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======ここからはシルビア目線=======
目が覚めると、両手は鎖に繋がれていた。薄暗い部屋には誰もいない。
”ここはどこだろう?”
周りを見回すと、簡単な机と椅子、そしてベッドがある。誰かの部屋かも知れない。耳を凝らすと外から人の声が聞こえる。
「ボスばっかりずるいよな。今回の獲物結構上玉だからな。俺もあやかりたいぜ。」
「馬鹿。余り大声で言うな!ボスに聞かれたらシバかれるぞ!」
「でもよぉー。いつもボスばっかりじゃないか!くそー、俺もやりたいぜ!」
どうやら、この部屋の見張りのようだ。しかも、ここはボスの部屋。ちょっと、まずい状況のようだ。
「あ、ボス。お疲れ様です。特に変わったことはありやせんでしたぜ。」
「そうか。このまま見張りを続けてろ。」
「分かりやした。」
部屋の扉が開く。私は、気を失っている振りをした。カッカッっと男が近づいてくる足音が聞こえる。そして私の前に来ると男は私に声をかける。
「おいおい、いつまで気を失っているフリをするんだ?」
男は私の服を剥ぎ取った。
「きゃあーーーー!!何すんのよ。この変態!!」
「おー、おー、元気いいじゃねえか。こうじゃねぇとつまんねー。」
「あんた、こんな事をしてただで済むと思っているの?私は、シルビア・フィアット・ヤマト。ヤマト辺境伯の娘なのよ。」
「おー、そうか。そうか。なるほど、やけに身に付けているものがいいと思ったら貴族の娘か。じゃあ、きっと侯爵様に高値で買ってもらえるな。」
「ふん!お父様は、私には全く興味ないわ。残念だったわね。」
「ほぉー、確か、侯爵は一人娘だったはず。そんなわけないだろう。」
「ふん。お父様は、才能が無い私なんかに興味は無いわ。私は、小さい頃からずっと一人。お父様に認めてもらえるように努力をしたけど、まったく興味を持ってもらえなかった。だから、今度こそは実力を付けて認めてもらおうと思ったのに、こんな事に‥‥」
「そんなのは俺には関係ない。まぁ、何はともあれ、侯爵に買ってもらう前に商品チェックをしないとな。」
男は、私の胸を触ってくる。凄く気持ちが悪い。私は、こんな男に慰め者にされてしまうの?それだけは嫌。こんな事になるくらいならタカミに…。そう思うと涙が溢れてくる。
「タカミ…」
私は、つぶやく。
「おいおい、他の男の名前を呼ぶなんてデリカシーが無いなぁー、わっはっは!」
「タカミ…」
「そっか。そっか。無駄なのがまだ分からないのか。ほらよ。」
男は、私の下着をすべて剥ぎ取ってしまった。もう、ダメなの?タカミ…タカミ…タカミ…
「ん-、んー。いい眺めじゃないか。ほら、助けを呼ばなくていいのか?呼んでも無駄だけどなぁー、わっはっはっは!」
「タカミーーーーー!!!助けてーーーーー!!」
私は、大声で叫んだ。しかし、無情にも叫び声だけがあたりに響く。
「こんな洞窟の奥でいくら叫んでも無駄なんだよ!さて、それでは頂くとするか!」
男がズボンを脱ぐ。何て最悪の光景なんだろう。
「タカミーーーー!!助けてーーーー!!」
”ドッカン!”と大きな音を立てて、扉が吹き飛んだ。そして、私のヒーローが姿を現した。
======ここからタカミ目線========
通路を進むと二人の見張りがいる。その奥にシルビアとボスらしき男の反応がある。
《リンク》
《パラライズ》
俺は、見張りを麻痺させ拘束する。そして、中の様子を伺う。どうやら、シルビアとボスが話をしているようだ。
「あんた、こんな事をしてただで済むと思っているの?私は、シルビア・フィアット・ヤマト。ヤマト辺境伯の娘なのよ。」
「おー、そうか。そうか。なるほど、やけに身に付けているものがいいと思ったら貴族の娘か。じゃあ、きっと侯爵様に高値で買ってもらえるな。」
「ほぉー、確か、侯爵は一人娘だったはず。そんなわけないだろう。」
「ふん。お父様は、才能が無い私なんかに興味は無いわ。私は、小さい頃からずっと一人。お父様に認めてもらえるように努力をしたけど、まったく興味を持ってもらえなかった。だから、今度こそは実力を付けて認めてもらおうと思ったのに、こんな事に‥‥」
「そんなのは俺には関係ない。まぁ、何はともあれ、侯爵に買ってもらう前に商品チェックをしないとな。」
ありゃりゃ、結構、ピンチじゃないの?
