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プロローグ 銀河に旅立つその前に
第3話 衛星というか虫みたいなもの
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【登場人物】
▼遺伝子能力養成学校3年生
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
結構バカ。
[セリナ]
プラズマの幼馴染の女の子。
勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。
▼プラズマ周辺者
[アリス・ジア]
電撃の能力を持つ女性で、プラズマの師匠。
男勝りな性格。
[レオン・アイシー]
氷の能力を持つ男性で、セリナの師匠。
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【お知らせ】
伏線を考えているときと、熱い展開を考えているときが
楽しいです。
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
~遺伝子養成学校2階教室・古典の授業~
「あー、であるからして最後まで戦い抜いた男女2人が和平の象徴として奉ったのが……」
教壇の真ん前の列、後ろから2番目に座る淡い金髪の青年。
彼は頭をこっくりしながらうつらうつらとしている。
大胆に睡眠に入っていないところを見ると、彼も一応突っ伏して寝ることに罪悪感はあるのだろう。
しかし古典の教師は、そんな居眠り生徒と戦ってきた歴戦の教師――ブラン・プルナマ。
彼の担当する科目は古典。
彼自身、歴史と並んで睡眠学習が多い科目だということは重々承知している。
そんな32年にわたる教師生活で彼が会得したのは、寝ている生徒を見つけ出すことだった。
そして……静かな、そして低く威厳のある声で言葉を発した。
「パーマー」
寝ていた淡い金髪の青年、サンダー・パーマー=ウラズマリー、通称プラズマに標的を定めた。
ブランもいつ言おうか迷っていたのだ。
居眠りは許せないとは言え、生徒の気持ちも分かる。
だからこそ、彼は累計20分を超えない限り注意はしない。
しかし、あの淡い金髪の青年はぶっ通しで累計20分を超えていた。
というかいつもそうだ。ブランはいつもプラズマを監視していたからこそ分かっていた。
絶対に今日もしょっぱなから寝ている、と。
「パーマー……!」
段々と強くなっていく語気。
その状況を見かねた男子生徒、プラズマの後ろの席に座るルーノ・スクラブがシャープペンシルの芯を折って飛ばした。
彼の飛ばした芯はプラズマの後頚部に命中するが……プラズマが起きる気配は全くない。
そしてついに……
「パーマー!!」
「っ!!!はいっ!!!」
突然呼ばれた彼は勢いよく気をつけの姿勢で起立した。
「うちでは教練の授業はしていないのに、えらく綺麗に起立するじゃないか。それが少しは勉学にも活かされたらいいと思うのだが……」
ブランの言う通り、プラズマは非常に綺麗な姿勢で素早く立ったかと思うと、その立った後の立ち姿まで凛々しかった。
「パーマー、もちろん授業は聞いていただろうな?」
「は、はい……!もちろんでありますっ!!」
「なら奉ったのはなんだ?」
「ならたてまつ……?」
あたふたと教科書を開いて答えを探すプラズマ。
しかし答えなどあるはずがない。
彼が開いているのは、一時限前の数学の教科書だ。
そんな彼に救いの手を差し伸べたのは、幼馴染で彼の左隣に座るセリナだった。
「My Geneよ」
「え?」
「My Geneだってば」
小声で助言するセリナの言葉通りにプラズマは答えた。
「マイジーン……です」
その答えに一瞬静寂が流れる。
しかし、その後クラス全体が笑い声に包まれた。
「ハハハハハハッ!!」
「プラズマのやつ、おとぎ話の夢でも見てたんじゃねぇ?」
「夢の中でママにご本でも読んでもらってたか!?」
教室のいたるところから、プラズマを冷やかす声が上がった。
