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第18話 友
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実に退屈だ。
防御魔法の授業というから、てっきり先ほどのイケメン君のような防御魔法を教えてもらえるとばかり思っていたが、初めは防御の心得を学びましょうと来た。
信じられないくらい退屈で、もう10時間位経ったのでは? と、先生に聞きそうになってしまった。
授業中も、先ほど女の子をいじめていた連中が俺の背中に呪いをかけているんじゃないかと勘ぐってしまうほど、強烈な視線を嫌というほど感じたよ。
授業を終えた俺は一目散に教室を飛び出し、医務室へと向かった。
先ほどの女の子――シェルバちゃんの怪我が心配だったからな。
15歳の娘さんに万が一があったら、おっさん申し訳なくてどうすればいいのかわからない。
「あの~」
「あら、ジュノス殿下。どうかなさいましたか?」
医務室に入ると、ハレンチを絵に描いたような保険の先生が微笑みを浮かべながら出迎えてくれた。
スカイブルーの内巻きボブに、タイトなミニスカートと網タイツ。おまけに白衣と真っ赤なピンヒール……教師にあるまじき服装だな。
「その、女の子が怪我をして運ばれたと思うのですが……」
「ああ、彼女なら向こうですよ」
医務室は意外に広く、ベッドが10台以上並んでいる。
それに、医務室とは思えないくらい豪華な作りだ。
黄金のベッドは悪趣味としか言いようがないな。
こんなところでは落ち着いて眠れないだろ? 目がクラクラするわ!
「あっ!」
シェルバちゃんと目が合った。
軽く会釈して声をかける。
「大丈夫?」
「は、はい! でで、殿下が助けて下さったお陰で、この通りもうへっちゃらです!」
「おい、シェルバ! 聡明なジュノス殿下の前ではしたないだろ!」
スカートの中が見えてしまうのではと思うほど、ベッドの上で足を高く上げる彼女を、優しく叱るイケメン。
なんて絵になる兄妹なんだ!
そういえば、御先祖様が海賊と言っていたな。
昨日読んだ書物に書かれていたオルパナール国の王子様とお姫様か。
できれば友達になっておきたい。
イケメンは先ほどの防御魔法を見てもわかる通り、とても強そうだし、何かあれば守ってくれるかも。
それに、いざとなったら匿って貰わないといけないし、王族と繋がりがある方がいいに決まってるもんな。
「元気そうで何よりだよ。この国の王子として妹さんに怪我を負わせてしまい、本当に申し訳ない。重ね重ね御詫び申し上げます」
俺のせいにされたら堪ったもんじゃないからな。ここはちゃんと誠心誠意謝罪しておこう。
その上で友好関係を築ければ俺としては最高なんだけど……。
「とと、とんでもない! どうか頭を上げてくれ。ジュノス殿下!」
「兄上の言う通りです! このくらい慣れていますから! それに、先生がお薬をくれたのでもう何ともありませんし」
「う~ん、しかしなぁ~」
まずい。
ここでもういいから帰れと言われてしまえば、せっかくの友好関係(逃げ道)を築く機会を失ってしまう。
何とか引き伸ばさねば……。
ただでさえ、皆俺を避ける始末だ。この好機、何としても物にしてみせるぞ!
「あっ、そうだ! 御詫びと言っては何だが、良かったら私の屋敷でお食事など、どど、どうかな? ここ、この機会に是非っ! とと、友達になれればと思うのだが!」
言っちゃったぁぁああああ!!
恥ずかしぃぃいいいい!
おっさんが15歳のイケメンと美少女ちゃんに友達になろうだって!
キモいよね、そりゃ引くよね!
ほら見ろ、突然過ぎたから、2人共なに言っちゃってんのって顔でポカーンとしちゃったじゃないかっ!
「友達……俺達と? 」
「その、私達……オルパナール人ですけど……」
え……だから何?
「オルパナール……? 私はリグテリア人ですが? 国が違ったらお誘いしてはまずいのですか?」
兄妹で顔を見合わせて訝しげに小首を曲げている。
何か特殊なルールみたいなのがあるのかな?
