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LV.999 (Part death)
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宮殿、玉座の間
レントは玉座の肘掛けを叩いていた。
「クソッ!!まさかスコットまでやられたとは!!」
スコットとはさっきまでエルヴァー・シーズンと一戦交え、消えていったカナヅチの男の事である。
「だがこれでアイツの手がわかった。
覚悟しろ……俺の最強の魔法で皆の仇を必ず討ってやる。」
テレシアは、エルヴァーの事を知っている。
彼女は 秩序の妖精として、冒険者としての彼をずっと見ていた。
彼女から見たエルヴァーは"狂人"だった。
(ホント、強いわね。)
その狂人を眺めていると突然頭の上に温かい感触を感じる。
エルがテレシアの頭に手を置いていたのだ。
「な、何よ。」
エルはテレシアの目線に合わせる様にしゃがみ、
「怪我は無い?」
と、言いながら彼女の頭を撫でた。
……スキンシップのつもりだろうか。
「そこは"頑張ったね"とかでしょ…」
「見てただけでしょ?」
確かにそうである。
「さて……次が最後かな?」
エルは振り向いて玉座へと繋がる扉へと向かう。
トワダ レントの城は大広間と玉座の2つでしか構成されてない、いわばショボい城である。
大広間の床に大理石、壁に金や宝石といかにも金持ちのアピールが強烈な城なのだ。
「これ、売ったら凄くお金になる気が…」
テレシアはさっきまで戦いの場であった大広間を眺めながら言う。柱状となって乱立する大理石の床、あちこちに出来た大小さまざまなクレーター。パラパラと天井や壁から落ちてきている金塊や宝石。
「まぁそれが彼らにとっての名誉なんだろうね。」
そして2人は玉座への扉を開けた。
「……来たか。」
金でかためられた一室その中に黒のコートを着た青年がいた。
「よくここまで辿り着いた。俺がトワダ レントだ。」
「どうも自己紹介ありがとう。僕の名はエルヴァー・シーズン。」
「その名は知っている。」
そしてレントは掌をかざす。
「雷究極魔法・雷鎚神」
直後エルの真上からつんざく程の雷鳴と共に電撃がエルに向かって走る。
「’贄よ這い出よ'」
エルの左手に金色のカナヅチが虚空から現れる。
「創造」
そう言うと玉座の床が一気にせり出し、ドーム型の盾となりエルを雷から守る。
「盾は礫に。」
雷撃を耐えた盾はそのまま飛散し鋭利な石のナイフとなり、レントに向けて飛び出す。
「金剛壁!!」
レントが眼前に半透明の結晶の壁を生成し、石ナイフを弾く。
「礫は槍に」
弾き返された石ナイフは縦に伸び、鋭い槍へと姿を変え、再びレントに襲いかかる。
「爆散!!」
その詠唱でレントに向かっていた石槍が一つ残らず爆ぜた。
「この程度か?」
レントが言った。
「いや。」
エルはニッコリ笑いながら、手をレントにかざす。
「’贄を捧げよ’」
しかしレントは竦む事なく前へ走りそのままエルの胸に向かって飛び蹴りをした。
「!!」
蹴りの衝撃が強く、胸骨が軋む。
エルは耐えられずに大広間を隔てる壁に激突した。
臓器が損傷したのか、喀血する。
「な…んで………」
「お前のその魔法、贄魔法だろう。」
エルが目を見開く。
「贄魔法には相手を存在ごと取り込む吸贄の秘言とその存在を武器として具現化させる働贄の秘言の2つがある。」
エルは顔を上げる事なく黙っているが、自分の魔法がバレている事に不快を感じていた。
「俺の考えからすると、贄の魔法は、欠点が二つある。一つ目は使用者は存在を一つしか取り込む事ができない。そしてもう一つ使用者と対象の動きが29秒以上60秒未満の間互いに止まっている事。…つまり詠唱が始まって動くと贄の魔法は発動しない。」
まるで全て見透かされている様だった。
「そして君の右手に付けているその籠手。それも何かに触れないと効果を発揮できない。」