「いやっ、これはセリナが……!」
しかし、教師であるブランの顔は全く笑っていない。
「おとぎ話ではなく、ちゃんとした答えが分かる者」
その言葉にプラズマの左隣に座る女生徒がスッと手を挙げ立ち上がり、自信満々に答えた。
「太陽の槍を奉りました」
セリナだ。
「そのとおり」
すまし顔で着席するセリナをプラズマは睨みつけた。
「セリナ……っ!!」
「寝てたプラズマが悪い」
「このやろっ……!」
「いいかぁ!高等部の特進を目指すなら、この2人が『Rの少年兵』と呼ばれていたこともちゃんと覚えておくように」
「間違っても御伽噺の万能遺伝子なんて書くなよ。採点者が笑い転げるからな」
教師のその言葉に再度クラス全体に笑いが起こった。
「ハハハハハハ!!」
「ふぅ……」
そうしてひと段落着いたと感じたプラズマは程なくして再度頭を縦に振り始めた。
「こらパーマー!!!」
「はいっっ!!」
▽▽▽
▽▽
▽
~昼休憩~
昼休みになり、プラズマが後ろ席のルーノの方を向いて、パンをかじりながら責め立てていた。
「ルーノ!お前起こすならしっかり起こしてくれよ!おかげで俺怒られたじゃん!」
「お前は起こしてもらってる分際で……!」
次にプラズマは横に座っているセリナの方を向けた。
「それにセリナ!さっき俺をはめやがったな!!」
「だから、いつまでも寝てるあんたが悪いんでしょ!?」
ルーノは思い出し笑いしそうになるのを何とか耐えていた。
「でも面白かったぜ?だって……」
『少年少女が奉ったのは“まいじーん”です!!!』
ルーノの真似するプラズマの目はブッ飛んでいた。
「そんなアホみたいな言い方してないだろ!!」
「まぁでもお前が言うように少年兵たちが“槍”なんかじゃなくて、“御伽噺”を奉ってりゃ世界は平和なんだろうけどな」
「おれじゃねぇっての……というか昔って少年兵とかいたんだな」
プラズマはそう言うと口一杯に残りのパンを頬張った。
その言葉にセリナは呆れていた。
「今だって世界には少年兵がいるでしょうが……」
「ほうはの!?はひへ!?」
あまりの驚きにプラズマは口一杯のパンを吹き散らしながら感想を口にした。
「プラズマ汚いってば!あんたはもうちょっと世界情勢やら歴史やらを勉強しなさいよ……!」
汚いプラズマのためにルーノがセリナに続いて説明を始めた。
「この星は比較的安全だから少年兵なんて存在はいないが、他の星では俺達よりも小さな子供達が戦争や紛争に参加している」
「私達だって無関係ってわけじゃないのよ?」
そう言いながらセリナはプラズマの飛ばしたパンを一つ一つティッシュで拾っている。
「そうなの?」
「学校に通う子供が人身売買の組織に攫われて売られたりすることだって珍しくないの」
セリナの言う通り、世界中で多くの子供が行方不明になっており、その後紛争地域の戦死者として発見されることも珍しくなかった。
約8年前に起きた世界を巻き込んだ戦争。
その戦争の大局は半年も経たないうちに終結したが、局地的な紛争は未だに続いていた。
その戦力……特に最前線に配置するための歩兵を補充する目的で子供達が攫われ、人身売買の末に少年兵とされていたのだ。
その人身売買と関連してか、セリナがある事件を話題に出した。
「ついこの間登山に行ったC組の6人。遭難して遺体で見つかったって話」
プラズマは目を点にしたアホ面のまま、カフェオレをストローで啜っている。
そしてセリナの話に反応したのはルーノだった。
「あぁ、まさかみんな死んでたとはな……」
「あれ実は遺体は見つかってないの」
それを聞いたルーノは眉間にしわを寄せた。
「それが攫われて売られたって言うんじゃねぇだろうな?」
「ルーノだってわかるでしょう?この星に紛争もなければ、貧困地区もない。もちろん盗賊や山賊の類もいない。なのに遺体が見つからないなんてことがある?」
納得がいかない様子で頭を掻くルーノだが、ふと気になったことがあった。
「てかなんでお前、遺体見つかってないって知ってんだよ」
「私の師匠も捜索に当たっていたからよ」
セリナの師匠――レオン・アイシーが捜索に参加していたとしても『あれは人攫いだな』などと言えるはずもなく、誤魔化すしかなかった。
