人類は余裕があるみたいです!

西蓮寺 飛鳥

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人間界編

第1話 超新星

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2349年  4月 入学式


「え~、皆さん、この度は私立希望学園に入学おめでとうございます。この学園には選ばれた者だけが入学できます。皆さん、どうぞ自信を持って学園生活を送って下さい、私からは以上です」

パチパチパチパチと学園長が入学祝いの言葉を言うと拍手が聞こえた。

        ーー1時間30分後ーー

入学式が終わった後、1年生は新入生歓迎会に参加していた。

「あ~、楽しみだなー」

「そうだね、いまからワクワクするね」

つぶやく男子生徒にそのつぶやきを聞いた女子生徒が共感していた。
 生徒の大半はざわざわと先生の話しが始まるまで喋っていたが遂にその音沙汰は消え、静まり返った。

「皆んな~静かにしろ~」

先生の声とともに皆が喋るのを止め素早く先生の方を向いた。

「よし、静かになったな。それでは、今から新入生歓迎会を開催する」

“イェーイ”と言っている者もいるがそんなに面白い事や楽しい事をする会ではないような気がすると時雨は思った。

「それじゃあまずは軽く学園のシステムを説明するぞ」

“おお”や“待ってました”などの声が聞こえてくるが時雨は嫌な予感がしてならなかった。

「まずはランクからだ。この学園のクラスはランク別に別れていて下から順に訓練三等兵科、訓練二等兵科、訓練一等兵科、三等兵科、二等兵科、一等兵科、達人科、侍科となっている」

“うわ段階多いな”と声を漏らす者もいるが“何だそんなもんなのか”と言う者もいる。

「ランクは基本一段階ずつ上がるが一気に2、3段階上がる奴もいるからな。そしてランクが上がると教室が変わるから注意してくれ。ちなみにランクが上ったことは担任の先生が帰り学活で知られてくれる。そして、そのランクは翌日から適応されるのだが、翌日だと準備が間に合わないかもしれないので準備が出来た日にそのランクの担任に連絡をしてからその教室に移動してもらう。それでは、何か質問はあるか?」

「はいは~い、ランクが上がる基準は何ですか?」

短髪で茶髪の女子生徒が元気良く先生に尋ねると。

「たしか芽居次 烈凪めいじ れなだな、基準か…そうだな身体能力の高さや魔法の強さ、身のこなしに魔法の組み合わせ方などの長けている所が有れば上がれると思うぞ」

「なるほど、ありがとうございます」

烈凪は疑問が晴れると一礼し、感謝の言葉を述べた。

「うむ、その他にはいないか?」

辺りからは“何かあるかな”とか“これ聞く事かな”などと喋っている。

「いないな、それじゃあ次に職業と時間割を決めてもらう、プリントを配るから貰った人から書き始めてくれ。」

「先生、時間割って自分で決めるんですか?」

眼鏡をかけ、三つ編みの真面目そうな女子生徒が今度は質問していた。

佐々木 咲ささき さき、その通りだ」

他の生徒は“えっマジで”とか“俺全然考えてなかったわ”、“やっべ”と言う者もいる。

「……………」

今黙っているのは新入生歓迎会をそんなに面白い会だと思っていなかったこの“物語”の主人公、時雨だ。
 そんな彼はこのプリントを配られたと同時に一つの疑問が浮かんだ。
“職業の所のメインとサブって何だ?”
と心の中で発した。