「いや、その……では、お言葉に甘えて、是非」
「おおおおおっ! それは良かった! では、授業が終わったらお迎えに伺わせてもらいますので、御自宅を窺っても?」
「「あっ……」」
ん……なんだ?
食い気味にいき過ぎてキモかったか?
それとも……家を知られたくない理由でもあるのかな?
「実は……その」
◆
「ちょっとぉぉおおおおおっ!!」
2人から話しを聞いた俺は職員室に駆け込み、声を張り上げた。
突然大声を発しながら乗り込んで来た俺に、教師一同戦慄している。
「どど、どうかなさいましたか? ジュノス殿下?」
「どうもこうもない! 一体何を考えているのだ!」
「は? 何がです?」
「マイスター御兄弟の寮についてだ!」
教師一同意味がわからないと困惑していると、ゴーゲン理事長がやって来た。
「どうかされましたかな? ジュノス殿下」
「理事長、一体この学園は何を考えているんですかッ! とても人道的とは言えない最低の行為ですよ!」
「はて? 何のことでしょうか?」
「話していても埒が明かない! 御自分の目でお確かめ下さい!」
俺は理事長含め、その場に居合わせた教師全員を、マイスター兄妹が数日寝泊まりしているという物置小屋へと連れてきた。
「これは……!?」
埃っぽい部屋の隅に置かれた荷物。シーツを被せ、ベッド代わりにしていたと思われる重ねられたマット。
おっさん不憫で仕方ないわ!
「理事長! これはどういうおつもりなのですか? 国や人種が違うと言うだけで、このような扱いをここでは日常的に行われているのですか!」
部屋を目にした理事長の表情がとても険しい。
あれ? 知らなかったのかな?
「ベイカー先生、これはどういうことですかな? 儂はマイスター兄妹にも、皆と同じ部屋をと言ったはずじゃが?」
「そ、それは……そうっ! 他の貴族方から苦情がございまして、やはりクラ……オルパナール人と一緒の寮には住みたくないと」
「では、その者達を寮から追い出せばよい! ここ、王立アルカバス魔法学院では、皆が平等に学べるようにと作られておる。身勝手な申し出に教師が従うなど言語道断。決してあってわならん。違うかの?」
「お、仰る通りです」
どうやら理事長達は知らなかったようだな。
悪いのは全部、このベイカーとかいう教師か。
いい歳した大人が子供をいじめるなんて、恥ずかしくないのか!
呆れて物も言えん。恥を知れ、恥を。
さすがに前世でクズニートだった俺でも、大人が子供をいじめるなんて発想はなかった。
子供は守るものだろうが、バカタレ!
とにかく、早急に対処できて良かった。こんなことが表沙汰になっていたら、国際問題に発展しかねないからな。
これでジェネルとシェルバちゃんも、安心して学園生活を送れるだろう。
俺のいざという時の渡舟なんだから、ちゃんとして貰わないと困るよ、まったく。
2人もとても喜んでくれたようだし、本当に良かった。
すべての授業を終えた俺は、2人を迎えに行き、そのまま自宅へと招待した。
レベッカが他所の国の王族にお食事を振る舞うとなり、かなり焦っていたみたいだが、大丈夫。
彼女の料理はとても美味しいんだ。胸を晴れレベッカ!
レベッカはシェルバちゃんとすぐに打ち解け、身分など関係なく話している姿はとても素敵だ。
レベッカには同年代の友人が必要だと思っていたので、何だかこちらまで嬉しくなる。
それに、俺にも初めて友人と呼べる人ができた。
初めはお互い緊張していたが、海の話しになって盛り上がった。
俺も幼い頃に祖父の家の近くの海辺でよく遊んでいたから、島国育ちのジェネルとは気があったのだ。
よくよく考えると、日本も島国だしな。
「そうだ! 今度の連休には是非、俺達の故郷にジュノスとレベッカを招待したい!」
「それはとても素敵な提案よ、兄上! 新鮮なお魚を是非食べてもらいたいわ」
「おお、旅行か! それは実に楽しそうな申し出だな!」
「とても楽しみですね、ジュノス殿下!」
「うん!」
ついでに避難先のオルパナールの視察もできるし、一石二鳥だな!