「タカミーーーーー!!!助けてーーーーー!!」
「こんな洞窟の奥でいくら叫んでも無駄なんだよ!さて、それでは頂くとするか!」
ん?結構やばそうだな。それでは行きますか!
「タカミーーーー!!助けてーーーー!!」
《爆裂》
俺は、扉を爆裂の魔法で吹き飛ばす。
「お待たせして申し訳ございません。お嬢様。うは!」
シルビアは真っ裸だ。その前には、ボスらしき男のボスが反り立っている。なんという光景。
「てめー、どうやってここまで来た!」
「歩いてきましたが。あのぉ。それ汚らしいので隠してもらえませんか?」
「この野郎、ぶっ殺されたいみたいだな。」
男は、剣を構え俺に近づいてくる。
《鑑定》
盗賊 LV25
HP600/600
MP200/200
筋力225
魔力200
防御力275
魔防200
俊敏275
器用275
知力200
幸運225
【ユニークスキル】
アサシン
【スキル】
剣(低)
クリティカル上昇(低)
防御力上昇(低)
素早さ上昇(低)
まぁ、分かってたけど俺の敵じゃないな。まぁ、一般の兵士よりは強いのかもしれないが。
「お前、俺の大事なシルビアに何てことしてるんだ!!」
「うるせ!ぶっ殺してやる!」
ボスは、俺に斬りかかってきた。俺はそれを躱す。相手はちょいちょい、急所をついてくる。流石、盗賊。これがクリティカルの能力か。マネしてみるか。
《模倣 クリティカル》
《スキル クリティカルを獲得しました》
お!ここにきて久しぶりにスキルを獲得したぞ!やはり、能力持ちを相手するのがスキル獲得の近道なのかもな。
「なんで当たらない!この野郎!」
俺は、相手の剣を剣で受け、弾き飛ばす。
そして、みねうちでクリティカルを出す。
「ぐは!な、なんだこのガキは!」
「そろそろ終わりましょうか。」
相手の手足に魔法をかける。
《フリクション ゼロ》
相手は、ツルっと滑りもがいている。手足に摩擦をゼロにする魔法をかけた。摩擦がゼロの為、手足に触れるものは皆”ツルツル”だ。そのため、滑り立ち上がる事も手足を使って移動する事も出来ない。
「な、てめー、何しやがった!ぶっ殺すぞ!」
「おいおい、そんな恰好でそんなこと言っても何の威嚇にもならないぞ。」
男は、つるつるとのたうち回る。俺はそれを横目にシルビアの所に行く。
《アンロック》
手錠を外し、マントでシルビアを包み込む。
「大丈夫でしたか?」
「タカミ…、タカミぃーーーー!!!」
シルビアは、俺に抱き付き”ワンワン”泣く。俺は、頭を撫でながら宥める。
「どうしてこんな無茶を…言ってくれれば僕もお付き合いしたのに…」
「タカミが居なくなっちゃうから自分で何とかしないといけないと思って。タカミに教わった事をやれば自分だけでも出来ると思ったんだもん。」
”ツルツル、ジタバタ”
「シルビア、君は少しずつだけど、実力は付いてきてるよ。そんなに焦らなくてもいいんだよ。」
”ツルツル、ジタバタ”
「でも、早くお父様やタカミに認めてもらいたくて…」
”ツルツル、ジタバタ”
「うん、気持ちは分かるけど、焦ってこんな酷い目に合う方が僕は嫌だな。」
”ツルツル、ジタバタ”
「うん。ごめんなさい。でも、何かあってもタカミが助けてくれるって信じてた。」
”ツルツル、ジタバタ”