「どうしたんだ?」

時雨が悩んでいると隣から男子生徒が話しかけてきた。

「いや、職業って所のメインとサブが分からなくって」

“さっぱり分からない”と両肩を上げるポーズしながら言ったので男子生徒は若干呆れ気味に返答した。

「おいおい、そんなのこの学園のパンフレットに書いてあるぜ」

“何で知らないんだ”、と付け足していたが時雨はとくに気にせずに

「そうなのか?」

と再び聞いた。

「ああ、見てみればいいじゃないか」

胸の内ポケットから学園のパンフレットを取り出しみてみると

「あっ、本当だ、ありがとう」

「礼には及ばないぜ、これ位」

キラッと八重歯を見せながらサムズアップをした男子生徒に時雨は再度お礼を言った。

「そうか、ありがとう」

「だから、礼には及ばないと言ったろ?」

“同じ事を言わせるな”、と付け加えて

「はは、そうか」

「ああ、そうだせっかく話したんだから名前くらい教え合おうぜ」

神崎 時雨かんざき しぐれだ、これから宜しく」

「俺は河上 信かわかみ しんだ、こちらこそよろしく」

「じゃあ、そろそろ書くか」

「そうだな、遅れたらヤバイし」

そう言って二人は書き始めるのだった。



      ー数分後ー


「終わった~」

「信はメインとサブどうした?」

「メインをガンナー、サブを拳闘士にしたぞ、そう言うお前は?」

「メインを侍、サブを鍛冶師にする、これ位しか得意な事が無くてな」

「へ~、身のこなしが良いのか」

「まあ、そんなとこだな。お前こそ、射撃が得意なのか?」

「う~ん、入試だと的の中心に9割当たったんだけど………」

「すごいな、俺絶対に当たんないと思う」

「そこから!」

「お、おう……」

「よくこの学園入れたな」

呆れ顔の信を何を言っているか分からないといった表情の時雨はある事に気が付いた。

「? ああ、言ってなかったな」

時雨が“そうだ、まだ言ってなかったな”と改まって思った。

「何をだ?」

「俺、推薦で入ったんだよ。だから入試してないんだ」

「え、そうなのか!?」

信が余りにも驚いていたので時雨は尋ねてみた。

「何かまずかったのか?」

すると信は小声で説明してくれた。

「実はな、この学園、推薦だとめったに入れないんだ」

「何故?」

「この学園が選ばれた者だけが入学できるってのは知ってるだろ?」

「ああ、それ位は」

「だから入試が無い推薦は先生に実力を見せられない分評価されずらいって訳だ」

「なるほど、毎年どれ位受かるんだ?」

「100人居たら一人受かるか受からないかだな」

「そんなに少ないのか…」

「ああ、てことは時雨、結構すごい事したんだなお前」

「いや、大した事はしてないよ」

「はは、そうか、でも端から見るとすごい事をしたんだな」

「…どうだかな」

時雨はこの時、言葉を濁した。

時雨は心の中で“はぁ、すごい…事……か、俺は何ができたっていんうんだ”




     ーー三年前ーー


「あー、文化祭疲れたー」

そう時雨が伸びをしながら言うと。

パンッ

近くから銃声の様な音が聞こえて来た。

「…………」

時雨は無言で銃声の聞こえた場所に近づいていった。
ついた場所はコンビニだった。

「よし、誰も見てないな」

時雨はコンビニの辺りに誰もいないなのを確認すると文化祭でなんとなく買ったエジプト神話のアヌビスの様な被り物を被って中に入った。

「おらおら、さっさと金出さんかい!」

強盗の手には一丁の拳銃が有り、それを店員に向けていた。

「は、はい!」

店員は慌ててお金を取り出している。

「おら、お前等も、死にたくなければ警察に通報するなよ!」

とコンビニに来ていた利用者にも銃を向けた。

「す、すみません」

と男性利用者が

「は、はい」

と女性利用者が言った。

「ふん、分かればいい」

強盗がそう言った瞬間、銃を下に下げた、時雨はこの下げる動作の時点で鞄の中に入っているこれまた文化祭で被り物に付いてきた日本刀風の木刀、アヌビスの様な被り物とこれではアンバランスだと言ったのだが“まあまあ、お気にせずに”と言われてしまった物である。

そして、一瞬にして強盗との距離を詰めて、銃を握っている方の肘目掛けて

「はっ!」

と言う掛け声と共に放った一太刀は閃光の様に素早く強盗の肘を粉砕した。

「ぐ、ぐわ!」

肘を砕かれた強盗の手にはもう、銃は無い、しかし、時雨はもう片方の手で銃を拾ってしまうのでわないかと焦っていた。

「おまえぇ!よくも俺の肘を砕いてくれたな」

「…………」

余りにもこの強盗がマヌケだったので時雨は心の中で

“よし、銃をどっかに蹴飛ばそう”

