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二章 〜襲来を超えて〜
33話 『罪悪感と涙』
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長い……長すぎる! 重要そうなところだけを転々と読んでいたのに4時間もかかった。
さすがに僕1人じゃきつかったな。ゆぅに感謝だ。当のゆぅはと言うと、ぐったりと背もたれに身体を預けている。寝てはいないようだけどね。僕ももう背中と首が痛い。少し休もうかな。
この本を読んで、この世界についていろいろ知れたと思う。あれだけ読めばそうなるだろうけども……。1章から4章までは割と普通な内容で、5章の魔力や魔法についての内容は町で読んだ本には載っていないことが事細かに書かれていた。
今回分かったのはおおまかに3つだ。
1つ目は、魔力が解放されると身体能力が大幅に上昇するということ。これは個人の質で左右するけれど、大きく変わる人の変化は途轍もないという。それに自分の魔力を持っている人自体が少ないため、持つ者と持たざる者には確実に差が出てしまう。ルナの説明と被ってるところが多いけど、一応新たな情報だ。
2つ目は、魔法による世界間の移動が可能であるということ。これ以外に方法なんてないと言ってしまえばそれで終わりだけど、これは大きな進歩だと思う。
僕は神さまの力によってこの世界に転移したが、それ以外の転移方法は何も知らない。
神さまはこの世界を楽しめと言っていたし、僕自身もそうするつもりだけど、いつか一度は地球に戻ろうとは考えているのだ。だから、魔法によって世界間の移動が可能という情報は確実な進歩、収穫だと言えた。
ただ、その魔法を使うには、それができる人を探さなきゃいけないというのが辛いところだ。まぁそのうちなんとかしていけばいいかな。
そして3つ目だ。
それは、聖龍の存在である。聖龍というのは、龍族の枠から外れている文字通り聖なる龍だ。聖域に住み、世の中の移り変わりを見守る者らしい。聖域から、天界、魔界、龍界、そしてこの世界をずっと見ているのだ。
世の移り変わりを延々と見ている聖龍であれば、さっきの転移魔法のこととかも分かるかもしれない。
それに一度は会ってみたい。多くのアニメや漫画に出てくる聖龍が実際にいるのだ。これは会わない理由がない!
どうやらこの旅の目的地は聖域ということになりそうだ。折を見てリッタに話そうかな。
「ふぅ、良し! これで終わりだ! ありがとう、ゆぅ。助かったよ!」
「喜んでくれて良かったです!」
「それじゃあそろそろ行こっか」
「あ、あの……少しお話しがしたい……です」
んーどしたんだろ? 話しなら今の今までずっとしてたような……? 別に構わないけど。
そうして僕はまた椅子に座った。
「心葉はあの時、どうしてわたしを助けてくれたのですか? 心葉はわたしのところに来る途中で足を止めていました。きっと魔族だと知らずに近づいて来たのだと思います。でも……なんで相手が悪魔だと分かりながら……自分の命を懸けて戦ってくれたのですか? こんな見ず知らずのわたしのために……。すみません、どうしても気になって」
「なんでって言われてもなぁ……正直困るんだけど」
それは僕には本当に困る質問だった。でも、彼女は構わず話しを続けた。
「悪魔は騎士団が戦っても多くの死傷者が出る程強い相手です。普通ならそこに突っ込んでくる人はいません。見捨てて当然です。言い方が悪いですが、人間はそういう種族かと思っていました」
「人間はそんな種族だよ。種族で考えれば君のそのイメージで間違いない。自分の命のためなら、誰かを犠牲にすることを厭わない、そんな種族。でもね、それはイメージでしかないんだよ。確かにそういう人も多いけど、そんな人ばかりじゃないんだよ。
魔族は途轍もなく強いってこと……それは知ってた。でもさ、守りたかったんだ。君とリッタを。突然悲鳴が聞こえてさ、すごく驚いた。すぐにその声のほうに走ったんだ。そしたら小さな女の子が今にも殺されそうになってるんだよ?」
