バベル 頂上を目指す者たち

tanuki

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第1話 バベル

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大きな戦争があった。

それはそれは大きな戦争で、地上は巨大な火によって洗い流されてしまい、人間が住む環境ではなくなった。

恐怖に怯える人間たちは地下へと逃げた。

地下には巨大なシェルターが建造されていて、ある程度の自給自足が可能だった。人間たちはどうにかそこで文明を繋ぐことに成功した。

それは今からたった500年前の話だ。たくさんの技術は後退してしまったが、人々はたくましく生きている。

逃げ延びた最初の人々が息絶え、地上の大きな戦争が学校で習う歴史の一つとして埋もれていった頃、それは出現した。

巨大な塔だった。

その塔は凄まじい高さを誇り、それは地下から見える『天井』から伸びているようだった。

かつての地上の建造物をもじり、『バベル』と呼ばれるようになったその塔は地下の人間に多くの恵を与えることとなる。

バベルは見た目からは想像も出来ないほどの広大な空間が広がっており、そこには現代の技術では再現不可能な未知の財宝が眠っていた。後に『果実』と呼ばれることになるそれらは、地下社会の文明を飛躍的に向上させた。

とある学者が歩数と方位磁石を頼りに中の広さを試算したことがあった。その結果は驚くべきものだった。何度計り直しても、物理的に存在している以上の広さがその内部には拡がっていた。

とはいえバベルが与えるものは果実だけではない。その広大な塔内には「悪魔」と呼ばれる存在が生息していた。悪魔は様々な姿形をしており、かつて地上に繁栄していた種を模していることが多い。悪魔たちは果実に呼び寄せられる人間たちを容易く切り刻んだ。

人間はバベルを恐れ、崇めた。

かつて神の怒りに触れた塔の名を持つソレは、いつしかその神と同一視されるようになった。宗教のように日々の糧を得ることをバベルに感謝し、文化の中心へとバベルが組み込まれていった

人々が地上から追い出され500年。バベルは現在、30階層までが確認されている。バベルが発見されてから300年以上もの月日が流れているというのに解明は遅々として進んでいない。それでもバベルからもたらされる果実は大いなる恵を人類に与えた。

欠損すら癒す秘薬。
食べても無くならない植物。
様々なエネルギーを溜め込む鉱石。
筋力以上の力を発揮する武具。
超常現象を起こす巻物。

誰かがいった。

「あれは神様が作ったものだ」

誰が言ったかは関係ない。降って湧いた超常の品々を他に言い表す術はなかった。

誰かがいった言葉は人々の胸に自然と落ちた。

「きっと一番上では神様がお待ちになっているに違いない」

それらは噂となり、やがて伝承へと変わった。

バベル。
それは神様が造りし塔。かつて自らが破壊した塔を神は再び造りあげた。
その頂上では神様が人類を見守っていてくださる。

地下社会において、実益を伴う宗教はすぐさま国教へと変わった。

文明の衰退を理解している人間の心の支えとなったのだ。

今日もたくさんの人間が塔の中に実る果実を求め、バベルへと吸い込まれていく。そういった人間は『盗掘者』と呼ばれる。まさに神の果実を盗む者たちだ。

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