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第4話 このあとめちゃくちゃ⚪︎⚪︎⚪︎した
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「あーもう! 好夫さんいるじゃないですかー! 駄目ですよー、居留守なんて使っちゃー!」
頬を可愛らしく膨らませ胸の前で拳を振る少女。鼻をぬける甘い声は耐性の無いものなら人生の全てを捧げてしまう魅力がある。
しかし、好夫には通じない。目の前の輩がそんなタマではないことを知っている。
「いやぁ、ちょっと寝ちゃってたもんで……ははっ」
「うっかりさんですねー! 好夫さんは!」
コツンと好夫のおでこを叩く手に震えてしまうのは、その手が血に染まるのを何度も見てきたせいか。
ふわりとしたピンク色の髪の毛は肩先にかかり、幼いながらも凹凸のハッキリした身体は特注の紺のスーツに包まれている。借金取りの少女はコロコロと笑う。
「み、ミルキさんは、どうしてここに?」
子どもが大人の服を着たような少女の名をミルキという。それが好夫の世界でいう苗字なのか名前なのかはわからなかったが、とにかく好夫は言われるがままにそう呼んていた。
「聞きましたよー? 紹介した仕事辞めちゃったってー!」
「あ、いや、すみません……」
頬を膨らませ両手を腰にあてて好夫を見上げる姿はオタクが思い描く理想の妹のようだ。通称ピンク色の悪魔。あの職場を好夫に紹介したのもミルキだった。
「辞めたっていうか……そのー……」
紹介した本人を目の前に好夫が言い淀む。
「クビ、というか……」
「あ?」
北極からそのまま取り寄せたような極寒の風が吹いた。たったの1ラリーで理想の妹だった少女は鬼へと変わった。好夫は今こそ「借金取りを無力化する」チートが欲しくて仕方がなかった。現実逃避する好夫の首にゆっくりとミルキの細い指が伸びた。
「ちょっとー、聞こえませんでしたねー?」
喉元に伸びたミルキの手はしっかりと好夫の首を掴み、徐々に好夫の足を地面からお別れさせていく。蔓のように華奢な腕のどこにそんな力があったのか。好夫がどうやら足だけじゃなく色々なものがお別れしそうなことを悟り、慌てて許しを乞う。
「げほっ、待って! 次こそは! げへっ! 次こ……ぎえぴぃぃぃ」
喉元にくいこむ可憐な指が好夫から酸素を奪っていく。
「好夫さんはいつになったら人間さんに慣れるんですかねー? お仕事探してくるのも大変なんですよー? 魔王城に行ってまた除染作業に勤しみますかー?」
「それだけは……! それ、だけは……! げほっ、ごふっ!」
頚部圧迫により青ざめていく好夫。困ったさんですねーと笑いながらも下ろす気配のないミルキ。好夫の足は最初は泳ぐように元気にもがいていたがやがてその動きは小さくなっていく。そして、
「ん、でも……! やります……から……どう、か……!」
「えー? ちゃんと言わなきゃわかりませんよー」
「な、ん、でも! やり……ますぅ……! カヒュッ……」
「その言葉が聞きたかったんです」
どこぞの闇医者のようなことを言ってミルキは力を抜いた。べちょっと好夫は地面に落ちる。
「次は最初からそういってくださいね」
そういってハンカチで手を拭くミルキは明らかに暴力の行使に慣れていた。地面を舐める好夫は「わからせ……わからせ……」とうわごとのように呟いている。
「じゃあ豚さん……違った、好夫さん!」
ぞっとするような言い間違いと共に、ミルキは一枚の書類を取り出した。
「ここにサインをお願いしますねー? あれ、一人で書けないですかー? 安心してください、私が手伝ってあげますからねー。大丈夫ですよー、これは好夫さんの一生に関わることですからねー」
何が大丈夫なのかはさっぱりわからなかったが、ミルキはイヤイヤと力なく首を振る好夫を無視してペンを握らせると上から自分の手を重ねて無理やり書類にサインをさせた。完成した書類を見て「フランちゃんもこれで手出しはできないですねー」と暗い笑みを浮かべるミルキ。好夫は静かに泣いていた。
「じゃあ明日身柄を引き取りに来ますのでー……」
ミルキは満開の向日葵のような笑顔を浮かべ、両手で好夫を頬を掴む。
「逃げちゃ……ダメですよ?」
──草木も眠る丑三つ時。
