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中級ダンジョン

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貯めに貯めた魔力は中級ダンジョンとされる規模を一気に作り切れる程になっている。
これもひとえにエルジェベトのとさえいる嗜虐性と、定期的に材料を提供してくれる協力者のおかげだろう。

二人の協力者は1か月に一度はダンジョンを訪問し、洗脳状況の確認及び強化を施している。
彼ら自身も財を成し市民権を得て、スラム出身者とは思えない程には物質的に恵まれた生活を送れるのだから、まさにWin-Winの関係と言えるだろう。
たとえ人格や思考を歪められたとしても本人が幸せなら十分ではないか。

され、中級ダンジョンと漠然とした言葉を使っていたが、正確には既に中級ダンジョンと呼ばれる要件は満たしている。

簡単に整理すると、、、。


【初級ダンジョン】

ダンジョンコアにより通路または部屋が作成された状態のダンジョン。
弱い魔物が徘徊している可能性があるが、基本的には何もない洞窟とさして変わらない。
宝石や鉱石等、または低品質な装備品や装飾品などが稀に発見される

【中級ダンジョン】

・継続的に魔力を得られる仕組みがある
・中位/上位の魔物が召喚されている
・宝石や鉱石等または、装備品や装飾品、初期の魔道具などが一定量以上定期的に産出される
 →偏りが強い場合は、性質として認定される。
  例 鉄鉱石が生成されやすいダンジョン など


中級ダンジョンの段階でコアを破壊され管理される場合は、よほど希少性の高い資源が算出されるなどと判断されると処置されやすい。
欲をかいた結果、頻繁にスタンビードが起こる危険なダンジョンになる場合があり、実際何度もその失敗が繰り返されている。
魔物の数が多すぎたり強力過ぎた結果、上級ダンジョンにそのまま進化を続け未攻略ダンジョン化しているダンジョンが世界には少なくとも30か所はあるそうだ。
だが、危険なので誰も入りません、では魔力を得られずダンジョン自体が成長できなくなってしまう為、非常に高価で希少な資源が取れる事が多く、一攫千金や名誉を貴ぶ探索者の攻略対象となっている。

こういった上級ダンジョンが踏破される事は稀だがないわけではない。
ダンジョンや魔物という異物が存在するようにい人の側にも異物、、いやイレギュラーと言える存在が現れるのだ。
勇者や英雄といわれる類の存在で、アカーシャの数百年に及び記憶の中で数十名存在している。
まさに一騎当千の兵である勇者・英雄は一人でも規格外の破壊力を有し、未踏破上級ダンジョンを征服している。
そんな勇者・英雄といわれる存在がうまれるには2パターンあり、1つは神々の恩寵により定められて生まれた存在だ。仮にこれが天然の勇者・英雄だとすれば2つ目は自力でその域へ到達した存在だ。
彼らはもちろん戦いの中で経験を積み強くなるのだけれど、逸脱する上でその必要条件となるのがダンジョンコアの撃破だ。

ダンジョンコアが内包した膨大な魔力は、それを打ち砕いた存在に多大な恩寵をもたらすのだ。
打ち砕かれることで放出される魔力は、、魔物にしてもそうだが勝者に吸収されるというゲーム的仕組がある。
その結果、非力な人間はその肉体的物理的制限を超えて強くなる可能性を持っている。
大量の魔力を内包したコアは、単純に高濃度の魔力身体というだけでなく豊富な情報を有した稀有な存在なのだ。
その結果、コアを破壊した人間は、単純に肉体的精神的能力が大幅に向上したり、魔力が形となり伝説及の武具を授かったり、あるいは始原シリーズといわれる宝物を与えるのだ。

既に自分の、、コアという存在が冗談みたいなものなので今更感があるのだが、、これは世界のルールとして定められた仕組みだ。

光と闇のように相反する2つの勢力がある。
善神が光なら、悪神は闇だ。
この世界は、彼らの代理戦争の場だと言われている。

善なる神々は、連なる精霊を介して光や火、土など自然元素の魔法を人々に与えた。
神々は、自然に愛され高い魔力と長命に起因する知識を司るエルフ族を創造した。
次いで、建築や武器防具や魔道具といった鍛冶全般を司るドワーフ族を創造した。
肉体的に強靭で先に創造した2部族の先兵となるべく獣人を創造した。
だが、それぞれの部族は、生まれながらに得た恩寵への感謝が行き過ぎ、、自らが至高の存在に最も愛でられた存在であるという自我を持つにいたる。
単純に不仲になってしまったのだ。期待した相乗効果が得られないばかりか、身内で争う始末である。
そこで、最後に創造したのが人族だ。

彼らは肉体的に弱く、魔力を扱う事はできるが短命であり、何より多様性という自由と可能性を与えられて生み出された。
その恩寵により、能力を自由を持ち、多様な可能性を生み出すべく大いに繁殖した。
そして、悪神の眷属を自ら殺す事で魔力を取り込む能力を獲得していったのだ。
結果、単体では最弱の彼らは地上で大いに反映する事となった。

