付いてはいないだろう、その女エルフの侮蔑に満ちた視線に。ホセが触れた事実に最大限の不快感を込め睨みつけた事に。
こうして、追い詰められたホセは生い立ちから、スラムの現状、どのようにして生きてきたのか、何もかもを喋ったのだ。
そうする事で神の庇護を得られるとでも言うかのように。
「そうですね。平民にしては衣服の質が悪いですし、、スラムの人間かもしれませんね。」
「2人、、か。ここで2人を捕らえたら誰か探しにくるかな?」
「んー、、さすがに判断出来かねます。」
「だよなぁ」
見るからにチンピラ風の2人だが、会話の流れから先頭の男は部下だろうか?ダンジョンを疑ってるというよりは、、外へ繋がる通路かどうかを疑っている訳か。
都市攻略するなら、こんな絶好の抜道があれば容易に攻められるから他国の工作とでも思っているのか?だとしたら、スラムの人間というのがよくわからない。
しばらく観察していると1人はめんどくさがってから先に帰るようだ。こいつは見逃すべきか、、捉えるべきか。
「いかがいたしますか?」
「悩ましい、、が、見逃そう。叫び声は反響して相当遠くまで響きそうだし完全に外へ出たらもう1人を捉えよう。」
「かしこまりました。」
さて、、完全に素人っぽいし、本来は簡単に捕らえられるだろう。
戻ったチンピラBが外へ脱出して5分程経過している。
そろそろいいだろう。
チンピラAの前方に落とし穴に見立てた通路を構築、塞ぐように薄い土壁を作成する。頭で考えただけで構造が変わるのだから、ダンジョンはチートだ。
何も疑う事なくチンピラAが土壁の上を通る、その瞬間土壁を消去。
「あひっ」
あっさり通路に落ちていくチンピラA。
死んでも困るので深さはないが急な事だ着地もうまく出来ずにうずくまって悶えている。足の骨が折れたかな?
「ツクヨミ、後は頼んだよ。」
「仰せのままに。」
ツクヨミの返事をまって転送すると、次の瞬間にはチンピラAを、見下ろす位置に移動している。
思ったんだけど、ツクヨミを転送し攻撃、すぐ転送して離脱を繰り返すだけで大抵の探索者は全滅するのでは??
SFなんかワープするの見る度に思って飛んだよね。敵の艦隊に爆発物でもワープさせればいいじゃんって。。
なんてバカな事を考えているとツクヨミは魔法でチンピラAを眠らしたようだ。
落とし穴の通路を再び塞ぐと閉じ込めた空間をいつもの流動する土で覆い、牢屋まで誘導し、、確保完了。
洗脳前にこいつ自身の情報が欲しいが自今はあまりないと考えて良いだろう。
「どうされるのですか?」
「拷問して情報を聞き出すよ。」
ダンジョンに設置された罠や魔物は基本的に与えられた役割を自動でこなすものだ。魔物なら侵入者を攻撃するし、その手段は本能に任される事になる。
そこにコアの意志が介在すると、本来とは異なる動きで獲物を始末する事ができるようになるし、更に強力に縛ればコアの意志を憑依させることも出来る。
ちなみに、憑依したからと言って特殊能力が使えるとか今日からされる事はない。なので、コアの能力が高くなければ素人同然の動きで弱体化する事もあるので基本的にわざわざ憑依するコアはいない。
今回は夢喰いに僕が憑依する事で拷問する予定だ。
「では行ってくるよ。」
「行ってらっしゃいませ。」
立眩みのように暗転する感覚と共に見えない回路を伝って僕の意識が夢喰いに憑依する。
と同時に僕自身の肉体は消えたはずだ。本体の僕が身体を持っていたのはコアの分体として趣味で作った身体を動かしていたのだ。丸く動けない球体で生きるのは流石に味気ないというか、、、。
で、分体は意識が憑依する事で保たれているので、他に憑依すると身体が霧散し魔力に戻るという仕組み。
ちなみに憑依した魔物が殺された場合、僕の意識は強制的にコアに戻されるので心配はない。
夢喰いに憑依した僕は早速能力を発動する。
夢は自由だ。本来あり得ないような事も全て実現可能だ。本来の自分ではあり得ないような英雄の物語を体験する事もできるし、空を自由に飛び立つ事もできる。
そんな制限も際限もない夢の世界で、悪意をぶつけられるとしたら?
