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第38話 最強最悪の軍団
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東北南に集った両軍は睨み合いを続けていた。
そこにフォクシー軍が加わり、グリティアから応援に駆けつけた森の民が合わさったことに、ユーゲニウム兵も、アルスタルメシア兵もも戸惑いの色を隠せずにいる。
「ど、どういうことだ!?」
「なぜペンデュラム国に魔族の軍勢がいるのだ!」
「まさか!? あやつら既に魔族の手に堕ちておったのか!?」
「なんと無様かっ!」
ペンデュラム国へいまにも攻め入ろうとしていたユーゲニウム兵も、アルスタルメシア兵も当然、ペンデュラム国が魔王軍傘下に入っているなど考える者はおらず。
彼らが魔の手に堕ちたと思い込んでいた。
さらにそこへ……。
「ま、魔物だっ!?」
「魔物が周囲を取り囲んでおります!」
「なんだとっ!?」
兵の伝令を受けた両軍の指揮官は、望遠レンズ越しに周囲を見渡した。
すると既に、数万の軍勢を包囲した魔物たちが鼻息荒く闘志をみなぎらせている。
「東の連中から噂には聞いていたが、まさかこれほど早くミラスタール・ペンデュラム閣下が我々にもご命令をくださるとは……」
「もうオラ……やる気に溢れちゃうもんね♪」
「魔王軍幹部さま直々の命令だべさ、もう死んでも悔いねぇや」
南と北に集った魔物たちは初めて魔王軍指揮の下、大規模な戦闘に参加できるとあり大興奮していた。中には嬉しさのあまり泣き出すものもいるほどだ。
「ん……なんだこの歌は?」
驚くのはまだ早いと云わんばかりに、戦場と化しつつある大地に美しい歌声が響き始める。
それは大地に力を与え、ハーピィー部隊が空から蒔く種を急成長させていく。
あっという間に立派な大木へと育つ。
「……あっがっ!?」
「反則だろ……こんなの」
「これ……進軍……不可能じゃねぇ?」
それはミラスタール・ペンデュラム考案、絶対防壁――木々の防波堤。
大津波のように流れ込んでくる彼らの動きを封じる、民を守りし王の一手である!
しかも、所々に魔界の植物『人食い花』まで紛れ込ませていた。
瞬く間に視界に入る風景を変えてしまったペンデュラム国に対し、ユーゲニウム兵もアルスタルメシア兵も畏怖の念を抱きつつあった。
打って変わって集まった魔物は凄まじい光景に場が沸き立つ。
両軍の士気はわずかな時を経て、正反対なものへと移り変わる。
「うう、狼狽えるなっ! こんなもの焼き払ってしまえば済むことだ。魔導兵前へ!」
指揮官が魔導師部隊を前方に押し上げると、一斉に詠唱を開始し、燃え盛る火球を木々に向けて放つ……がっ!
