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3章・心理復讐篇
21話・信じるは金のみ~愛を知らない女(Act6)
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黒夜は冴優を都内のビジネスホテルへと連れ込んだ。
冴優は普段来慣れない場所に来て、躊躇いを隠せなかった。
「普段は外に出ないと籠っている高校生だもんな」
「あの……未成年をこういうところに連れ込むのは犯罪だと思うんですけど」
「別に逃げて通報しても良いけど、君がやってきたことをこの証拠データと一緒に警察に突き出すまでのことだ。君は未成年だから罪自体は軽いかもしれないが、君が恐れているのはそれじゃないよね?」
冴優は黒夜の不気味の笑みに恐怖を感じた。
彼の言う通りで警察に捕まっても初犯で未成年である故に大きな罪になる可能性は低い。
だが、最も恐れているのは父や兄の地位を失墜させた後のことだ。
想像するだけでどうなるかというイメージが恐怖に支配される。
「どうしたら、お金を返してくれるんですか?」
「金は返さねえよ。金を返したらお前にメリットはあっても俺たちにメリットがない」
「じゃあ、助けてやるって言葉は嘘ですか?」
「助けるとは言っていないが、助かる方法はある」
「どういう意味ですか?」
コンコン
「来たな」
黒夜はこの部屋にある人を呼び寄せていた。
店の常連のアントワープ㈱会社の重役の男性であった。
年齢は40代くらいの比較的若いがこの男性は会社でも指折りの女癖の悪さと女好きで企業界隈では有名だ。
政経に詳しい冴優はそのことも知っている。
「〇〇専務、いつもご贔屓いただきありがとうございます」
「いやいや、君の店では人目をはばからずに女遊びができるから助かっているよ」
2人は親しく話すがすぐに専務の目は冴優に行く。
「可愛い女のだね。この子の君が探し出したのかい?」
「まあ、そんなところです。今日はその子が条件を飲んだ場合には専務に献上したいと思いまして」
「相変わらず、ビジネスの話が早いね。楽しませてくれるなら私はいくらでも援助する」
その会話から冴優はなんとなくであるが、これから起こることを想像できた。
黒夜がゆっくり冴優に近づく。
「お前に選択権を与えてやる。俺は話の手の通り女で商売をしている。お前が俺の商品として働いて稼ぐのであればお前を親父や兄貴たちからは守ってやる。逃げる選択肢もやるが、それを選ぶ場合には俺たちはとことん親父や兄を巻き込んですべての目がお前に行くようにする。どれが一番自分に良いかは聡明な君なら分かるだろ」
冴優はその言葉に黒夜を睨みつけたが、同時に涙も流れた。
彼女に選択権は無い。
この場を避けられてもこの男は存在もバックもただ者ではない。
それに父親たちは切り捨てるときはとことん切り捨てる冷徹な人間で私の為に戦ってくれる存在ではない。
そう思った瞬間に彼女は自分がしてきた過ちが頭にフラッシュバックしてきた。
■回想
「〇〇さん、お父さんの会社で男に相当貢いだみたいね。このことをバレたくなくて相談してきたんでしょ?」
「でも、こんなおじさんとホテルに行くのは……」
「あなたに選択する権利あると思う? 相手はもう200万振り込んでるんだよね。 まあ、拒否するなら自分で解決策見つければ」
「ま、待って、分かったから……お願いします」
「話が違うじゃない横峯さん」
「何が?」
「本番行為は無いって言ってたのに無理やりされて、妊娠しちゃったのよ」
「私は良識のある人であれば避妊はすると思うと言っただけで責任を取るとは言ってないわ」
「そ、そんな」
「ああ、一応言っておくけど警察に通報したらアンタも巻き沿いだから」
「お、おい。俺は金払って合法でデートしただけだぞ」
「だからって高校生をホテルに連れ込んじゃダメでしょ。それにあなたの給料じゃ、こんな高級ホテルを用意するのも無理でしょ。横領の証拠を会社に送り付けることもできるけどどうする?」
■現在
冴優は人の心を傷つけた自分の行いを今、黒夜に同じことをされていることに今更ながらに気付いた。
彼女が傷つけた人がいかに心から潰されそうな苦しさでいたかが分かる。
私には逃げ場はなかった。
「さあ、選択しろ。お前はどの地獄を選ぶかをな」
(次回)
冴優への裁き決行。
(作者より)
今回は黒夜にとって二人目なので行動スピードは円滑化しました。
第2ラウンドは、あと1.2回で完結する予定です。
そして次は因縁の杉川莉乃と対峙するが、真の復讐の戦いはこれからです。
ご期待ください。
冴優は普段来慣れない場所に来て、躊躇いを隠せなかった。
「普段は外に出ないと籠っている高校生だもんな」
「あの……未成年をこういうところに連れ込むのは犯罪だと思うんですけど」
「別に逃げて通報しても良いけど、君がやってきたことをこの証拠データと一緒に警察に突き出すまでのことだ。君は未成年だから罪自体は軽いかもしれないが、君が恐れているのはそれじゃないよね?」
冴優は黒夜の不気味の笑みに恐怖を感じた。
彼の言う通りで警察に捕まっても初犯で未成年である故に大きな罪になる可能性は低い。
だが、最も恐れているのは父や兄の地位を失墜させた後のことだ。
想像するだけでどうなるかというイメージが恐怖に支配される。
「どうしたら、お金を返してくれるんですか?」
「金は返さねえよ。金を返したらお前にメリットはあっても俺たちにメリットがない」
「じゃあ、助けてやるって言葉は嘘ですか?」
「助けるとは言っていないが、助かる方法はある」
「どういう意味ですか?」
コンコン
「来たな」
黒夜はこの部屋にある人を呼び寄せていた。
店の常連のアントワープ㈱会社の重役の男性であった。
年齢は40代くらいの比較的若いがこの男性は会社でも指折りの女癖の悪さと女好きで企業界隈では有名だ。
政経に詳しい冴優はそのことも知っている。
「〇〇専務、いつもご贔屓いただきありがとうございます」
「いやいや、君の店では人目をはばからずに女遊びができるから助かっているよ」
2人は親しく話すがすぐに専務の目は冴優に行く。
「可愛い女のだね。この子の君が探し出したのかい?」
「まあ、そんなところです。今日はその子が条件を飲んだ場合には専務に献上したいと思いまして」
「相変わらず、ビジネスの話が早いね。楽しませてくれるなら私はいくらでも援助する」
その会話から冴優はなんとなくであるが、これから起こることを想像できた。
黒夜がゆっくり冴優に近づく。
「お前に選択権を与えてやる。俺は話の手の通り女で商売をしている。お前が俺の商品として働いて稼ぐのであればお前を親父や兄貴たちからは守ってやる。逃げる選択肢もやるが、それを選ぶ場合には俺たちはとことん親父や兄を巻き込んですべての目がお前に行くようにする。どれが一番自分に良いかは聡明な君なら分かるだろ」
冴優はその言葉に黒夜を睨みつけたが、同時に涙も流れた。
彼女に選択権は無い。
この場を避けられてもこの男は存在もバックもただ者ではない。
それに父親たちは切り捨てるときはとことん切り捨てる冷徹な人間で私の為に戦ってくれる存在ではない。
そう思った瞬間に彼女は自分がしてきた過ちが頭にフラッシュバックしてきた。
■回想
「〇〇さん、お父さんの会社で男に相当貢いだみたいね。このことをバレたくなくて相談してきたんでしょ?」
「でも、こんなおじさんとホテルに行くのは……」
「あなたに選択する権利あると思う? 相手はもう200万振り込んでるんだよね。 まあ、拒否するなら自分で解決策見つければ」
「ま、待って、分かったから……お願いします」
「話が違うじゃない横峯さん」
「何が?」
「本番行為は無いって言ってたのに無理やりされて、妊娠しちゃったのよ」
「私は良識のある人であれば避妊はすると思うと言っただけで責任を取るとは言ってないわ」
「そ、そんな」
「ああ、一応言っておくけど警察に通報したらアンタも巻き沿いだから」
「お、おい。俺は金払って合法でデートしただけだぞ」
「だからって高校生をホテルに連れ込んじゃダメでしょ。それにあなたの給料じゃ、こんな高級ホテルを用意するのも無理でしょ。横領の証拠を会社に送り付けることもできるけどどうする?」
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冴優は人の心を傷つけた自分の行いを今、黒夜に同じことをされていることに今更ながらに気付いた。
彼女が傷つけた人がいかに心から潰されそうな苦しさでいたかが分かる。
私には逃げ場はなかった。
「さあ、選択しろ。お前はどの地獄を選ぶかをな」
(次回)
冴優への裁き決行。
(作者より)
今回は黒夜にとって二人目なので行動スピードは円滑化しました。
第2ラウンドは、あと1.2回で完結する予定です。
そして次は因縁の杉川莉乃と対峙するが、真の復讐の戦いはこれからです。
ご期待ください。
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