【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
108 / 303
恋は突然に…

8-11

しおりを挟む
まさか…。…雅耶が『夏樹』を…?


ガタンッ。

音を立てて、冬樹は一人立ち上がった。
「ん?どうした?野崎…?」
隣に座っていたクラスメイトが、俯いている冬樹の顔を下から覗き込むが、
「…ゴメン…。オレ、先に戻るっ…」
そう言うと、冬樹は慌ててトレーを持って席を立った。
「えっ?…あ、おいっ」
あっという間の出来事で、皆が不思議そうに冬樹を見送っていたが、姿が食堂内から見えなくなると、それぞれが顔を見合わせ、「どうしたんだろ?」と首を傾げていた。

(冬樹…)

冬樹が出て行った方向をずっと見詰めていた雅耶に、横から長瀬が声を掛ける。
「なぁ…もしかして、冬樹チャンとその女の子ってー…」
「…ああ。俺が好きなのは、あいつの妹…なんだ…」
雅耶は視線を元に戻すと、既に冷めてしまった定食を食べるべく箸へと手を伸ばした。




冬樹は廊下を小走りに歩いていた。
そんなに急いでいる訳でもないのに、さっきから心臓だけがバクバクいっている。
周囲に人がいなくなると、冬樹は徐々にスピードを落とし、最後には足を止めてしまった。

「………」

そこの廊下の窓は開け放たれていて、蒸し暑い中にも穏やかな風が流れ込んでくる。
冬樹は、吸い寄せられるようにゆっくりと窓辺に寄ると、そのまま一人、外を眺めた。

『好きな奴…か。いると言えばいる…かな。ずっと…』

何処か遠くを見詰める雅耶の表情を思い出す。

『雅耶は、初恋の相手をずーっと一途に想ってるんだよ』
『確かー…幼馴染みの女の子…って言ってたっけ?』

長瀬の言葉に、悲しげな色を含んだ瞳を見せた雅耶。

(オレ…、知らなかった…)
まさか、雅耶が昔から『夏樹』を想っていたなんて。
『夏樹』がいなくなって、八年もの長い間…。雅耶はずっと、一人だけを想い続けていたというのだろうか…?
(でも、だからと言って、何でオレはこんなにも動揺してるんだ?『嬉しかった』り、『ときめいた』とでも言うつもりか…?)
馬鹿げている…と、自分でも思った。

そんなの…知ったところで、どうにもならないというのに…。
もう…今『夏樹』は、存在しないのだから。

「……はぁ…」
冬樹はひとつ溜息を付くと、窓の縁に頬杖をついた。

思わず動転して先に戻って来てしまったけど…。
(変な風に思われていないと良いな…)
冬樹は流れてくる風に吹かれて、そっと目を閉じた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

1分で読める怖い話短編集

しょくぱん
ホラー
一分で読める怖い話を定期的に投稿しています。 感想などをいただけると嬉しいです。 応援よろしくお願いします。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...