「なにっ――!?」
燃え盛る炎が木々に届くことなく弾けて消失。
「そのような下級魔法が私たちエルフに通じると思うなよ!」
聖地グリティアから集いしエルフが光の障壁――聖なるバリアを張り巡らせたのだ。
人間よりも遥かに高い魔力を秘める彼らの前では、並の魔導師では手も足もでないことなどおとぎ話を読み聞かせられている三歳児でも理解していること。
彼らエルフは近接戦闘こそ不得意であるが、単純な魔力合戦なら魔界でも屈指の魔の使い手――逸材たちである。
彼らエルフが守りに徹するのなら、それを越えて木々を射抜くことは至難の技に当たる。
「おいてめぇらそこを退けっ!」
東の地では集まった魔物たちを押し退け、見覚えのあるゴリラのような容姿の魔物が声を荒げた。
その両腕には巨大な岩石が持ち上げられている。
「これなぁ……ミラスタール閣下から教わった岩投げってんだ! こんだけゴミみてぇに集まってんだから……適当に投げても当たるだろ? ……うりやぁぁああああああっ――!」
知恵をつけたゴリラ……ではなく、魔物が豪速球で岩石を投擲。
「いやぁぁああああああああああああああああああああああああっ――!?」
凄まじい速度で兵を跳ね飛ばし、転がっては兵を磨り潰す。円形状に取り囲まれた彼らに逃げ場はなく、断末魔の叫びが蒼窮へと舞い上がる。
「おおっ、面白そうだな! 俺もやってみるか!」
「みんなで投げたらもっと面白そうじゃねぇーか?」
にたーっと悪魔の笑みを張りつけた魔物たちが、大きな岩を投げつける。その度に逃げ場のない兵たちは泣き叫びながらぺしゃんこに潰されていく。
「ぎゃはははははっ――面白れぇや、こりゃ愉快だわ!」
「あのときは殺すなとのご命令だったが、今回はぶち殺せだからなっ」
「ああ、日頃の人間どもの鬱憤をここで晴らしてやるぜ」
気が狂ったように次から次へと岩を投擲する魔物たちに、ペンデュラム兵の表情も青ざめていく。
「えぐいな……」
「ああ、ありゃ……一溜まりもねぇぞ」
「俺……いま心底ペンデュラム生まれでよかったと思ったわ」
「同感だな」
寒気すら覚える地獄絵図を上空から俯瞰していたハーピィーたちは、南と北の魔物にも彼ら同様のことをするように素早く伝令を回す。
当初圧倒的な兵力差だと臆していたミラスタール・ペンデュラムだったが、彼すらも予期せぬ事態が起こっていた。
彼が教えた些細なことが、魔物たちを圧倒的なまでに快進撃を続ける化物へと、知らぬ間に育てていたのだ。
それは仲間であるペンデュラム兵から見ても、ましてや敵国である彼らからしてみれば……最強最悪の軍団に見えるほどの。
人間を殺すことに一切の躊躇いを見せることなく、腹を抱えて悪魔の所業を繰り返す――地獄の軍団を作り上げていた。
そして、それを彼らに伝授し、教えたのがミラスタール・ペンデュラムだと……間違った情報が魔物たちの間で飛躍されていく。
軍事の鬼才――ミラスタール・ペンデュラムと……。
そこにフォクシー軍が加わり、グリティアから応援に駆けつけた森の民が合わさったことに、ユーゲニウム兵も、アルスタルメシア兵もも戸惑いの色を隠せずにいる。
「ど、どういうことだ!?」
「なぜペンデュラム国に魔族の軍勢がいるのだ!」
「まさか!? あやつら既に魔族の手に堕ちておったのか!?」
「なんと無様かっ!」
ペンデュラム国へいまにも攻め入ろうとしていたユーゲニウム兵も、アルスタルメシア兵も当然、ペンデュラム国が魔王軍傘下に入っているなど考える者はおらず。
彼らが魔の手に堕ちたと思い込んでいた。
さらにそこへ……。
「ま、魔物だっ!?」
「魔物が周囲を取り囲んでおります!」
「なんだとっ!?」
兵の伝令を受けた両軍の指揮官は、望遠レンズ越しに周囲を見渡した。
すると既に、数万の軍勢を包囲した魔物たちが鼻息荒く闘志をみなぎらせている。
「東の連中から噂には聞いていたが、まさかこれほど早くミラスタール・ペンデュラム閣下が我々にもご命令をくださるとは……」
「もうオラ……やる気に溢れちゃうもんね♪」
「魔王軍幹部さま直々の命令だべさ、もう死んでも悔いねぇや」
南と北に集った魔物たちは初めて魔王軍指揮の下、大規模な戦闘に参加できるとあり大興奮していた。中には嬉しさのあまり泣き出すものもいるほどだ。
「ん……なんだこの歌は?」
驚くのはまだ早いと云わんばかりに、戦場と化しつつある大地に美しい歌声が響き始める。
それは大地に力を与え、ハーピィー部隊が空から蒔く種を急成長させていく。
あっという間に立派な大木へと育つ。
「……あっがっ!?」
「反則だろ……こんなの」
「これ……進軍……不可能じゃねぇ?」
それはミラスタール・ペンデュラム考案、絶対防壁――木々の防波堤。
大津波のように流れ込んでくる彼らの動きを封じる、民を守りし王の一手である!