室内には大きなカバンと正座する人影があった。
「さよならマイホーム」
好夫はこのあとめちゃくちゃ夜逃げした。
頬を可愛らしく膨らませ胸の前で拳を振る少女。鼻をぬける甘い声は耐性の無いものなら人生の全てを捧げてしまう魅力がある。
しかし、好夫には通じない。目の前の輩がそんなタマではないことを知っている。
「いやぁ、ちょっと寝ちゃってたもんで……ははっ」
「うっかりさんですねー! 好夫さんは!」
コツンと好夫のおでこを叩く手に震えてしまうのは、その手が血に染まるのを何度も見てきたせいか。
ふわりとしたピンク色の髪の毛は肩先にかかり、幼いながらも凹凸のハッキリした身体は特注の紺のスーツに包まれている。借金取りの少女はコロコロと笑う。
「み、ミルキさんは、どうしてここに?」
子どもが大人の服を着たような少女の名をミルキという。それが好夫の世界でいう苗字なのか名前なのかはわからなかったが、とにかく好夫は言われるがままにそう呼んていた。
「聞きましたよー? 紹介した仕事辞めちゃったってー!」
「あ、いや、すみません……」
頬を膨らませ両手を腰にあてて好夫を見上げる姿はオタクが思い描く理想の妹のようだ。通称ピンク色の悪魔。あの職場を好夫に紹介したのもミルキだった。
「辞めたっていうか……そのー……」
紹介した本人を目の前に好夫が言い淀む。
「クビ、というか……」
「あ?」
北極からそのまま取り寄せたような極寒の風が吹いた。たったの1ラリーで理想の妹だった少女は鬼へと変わった。好夫は今こそ「借金取りを無力化する」チートが欲しくて仕方がなかった。現実逃避する好夫の首にゆっくりとミルキの細い指が伸びた。
「ちょっとー、聞こえませんでしたねー?」
喉元に伸びたミルキの手はしっかりと好夫の首を掴み、徐々に好夫の足を地面からお別れさせていく。蔓のように華奢な腕のどこにそんな力があったのか。好夫がどうやら足だけじゃなく色々なものがお別れしそうなことを悟り、慌てて許しを乞う。
「げほっ、待って! 次こそは! げへっ! 次こ……ぎえぴぃぃぃ」
喉元にくいこむ可憐な指が好夫から酸素を奪っていく。
「好夫さんはいつになったら人間さんに慣れるんですかねー? お仕事探してくるのも大変なんですよー? 魔王城に行ってまた除染作業に勤しみますかー?」
「それだけは……! それ、だけは……! げほっ、ごふっ!」
頚部圧迫により青ざめていく好夫。困ったさんですねーと笑いながらも下ろす気配のないミルキ。好夫の足は最初は泳ぐように元気にもがいていたがやがてその動きは小さくなっていく。そして、
「ん、でも……! やります……から……どう、か……!」
「えー? ちゃんと言わなきゃわかりませんよー」
「な、ん、でも! やり……ますぅ……! カヒュッ……」
「その言葉が聞きたかったんです」
どこぞの闇医者のようなことを言ってミルキは力を抜いた。べちょっと好夫は地面に落ちる。
「次は最初からそういってくださいね」
そういってハンカチで手を拭くミルキは明らかに暴力の行使に慣れていた。地面を舐める好夫は「わからせ……わからせ……」とうわごとのように呟いている。
「じゃあ豚さん……違った、好夫さん!」
ぞっとするような言い間違いと共に、ミルキは一枚の書類を取り出した。
「ここにサインをお願いしますねー? あれ、一人で書けないですかー? 安心してください、私が手伝ってあげますからねー。大丈夫ですよー、これは好夫さんの一生に関わることですからねー」
何が大丈夫なのかはさっぱりわからなかったが、ミルキはイヤイヤと力なく首を振る好夫を無視してペンを握らせると上から自分の手を重ねて無理やり書類にサインをさせた。完成した書類を見て「フランちゃんもこれで手出しはできないですねー」と暗い笑みを浮かべるミルキ。好夫は静かに泣いていた。
「じゃあ明日身柄を引き取りに来ますのでー……」
ミルキは満開の向日葵のような笑顔を浮かべ、両手で好夫を頬を掴む。
「逃げちゃ……ダメですよ?」
──草木も眠る丑三つ時。
室内には大きなカバンと正座する人影があった。
「さよならマイホーム」
好夫はこのあとめちゃくちゃ夜逃げした。
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