「僕はシルビアの専属魔導士だから、勿論、傍にいるから助けるけど…、でも、こんな無茶はして欲しくないな。」
”ツルツル、ジタバタ”
「うん。ごめんなさい。」
”ツルツル、ジタバタ”
「なんでこんな無茶したの?良かったら聞かせてくれないかな?」
”ツルツル、ジタバタ”
「うん・・・、私ね。小さい頃からお父様にすごく憧れていたんだ。領土の人達の事を考えて一生懸命になっているお父様を」
”ツルツル、ジタバタ”
「でも、私に魔法の才能が無いからお父様に全く相手にされていないの。」
”ツルツル、ジタバタ”
「そんな事無いですよ。侯爵様は、すごくシルビアの事を大事に思っていますよ。今回だって、シルビアが居なくなったって血相を変えていましたよ。」
”ツルツル、ジタバタ”
「ほんとに!?でも、小さい頃から私は、ほどんど相手にされてなかった。ずっと一人だった。だから、少しでもお父様に私の事を見て欲しくて頑張ったけど、皆の様に成れなくて。」
”ツルツル、ジタバタ”
「そんな事無いですよ。シルビアはシルビアの魅力があります。侯爵様はちゃんと分かっていますよ。」
”ツルツル、ジタバタ”
「でも、ウォーレン様やタカミはすごくお父様に頼りにされているのに私とは会話もほとんどないの。ずっと、寂しかったの。だから、今回タカミに教わった精霊魔術がちゃんと使えるようになって役に立つことを証明できれば、少しでも私に関心を持ってくれると思ったの。」
”ジタバタ、ジタバタ、シーン・・・”
「そうなんですね。そう思っていることをちゃんと侯爵様に伝えた?思ってるだけじゃ伝わらない事も沢山あるんだよ。」
「ううん。ただでさえお忙しいお父様の足手纏いになりたくなかったから。それに、お母さまのお腹に弟か妹が出来て、私は良いお姉ちゃんにならないといけないって思って。」
「た、助けてくれ…」
ん?ボスがジタバタするのを止めて、殺虫剤をかけられたゴキブ〇リのようにひっくり返っている。
「お前は、俺の大切なシルビアにとんでもない事をした。助けるわけないだろ。しばらくそのままでいればいい。」
「シルビア、兎に角、帰ったら侯爵様とちゃんと話しよう。凄く、凄く心配していたから。」
「うん。ありがと。タカミ」
シルビアが俺に抱きついてくる。そして、俺はシルビアを抱きしめる。少しの間、沈黙が流れ、
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。」
「うん。」
「捕らわれていた子供達も解放しないと。後、盗賊どもを近衛兵に突き出さないとね。おっと、その前に・・・」
俺は引っ繰り返っているボスの前に行く。俺は、襟首を掴み
「おい、お前の”アレ”に一つ術式を施す。これで二度とボスがボスになることが無いようにな。シルビアに酷い事をしようとした償いな。」
「か、勘弁してくれ!もう二度とこんな事はしない!だから、な、な!」
「俺がそんな事を信じると思ってるいのか?他に子にも酷い事をしていたんだろ!当然の報いだな。」
俺は、ボスの露になっている”ボス”に血流を抑制する術式を埋め込む。これで”ボス”が立ち上がることは無いだろう。おー、恐ろしい((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
「あ、それと当分、このままだから」
俺は、魔法の効果を約1ヶ月持続するように魔力を込める。そしてボスを拘束し、拘束した盗賊達を引き連れて洞窟出る。
「さて、多分思い出したくないだろうけど、誰に乱暴されたか教えてもらえるかな。ちゃんと罰は受けないといけないからね。」
俺は、一人ずつ聞いていく。そして対象者に近づく。俺は、乱暴されたであろう少女達に誰にされたか聞いて回った。そして、彼らにもあの凶悪な術式をかける。
「お、おい、か、勘弁してくれよ。もう、こんな事しないから!」
俺は問答無用に術式を組み込んでいく。確かに冤罪はあるかもしれないが、それ相応の事はしていたわけだし・・・
「さて、諸君の術式にはある条件が付与されている。君達が校正し、彼女達に許された時、その術式は解除される。だから、これから精進するように!」
善行を行い、彼女たちに許された場合、術式が解けるようにした。一生はキツイからね。これでも十分きついけど・・・
俺はゲートを開き、街に戻る。誘拐された子供の親族は涙を流して再開を喜ぶ。その光景をシルビアにはどのように映っているのだろう。盗賊達は、近衛兵に引き渡した。その後、俺は侯爵の屋敷にゲートを開きシルビアを送る。すると、侯爵が走ってシルビアの下にやって来た。
「シルビア!!」
厳しいそうなその顔の瞳にはシルビアが映っている。侯爵もずっと堪えていたのだろう。その瞳が緩む。
「シルビア!!・・・よかった。」
侯爵の膝は折れ、シルビアの腹部に顔を埋め抱きしめる。
「私は、私は、」
シルビアを抱きしめ、普通の親と同じように泣き崩れる。
「シルビア、これで分かっただろ。侯爵様がどんなに君を大事に思っているか。侯爵様はシルビアや家族、領土の民を守るために一生懸命になっていたんだと思う。シルビア、後はゆっくり二人で話をするといいよ。」
俺は、振り返り二人に背を向け転移で家に戻る。きっと、二人の思いは同じだけど、立場や状況が二人をすれ違いさせていたのだろう。後は、二人が共有できなかった時間を共有すればいい。俺はそんな事を思いながら転移した。
目が覚めると、両手は鎖に繋がれていた。薄暗い部屋には誰もいない。
”ここはどこだろう?”
周りを見回すと、簡単な机と椅子、そしてベッドがある。誰かの部屋かも知れない。耳を凝らすと外から人の声が聞こえる。
「ボスばっかりずるいよな。今回の獲物結構上玉だからな。俺もあやかりたいぜ。」
「馬鹿。余り大声で言うな!ボスに聞かれたらシバかれるぞ!」
「でもよぉー。いつもボスばっかりじゃないか!くそー、俺もやりたいぜ!」
どうやら、この部屋の見張りのようだ。しかも、ここはボスの部屋。ちょっと、まずい状況のようだ。
「あ、ボス。お疲れ様です。特に変わったことはありやせんでしたぜ。」
「そうか。このまま見張りを続けてろ。」
「分かりやした。」
部屋の扉が開く。私は、気を失っている振りをした。カッカッっと男が近づいてくる足音が聞こえる。そして私の前に来ると男は私に声をかける。
「おいおい、いつまで気を失っているフリをするんだ?」
男は私の服を剥ぎ取った。
「きゃあーーーー!!何すんのよ。この変態!!」
「おー、おー、元気いいじゃねえか。こうじゃねぇとつまんねー。」
「あんた、こんな事をしてただで済むと思っているの?私は、シルビア・フィアット・ヤマト。ヤマト辺境伯の娘なのよ。」
「おー、そうか。そうか。なるほど、やけに身に付けているものがいいと思ったら貴族の娘か。じゃあ、きっと侯爵様に高値で買ってもらえるな。」
「ふん!お父様は、私には全く興味ないわ。残念だったわね。」
「ほぉー、確か、侯爵は一人娘だったはず。そんなわけないだろう。」
「ふん。お父様は、才能が無い私なんかに興味は無いわ。私は、小さい頃からずっと一人。お父様に認めてもらえるように努力をしたけど、まったく興味を持ってもらえなかった。だから、今度こそは実力を付けて認めてもらおうと思ったのに、こんな事に‥‥」
「そんなのは俺には関係ない。まぁ、何はともあれ、侯爵に買ってもらう前に商品チェックをしないとな。」
男は、私の胸を触ってくる。凄く気持ちが悪い。私は、こんな男に慰め者にされてしまうの?それだけは嫌。こんな事になるくらいならタカミに…。そう思うと涙が溢れてくる。
「タカミ…」
私は、つぶやく。
「おいおい、他の男の名前を呼ぶなんてデリカシーが無いなぁー、わっはっは!」
「タカミ…」
「そっか。そっか。無駄なのがまだ分からないのか。ほらよ。」
男は、私の下着をすべて剥ぎ取ってしまった。もう、ダメなの?タカミ…タカミ…タカミ…
「ん-、んー。いい眺めじゃないか。ほら、助けを呼ばなくていいのか?呼んでも無駄だけどなぁー、わっはっはっは!」
「タカミーーーーー!!!助けてーーーーー!!」
私は、大声で叫んだ。しかし、無情にも叫び声だけがあたりに響く。
「こんな洞窟の奥でいくら叫んでも無駄なんだよ!さて、それでは頂くとするか!」
男がズボンを脱ぐ。何て最悪の光景なんだろう。
「タカミーーーー!!助けてーーーー!!」
”ドッカン!”と大きな音を立てて、扉が吹き飛んだ。そして、私のヒーローが姿を現した。
======ここからタカミ目線========
通路を進むと二人の見張りがいる。その奥にシルビアとボスらしき男の反応がある。
《リンク》
《パラライズ》
俺は、見張りを麻痺させ拘束する。そして、中の様子を伺う。どうやら、シルビアとボスが話をしているようだ。
「あんた、こんな事をしてただで済むと思っているの?私は、シルビア・フィアット・ヤマト。ヤマト辺境伯の娘なのよ。」
「おー、そうか。そうか。なるほど、やけに身に付けているものがいいと思ったら貴族の娘か。じゃあ、きっと侯爵様に高値で買ってもらえるな。」
「ほぉー、確か、侯爵は一人娘だったはず。そんなわけないだろう。」
「ふん。お父様は、才能が無い私なんかに興味は無いわ。私は、小さい頃からずっと一人。お父様に認めてもらえるように努力をしたけど、まったく興味を持ってもらえなかった。だから、今度こそは実力を付けて認めてもらおうと思ったのに、こんな事に‥‥」
「そんなのは俺には関係ない。まぁ、何はともあれ、侯爵に買ってもらう前に商品チェックをしないとな。」
ありゃりゃ、結構、ピンチじゃないの?
「タカミーーーーー!!!助けてーーーーー!!」
「こんな洞窟の奥でいくら叫んでも無駄なんだよ!さて、それでは頂くとするか!」
ん?結構やばそうだな。それでは行きますか!