エルは何も言わなかった。何も言わずにただ俯いていた。だがその事が図星であるという意味を成した。
レントは壁の方へと歩いていく。
「……ヨウキとニーナとの戦いからずっと見ていたよ。」
レントが呟き始める。
「彼らは俺と同等の強さだったから、加勢せずともお前を消し去る事が出来ると思っていた。しかし、油断か慢心かこの状況。まさかスコットまで倒すとは…」
レントは激突した壁へ見向く。
「彼らは俺の大事な仲間だ。様々な冒険をし、共に感情を分かち合った仲間達だ。
だから…彼らの仇は俺が討つ。」
そう言ってレントはエルを睨んだ。
当のエルは俯いたまま口を開いた。
口の周りには血を吐いた後が残っている。
「…気持ち悪りぃ。」
「何だと?」
エルが瓦礫を取り払いながら喋り出す。
「お前と同等の強さ?笑わせてくれるよ。あんなザコと同じ強さでよくも仇を討つとか大口叩いたね。」
そしてエルはレントを指差し、鬼の様な形相で睨んだ。
「宣言しよう。僕はお前に触れずにお前を殺す。」
「舐めているのかぁッ!」
レントが手を前へかざし、詠唱し始める。
「究極炎魔法煌天神!!」
ーしかし掌からは、今にも絶えそうな小さな火の玉がポッと出ただけだった。
「なっ……どういう事だ⁉︎」
戸惑うレント、しかしこれまでエルはずっと動いていなかった。
「お前は、これまでの戦いを見てきたって言ってた。でもあれだけで僕はお前と闘おうとはしない。」
レントがエルを見る。彼は未だに指を差していた。
「お前が僕の事を熱心に分析した事は褒めてやる。だがお前は応用という人間誰しも出来る事を考えてなかった。」
「一体何をした?」
「禁呪の掌人差し指消失。人差し指が触れたモノは消える。」
「触れる?お前は俺に触れないで勝つんだろう?そんなので何が出来る!」
レントのその言葉をエルは笑いながら聞いていた。
「お前の目は節穴かい。僕が今どこに触れていると思うんだ?」
彼の言葉でレントは全てを理解した。
「まさか……空気に触れているのか!?」
「そうさ。空気に消失の呪いが伝染していき、空気はだんだん消えていく。」
「だがどうした。空気が無くなるまでにお前を倒せばいい話だ。」
「空気中に魔法粒子があるのは知っているだろ?」
魔法粒子…それは空気中に存在する粒子。
この粒子を利用する事で魔法を使うことができる。
「空気中の魔法粒子の体積比は僅か0.03%…約6分で消えていく量だ。これでお前は魔法が使えない。」
しかしエルの言葉にレントは恐れず、
「知らないのか?俺の魔力は体内で無限に精製されるんだ。まだ終わっちゃいない。」
そしてエルに向けて手をかざし、
「究極炎魔法煌天神!」
レントの掌から巨大な焔の玉が現れる。
「正義の炎で塵となれ!」
火球がエルに降り注ぐ。
「知ってるよ。それが狙いだから。」
エルは右の人差し指を維持しながら左手で金のカナヅチを持っていた。
"床は盾に"
"壁は槍に"
二つ詠唱し叩き終わるとエルの眼前に金の槍と大理石の盾ができていた。
「そんなゴミの塊で何ができる!」
「ゴミの塊?みくびっちゃあいけない。」
するとエルは笑いながらさらに詠唱を始めた。
すると壁や床から大小様々な欠片が落ちてきて、集まり、形を成していく。それを繰り返していくと無数の盾と槍ができていった。
「さっきの……お前の考察は殆ど合っていたよ。でも一つだけ間違っている。僕が持っている秘言は、2つじゃない、3つだ。」
そしてレントへ向けて手をかざす。
「’贄は交えよ’。」
盾はエルを覆うように火球を防ぎ、槍はレントの一点に集中して飛び出した。
「無駄だ!ギヤマンウ…」
「属性付与。究極炎魔法煌天神」
その詠唱で無数の石槍は煌々とした紅蓮の炎を纏う。
「⁈」
それもその筈、常人が究極魔法を使うには気の遠くなるほどの時間が必要なのである。それを数秒で彼は……
「まさか貴様も…⁉︎」
しかしエルは笑顔でそれを否定する。
「違うよ。この壁には吸贄の秘言を、そして槍に働贄の秘言を発動しているだけだ。」