「ったく、あの事故が人攫いなんてデマだよ、デマ」
「ルーノ、誘拐には気をつけた方がいい」
「俺は大丈夫だ、強いからな」
2人を傍目にプラズマはデザートのリンゴを頬張っていた。
「“自分は関係ない”みたいな雰囲気出してるけど、プラズマも気をつけなきゃいけないのよ!?簡単な煉術も使えないんだから」
「あ~?へいへい」
「だからプラズマ……私と一緒に帰りましょ」
セリナのその言葉にルーノが激しく反応した。
「んだとぉ!?お前彼女気取ってんじゃねぇぞ!?」
「か……彼女なんて気取ってないわよ!!」
「学生に必要なのは友情だ!友情こそ青春!な?プラズマ!」
プラズマはもしゃもしゃとりんごをかじり続けている。
「友情でも青春でもどっちでもいいから静かにしてくれ」
「ダメよプラズマ!それじゃどっちもルーノじゃない!!」
高等部に入ってからというもの、いつもこんな感じでセリナとルーノがプラズマを取り合っていた。
「何が友情よ。あんたが他の女子から相手にされないからって、プラズマも巻き込まないでよ」
「う、うるせぇ!!プラズマはなぁ!お前という幼馴染もいて、美人な師匠もいて……不公平だ!!!俺は別にセリナが良い訳じゃないけど、その“幼馴染”って設定が羨ましいんだ!チクショーー!!」
「設定言うな」
セリナは冷徹な目をして、ルーノを睨みつけている。
そして突然心内を吐露したルーノをプラズマは若干引いた目で見ていた。
「ルーノ、お前心の声めちゃくちゃ出てるぞ。」
「プラズマ!お前どうせ下校した後はアリスさんのとこ行くんだろ!?俺も連れてけよ!!!」
「やだよ。セリナ以外を連れて行こうとすると怒られるんだよ。アリスってあぁ見えてシャイだから」
「プラズマ!今日だけでいいから俺も連れて行ってくれ!!」
ルーノは両手を合わせ、頭を下げてお願いしている。
「煉術の特訓したいんだよ!!頼む!!!一生のお願い!!!」
「お前必死か」
プラズマは呆れている。
ルーノの必死の願いに応えたのはセリナだった。
「じゃぁ煉術は私が見ましょうか?ルーノ君?」
セリナは分かりやすくニッコリと悪い顔をしている。
「なんだセリナ!お前プラズマを独り占めされるのが嫌なんだろ!!」
「ち、違う!そうじゃない!ほら、行きましょプラズマ。午後からは外で煉術の授業よ。」
いきなりセリナに手を引かれたプラズマは椅子を倒しながら立ち上がった。
「ルーノはプラズマの周りを飛びたがってる衛星とか虫みたいなものだから」
そう吐き捨てると、セリナはプラズマを連れて教室を後にした。
彼らの後ろ姿を見ながらルーノは悔しそうに歯ぎしりをしていた。
「セリナのやつ……!」
To be continued.....
【EXTRA STORY】
「なんだよお前。なんで邪魔するんだよ!」
「それはこっちのセリフよ。ルーノ、あなた一体どういうつもり?」
「俺はプラズマのためを思って言ってんだ!」
「そもそもなぁ!お前はあいつの幼馴染気取りのつもりかもしれないけどなぁ、べったりすぎるんだよ!」
「アリスさんもお前もプラズマを……」
「なにそれ、今回のことに全く関係ないでしょう?私達美人に相手されないからってプラズマに嫉妬してるわけ?」
「そういうのじゃないっていつも言ってるだろ!茶化すなよ!俺はただ正しい世界を創りあげるためにだな……」
「はいはい、もうわかったから。もういい?」
「お前ら何言い争ってんだよ。」
「聞いてよプラズマ!さっき私がプラズマにしたイタズラのこと、ルーノが古典のプルナマ先生にチクろうとしてるんだよ!?」
「当ったり前だ!!お前プラズマをはめといて、そりゃねぇだろ!!」
「あれはプルナマ先生がジョークを笑って流してくれる人かどうかを見定めただけよ!!プラズマを使って!」
「なんだそりゃ!プラズマを使うんじゃねぇよ!」
「プルナマ先生、セリナが俺に言ったの知ってるぞ?」
「『彼女、実は御伽噺を信じているタイプだね』って言ってたけど?」
「え?」
「うそっ……?」
To be continued to next EXTRA STORY.....?