「えいっ」

スースススーと蹴った拳銃が床を滑って行く。

「今の内に警察に通報をお願いします」

「は、はい」

先程とは別の女性利用者に通報を頼み、強盗の方へと向き直る。

「テメエ、ふざけてんじゃねえぞ!!」

「もとより、肘の砕けたあんたには勝ち目は無かったよ」

「テメエが砕いたんじゃねえか!」

「ああ、銃が邪魔だったからな、それよりも早く降参した方が良いと思うが、戦闘でもするか?」

「ふん、降参はしないな、お前は運が悪い、俺は昔、希望学園の拳闘士だったのさ、左さえ有れば十分だ!」

少し挑発をしつつ降参を勧めたのだが、どうやら相手は愚かだったようだ。右腕が使えず、武器も無い状態で敵う筈も無いというのに。

「そうか、それは残念だ」

“降参するって言えばこれで済んだのに”とつぶやく様に言い、

ドゴッ

「ぐっ!」

時雨の膝蹴りを顎にくらった強盗はバタッと倒れた、脳震盪を起こして気絶したのだ。

「ふう、終わったな」

「あの、ありがとうございます」

男性利用者がお礼を言ってきた。それに連なり

「あの、えーと、私もありがとうございました」

1人目の女性利用者が言った

「私も、助けてもらってありがとうございます!」

と2人目の女性利用者も言ってきた。

「いえ、いいですよ、これ位の事」

「この度は私共を助けて頂き誠にありがとうございます。何か私共に出来る事が御座いましたらなんなりとお申し付け下さい」

店員と更にそこに店長らしき人がおり、お礼を言ってきた。

「いえ、自分は当然の事をしたまでです」

「しかし……」

「それじゃあ、あの強盗の足をがっちりと縛っておいて下さい、そうすれば警察が来るまでは大丈夫でしょう」

「はい、それではー」

ゥウーーゥゥゥウーーゥゥとサイレンが聞こえて来た。

「どうやら、縛る必要も無かった様ですね」

「犯人、おとなしく捕まりなさい……」

と、警察官が入って来ると現状に驚き目を見開いていた。

「それでは、後は宜しくお願いします、さよなら」

そう言って背を向けた時だった。

「待ちたまえ」

何故か警察官に呼び止められた。

「自分ですか?」

「ああ、そうだ」

「何でしょう?」

不味い事はしてない筈だったので疑問が有るが一応待った。

「名を何と言う」

「う~ん、名乗るほどの者じゃないですよ」

「では、何と呼べばいい?」

「そうですね…アヌビスとでも呼んで下さい」

安直だなと思いつつもこれが1番しっくりくるだろうなと思った名を言った。逆にこれ以外は難しいだろう。

「分かった、ではアヌビス、今後とも、事件の時に協力して貰えないか」

「……考えておきましょう」

時雨は躊躇ったがそう言った。

「宜しく頼む」

「では、さよなら」

そう言って、コンビニを颯爽と走り去ってしまった。



      ーー現在ーー



「あれから全てが始まったのか……」

昔を思い出して干渉に浸っていると

「何の話しだ?」

信が話しかけて来た。

「いや、過去を振り返っていただけだよ」

どうやら声に出ていた様だ、これからは気を付けねばと時雨は思うのだった。

「よし、そろそろプリント回収するぞ、書き終わって無い奴らさっさと書け~」

周囲からは“やっべ”とか“よし、これで終わった”などが聞こえる。

         ーー回収後ーー

「それではこれにて新入生歓迎会を終了する、各自自分の教室に向かう様に」

歓迎会と言ってもやっぱり何も無かったなと時雨は思い、信にランクを聴いてみる事にした。

「信はどのランクなんだ?」

「俺は平凡だから訓練三等兵科だな、時雨はどうなんだ?」

「俺か?俺は侍科だ」

「へ~侍科か、侍科、ん!侍科?!」

「お、おう、そうだけど……」

始めは理解しておらず流していたが理解した途端に心底驚いたようで声がかなり大きくなっていた。

「お前、入学早々侍科ってどういう事だよ、しかも推薦で」

冷静になったのか次の言葉は普通の大きさに戻っていた。

「え、あの人侍科なの?」

1人の女子生徒は疑問を持っていた。

「へ~1年でも成れるんだ」

1人の男子生徒は感心していた。