「なら、どうしてお前はまだカナヅチを持っている!」
「これが3つ目の贄魔法。交贄の秘言。生物以外の物体にしか発動しない対象の魔法を利用する魔法。そして2つ以上の物体に発動すると威力が増す。」
「クソォっ!!金剛壁!!!」
レントはその場で透明な結晶のバリアでエルの攻撃で防ぐ。
「確か……究極魔法は全ての魔法を貫通するんだっけ?」
その言葉に呼応するように、火焔を纏った石槍がビシッ、ビシッとバリアにヒビを入れていく。
「やっぱり応用ってのは大事だ。例えどんな強い魔法を持った所で考えて使わないと、ゴミになる。」
バリアを貫いた石槍はどんどんレントに突き刺さる。
襲いかかる石槍にレントは悲鳴も上げずただハリネズミになるだけだった。
(さて…仕事は片付いた。)
エルは原型を留めてないレントの死体を蹴飛ばし、空っぽの城から去ろうとする。
「終わったか。やはり彼女の目に狂いはなかった。」
低い声が聞こえた。
エルが振り返ると路地裏にいたあの黒スーツの男がいた。
「また貴方ですか。」
「顔を覚えているとは。これでも影が薄いと言われるのでね。」
「そんな事はいいんです。謂われた仕事はやっておきましたよ。」
「それはご苦労。報酬にコイツをあげよう。」
黒スーツの男が胸ポケットから何かを取り出した。
透明なガラス玉だった。
「それは?」
「これは魔法璧。まぁ魔法を溜める玉だ。」
エルはその玉を受け取る。
「それでは、またどこかで。」
「あれ?名前は言わないんで?」
すると、男は薄く微笑んで
「きっと彼女がまた引き合わせてくれるだろう。また会えるその時に言おう。」
と言って去っていった。
エルも城から去ってゆく。
「ちょっ!ちょっと待ってよお!」
忘れられていたテレシアがエルのあとをついていく。
「何で置いてくの!」
「忘れてた。」
「んもう。何か美味しいもの奢りなさい。」
「お金ないのに?」
「籠手でも売りなさいよ!」
こうして2人は一人目の強者を消した。
しかし彼らは知らない。このトワダ レントがLV.999であった事を。
そしてこれからも知る由はない。
レントは玉座の肘掛けを叩いていた。
「クソッ!!まさかスコットまでやられたとは!!」
スコットとはさっきまでエルヴァー・シーズンと一戦交え、消えていったカナヅチの男の事である。
「だがこれでアイツの手がわかった。
覚悟しろ……俺の最強の魔法で皆の仇を必ず討ってやる。」
テレシアは、エルヴァーの事を知っている。
彼女は 秩序の妖精として、冒険者としての彼をずっと見ていた。
彼女から見たエルヴァーは"狂人"だった。
(ホント、強いわね。)
その狂人を眺めていると突然頭の上に温かい感触を感じる。
エルがテレシアの頭に手を置いていたのだ。
「な、何よ。」
エルはテレシアの目線に合わせる様にしゃがみ、
「怪我は無い?」
と、言いながら彼女の頭を撫でた。
……スキンシップのつもりだろうか。
「そこは"頑張ったね"とかでしょ…」
「見てただけでしょ?」
確かにそうである。
「さて……次が最後かな?」
エルは振り向いて玉座へと繋がる扉へと向かう。
トワダ レントの城は大広間と玉座の2つでしか構成されてない、いわばショボい城である。
大広間の床に大理石、壁に金や宝石といかにも金持ちのアピールが強烈な城なのだ。
「これ、売ったら凄くお金になる気が…」
テレシアはさっきまで戦いの場であった大広間を眺めながら言う。柱状となって乱立する大理石の床、あちこちに出来た大小さまざまなクレーター。パラパラと天井や壁から落ちてきている金塊や宝石。
「まぁそれが彼らにとっての名誉なんだろうね。」
そして2人は玉座への扉を開けた。
「……来たか。」
金でかためられた一室その中に黒のコートを着た青年がいた。
「よくここまで辿り着いた。俺がトワダ レントだ。」
「どうも自己紹介ありがとう。僕の名はエルヴァー・シーズン。」
「その名は知っている。」
そしてレントは掌をかざす。
「雷究極魔法・雷鎚神」