防御魔法の授業というから、てっきり先ほどのイケメン君のような防御魔法を教えてもらえるとばかり思っていたが、初めは防御の心得を学びましょうと来た。
信じられないくらい退屈で、もう10時間位経ったのでは? と、先生に聞きそうになってしまった。
授業中も、先ほど女の子をいじめていた連中が俺の背中に呪いをかけているんじゃないかと勘ぐってしまうほど、強烈な視線を嫌というほど感じたよ。
授業を終えた俺は一目散に教室を飛び出し、医務室へと向かった。
先ほどの女の子――シェルバちゃんの怪我が心配だったからな。
15歳の娘さんに万が一があったら、おっさん申し訳なくてどうすればいいのかわからない。
「あの~」
「あら、ジュノス殿下。どうかなさいましたか?」
医務室に入ると、ハレンチを絵に描いたような保険の先生が微笑みを浮かべながら出迎えてくれた。
スカイブルーの内巻きボブに、タイトなミニスカートと網タイツ。おまけに白衣と真っ赤なピンヒール……教師にあるまじき服装だな。
「その、女の子が怪我をして運ばれたと思うのですが……」
「ああ、彼女なら向こうですよ」
医務室は意外に広く、ベッドが10台以上並んでいる。
それに、医務室とは思えないくらい豪華な作りだ。
黄金のベッドは悪趣味としか言いようがないな。
こんなところでは落ち着いて眠れないだろ? 目がクラクラするわ!
「あっ!」
シェルバちゃんと目が合った。
軽く会釈して声をかける。
「大丈夫?」
「は、はい! でで、殿下が助けて下さったお陰で、この通りもうへっちゃらです!」
「おい、シェルバ! 聡明なジュノス殿下の前ではしたないだろ!」
スカートの中が見えてしまうのではと思うほど、ベッドの上で足を高く上げる彼女を、優しく叱るイケメン。
なんて絵になる兄妹なんだ!
そういえば、御先祖様が海賊と言っていたな。
昨日読んだ書物に書かれていたオルパナール国の王子様とお姫様か。
できれば友達になっておきたい。
イケメンは先ほどの防御魔法を見てもわかる通り、とても強そうだし、何かあれば守ってくれるかも。
それに、いざとなったら匿って貰わないといけないし、王族と繋がりがある方がいいに決まってるもんな。
「元気そうで何よりだよ。この国の王子として妹さんに怪我を負わせてしまい、本当に申し訳ない。重ね重ね御詫び申し上げます」
俺のせいにされたら堪ったもんじゃないからな。ここはちゃんと誠心誠意謝罪しておこう。
その上で友好関係を築ければ俺としては最高なんだけど……。
「とと、とんでもない! どうか頭を上げてくれ。ジュノス殿下!」
「兄上の言う通りです! このくらい慣れていますから! それに、先生がお薬をくれたのでもう何ともありませんし」
「う~ん、しかしなぁ~」
まずい。
ここでもういいから帰れと言われてしまえば、せっかくの友好関係(逃げ道)を築く機会を失ってしまう。
何とか引き伸ばさねば……。
ただでさえ、皆俺を避ける始末だ。この好機、何としても物にしてみせるぞ!
「あっ、そうだ! 御詫びと言っては何だが、良かったら私の屋敷でお食事など、どど、どうかな? ここ、この機会に是非っ! とと、友達になれればと思うのだが!」
言っちゃったぁぁああああ!!
恥ずかしぃぃいいいい!
おっさんが15歳のイケメンと美少女ちゃんに友達になろうだって!
キモいよね、そりゃ引くよね!
ほら見ろ、突然過ぎたから、2人共なに言っちゃってんのって顔でポカーンとしちゃったじゃないかっ!
「友達……俺達と? 」
「その、私達……オルパナール人ですけど……」
え……だから何?
「オルパナール……? 私はリグテリア人ですが? 国が違ったらお誘いしてはまずいのですか?」
兄妹で顔を見合わせて訝しげに小首を曲げている。
何か特殊なルールみたいなのがあるのかな?