「そ、それでも……」
「僕は誰かが目の前で傷つきそうになってたら、絶対に見捨てない! それが例え自分の命を投げ出すようなことであっても、何かを大切な物を失うことだったとしてもだよ‼︎ 君ら2人は物じゃない、道具じゃないんだから! あんな風に死んでいい訳ない!」
僕には彼女がなんでこんなことを聞いてくるのかが分からなかった。何故自分を助けたのかなんて聞かれても、そうしたかったとしか言えない。それはゆぅ自身もわかっているだろう。それに助けて欲しくなかったなんて言いたいわけでもないはずだ。
何が言いたいのか分からない。でも、何を思ってこう言っているのかはなんとなく分かる。
「リッタだってきっと同じことを言うと思う。もしも、ゆぅが自分のせいで僕が大怪我したと思ってるなら、何も気にしなくていい。あれが僕の意思なんだよ」
「うぅ……う、うう、うぅぅ……でも……でも! わたしがいなければ……他の誰かが傷つくことなんてなかったのに!」
僕に抱きつきながら、彼女は泣き続ける。
ここはしっかりと受け止めないとだよな。
「だって……心葉の、心葉の身体に刀がぁ、う、うぅ……わたしのせい……で……」
「……気にしなくていいんだよ、もう。君のせいなんかじゃない。それにさ、僕はこうして生きてるじゃないか」
「でも……でもぉ……」
うーん、どうしようか。僕は余り気にしてないけど、ゆぅはそうじゃないっぽいな。
こういう時にどうすればいいのか分からない。どう声を掛けてあげればいいのか分からない。これが慰めになるのかすら分からないけど……ゆぅの後頭部に手をまわして、ゆっくりと、そして優しく抱きしめる。
「心配してくれてありがとう」
小さな声でそう呟く。そのままゆぅが泣き止むまで、ずっと彼女の頭を撫でながら抱きしめていた。
本当にこれで良かったのかな?
人間? 関係はやっぱり僕には難しい。
さすがに僕1人じゃきつかったな。ゆぅに感謝だ。当のゆぅはと言うと、ぐったりと背もたれに身体を預けている。寝てはいないようだけどね。僕ももう背中と首が痛い。少し休もうかな。
この本を読んで、この世界についていろいろ知れたと思う。あれだけ読めばそうなるだろうけども……。1章から4章までは割と普通な内容で、5章の魔力や魔法についての内容は町で読んだ本には載っていないことが事細かに書かれていた。
今回分かったのはおおまかに3つだ。
1つ目は、魔力が解放されると身体能力が大幅に上昇するということ。これは個人の質で左右するけれど、大きく変わる人の変化は途轍もないという。それに自分の魔力を持っている人自体が少ないため、持つ者と持たざる者には確実に差が出てしまう。ルナの説明と被ってるところが多いけど、一応新たな情報だ。
2つ目は、魔法による世界間の移動が可能であるということ。これ以外に方法なんてないと言ってしまえばそれで終わりだけど、これは大きな進歩だと思う。
僕は神さまの力によってこの世界に転移したが、それ以外の転移方法は何も知らない。
神さまはこの世界を楽しめと言っていたし、僕自身もそうするつもりだけど、いつか一度は地球に戻ろうとは考えているのだ。だから、魔法によって世界間の移動が可能という情報は確実な進歩、収穫だと言えた。
ただ、その魔法を使うには、それができる人を探さなきゃいけないというのが辛いところだ。まぁそのうちなんとかしていけばいいかな。
そして3つ目だ。
それは、聖龍の存在である。聖龍というのは、龍族の枠から外れている文字通り聖なる龍だ。聖域に住み、世の中の移り変わりを見守る者らしい。聖域から、天界、魔界、龍界、そしてこの世界をずっと見ているのだ。
世の移り変わりを延々と見ている聖龍であれば、さっきの転移魔法のこととかも分かるかもしれない。
それに一度は会ってみたい。多くのアニメや漫画に出てくる聖龍が実際にいるのだ。これは会わない理由がない!