「タカミーーーー!!助けてーーーー!!」
《爆裂》
俺は、扉を爆裂の魔法で吹き飛ばす。
「お待たせして申し訳ございません。お嬢様。うは!」
シルビアは真っ裸だ。その前には、ボスらしき男のボスが反り立っている。なんという光景。
「てめー、どうやってここまで来た!」
「歩いてきましたが。あのぉ。それ汚らしいので隠してもらえませんか?」
「この野郎、ぶっ殺されたいみたいだな。」
男は、剣を構え俺に近づいてくる。
《鑑定》
盗賊 LV25
HP600/600
MP200/200
筋力225
魔力200
防御力275
魔防200
俊敏275
器用275
知力200
幸運225
【ユニークスキル】
アサシン
【スキル】
剣(低)
クリティカル上昇(低)
防御力上昇(低)
素早さ上昇(低)
まぁ、分かってたけど俺の敵じゃないな。まぁ、一般の兵士よりは強いのかもしれないが。
「お前、俺の大事なシルビアに何てことしてるんだ!!」
「うるせ!ぶっ殺してやる!」
ボスは、俺に斬りかかってきた。俺はそれを躱す。相手はちょいちょい、急所をついてくる。流石、盗賊。これがクリティカルの能力か。マネしてみるか。
《模倣 クリティカル》
《スキル クリティカルを獲得しました》
お!ここにきて久しぶりにスキルを獲得したぞ!やはり、能力持ちを相手するのがスキル獲得の近道なのかもな。
「なんで当たらない!この野郎!」
俺は、相手の剣を剣で受け、弾き飛ばす。
そして、みねうちでクリティカルを出す。
「ぐは!な、なんだこのガキは!」
「そろそろ終わりましょうか。」
相手の手足に魔法をかける。
《フリクション ゼロ》
相手は、ツルっと滑りもがいている。手足に摩擦をゼロにする魔法をかけた。摩擦がゼロの為、手足に触れるものは皆”ツルツル”だ。そのため、滑り立ち上がる事も手足を使って移動する事も出来ない。
「な、てめー、何しやがった!ぶっ殺すぞ!」
「おいおい、そんな恰好でそんなこと言っても何の威嚇にもならないぞ。」
男は、つるつるとのたうち回る。俺はそれを横目にシルビアの所に行く。
《アンロック》
手錠を外し、マントでシルビアを包み込む。
「大丈夫でしたか?」
「タカミ…、タカミぃーーーー!!!」
シルビアは、俺に抱き付き”ワンワン”泣く。俺は、頭を撫でながら宥める。
「どうしてこんな無茶を…言ってくれれば僕もお付き合いしたのに…」
「タカミが居なくなっちゃうから自分で何とかしないといけないと思って。タカミに教わった事をやれば自分だけでも出来ると思ったんだもん。」
”ツルツル、ジタバタ”
「シルビア、君は少しずつだけど、実力は付いてきてるよ。そんなに焦らなくてもいいんだよ。」
”ツルツル、ジタバタ”
「でも、早くお父様やタカミに認めてもらいたくて…」
”ツルツル、ジタバタ”
「うん、気持ちは分かるけど、焦ってこんな酷い目に合う方が僕は嫌だな。」
”ツルツル、ジタバタ”
「うん。ごめんなさい。でも、何かあってもタカミが助けてくれるって信じてた。」
”ツルツル、ジタバタ”
「僕はシルビアの専属魔導士だから、勿論、傍にいるから助けるけど…、でも、こんな無茶はして欲しくないな。」
”ツルツル、ジタバタ”
「うん。ごめんなさい。」
”ツルツル、ジタバタ”
「なんでこんな無茶したの?良かったら聞かせてくれないかな?」
”ツルツル、ジタバタ”
「うん・・・、私ね。小さい頃からお父様にすごく憧れていたんだ。領土の人達の事を考えて一生懸命になっているお父様を」
”ツルツル、ジタバタ”
「でも、私に魔法の才能が無いからお父様に全く相手にされていないの。」
”ツルツル、ジタバタ”
「そんな事無いですよ。侯爵様は、すごくシルビアの事を大事に思っていますよ。今回だって、シルビアが居なくなったって血相を変えていましたよ。」
”ツルツル、ジタバタ”
「ほんとに!?でも、小さい頃から私は、ほどんど相手にされてなかった。ずっと一人だった。だから、少しでもお父様に私の事を見て欲しくて頑張ったけど、皆の様に成れなくて。」
”ツルツル、ジタバタ”
「そんな事無いですよ。シルビアはシルビアの魅力があります。侯爵様はちゃんと分かっていますよ。」
”ツルツル、ジタバタ”