【登場人物】
▼遺伝子能力養成学校3年生
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
結構バカ。
[セリナ]
プラズマの幼馴染の女の子。
勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。
▼プラズマ周辺者
[アリス・ジア]
電撃の能力を持つ女性で、プラズマの師匠。
男勝りな性格。
[レオン・アイシー]
氷の能力を持つ男性で、セリナの師匠。
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
【お知らせ】
伏線を考えているときと、熱い展開を考えているときが
楽しいです。
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~遺伝子養成学校2階教室・古典の授業~
「あー、であるからして最後まで戦い抜いた男女2人が和平の象徴として奉ったのが……」
教壇の真ん前の列、後ろから2番目に座る淡い金髪の青年。
彼は頭をこっくりしながらうつらうつらとしている。
大胆に睡眠に入っていないところを見ると、彼も一応突っ伏して寝ることに罪悪感はあるのだろう。
しかし古典の教師は、そんな居眠り生徒と戦ってきた歴戦の教師――ブラン・プルナマ。
彼の担当する科目は古典。
彼自身、歴史と並んで睡眠学習が多い科目だということは重々承知している。
そんな32年にわたる教師生活で彼が会得したのは、寝ている生徒を見つけ出すことだった。
そして……静かな、そして低く威厳のある声で言葉を発した。
「パーマー」
寝ていた淡い金髪の青年、サンダー・パーマー=ウラズマリー、通称プラズマに標的を定めた。
ブランもいつ言おうか迷っていたのだ。
居眠りは許せないとは言え、生徒の気持ちも分かる。
だからこそ、彼は累計20分を超えない限り注意はしない。
しかし、あの淡い金髪の青年はぶっ通しで累計20分を超えていた。
というかいつもそうだ。ブランはいつもプラズマを監視していたからこそ分かっていた。
絶対に今日もしょっぱなから寝ている、と。
「パーマー……!」
段々と強くなっていく語気。
その状況を見かねた男子生徒、プラズマの後ろの席に座るルーノ・スクラブがシャープペンシルの芯を折って飛ばした。
彼の飛ばした芯はプラズマの後頚部に命中するが……プラズマが起きる気配は全くない。
そしてついに……
「パーマー!!」
「っ!!!はいっ!!!」
突然呼ばれた彼は勢いよく気をつけの姿勢で起立した。
「うちでは教練の授業はしていないのに、えらく綺麗に起立するじゃないか。それが少しは勉学にも活かされたらいいと思うのだが……」
ブランの言う通り、プラズマは非常に綺麗な姿勢で素早く立ったかと思うと、その立った後の立ち姿まで凛々しかった。
「パーマー、もちろん授業は聞いていただろうな?」
「は、はい……!もちろんでありますっ!!」
「なら奉ったのはなんだ?」
「ならたてまつ……?」
あたふたと教科書を開いて答えを探すプラズマ。
しかし答えなどあるはずがない。
彼が開いているのは、一時限前の数学の教科書だ。
そんな彼に救いの手を差し伸べたのは、幼馴染で彼の左隣に座るセリナだった。
「My Geneよ」
「え?」
「My Geneだってば」
小声で助言するセリナの言葉通りにプラズマは答えた。
「マイジーン……です」
その答えに一瞬静寂が流れる。
しかし、その後クラス全体が笑い声に包まれた。
「ハハハハハハッ!!」
「プラズマのやつ、おとぎ話の夢でも見てたんじゃねぇ?」
「夢の中でママにご本でも読んでもらってたか!?」
教室のいたるところから、プラズマを冷やかす声が上がった。
「いやっ、これはセリナが……!」
しかし、教師であるブランの顔は全く笑っていない。
「おとぎ話ではなく、ちゃんとした答えが分かる者」
その言葉にプラズマの左隣に座る女生徒がスッと手を挙げ立ち上がり、自信満々に答えた。
「太陽の槍を奉りました」
セリナだ。
「そのとおり」
すまし顔で着席するセリナをプラズマは睨みつけた。