「へっ、どうせたまたまだろ」

更に1人の男子生徒はいちゃもんを言っていた。

「それじゃああの人強いのかなぁ」

更に女子生徒も感心していた。周りは好き勝手言っているが本人はイマイチピンときていなかった。

「なあ、信、侍科ってすごいのか?」

「凄いも何も学園のトップレベルの人しか入れないんだぞ」

「ふ~ん、何人位いるのかな?」

多少なりども興味が出て来た時雨は信に聴いた。

「全校生徒合わせて2560人中お前を合わせて35人しかいないんだ」

「え!そんなに少ないのか……」

流石の時雨もこの事実は驚いた様だった。

「だからスゲエって言ったんだよ」

「そうだったか……」

“これからは下調べをしておこう”と時雨は思ったのだった。

「それに侍科に成るには試験があるらしい、何かやったか?」

「あ、そういえば、“実力を測りたい”とか言って入学に関係無いテストで人型のロボットと対戦したな」

「何体倒したんだ」

聴くのが恐ろしいが好奇心が勝った信は聴いた。

「軽く100は倒したかな」

「それを軽くなのか?」

この学園の生産するロボットはかなり強い事を知っいる信は驚愕を通り過ぎてしまった。

「ああ、それ位はな」

「ロボットの武器は何だったんだ?」

「剣やピストルだったな」

「はぁ、呆れるぜ」

「何でだよ」

「普通軽く100なんて倒せないんだよ、しかも剣とピストル両方いたんだろ?」

「俺の感覚ズレてるのか」

「ああ、ズレズレだな」

やれやれとでも言いたげな表情で信は言っていたが時雨からしたらあんな物、カス当然だったのでやはりピンと来ない。

「まったく、どんな武器使ったんだか…」

「そこらへんに売ってる量産型の刀だったな」

「それなら刃こぼれするだろ」

「強度アップ魔法を使ったんだが」

「初歩的な魔法だな…」

「そうだろ?」

しかし信は簡単な魔法だからこそ、その魔法の力を引き上げる方法は在るのではないかと考えていた。

「やっぱ、信じらんねーんだよな」

「いやいや、本当にあのロボット強く無いって」

否定していると

「俺の兄ちゃん侍科なんだけどよ、60体が限界って言ってたぜ」

「なに!お前、試験内容知らないふりしたのか?」

「ま、そういう事だな」

「…………」

時雨は無言のプレッシャーを放っている。

「……あのぉ時雨…さん?」

「ん、ドウシタ?」

「何で棒読みなの!」

「まあ、いいや、それじゃあ、教室に行こう」

「時雨、侍科の教室は訓練三等兵科俺たちの反対の校舎だぞ」

「え、そうなのか」

「ああ、今出ようとしてる所の反対にある、あの通路だ」

「そうか、ありがとう、またな」

「おう、また明日にでも」

信とはここで別れて時雨は自分の教室へと向かって行った。
 1年生で侍科は時雨だけなのでパンフレットを見て教室へと向かう

「えっと、パンフレットを見た感じここで合ってるな」

時雨は本当に合ってるのかまだ分からないがとりあえず入ってみようと決心した。

ガラガラとドアを開けると

パン パパン パン パンパンパン

「!!」

「「「「ようこそ!侍科へ!!」」」」

教室に入ると侍科の一同が歓迎してくれた。

「どう、驚いた?」

侍科の女子生徒が1人話しかけて来た。時雨は心の中で“髪は金髪で脱力系スポーティーポニー?とか中学生の頃女子から聞いたな。目は赤眼、容姿は整っていてる、ハーフだろうか?いや、それよりも質問に答えよう”

「ええ、とても驚きました」

「え~、本当かなー。まあ、いいや、じゃあ自己紹介をしましょう。私は桜・B・ラトウィッジよ、ちなみにハーフだよ」

「えーと、1年の神崎時雨です、これから宜しくお願いします」

「それじゃあ、時雨、私の事は桜って呼んでね」

「分かりました、桜先輩」

「うむ、よろしい」

「おい、そろそろ俺にも自己紹介させろよ」

そう言った侍科男子生徒が今度は話しかけて来た。時雨は心の中で“髪は黒色でMen'sツーブロック×ベリーショート?という髪型で目の色も黒、容姿は整っている。何処からどう見ても日本人。何故かは分からないが熱いオーラが有るな”