直後エルの真上からつんざく程の雷鳴と共に電撃がエルに向かって走る。
「’贄よ這い出よ'」
エルの左手に金色のカナヅチが虚空から現れる。
「創造」
そう言うと玉座の床が一気にせり出し、ドーム型の盾となりエルを雷から守る。
「盾は礫に。」
雷撃を耐えた盾はそのまま飛散し鋭利な石のナイフとなり、レントに向けて飛び出す。
「金剛壁!!」
レントが眼前に半透明の結晶の壁を生成し、石ナイフを弾く。
「礫は槍に」
弾き返された石ナイフは縦に伸び、鋭い槍へと姿を変え、再びレントに襲いかかる。
「爆散!!」
その詠唱でレントに向かっていた石槍が一つ残らず爆ぜた。
「この程度か?」
レントが言った。
「いや。」
エルはニッコリ笑いながら、手をレントにかざす。
「’贄を捧げよ’」
しかしレントは竦む事なく前へ走りそのままエルの胸に向かって飛び蹴りをした。
「!!」
蹴りの衝撃が強く、胸骨が軋む。
エルは耐えられずに大広間を隔てる壁に激突した。
臓器が損傷したのか、喀血する。
「な…んで………」
「お前のその魔法、贄魔法だろう。」
エルが目を見開く。
「贄魔法には相手を存在ごと取り込む吸贄の秘言とその存在を武器として具現化させる働贄の秘言の2つがある。」
エルは顔を上げる事なく黙っているが、自分の魔法がバレている事に不快を感じていた。
「俺の考えからすると、贄の魔法は、欠点が二つある。一つ目は使用者は存在を一つしか取り込む事ができない。そしてもう一つ使用者と対象の動きが29秒以上60秒未満の間互いに止まっている事。…つまり詠唱が始まって動くと贄の魔法は発動しない。」
まるで全て見透かされている様だった。
「そして君の右手に付けているその籠手。それも何かに触れないと効果を発揮できない。」
エルは何も言わなかった。何も言わずにただ俯いていた。だがその事が図星であるという意味を成した。
レントは壁の方へと歩いていく。
「……ヨウキとニーナとの戦いからずっと見ていたよ。」
レントが呟き始める。
「彼らは俺と同等の強さだったから、加勢せずともお前を消し去る事が出来ると思っていた。しかし、油断か慢心かこの状況。まさかスコットまで倒すとは…」
レントは激突した壁へ見向く。
「彼らは俺の大事な仲間だ。様々な冒険をし、共に感情を分かち合った仲間達だ。
だから…彼らの仇は俺が討つ。」
そう言ってレントはエルを睨んだ。
当のエルは俯いたまま口を開いた。
口の周りには血を吐いた後が残っている。
「…気持ち悪りぃ。」
「何だと?」
エルが瓦礫を取り払いながら喋り出す。
「お前と同等の強さ?笑わせてくれるよ。あんなザコと同じ強さでよくも仇を討つとか大口叩いたね。」
そしてエルはレントを指差し、鬼の様な形相で睨んだ。
「宣言しよう。僕はお前に触れずにお前を殺す。」
「舐めているのかぁッ!」
レントが手を前へかざし、詠唱し始める。
「究極炎魔法煌天神!!」
ーしかし掌からは、今にも絶えそうな小さな火の玉がポッと出ただけだった。
「なっ……どういう事だ⁉︎」
戸惑うレント、しかしこれまでエルはずっと動いていなかった。
「お前は、これまでの戦いを見てきたって言ってた。でもあれだけで僕はお前と闘おうとはしない。」
レントがエルを見る。彼は未だに指を差していた。
「お前が僕の事を熱心に分析した事は褒めてやる。だがお前は応用という人間誰しも出来る事を考えてなかった。」
「一体何をした?」
「禁呪の掌人差し指消失。人差し指が触れたモノは消える。」
「触れる?お前は俺に触れないで勝つんだろう?そんなので何が出来る!」
レントのその言葉をエルは笑いながら聞いていた。
「お前の目は節穴かい。僕が今どこに触れていると思うんだ?」
彼の言葉でレントは全てを理解した。
「まさか……空気に触れているのか!?」
「そうさ。空気に消失の呪いが伝染していき、空気はだんだん消えていく。」
「だがどうした。空気が無くなるまでにお前を倒せばいい話だ。」
「空気中に魔法粒子があるのは知っているだろ?」