「セリナ……っ!!」
「寝てたプラズマが悪い」
「このやろっ……!」
「いいかぁ!高等部の特進を目指すなら、この2人が『Rの少年兵』と呼ばれていたこともちゃんと覚えておくように」
「間違っても御伽噺の万能遺伝子なんて書くなよ。採点者が笑い転げるからな」
教師のその言葉に再度クラス全体に笑いが起こった。
「ハハハハハハ!!」
「ふぅ……」
そうしてひと段落着いたと感じたプラズマは程なくして再度頭を縦に振り始めた。
「こらパーマー!!!」
「はいっっ!!」
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~昼休憩~
昼休みになり、プラズマが後ろ席のルーノの方を向いて、パンをかじりながら責め立てていた。
「ルーノ!お前起こすならしっかり起こしてくれよ!おかげで俺怒られたじゃん!」
「お前は起こしてもらってる分際で……!」
次にプラズマは横に座っているセリナの方を向けた。
「それにセリナ!さっき俺をはめやがったな!!」
「だから、いつまでも寝てるあんたが悪いんでしょ!?」
ルーノは思い出し笑いしそうになるのを何とか耐えていた。
「でも面白かったぜ?だって……」
『少年少女が奉ったのは“まいじーん”です!!!』
ルーノの真似するプラズマの目はブッ飛んでいた。
「そんなアホみたいな言い方してないだろ!!」
「まぁでもお前が言うように少年兵たちが“槍”なんかじゃなくて、“御伽噺”を奉ってりゃ世界は平和なんだろうけどな」
「おれじゃねぇっての……というか昔って少年兵とかいたんだな」
プラズマはそう言うと口一杯に残りのパンを頬張った。
その言葉にセリナは呆れていた。
「今だって世界には少年兵がいるでしょうが……」
「ほうはの!?はひへ!?」
あまりの驚きにプラズマは口一杯のパンを吹き散らしながら感想を口にした。
「プラズマ汚いってば!あんたはもうちょっと世界情勢やら歴史やらを勉強しなさいよ……!」
汚いプラズマのためにルーノがセリナに続いて説明を始めた。
「この星は比較的安全だから少年兵なんて存在はいないが、他の星では俺達よりも小さな子供達が戦争や紛争に参加している」
「私達だって無関係ってわけじゃないのよ?」
そう言いながらセリナはプラズマの飛ばしたパンを一つ一つティッシュで拾っている。
「そうなの?」
「学校に通う子供が人身売買の組織に攫われて売られたりすることだって珍しくないの」
セリナの言う通り、世界中で多くの子供が行方不明になっており、その後紛争地域の戦死者として発見されることも珍しくなかった。
約8年前に起きた世界を巻き込んだ戦争。
その戦争の大局は半年も経たないうちに終結したが、局地的な紛争は未だに続いていた。
その戦力……特に最前線に配置するための歩兵を補充する目的で子供達が攫われ、人身売買の末に少年兵とされていたのだ。
その人身売買と関連してか、セリナがある事件を話題に出した。
「ついこの間登山に行ったC組の6人。遭難して遺体で見つかったって話」
プラズマは目を点にしたアホ面のまま、カフェオレをストローで啜っている。
そしてセリナの話に反応したのはルーノだった。
「あぁ、まさかみんな死んでたとはな……」
「あれ実は遺体は見つかってないの」
それを聞いたルーノは眉間にしわを寄せた。
「それが攫われて売られたって言うんじゃねぇだろうな?」
「ルーノだってわかるでしょう?この星に紛争もなければ、貧困地区もない。もちろん盗賊や山賊の類もいない。なのに遺体が見つからないなんてことがある?」
納得がいかない様子で頭を掻くルーノだが、ふと気になったことがあった。
「てかなんでお前、遺体見つかってないって知ってんだよ」
「私の師匠も捜索に当たっていたからよ」
セリナの師匠――レオン・アイシーが捜索に参加していたとしても『あれは人攫いだな』などと言えるはずもなく、誤魔化すしかなかった。
「ったく、あの事故が人攫いなんてデマだよ、デマ」
「ルーノ、誘拐には気をつけた方がいい」
「俺は大丈夫だ、強いからな」
2人を傍目にプラズマはデザートのリンゴを頬張っていた。