「いいよ」

「俺は内藤昇ないとう のぼるだ、昇と呼んでくれ」

「はい、昇先輩」

「よし、今日は時雨の歓迎会だ!」

「「「「「「おぉー!!!」」」」」」

侍科一同の掛け声が響いた。



そして30分位たつと

「悪い、新入生案内してて遅れた!」

「もー、先生遅いよ、もう直ぐで歓迎会終わっちゃうよ」

「そうか……それは残念だな」

「まあ先生、もう少し残ってますから落ち込まないで下さい」

「あれ、新入生歓迎会の時の先生だ」

「そういえば新入生歓迎会の司会するって言ってたね」

「ああ、疲れたぜ。まあ、それより、俺の自己紹介をしよう。俺は侍科の担任の佐藤 昴さとう すばるだ、呼び名は何でもいい」

「佐藤って名前の先生はたくさいますよね?」

「そうだな、10人いる」

「それでは昴先生と呼びます」

「分かった、おっと、いけないな帰り学活の時間だ」

「え~、もうそんな時間?」

「ああ、皆楽しんでいる所で悪いがもう帰り学活の時間だ、帰りの準備をするように」

「あっというまだったな」

「そうですね、ありがとうございます」

「お礼なんて要らないよ、それにお礼をするなら皆にね」

「はい、それは怠らずしました」

「どうやって?」

「そろそろ来ると思いますよ」

「!!」

教室の床からいくつもの光の球が舞い上がってきた。

「何これ?」

「もうちょっとですね」

そして、舞い上がった光の球は教室の中央に集まり、感謝の気持ちを込めた言葉を書いていた。

           ありがとうございます

「「「「「おお、スゴッ!!」」」」」

「やるじゃないか、時雨」

「ほんと、結構魔法得意なんじゃない?」

昇と桜は褒めてくれた。それだけで無く、侍科の生徒の殆どが感嘆を漏らしていた。

「いえいえ、まだまだですよ。1つの魔法は長年使ってますが他は半年前から猛練習しただけですから」

「なにっ、もっと長くやってるもんだと思ったが、そうでも無いんだな」

「うん、やっぱり才能在ると思うよ」

昇も桜も時雨を逸材だと見抜きこれからが楽しくなりそうと胸を高鳴らしていた。

「そうですかね……」

「なー、盛り上がってる所で悪いんだが、そろそろ帰りの準備してくれないか?」

侍科一同がそうだったと思い出した所で時雨は文字を消した。


 あの後帰り学活をして明日の持ち物確認をした。
 放課後になると得にする事が無いので帰ろうとしたが桜と昇が時雨を呼びとめ、一緒に下校する事になった。



暫く歩いていると桜が話し掛けて来た。

「明日の授業だけど、侍の授業来るよね?」

「はい、行きますよ」

「刀剣は持っているか?」

「一応、自分で打った物が……」

「へ~、時雨って刀作れるんだ」

「まあ、量産型より良いものは作れますけど……大した物じゃないですよ」

「だとしても凄いと思うがな」

昇は時雨の大したものじゃ無いは結構凄いものになると確信していた。

「そうですかね?」

「こんど私の刀作ってよ」

「まあ、いいですよ」

「俺にも作ってくれ」

「昇は拳闘士でしょ」

「あ、そうなんですか?」

“確かに拳闘士らしい体格だもんな”と考えていた。

「…………グローブも作れるか?」

「作れますよ」

「よしっ」

昇は小さくガッツポーズをしていた。余程嬉しかったのが一目瞭然であった。

「良かったね、昇。あ、そうだ」

「どうしたんですか?」

「明日の授業、私と模擬戦しない?」

「!!おい、桜。どういうつもりだ?」

「いや~、ここまで出来の良い1年が入って来ると嬉しくてね」

「?」

時雨はまったく会話に追いつけていないが時雨の答えは決まっていた。

「やめとけ、危険なだけだ」

「キケンとは失礼だな~、昇だって同じようなもんじゃない」

「俺はお前ほどじゃないんだよ」

「まあまあ、2人とも落ち着いて下さい」

「ん、そうだな」

「うん、そうだね」

後輩に言われて少し心に刺さったのか心なしか少しばかり2人が小さく見える。

「自分はその勝負、受けました」

「何?お前、正気か?」

「勿論です」

「………健闘を祈る」

「はい、ありがとうございます」

「1番良い刀持って来てね」

「はい、ではそちらもお願いします」

「分かってるって」

15分程歩くと十字路があった。

「あ、俺ここ右だから、またな」

「また、明日」

「またね~」

「自分は左なんですけど、桜先輩はどっちですか?」

「奇遇だね、私も左なんだ~」

「そうですか、それじゃあもう少し話しますか?」

「そうだね、それじゃあ、時雨は何処の県の推薦なの?」

「南関東県です」

「何市?」

海茅うみかや市です」

「へ~、なるほどね」

「何がですか?」

「君がどうして推薦されたのか大方分かったよ」

「!!今のでわかったんですか?」

「まあ、勘づく人はいるんじゃない?」

「あぁ~、やっちまった」

本当にもうお終いと思ってしまった。

「まあ、合ってるとも限らないし、明日の模擬戦で答え合わせをしましょう」

「いや、今でいいですよ」

「うんん、明日がいいよ」

「そうですか?」

「うん」

「あ、自分はここのマンションなんですけど……」

「え、隣のマンション?」

「え、そうなんですか」

「うん、あの向かいのマンションに住んでるよ」

自分のマンションは普通なのに対して向かいのマンションは見るからに高級なマンションだ。

「近いんですね、そして格差を感じます」

「え、そんな事ないよ」

「まあ、何を言っても無駄でしょうし気にしない事にします」

「そうしてくれると助かるな~。それより、時雨って1人暮らし?」

「そうですね」

「へー、それじゃあこんど遊びに行っていい?」

「別にいいですけど……大した物は無いですよ」

俺の家に入り浸って物をたかられても困るので予め告知しておいた。

「ふーん、じゃあ作って貰おうな」

「え、何をですか?」

「刀に決まってるじゃない!」

「……材料さえ調達して貰えば」

「それなら、一緒に材料探しに行こう」

「いいですね、どんな刀がいいですか?」

「う~ん、刀身が薄いピンクで100cm、つかは25cm、斬れ味バツグンで丈夫な刀がいいな」

「かなり注文が多いですね……まあ、頑張ります」

「頼むよ~♪明日の模擬戦も忘れないでね!」

「……はい」

釘を刺されてしまった。
 時雨は明日の模擬戦が楽しみな反面、不安も沢山あった。もし、明日の模擬戦で敗北してしまえば市の英雄アヌビスの事を公開されてしまうかもしれない。時雨はそれだけは絶対に回避したかった。
 
「それでは、また明日」

「うん、また明日ね」

そう言って2人はそれぞれのマンションに向かっていった。
 時雨が203号室自分の部屋に着くと、私服に着替え、ガラス張りのケースの中にある一つの刀を見据えていた。

「ついにこれを使う時が来たか…」
   
その刀は時雨が危険と判断し、使うのを禁じていた物だった。その刀の名はー

「阿修羅」

この刀は時雨自ら作製した物である。
 この刀を作製した時に試し斬りをしたが斬れ味が良すぎた為禁じていたのだった。

「1番良い刀と言われてしまったからな……」

昇はあからさまにこの模擬戦を否定していたので桜は高い戦闘力と強力な武器を所有しているのが分かる。

「まあ、何とかなるだろ」

そう考える他無かった。

 
         ーー翌日ーー

ピッ…ピッ…ピッ…ピピピッ
と目覚まし時計の音と共に時雨は起き、目覚まし時計を直ぐに止めた。

「ふぁーあ、眠い」

時雨が起きたのはいつも通りAM6:00だ。

 「よし、朝飯作るか」

時雨の平日の朝食は基本、ご飯とベーコンエッグだ。ベーコンと卵のどちらかを切らしていると片方だけで食べる事もあるが今日は両方とも有るので普通にベーコンエッグだ。
 まずは茶碗にご飯をよそい、次に手慣れた手つきでベーコンを焼き、ご飯の上に乗せる。そして、卵を目玉焼きにし、それを今度はベーコンの上に乗せる。