もちろんそれだけではない。多様な政治形態を作り出し、集団戦闘を得意し、、なにより勤勉だった。自然元素を元にした魔法を学び人が扱いやすく体系化し発展させた魔術を用い、鍛冶を学びながら魔術と併用し錬金術を編み出すなど、彼らは種全体として溜めた経験をフルに生かし続けたのだ。

対して、悪神はどうか。
こちらは協調することなどないと言わんばかりに、それぞれがそれぞれの眷属を好きなように生み出した。
始原の獣と言われる竜神は自らをモデルに多種多様な竜種を生み出したのを代表に、自らの権能を示すかのように自らの劣化版ともいえる多種多様な魔物が誕生した。
それだけではなく、善なる神々の眷属、即ち4部族は必ずしも調和を持っていない事に気付いた悪神は呪いという邪法の知識を世界に分け隔てなく与えもうた。
更に、静止した世界、、月の神は死を愛し死者を愛でる為に、全ての生命の逝き着く先に彷徨える者アンデットの因子をばら撒きもした。

そして、、ダンジョンもまた悪神により作り出された。
作り出したのは死の大地を司る神だと言われている。
(表情を変える自然物には全て表と裏があり、その数だけ神々が存在する)
大地という属性は生命の拠り所として、自ら魔を生み出し、自らの姿形を変える能力(ダンジョンの構築能力)を与えられたのだ。
そして、死或いはそれに準ずる苦痛を自らの糧とする事を定めた。
残念なのは、その死の大地を越える能力は与えられなかったことだろう。
コアは鎮座し、その分身体もまた大地に拘束される定めを追っている。
世界は、、いや、世界が、、狭いのだ。

また、ダンジョンが人に利用される原因にもなっている生産物はいいとして、コアが取り込まれる理由としてはちょっとした逸話がある。
春の大地の神がコアにイタズラしたといわれている。神が定めたプログラムに手を加えられるのも、また神だけなのだ。
コアを破壊した英雄への恩寵がそのイタズラだ。
残念なことに、我らが神はそれを面白がって放置したそうだ。そのせいで、初及から中級・上級はては超級なんて言われる全てのコアは人間に狙われる定めをおったといえるだろう。
まっ、そのおかげで餌が来るわけだ。もしかしたら、我らが神は、人が入ってくる動機を作り忘れて、イタズラをこれ幸いと残したんじゃないだろうか?

話がだいぶそれてしまった。

そんな訳で、中級ダンジョンの条件は一人前のダンジョンとして、魔(生物・非生物を問わず)を生み出し、死を招き入れ魔力を得ることだ。
それが、継続的に行われる環境を自ら創造したコアが中級コア、、つまり中級ダンジョンとなる。
どちらかというと、スタートラインにようやく立った、という感じだ。

【上位ダンジョン】は世界とも言えるほどの広大で巨大なダンジョンが、自らの影響力を持って外の世界を動かす程になって初めて【上位】の称号を得る。

まっ、あくまで概念的な基準だといえる。
世界そのものに神々が居て、直接的に争った神代ならともかく、神々が既に去った世界で行われる代理戦争の舞台だ。
地形が抉れ、死がまき散らされた神代に比べれば平和で、調和の枷が外れ清濁した世界ではもはやダンジョンも資源になり果てた訳だ。
魔物自体、積極的に生み出されたのは遠い昔。いまでは、それぞれが交配を繰り返し純度を増した、、いや神代の時代に近しいものと獣のように薄れて低俗な存在が無秩序に栄えている。

代表例はゴブリンだろう。低俗にして残虐、根絶やしにできない繁殖力でお馴染みのやるらは住処により様々な種族が生まれ、血の濃さにより知性の桁が違う。
ゴブリンでも神代に近しい血を持つものは、強靭な肉体に狡猾な知性を持ち、魔力を操りさえする。竜族から派生したくせに低俗になりすぎて認められていない走竜くらいなら1体で四肢を引き裂き喰らう事だろう。
ピンキリというが、その差があり得ないぐらい激しいのだ。まさに天と地ほど違う。
その分、神代に近しい魔物は、数が少なく自らの存在を維持する為に争いを避け統治すれども君臨せず、という姿勢を貫いている。
神代以降の時代で、彼らが表舞台に出るとき、その名にはこの敬称がつく事になる。
--#魔王_・__#--と。

まっ、過去に討伐された魔王はゴブリンやオークなど、そもそもが低位の眷属なので本来の魔王の恐怖を4氏族は、、いやエルフは知っているか。3部族は知らないだろうな。

本来の魔王の恐怖を知っているエルフ族は、森に引きこもって結界に閉じこもっているひきこみりになっていまっている。


で、偉そうに開設した最近生まれたコア君こと僕は、魔物が跋扈するダンジョンを作るべく商業都市国家とは反対側に通路を堀進めいる。
ダンジョンの構想はあっても、入り口がうまいことないと誰も入ってこないなら意味がない。
とりあえず行きつくところまで掘ればいいか、と安易に堀進めた結果、へ出る事になる。

自然に出来た空間とはとても言えない、そこは街が、、いや王都がまるまる収まるほどの広大な地下空間を形成していた。

「これは、、、ドワーフの王国か?」
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