「でも、ウォーレン様やタカミはすごくお父様に頼りにされているのに私とは会話もほとんどないの。ずっと、寂しかったの。だから、今回タカミに教わった精霊魔術がちゃんと使えるようになって役に立つことを証明できれば、少しでも私に関心を持ってくれると思ったの。」
”ジタバタ、ジタバタ、シーン・・・”
「そうなんですね。そう思っていることをちゃんと侯爵様に伝えた?思ってるだけじゃ伝わらない事も沢山あるんだよ。」
「ううん。ただでさえお忙しいお父様の足手纏いになりたくなかったから。それに、お母さまのお腹に弟か妹が出来て、私は良いお姉ちゃんにならないといけないって思って。」
「た、助けてくれ…」
ん?ボスがジタバタするのを止めて、殺虫剤をかけられたゴキブ〇リのようにひっくり返っている。
「お前は、俺の大切なシルビアにとんでもない事をした。助けるわけないだろ。しばらくそのままでいればいい。」
「シルビア、兎に角、帰ったら侯爵様とちゃんと話しよう。凄く、凄く心配していたから。」
「うん。ありがと。タカミ」
シルビアが俺に抱きついてくる。そして、俺はシルビアを抱きしめる。少しの間、沈黙が流れ、
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。」
「うん。」
「捕らわれていた子供達も解放しないと。後、盗賊どもを近衛兵に突き出さないとね。おっと、その前に・・・」
俺は引っ繰り返っているボスの前に行く。俺は、襟首を掴み
「おい、お前の”アレ”に一つ術式を施す。これで二度とボスがボスになることが無いようにな。シルビアに酷い事をしようとした償いな。」
「か、勘弁してくれ!もう二度とこんな事はしない!だから、な、な!」
「俺がそんな事を信じると思ってるいのか?他に子にも酷い事をしていたんだろ!当然の報いだな。」
俺は、ボスの露になっている”ボス”に血流を抑制する術式を埋め込む。これで”ボス”が立ち上がることは無いだろう。おー、恐ろしい((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
「あ、それと当分、このままだから」
俺は、魔法の効果を約1ヶ月持続するように魔力を込める。そしてボスを拘束し、拘束した盗賊達を引き連れて洞窟出る。
「さて、多分思い出したくないだろうけど、誰に乱暴されたか教えてもらえるかな。ちゃんと罰は受けないといけないからね。」
俺は、一人ずつ聞いていく。そして対象者に近づく。俺は、乱暴されたであろう少女達に誰にされたか聞いて回った。そして、彼らにもあの凶悪な術式をかける。
「お、おい、か、勘弁してくれよ。もう、こんな事しないから!」
俺は問答無用に術式を組み込んでいく。確かに冤罪はあるかもしれないが、それ相応の事はしていたわけだし・・・
「さて、諸君の術式にはある条件が付与されている。君達が校正し、彼女達に許された時、その術式は解除される。だから、これから精進するように!」
善行を行い、彼女たちに許された場合、術式が解けるようにした。一生はキツイからね。これでも十分きついけど・・・
俺はゲートを開き、街に戻る。誘拐された子供の親族は涙を流して再開を喜ぶ。その光景をシルビアにはどのように映っているのだろう。盗賊達は、近衛兵に引き渡した。その後、俺は侯爵の屋敷にゲートを開きシルビアを送る。すると、侯爵が走ってシルビアの下にやって来た。
「シルビア!!」
厳しいそうなその顔の瞳にはシルビアが映っている。侯爵もずっと堪えていたのだろう。その瞳が緩む。
「シルビア!!・・・よかった。」
侯爵の膝は折れ、シルビアの腹部に顔を埋め抱きしめる。
「私は、私は、」
シルビアを抱きしめ、普通の親と同じように泣き崩れる。
「シルビア、これで分かっただろ。侯爵様がどんなに君を大事に思っているか。侯爵様はシルビアや家族、領土の民を守るために一生懸命になっていたんだと思う。シルビア、後はゆっくり二人で話をするといいよ。」
俺は、振り返り二人に背を向け転移で家に戻る。きっと、二人の思いは同じだけど、立場や状況が二人をすれ違いさせていたのだろう。後は、二人が共有できなかった時間を共有すればいい。俺はそんな事を思いながら転移した。
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