「よし、ベーコンエッグ丼の完成だ」

完成したベーコンエッグ丼を時雨は5分程でペロリと平らげ、歯を磨き、顔を洗った。その後、弁当にご飯と玉子焼き、昨日の残り物を詰めて時雨は登校の準備が殆ど出来た。そして

「はぁ、これ、持ってかなきゃいけないのかな」

時雨は阿修羅を持って行く事をためらっているというよりは帯刀は目立つのではないか心配だった。

「仕方ない、持って行こう…」

意を決して時雨は阿修羅を帯刀する事を決意した。

「それじゃあ、行きますか」

ガチャ

とドアを開け、時雨は学園へと向かったのだった。が、しかし、マンションから出た所で待ち伏せしていた桜に捕まった。

「おはよー、時雨」

「あ、おはようございます」

「その腰に帯刀してるのが今日使うやつだね」

「はい、そうですけど…」

「随分と鞘が派手だね」

「気にしている事を言わないで下さい……」

「あ、気にしてたんだ」

そう、時雨が帯刀するのをためらった理由はこれだった。
 黒をベースにそれを侵食する様に一部に描かれたオレンジに近い朱色と紅色の炎だ。

「はい、一時の気持ちに流されてやった事は後悔しますね」

「ドンマイ、これで今日は更に目立つね」

「もう、目立つのは諦めます」

「そうした方がいいよ」

「先輩こそ、腰に帯刀もってるのを今日使うんですよね」

「うん、そうだよ」

「阿修羅と同等かそれ以上か……」

「え?」

時雨のボソッとつぶやいた一言に桜が反応したので時雨は

「いえ、何でもないです」

時雨は声に出ていたのでこれから気を付けなければと思った。

「あ、そういえば……」

「どうしたの?」

「刀って普通に帯刀していいんですか?」

これは昨日からずっと疑問に思っていた事だ。
 気になってはいたが聴き忘れていた事だった。

「今更だね」

「すみません」

「謝らないくていいよ。ただ、もし駄目だったら大変な事になってたよ」

桜は心配半分、怒り半分の表情だったので、

「はい、反省します…」

「うん、なら良ろしい。これからは分からない事があったらキチンと聴くんだよ?」

「…はい」

「なんか間があったけどまぁ良いっか」

桜は半目で言ってきたので時雨は思はず目を反らしてしまった。

「あっ、そろそろ8時だ、もう歩き出そう」

桜はとくに何も見ずにそう言ったので、

「どうして分かるんですか?」

「千里眼の魔法だよ」

「あ~、なるほどです」

“俺も便利だから覚えるか”と時雨は思った。

「じゃあ、行こう」

「そうですね」

そうして歩き出した二人に、昇と昨日別れた十字路で昇が待っていた。

「おせーぞって、時雨も一緒だったか?」

「はい、自分のマンションが向かいのマンションだったので」

「そうかだったのか、じゃあこれからは三人で登校するか」

「元からそのつもりだよ~」

「…ありがとうございます!」
 
「良いっていとよ」

時雨は良い先輩に出会えて良かったと心から思うのだった。

「そうそう、どうせ今まで二人だけだったから三人の方が盛り上がるし、良いよね」

「え、他にいないんですか?」

「がっかりだった?」

「いえ…意外だなと思いまして」

「何が?」

「いや、桜先輩と昇先輩ならもっと登下校する友人がいると思ったんですよ」

「あー、そう言えば時雨、まだ知らないのかー」

「このタイミングで言うのか?」

「う~ん、まあ、時期に分かることだしいっか」

「??」

時雨は謎が浮かぶばかりだった。


       ーー15分後ーー

学園に着くと登校の人集りがいくつかあったが何故か避けて通ろうとした瞬間に人集りが半分に別れて道を開けるのだ。
しかも、これが毎回。気になった時雨は桜と昇に問う事にした。