どうやらこの旅の目的地は聖域ということになりそうだ。折を見てリッタに話そうかな。
「ふぅ、良し! これで終わりだ! ありがとう、ゆぅ。助かったよ!」
「喜んでくれて良かったです!」
「それじゃあそろそろ行こっか」
「あ、あの……少しお話しがしたい……です」
んーどしたんだろ? 話しなら今の今までずっとしてたような……? 別に構わないけど。
そうして僕はまた椅子に座った。
「心葉はあの時、どうしてわたしを助けてくれたのですか? 心葉はわたしのところに来る途中で足を止めていました。きっと魔族だと知らずに近づいて来たのだと思います。でも……なんで相手が悪魔だと分かりながら……自分の命を懸けて戦ってくれたのですか? こんな見ず知らずのわたしのために……。すみません、どうしても気になって」
「なんでって言われてもなぁ……正直困るんだけど」
それは僕には本当に困る質問だった。でも、彼女は構わず話しを続けた。
「悪魔は騎士団が戦っても多くの死傷者が出る程強い相手です。普通ならそこに突っ込んでくる人はいません。見捨てて当然です。言い方が悪いですが、人間はそういう種族かと思っていました」
「人間はそんな種族だよ。種族で考えれば君のそのイメージで間違いない。自分の命のためなら、誰かを犠牲にすることを厭わない、そんな種族。でもね、それはイメージでしかないんだよ。確かにそういう人も多いけど、そんな人ばかりじゃないんだよ。
魔族は途轍もなく強いってこと……それは知ってた。でもさ、守りたかったんだ。君とリッタを。突然悲鳴が聞こえてさ、すごく驚いた。すぐにその声のほうに走ったんだ。そしたら小さな女の子が今にも殺されそうになってるんだよ?」
「そ、それでも……」
「僕は誰かが目の前で傷つきそうになってたら、絶対に見捨てない! それが例え自分の命を投げ出すようなことであっても、何かを大切な物を失うことだったとしてもだよ‼︎ 君ら2人は物じゃない、道具じゃないんだから! あんな風に死んでいい訳ない!」
僕には彼女がなんでこんなことを聞いてくるのかが分からなかった。何故自分を助けたのかなんて聞かれても、そうしたかったとしか言えない。それはゆぅ自身もわかっているだろう。それに助けて欲しくなかったなんて言いたいわけでもないはずだ。
何が言いたいのか分からない。でも、何を思ってこう言っているのかはなんとなく分かる。
「リッタだってきっと同じことを言うと思う。もしも、ゆぅが自分のせいで僕が大怪我したと思ってるなら、何も気にしなくていい。あれが僕の意思なんだよ」
「うぅ……う、うう、うぅぅ……でも……でも! わたしがいなければ……他の誰かが傷つくことなんてなかったのに!」
僕に抱きつきながら、彼女は泣き続ける。
ここはしっかりと受け止めないとだよな。
「だって……心葉の、心葉の身体に刀がぁ、う、うぅ……わたしのせい……で……」
「……気にしなくていいんだよ、もう。君のせいなんかじゃない。それにさ、僕はこうして生きてるじゃないか」
「でも……でもぉ……」
うーん、どうしようか。僕は余り気にしてないけど、ゆぅはそうじゃないっぽいな。
こういう時にどうすればいいのか分からない。どう声を掛けてあげればいいのか分からない。これが慰めになるのかすら分からないけど……ゆぅの後頭部に手をまわして、ゆっくりと、そして優しく抱きしめる。
「心配してくれてありがとう」
小さな声でそう呟く。そのままゆぅが泣き止むまで、ずっと彼女の頭を撫でながら抱きしめていた。
本当にこれで良かったのかな?
人間? 関係はやっぱり僕には難しい。
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