しかも、所々に魔界の植物『人食い花』まで紛れ込ませていた。
瞬く間に視界に入る風景を変えてしまったペンデュラム国に対し、ユーゲニウム兵もアルスタルメシア兵も畏怖の念を抱きつつあった。
打って変わって集まった魔物は凄まじい光景に場が沸き立つ。
両軍の士気はわずかな時を経て、正反対なものへと移り変わる。
「うう、狼狽えるなっ! こんなもの焼き払ってしまえば済むことだ。魔導兵前へ!」
指揮官が魔導師部隊を前方に押し上げると、一斉に詠唱を開始し、燃え盛る火球を木々に向けて放つ……がっ!
「なにっ――!?」
燃え盛る炎が木々に届くことなく弾けて消失。
「そのような下級魔法が私たちエルフに通じると思うなよ!」
聖地グリティアから集いしエルフが光の障壁――聖なるバリアを張り巡らせたのだ。
人間よりも遥かに高い魔力を秘める彼らの前では、並の魔導師では手も足もでないことなどおとぎ話を読み聞かせられている三歳児でも理解していること。
彼らエルフは近接戦闘こそ不得意であるが、単純な魔力合戦なら魔界でも屈指の魔の使い手――逸材たちである。
彼らエルフが守りに徹するのなら、それを越えて木々を射抜くことは至難の技に当たる。
「おいてめぇらそこを退けっ!」
東の地では集まった魔物たちを押し退け、見覚えのあるゴリラのような容姿の魔物が声を荒げた。
その両腕には巨大な岩石が持ち上げられている。
「これなぁ……ミラスタール閣下から教わった岩投げってんだ! こんだけゴミみてぇに集まってんだから……適当に投げても当たるだろ? ……うりやぁぁああああああっ――!」
知恵をつけたゴリラ……ではなく、魔物が豪速球で岩石を投擲。
「いやぁぁああああああああああああああああああああああああっ――!?」
凄まじい速度で兵を跳ね飛ばし、転がっては兵を磨り潰す。円形状に取り囲まれた彼らに逃げ場はなく、断末魔の叫びが蒼窮へと舞い上がる。
「おおっ、面白そうだな! 俺もやってみるか!」
「みんなで投げたらもっと面白そうじゃねぇーか?」
にたーっと悪魔の笑みを張りつけた魔物たちが、大きな岩を投げつける。その度に逃げ場のない兵たちは泣き叫びながらぺしゃんこに潰されていく。
「ぎゃはははははっ――面白れぇや、こりゃ愉快だわ!」
「あのときは殺すなとのご命令だったが、今回はぶち殺せだからなっ」
「ああ、日頃の人間どもの鬱憤をここで晴らしてやるぜ」
気が狂ったように次から次へと岩を投擲する魔物たちに、ペンデュラム兵の表情も青ざめていく。
「えぐいな……」
「ああ、ありゃ……一溜まりもねぇぞ」
「俺……いま心底ペンデュラム生まれでよかったと思ったわ」
「同感だな」
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彼が教えた些細なことが、魔物たちを圧倒的なまでに快進撃を続ける化物へと、知らぬ間に育てていたのだ。
それは仲間であるペンデュラム兵から見ても、ましてや敵国である彼らからしてみれば……最強最悪の軍団に見えるほどの。
人間を殺すことに一切の躊躇いを見せることなく、腹を抱えて悪魔の所業を繰り返す――地獄の軍団を作り上げていた。
そして、それを彼らに伝授し、教えたのがミラスタール・ペンデュラムだと……間違った情報が魔物たちの間で飛躍されていく。
軍事の鬼才――ミラスタール・ペンデュラムと……。
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