「あの、これどうなってるんですか?」

「…まあ、そろそろいいかな」

「そうだな」

「実は、この学園には学園祭があってね」

「はい」

「そこで戦闘可能な生徒が全学年で総当たり戦をするんだけど、昇は戦闘可能な生徒の中でNo.3で私はNo.1、そんな訳で殆どの生徒に恐れられてもおかしくないね」 

「………」

時雨は唖然としていた。
 侍科にいる時点で実力者なのは分かっていたが学園のNo.1とNo.3だとは思いもしなかった

「ごめんね、今まで黙ってて」

「いえ、誰にでも秘密はありますよ、気にしないで下さい」

「怖くない?」

「全然」

「時雨って結構度胸あるよな」

「まあ、これ位でびびってたら今この場にいないですよ」

「それはどう言うー」

と言いかけた所で

「あ、ヤバイHRホームルーム始まるよ」

「え、8時30分からじゃないんですか?」

「侍科は8時20分からなんだよ」

「そうなんですか!?」

「うん」

「残り1分だな」

「遅刻確定だね」

「テレポートってありですか?」

「う~ん、校則違反ではないんだけどな」

何故か渋ってる昇を横目で見て

「じゃあ、行きますよ」

「え、3人同時出来るの?」

「はい、では3…2…1…テレポート!」

時雨の掛け声と共に3人は侍科の教室に瞬間移動した。
 
そして8時20分

「時雨のお陰でギリギリ間に合ったね」

「そうだな」

「テレポートってやっぱり便利ですよね」

3人はHRの30秒前に着いたので席に座る余裕はあったが他の準備はまるで出来ていなかった。

「はぁ、時雨、入学早々遅刻かと思ってヒヤヒヤしたぞ、以後気を付ける様に」

「はい、今日のは流石にマズイと思いましたよ」

「それならいい。よし、欠席もいない事だし、HRはこれで終わり、各自授業の準備をする様に」

昴が教室から出て行ったので時雨は桜に質問した。

「授業って何時何分からですか?」

「8時30分からだよ」

「あと5分ですね」

「ほら、二人共もう移動しないと遅れるぞ」

昇が注意して来る。

「そうだね~、結構遠いし、それじゃあ移動しながら話そう」

「それじゃあな」

「昇先輩は場所が違うんですか?」

「俺は拳闘士だからな、場所は違うさ」

「そうなんですね」

昇はこの時、時雨に疑問に思ったことがあった。

「時雨、お前この学園の事きちんと調べたか?」

「いいえ、成り行きで来た様なものですから」

「どう言うことだ?」

「それは今日中には分かると思うよ」

「分からなかったら教えろよ」

「分かってるって。時雨、案内するよ」

「はい」

「残り3分…マズイね。時雨、走るよ!」

「え、走るんですか?」

「ちゃんと付いてきてね!」

「は、はい」

そう言うと桜は猛スピードで走り出した。

「!!」

時雨は思ったより桜が速く走ったので少し出遅れてしまったが時雨も走り、桜に追いついた。

「たぶんこのペースなら間に合うよ」

「ここをずっと真っ直ぐ走るんですか?」

「そうだよ。ほら、あの建物」

時雨の前にある建物はまるでコロッセオの様で重厚な建築物だった。

「巨大ですね…」

「うん、2万坪だからね」

「そんなにあるんですか!?」

「そうらしいよ。まあ、いいや、とばすよ!」

「はい!」

桜は加速し、ウ○イン・ボ○ト並みに速度を出した。時雨も負けじと速度を上げ、桜に追いついた。

「よし、着いた」

「着きましたね」

そう言う2人は全く息切れせず、むしろ落ち着いていた。

「またギリギリになっちゃいましたね」

「そんな事ないよ、みんなだいたいこれ位に来るよ」

「そうなんですか?」

「うん、追い抜かした人も結構いたと思うよ」

「それなら大丈夫ですね」

「うん、それじゃあ授業が始まったら早速模擬戦をしよう」

「そうですね」

「楽しみ?」

「はい、楽しみです」

「だよね!私も楽しみだな…お互いに全力を尽くそう!」

「勿論です!」

キーンコーンカーンコーン コーンキーンカーンコーン

とチャイムが鳴り、生徒は次々に建物に入って来る。

「「「「「やっとついたー!」」」」」

「「「「「ちょっと男子たち、さっさとしなさいよ」」」」」

男子と女子の間では学園では定番のやり取りを繰り広げたりしていた。

「模擬戦あとどれ位したらしますか?」

「お互いの準備が整い次第に始めようか。どうせ先生も私たちレベルには教える事は殆ど無いから模擬戦ばっかだろうし」

「そうなんですか、それじゃあ、アップはしますか?」

「私はもう準備完了だから後は時雨次第だよ」

「自分も準備はできてます。それでは始めますか?」

「うん、そこに闘技場が有るからそこで戦おう」

距離で言うと50m程先に四角く、地面から60cmの厚さがある闘技場が有った。誰も使っていない事から“授業の初めから模擬戦は珍しいのだろうか”と思ったがそれより前に思う事があった。