魔法粒子…それは空気中に存在する粒子。
この粒子を利用する事で魔法を使うことができる。
「空気中の魔法粒子の体積比は僅か0.03%…約6分で消えていく量だ。これでお前は魔法が使えない。」
しかしエルの言葉にレントは恐れず、
「知らないのか?俺の魔力は体内で無限に精製されるんだ。まだ終わっちゃいない。」
そしてエルに向けて手をかざし、
「究極炎魔法煌天神!」
レントの掌から巨大な焔の玉が現れる。
「正義の炎で塵となれ!」
火球がエルに降り注ぐ。
「知ってるよ。それが狙いだから。」
エルは右の人差し指を維持しながら左手で金のカナヅチを持っていた。
"床は盾に"
"壁は槍に"
二つ詠唱し叩き終わるとエルの眼前に金の槍と大理石の盾ができていた。
「そんなゴミの塊で何ができる!」
「ゴミの塊?みくびっちゃあいけない。」
するとエルは笑いながらさらに詠唱を始めた。
すると壁や床から大小様々な欠片が落ちてきて、集まり、形を成していく。それを繰り返していくと無数の盾と槍ができていった。
「さっきの……お前の考察は殆ど合っていたよ。でも一つだけ間違っている。僕が持っている秘言は、2つじゃない、3つだ。」
そしてレントへ向けて手をかざす。
「’贄は交えよ’。」
盾はエルを覆うように火球を防ぎ、槍はレントの一点に集中して飛び出した。
「無駄だ!ギヤマンウ…」
「属性付与。究極炎魔法煌天神」
その詠唱で無数の石槍は煌々とした紅蓮の炎を纏う。
「⁈」
それもその筈、常人が究極魔法を使うには気の遠くなるほどの時間が必要なのである。それを数秒で彼は……
「まさか貴様も…⁉︎」
しかしエルは笑顔でそれを否定する。
「違うよ。この壁には吸贄の秘言を、そして槍に働贄の秘言を発動しているだけだ。」
「なら、どうしてお前はまだカナヅチを持っている!」
「これが3つ目の贄魔法。交贄の秘言。生物以外の物体にしか発動しない対象の魔法を利用する魔法。そして2つ以上の物体に発動すると威力が増す。」
「クソォっ!!金剛壁!!!」
レントはその場で透明な結晶のバリアでエルの攻撃で防ぐ。
「確か……究極魔法は全ての魔法を貫通するんだっけ?」
その言葉に呼応するように、火焔を纏った石槍がビシッ、ビシッとバリアにヒビを入れていく。
「やっぱり応用ってのは大事だ。例えどんな強い魔法を持った所で考えて使わないと、ゴミになる。」
バリアを貫いた石槍はどんどんレントに突き刺さる。
襲いかかる石槍にレントは悲鳴も上げずただハリネズミになるだけだった。
(さて…仕事は片付いた。)
エルは原型を留めてないレントの死体を蹴飛ばし、空っぽの城から去ろうとする。
「終わったか。やはり彼女の目に狂いはなかった。」
低い声が聞こえた。
エルが振り返ると路地裏にいたあの黒スーツの男がいた。
「また貴方ですか。」
「顔を覚えているとは。これでも影が薄いと言われるのでね。」
「そんな事はいいんです。謂われた仕事はやっておきましたよ。」
「それはご苦労。報酬にコイツをあげよう。」
黒スーツの男が胸ポケットから何かを取り出した。
透明なガラス玉だった。
「それは?」
「これは魔法璧。まぁ魔法を溜める玉だ。」
エルはその玉を受け取る。
「それでは、またどこかで。」
「あれ?名前は言わないんで?」
すると、男は薄く微笑んで
「きっと彼女がまた引き合わせてくれるだろう。また会えるその時に言おう。」
と言って去っていった。
エルも城から去ってゆく。
「ちょっ!ちょっと待ってよお!」
忘れられていたテレシアがエルのあとをついていく。
「何で置いてくの!」
「忘れてた。」
「んもう。何か美味しいもの奢りなさい。」
「お金ないのに?」
「籠手でも売りなさいよ!」
こうして2人は一人目の強者を消した。
しかし彼らは知らない。このトワダ レントがLV.999であった事を。
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