夢何日も過ごしたような壮大な夢を見た事はあるか?夢の世界には時間の概念さえあやふやなのだ。
チンピラA、名前はホセ。16歳の若者でスラム育ち。頭は良くないが、スラムで育っただけあり悪意に底がない事をよく知っている。
椅子に縛り付けられたホセの目の前にはおぞましい姿の怪物が立っている。手には鋸を持っており、先程なら何度も何度もホセの指や腕、足、胴体、、あらゆる場所を切断し続けている。
やめてくれ!その叫びは届かない。
切り離された脚、血が噴水のように噴き出したかと思えば肉が盛り上がり始め激痛と共に脚が生えてくる。
何度も何度も、、何のためにこんな酷い事をするんだ?!
その問いかけに答えはない。
その怪物は飽きたのか今度は別の獲物、、刃渡り30cm程の鋭い歪曲したナイフを取り出すと躊躇いなく腹を縦に切り割くと内臓が堰を切ったようにボトリと落ちる。
なんで!なんで俺は、、俺は死なないんだ!!
ホセは終わりのない拷問への答えを欲していた。
耐える理由のない苦痛、理不尽、終わりの見えない絶望。
虚な視線が怪物を捉える、、、そこには怪物はいなかった。
「、、、グレン。なんで、兄貴が??」
グレンは見た事もないような無邪気な笑顔で
「まだまだ終わりにはしねーよ。」
そう言うとまた、、、終わりもなく繰り返される拷問が続く。
兄貴が笑う。笑う、、笑う。
——ふと、冷たい土の感触に気がつく。
ここは?
見慣れぬ場所だった。土壁に覆われた部屋に鉄格子が嵌められている。
部屋の隅に小さな見た事もない花。それが、ポツンと咲いている。
なんて、可憐で、、美しいのだろう?
ホッとした瞬間、あの拷問の日々が爆発したように意識を埋め尽くす。身体が震えだす。頭がおかしくなりそうだ。
あれは、、あれが夢だったのか?現実だったのか?
自分の体を見る。
手も脚もある、、、あるが、これはいつ生えた?
度重なる拷問の強烈な記憶はホセの意識だけではなく無意識までも深く根差し、花の魔物の効力で精神は過剰反応を抑えられず夢と現実の区別などつかなくなっていた。
またいつアイツが俺を拷問しにくるのか?あれがはじまるのか?
その考えがよぎった瞬間、息が、、、鼓動が、、心臓が爆発するんじゃないかと思えるほど痛く激しく。
誰か、、誰か助けて、、、。
ホセは声を出す事もできず過呼吸に苦しむ。
霞む視界の先に気付くと人影が現れる。
「ひぃっ」
思わず短く悲鳴をあげるホセ。
「大丈夫ですよ。あなたが倒れていたので保護しました。ただ、、何者かわからないため牢に入れさせていただきましたが。」
それは美しい声だった。気遣うような、少し遠慮した声音。
改めて見ると、、そこには美しいエルフが佇んでいる。
だが、、味方、、なのか?わからない。ただただ怖い。ホセは思考を放棄し、ただただ震える。
「かなり、、酷い目にあったのですね。」
そう言うと女は牢に入ってくる。相変わらず震える身体を抱き締めるように、守るように小さくなるホセ。躊躇うように一瞬止まるが小さく微笑むとその女エルフは優しくホセの肩に触れる。
じんわりと拡がる温もりわ感じたホセは、そのあまりの優しさに慟哭するように泣き続ける。
ひとしきり泣いたホセに女エルフは問う。
「あなたの事を教えてください。保護するにしても皆を説得できないので、、大丈夫。あなたは助かったのですよ。」
あなたは助かった、その言葉はどんな魔法よりもホセを癒す言葉だった。
助かった?俺は助かった、、助かったんだ!
やった!俺は、、!!
「ただし、正直に聞かれた事に答えてください。でなければ、あなたを保護し続ける事はできむせんよ。」
「そんな、わかった!何でも聞いてくれ!なんでも答えるから、おれを見捨てないでくれ!」
「いい子ね」
ホセは女エルフの手を掴み拝むように、或いは祈るように必死に懇願する。
気付いてはいないだろう、その女エルフの侮蔑に満ちた視線に。ホセが触れた事実に最大限の不快感を込め睨みつけた事に。
こうして、追い詰められたホセは生い立ちから、スラムの現状、どのようにして生きてきたのか、何もかもを喋ったのだ。
そうする事で神の庇護を得られるとでも言うかのように。
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