274 / 303
終末へと向かう足音
22-4
しおりを挟む
ずっと、忘れられずにいた、夢にまで見た夏樹が生きていてくれた事実は、素直に嬉しかった。
だが、アイツを苦しめている元凶が自分の父親だと知ってしまった以上は、自分の立ち位置からしてとても複雑な気持ちだった。
現に自分は、自らが仕組んだことではなかったとはいえ、結果的に夏樹を罠にはめた形になってしまったのだから。
「………」
適当に廊下を進んで行くと、広い社内ラウンジへと差し掛かった。
ゆったりした空間のその場所には、広く大きな窓が作られており、現在は目を奪われるような煌びやかな夜景が目下に広がっていた。
力は、その光に吸い寄せられるように、ゆっくり窓辺へと足を運んだ。
(アイツ…無事かな…)
あの場から夏樹を連れ去ったのは、兄の冬樹…ということなのだろうか…?
勿論、他にも仲間がいたのかも知れないが。
薬で身動きの取れない夏樹をあの場から連れ去るには、最低限車が必要だろうから。
だが、きっと…まだ終わりじゃない。
そんな漠然とした嫌な予感が、力の内には存在していた。
「すっかり長居しちゃったな…」
久賀家を後にして夜空を見上げながら夏樹が言った。
時刻は既に夜の10時を過ぎており、空には幾多の星が瞬いている。
「今日は試合で疲れてるだろうに、ごめんね…」
気遣うように謝ってくる相変わらずの夏樹に、雅耶は空を見上げていた視線を夏樹へと戻しながら苦笑した。
「却下、だよ。すぐ謝るなって」
「あ…うん。『ありがとう』…だよな」
夏樹は肩をすくめると、二人で顔を見合わせて笑った。
「でも、突然お邪魔したのに夕飯までご馳走になっちゃって、本当に申し訳ない気がしてさ…」
「いいんだよ。ウチは、普段から家族揃ったって三人しかいないんだし…。いつもの食事風景なんて、会話も少なくてホントに寂しいもんなんだぞー?今日は、お前がいてくれて賑やかで良かったんじゃないかな」
そう言って「だから、いつでも大歓迎」…と雅耶は笑った。
その笑顔につられるように、夏樹も微笑みを浮かべる。
「雅耶の家って変わらないよね。おじさんも、おばさんもさ…」
「…そうかな?」
「うん。全然変わってないよ。昔のままで…すごく温かい…」
夏樹は、懐かしむように遠くを眺めた。
だが、アイツを苦しめている元凶が自分の父親だと知ってしまった以上は、自分の立ち位置からしてとても複雑な気持ちだった。
現に自分は、自らが仕組んだことではなかったとはいえ、結果的に夏樹を罠にはめた形になってしまったのだから。
「………」
適当に廊下を進んで行くと、広い社内ラウンジへと差し掛かった。
ゆったりした空間のその場所には、広く大きな窓が作られており、現在は目を奪われるような煌びやかな夜景が目下に広がっていた。
力は、その光に吸い寄せられるように、ゆっくり窓辺へと足を運んだ。
(アイツ…無事かな…)
あの場から夏樹を連れ去ったのは、兄の冬樹…ということなのだろうか…?
勿論、他にも仲間がいたのかも知れないが。
薬で身動きの取れない夏樹をあの場から連れ去るには、最低限車が必要だろうから。
だが、きっと…まだ終わりじゃない。
そんな漠然とした嫌な予感が、力の内には存在していた。
「すっかり長居しちゃったな…」
久賀家を後にして夜空を見上げながら夏樹が言った。
時刻は既に夜の10時を過ぎており、空には幾多の星が瞬いている。
「今日は試合で疲れてるだろうに、ごめんね…」
気遣うように謝ってくる相変わらずの夏樹に、雅耶は空を見上げていた視線を夏樹へと戻しながら苦笑した。
「却下、だよ。すぐ謝るなって」
「あ…うん。『ありがとう』…だよな」
夏樹は肩をすくめると、二人で顔を見合わせて笑った。
「でも、突然お邪魔したのに夕飯までご馳走になっちゃって、本当に申し訳ない気がしてさ…」
「いいんだよ。ウチは、普段から家族揃ったって三人しかいないんだし…。いつもの食事風景なんて、会話も少なくてホントに寂しいもんなんだぞー?今日は、お前がいてくれて賑やかで良かったんじゃないかな」
そう言って「だから、いつでも大歓迎」…と雅耶は笑った。
その笑顔につられるように、夏樹も微笑みを浮かべる。
「雅耶の家って変わらないよね。おじさんも、おばさんもさ…」
「…そうかな?」
「うん。全然変わってないよ。昔のままで…すごく温かい…」
夏樹は、懐かしむように遠くを眺めた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる