初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺

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第15章 アルバイト編

第97話 初恋の人と俺の子供の名前

「五十鈴君? ねぇ、五十鈴君大丈夫?」

「えっ? ああ、大丈夫……とは言えないなぁ……」

 俺達三人は事務所裏にあるベンチに腰かけている。
 
 俺の両隣りには稲田と岸本が腰をかけていたが、あまりにも俺が落ち込んだ顔をしているので稲田が心配しながら声をかけてきた。

 そして岸本も続いて話しかけてくる。

「そりゃあ、可愛い妹ちゃんの初恋の相手が高山君だと知って兄としてはショックなのは分かるけどさぁ……別にそこまで落ち込まなくてもいいんじゃないの?」

 岸本の言う通りでは有るが、さすがに俺の親友の高山のことが好きっていうのは複雑な気持ちになってしまう。

 それに高山は『前の世界』でどちらに問題があったのかは知らないが離婚をしている。そんな男に可愛い妹が……

 ってか、たかが中学生の初恋なんだから、気にするほどのことではないというのもよく分かっているし、この先、好きな人なんてコロコロ変わっていくもんだということも理解はしている。

 だがしかし、この俺自身が『この世界』で『幼稚園児』からの初恋を成就しようと奮闘しているのに、奏は大丈夫、直ぐに高山のことなんて好きじゃなくなるって思えるか?

 俺が諦めるわけが無いのに奏は諦めたり忘れたりするだろうだなんて到底思えない。
 それよりも思わず高山が将来、俺にとって義理の弟になる想像をしてしまう程だ……

 そういえばまだ今年になってからアイツに『結婚したら絶対に奥さんを大切にして決して離婚しないように』ってことを言ってなかったな……そろそろ言っておこうか……

 それも今までよりも真剣な顔でな……


「ねえねぇ五十鈴君? 少し奏ちゃんのことは忘れて違うお話しようよ?」

 稲田が微笑みながらそう言ってきたので俺もそれもそうだなと思い頷いた。

「もしかしていなっち、五十鈴君に『あの事』を言うつもり?」

 岸本が何か意味深な言い方を稲田にしている。

「勿論よ。きしもだって五十鈴君に報告したかったんじゃないの? それにお別れの挨拶もするんでしょ?」

「えっ、お別れだって!?」

 岸本は下を向いたまま小さく頷いた。

「お別れってどういうことだよ、岸本? 引っ越しでもするのか?」

「ま、まぁ、そんな感じかな……」 

 岸本が話辛そうなので稲田が代わりに説明をしだした。

 稲田の説明によると、中三の秋の『演劇コンクール』で最優秀賞を受賞した岸本は俺に『将来、石田の代わりに女優になる気はないか?』と言われてから本気で考え、将来女優になる為にとある劇団に入団したそうだ。

 そして今年の春にその劇団の公演があり、その公演を観に来ていた芸能関係者からスカウトされたそうだ。

 ただ、その芸能事務所は東京にあり、そこに所属している岸本と同年代の子達は同じ東京にある『堀田学園高校』の『芸能科』に通うことになっているそうだ。

 岸本はかなり悩んだ末、『女優』になる為の早道になると思い、両親を説得して東京に行く決意をした。

 幸い岸本の父親は単身赴任で東京勤務だったということもあり。この際、家族全員で東京に引っ越す事になったらしい。

「岸本凄いな……もう数年したらドラマや映画に出演しているかもしれないな? その日が来るのを楽しみにしてるよ。俺も応援するから頑張ってくれよな」

「うん、有難う……私頑張る……浩美の分まで頑張るわ」

「でも岸本が人気女優になったら雲の上の人になってしまって相手してもられなくなっちゃうかもな? 今のうちにサインもらっておこうかな? ハハハ……」

「バッ、バカな事を言わないでよ、五十鈴君!? 私はいつまで経っても私だし、みんなとはずっと友達でいたいんだから……それと……」

「それと?」

「それと私に女優を勧めてくれたのは五十鈴君なんだし責任があるんだからね。最後まで私を見守る義務があるんだから!!」

 岸本が顔を真っ赤にしながらそう言ってきた。

 俺は少し困惑したが笑顔でこう答えた。

「分かった分かった。俺は最後まで『女優・岸本順子』としての姿を見守ってるから……それに仕事で疲れた時はいつでもこっちに帰っておいでよ。その時はまたみんなで集まって遊びにでも行こう!!」

「有難う……でも一つだけ訂正させてくれないかな?」

「訂正? 何を訂正するんだ?」

「えっとね……私の名前なんだけど、もし女優デビューできた時には名前を変えようと思っているの……」

「あっ!! そう言えばきしも、前にそんなこと言ってたわね?」

 稲田が思い出したといった顔で目を大きく見開きながら言っている。

「じゃぁ、どんな名前でデビューするんだ?」

「『岸本ひろみ』よ。私は浩美と一緒に女優になるって決めたんだから、せめて名前の一部だけでも浩美の名前を入れたいの……」

 俺は『岸本ひろみ』という名前を聞き、少しグッときてしまった。
 涙が出そうになってしまったが、何とかこらえて岸本にこう言った。

「絶対に石田は喜ぶと思うし、きっといつも傍にいて岸本のことを助けてくれるよ……」

「そうだといいなぁ……浩美に会いたいなぁ……グスンッ……」

 岸本は俺とは違い溢れてくる涙をこらえることはできず、頬の上を流れ落ちていくのであった。

 俺はそんな岸本に少しでも笑顔になってもらおうと咄嗟にこう言ってみた。

「お、俺もさ……将来結婚して子供が出来て、その子供が女の子だったら名前を『ひろみ』にしたいんだけど……それっておかしいかな?」

「 「ぜっ、全然、おかしくないよ!!」 」

「へっ!?」

 左右から俺に詰め寄り、顔を近づけてきた稲田と岸本が同時に大きな声でそう返事をしてきたので俺は驚いてしまったと同時に美少女達の顔が近過ぎて恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になってしまった。

 そして数分後……


「あっ? そろそろ俺、お昼ご飯食べないと休憩時間無くなっちゃうよ。しかし奏達、遅いよなぁ……『急流すべり』結構お客さんが多いのかもしれないな?」

 それとも奏が高山と仲良く話をして時間がかかっているとか……?

 グフッ!!

 イヤイヤイヤッ!! 今はそんな事を考えるのは止めておこう……

「川ちゃんも久しぶりに五十鈴君とお話したいって言ってたのになぁ……でもきしもと違って私達は当分の間は地元にいるんだから、またいつでも会えるよね?」

「そうだな。いつでも会えるさ……」

 俺は稲田達とわかれて事務所に入って行った。

 事務所には同じ休憩時間の佐々木が先に昼食を終わらせ、俺に何か言いたげな様子だったが何も言わずに事務所から出て行った。

 佐々木達に稲田達を紹介した方が良かったかな?

 それに『五十鈴ひろみ』かぁ……
 『つねちゃん』は賛成してくれるだろうか……?

 俺はそんな先走った事を考えながら母さんが作ってくれた弁当に箸をつけるのだった。



――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。

奏のことが心配でたまらない隆
そして岸本の話にも衝撃をうける。

そして『ひろみ』という名前についてもそれぞれ色々な思いが......

佐々木も隆に何か言いたげの様子

果たして今後の展開はどうなっていくのか?

どうぞ次回もお楽しみに!
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