「勝手に使っていいんですか?」

「うん、授業中なら問題無いよ」

「それなら早速行きましょう」

「時雨は右側から入って、私は左側から入るから」

「分かりました」

桜の言われた通り右側から入場し、桜も左側から入場した。

「なんか凄い人が集まって来ましたけど…」

「注目されるのには慣れてるでしょ?アヌビス君」

「!!」

時雨には分からなかった。何故このタイミングで答え合わせをしようとしたのかを……さらに、運が悪い事に桜の模擬戦を見ようと人が大勢いた。

「おい!時雨」

時雨が奈落の底に落ちた気分でいた所で信が大声で呼んできた。

「…なんだ、信」

時雨は明らかに気分が沈んだ声で信に言ったが信はそんな事など気にする余地がなかった

「なんだ、じゃねえよ! お前、正気か?」

時雨は何故信が怒鳴っているのか検討も付かなかったが質問に質問で返すのは失礼なので“どうしてそんな事聞くんだ”とは言わなかった。

「ああ、勿論だ」

と素直な気持ちを告げると信は先程より落ち着いて来たのか必死の表情から心配そうな表情に変わっていた。

「あの人と戦うなんて止めておけ、お前がいくらあのアヌビスだからと言って勝てる相手じゃない!」

やっと信の質問の意図が分かったが時雨は

「それでも…学園No.1に何処まで届くか試したいんだ」

と信の注告を無視した。

「…俺はどうなっても知らないからな」

注告を言っても言う事を聞かないないので俯きながら言っていた。

「ああ、よし!頑張るか」

自分に喝を入れ、時雨はモチベーションを高めた。

「準備は良い?」

先程から待っていた桜がニコニコとした笑顔で聞いて来た。

「はい、いつでもどうぞ」

明るい声で自分の準備が万端である事を告げると時雨は警戒心を高めた。

「それじゃあ、始めるよ!」

そう桜がいった瞬間、桜の姿が消え、そして時雨は抜刀し

ギンッ

金属と金属がぶつかる音が時雨の背中側から響いた。

「!!」

桜は驚いた。今まで誰も追いつく事が出来なかった最高速度で回り込みをした斬撃を見切り、いとも簡単に受け止めてしまったのだから。

「速いですね」

そう言う時雨の顔には余裕に満ち溢れ、楽しみで楽しみで仕方のない子供の様な表情が浮かんでいる。

「今の動き見えたの?」

今まで誰も追いつけなかった速度に悠然と追いつけた事に疑問を抱いた桜は感知系の魔法を使ったのではないかと予想を立てていた。

「え?だって猛ダッシュで後ろに回り込んで来たじゃないですか、バレバレですよ」

「……」

予想外な回答に桜は呆然とし、

「どうなってんだ、あいつ…」

信は顔を引きつらせ、

「………」

帽子を被った女子生徒は若干不機嫌そうな表情で観戦していた。
 しかし、時雨はそれどころか

「それより、本気出して下さいよ」

と真顔で、それも余裕がまだ有る様にいった。

「そうだね~、そうしないと負けちゃうね」

桜はにっこりと笑っているが今までより一層気迫を増していた。

「それでは、こちらも本気でいきますよ」

時雨は微笑むと桜の目の前まで一瞬で移動し、左斜め下から切り上げを仕掛けた。
桜はギリギリで反応ができ、攻撃を防ぐ事ができたが体勢を崩してしまい、僅かに隙ができてしまった。時雨はその隙を見逃す訳が無く、怒涛の攻撃を仕掛けた。

ギィンッ キィンッ カァンッ ジリィィィ

時に猛攻し、時に鍔迫り合いになっているが桜は防戦一方だ。

「どうしたんですか、攻めて来て良いんですよ?」

と挑発気味に物を言うと、桜は一瞬時雨に隙が出来た事に気付きその隙目掛けて突きを繰り出した。
 しかしー

スカッ

「えっ?」

と間抜けな声が溢れ落ちた時には既に遅く時雨は桜の背後に回り込んでいた。
 桜が切られるのを覚悟した時ー

ピタッ

「えっ?」

再び間抜けな声が溢れたが桜は直ぐに状況を理解し

「寸止めしてくれたんだね」

と言った。

「はい、正しくは峰を首に接触させた、ですけどね」

「そうか…これじゃあ私の負けだな……」

と降参宣言し、刀を納刀した。
 辺りでは時雨が桜との模擬戦で勝利すると言う予想外の事に驚き、騒めいている。
 その中で一人、帽子を被った女子生徒が無言でこちらを見ているのに時雨は気付いていた。そして、再び帽子を被った女子生徒の方向を見ると、そこには誰も居なかった。
 しかし、次の瞬間ー

隕石メテオ!」

と、魔法の詠唱が聞こえると、それと共に巨大な隕石が雲一つ無い空から降ってきた。

 「お、おい、あれって隕石だよなぁ」

空から降って来る隕石にいち早く気が付いた男子生徒がガタガタと震えながら発した言葉は辺りの騒めきを沈め、皆絶望の表情だった。そして、

「桜、お前の魔法でなんとかならないか?」

と侍科の生徒が桜に話しかけて来た。

「あれを止めるには最上級の障壁が必要だと思うけど…あの距離だと最上級の障壁を出すには時間が足りないかなぁ……」

この一言で生徒一同本当に希望が無くなったと思った。

「自分がなんとかします」

その声が聞こえるまでは。
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