「“自分は関係ない”みたいな雰囲気出してるけど、プラズマも気をつけなきゃいけないのよ!?簡単な煉術も使えないんだから」
「あ~?へいへい」
「だからプラズマ……私と一緒に帰りましょ」
セリナのその言葉にルーノが激しく反応した。
「んだとぉ!?お前彼女気取ってんじゃねぇぞ!?」
「か……彼女なんて気取ってないわよ!!」
「学生に必要なのは友情だ!友情こそ青春!な?プラズマ!」
プラズマはもしゃもしゃとりんごをかじり続けている。
「友情でも青春でもどっちでもいいから静かにしてくれ」
「ダメよプラズマ!それじゃどっちもルーノじゃない!!」
高等部に入ってからというもの、いつもこんな感じでセリナとルーノがプラズマを取り合っていた。
「何が友情よ。あんたが他の女子から相手にされないからって、プラズマも巻き込まないでよ」
「う、うるせぇ!!プラズマはなぁ!お前という幼馴染もいて、美人な師匠もいて……不公平だ!!!俺は別にセリナが良い訳じゃないけど、その“幼馴染”って設定が羨ましいんだ!チクショーー!!」
「設定言うな」
セリナは冷徹な目をして、ルーノを睨みつけている。
そして突然心内を吐露したルーノをプラズマは若干引いた目で見ていた。
「ルーノ、お前心の声めちゃくちゃ出てるぞ。」
「プラズマ!お前どうせ下校した後はアリスさんのとこ行くんだろ!?俺も連れてけよ!!!」
「やだよ。セリナ以外を連れて行こうとすると怒られるんだよ。アリスってあぁ見えてシャイだから」
「プラズマ!今日だけでいいから俺も連れて行ってくれ!!」
ルーノは両手を合わせ、頭を下げてお願いしている。
「煉術の特訓したいんだよ!!頼む!!!一生のお願い!!!」
「お前必死か」
プラズマは呆れている。
ルーノの必死の願いに応えたのはセリナだった。
「じゃぁ煉術は私が見ましょうか?ルーノ君?」
セリナは分かりやすくニッコリと悪い顔をしている。
「なんだセリナ!お前プラズマを独り占めされるのが嫌なんだろ!!」
「ち、違う!そうじゃない!ほら、行きましょプラズマ。午後からは外で煉術の授業よ。」
いきなりセリナに手を引かれたプラズマは椅子を倒しながら立ち上がった。
「ルーノはプラズマの周りを飛びたがってる衛星とか虫みたいなものだから」
そう吐き捨てると、セリナはプラズマを連れて教室を後にした。
彼らの後ろ姿を見ながらルーノは悔しそうに歯ぎしりをしていた。
「セリナのやつ……!」
To be continued.....
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「それはこっちのセリフよ。ルーノ、あなた一体どういうつもり?」
「俺はプラズマのためを思って言ってんだ!」
「そもそもなぁ!お前はあいつの幼馴染気取りのつもりかもしれないけどなぁ、べったりすぎるんだよ!」
「アリスさんもお前もプラズマを……」
「なにそれ、今回のことに全く関係ないでしょう?私達美人に相手されないからってプラズマに嫉妬してるわけ?」
「そういうのじゃないっていつも言ってるだろ!茶化すなよ!俺はただ正しい世界を創りあげるためにだな……」
「はいはい、もうわかったから。もういい?」
「お前ら何言い争ってんだよ。」
「聞いてよプラズマ!さっき私がプラズマにしたイタズラのこと、ルーノが古典のプルナマ先生にチクろうとしてるんだよ!?」
「当ったり前だ!!お前プラズマをはめといて、そりゃねぇだろ!!」
「あれはプルナマ先生がジョークを笑って流してくれる人かどうかを見定めただけよ!!プラズマを使って!」
「なんだそりゃ!プラズマを使うんじゃねぇよ!」
「プルナマ先生、セリナが俺に言ったの知ってるぞ?」
「『彼女、実は御伽噺を信じているタイプだね』って言ってたけど?」
「え?」
「うそっ……?」
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ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
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