「いや、その……では、お言葉に甘えて、是非」
「おおおおおっ! それは良かった! では、授業が終わったらお迎えに伺わせてもらいますので、御自宅を窺っても?」
「「あっ……」」
ん……なんだ?
食い気味にいき過ぎてキモかったか?
それとも……家を知られたくない理由でもあるのかな?
「実は……その」
◆
「ちょっとぉぉおおおおおっ!!」
2人から話しを聞いた俺は職員室に駆け込み、声を張り上げた。
突然大声を発しながら乗り込んで来た俺に、教師一同戦慄している。
「どど、どうかなさいましたか? ジュノス殿下?」
「どうもこうもない! 一体何を考えているのだ!」
「は? 何がです?」
「マイスター御兄弟の寮についてだ!」
教師一同意味がわからないと困惑していると、ゴーゲン理事長がやって来た。
「どうかされましたかな? ジュノス殿下」
「理事長、一体この学園は何を考えているんですかッ! とても人道的とは言えない最低の行為ですよ!」
「はて? 何のことでしょうか?」
「話していても埒が明かない! 御自分の目でお確かめ下さい!」
俺は理事長含め、その場に居合わせた教師全員を、マイスター兄妹が数日寝泊まりしているという物置小屋へと連れてきた。
「これは……!?」
埃っぽい部屋の隅に置かれた荷物。シーツを被せ、ベッド代わりにしていたと思われる重ねられたマット。
おっさん不憫で仕方ないわ!
「理事長! これはどういうおつもりなのですか? 国や人種が違うと言うだけで、このような扱いをここでは日常的に行われているのですか!」
部屋を目にした理事長の表情がとても険しい。
あれ? 知らなかったのかな?
「ベイカー先生、これはどういうことですかな? 儂はマイスター兄妹にも、皆と同じ部屋をと言ったはずじゃが?」
「そ、それは……そうっ! 他の貴族方から苦情がございまして、やはりクラ……オルパナール人と一緒の寮には住みたくないと」
「では、その者達を寮から追い出せばよい! ここ、王立アルカバス魔法学院では、皆が平等に学べるようにと作られておる。身勝手な申し出に教師が従うなど言語道断。決してあってわならん。違うかの?」
「お、仰る通りです」
どうやら理事長達は知らなかったようだな。
悪いのは全部、このベイカーとかいう教師か。
いい歳した大人が子供をいじめるなんて、恥ずかしくないのか!
呆れて物も言えん。恥を知れ、恥を。
さすがに前世でクズニートだった俺でも、大人が子供をいじめるなんて発想はなかった。
子供は守るものだろうが、バカタレ!
とにかく、早急に対処できて良かった。こんなことが表沙汰になっていたら、国際問題に発展しかねないからな。
これでジェネルとシェルバちゃんも、安心して学園生活を送れるだろう。
俺のいざという時の渡舟なんだから、ちゃんとして貰わないと困るよ、まったく。
2人もとても喜んでくれたようだし、本当に良かった。
すべての授業を終えた俺は、2人を迎えに行き、そのまま自宅へと招待した。
レベッカが他所の国の王族にお食事を振る舞うとなり、かなり焦っていたみたいだが、大丈夫。
彼女の料理はとても美味しいんだ。胸を晴れレベッカ!
レベッカはシェルバちゃんとすぐに打ち解け、身分など関係なく話している姿はとても素敵だ。
レベッカには同年代の友人が必要だと思っていたので、何だかこちらまで嬉しくなる。
それに、俺にも初めて友人と呼べる人ができた。
初めはお互い緊張していたが、海の話しになって盛り上がった。
俺も幼い頃に祖父の家の近くの海辺でよく遊んでいたから、島国育ちのジェネルとは気があったのだ。
よくよく考えると、日本も島国だしな。
「そうだ! 今度の連休には是非、俺達の故郷にジュノスとレベッカを招待したい!」
「それはとても素敵な提案よ、兄上! 新鮮なお魚を是非食べてもらいたいわ」
「おお、旅行か! それは実に楽しそうな申し出だな!」
「とても楽しみですね、ジュノス殿下!」
「うん!」
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