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悪女殿下の婚約破棄、そして7回目の婚約
第4話
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「エドワード!」
爽やかな笑顔で腕をぶんぶんと振りながら、クリスティーナに声をかけてきたのは、第三師団の副官を務めるエドワード・トリアトトだ。
紅の軍服に身につけている彼は、脚のない騎馬のような形をした、鋼鉄製の小型迎撃艇カヴァルリーに跨っていた。
「閣下、乗ってくれ。戦空艇に向かう」
頷いたクリスティーナはドレスにも拘わらず、ひらりとエドワードの後ろに乗った。
エドワードが操縦桿を操作すると、ブーンと低い羽音のようなモーター音が断続的に鳴り始める。
動力を得たカヴァルリーがふわりと浮いて、コバルトブルーの空へ向かって走り出した。
上空に浮かんでいるのは、巨大な木造の空飛ぶ戦艦・戦空艇。装甲は木造で、数基のプロペラを推進力としている戦艦だ。世界で唯一ヴィクトール帝国が持っている、空で戦える軍・戦空艇団が所有しているものだ。
(指示してからすでに上空で待機しているなんて、さすがわたくしの団員たち)
クリスティーナは目を細めて、戦空艇を見つめる。
カヴァルリーはぐんぐんスピードを上げて、あっという間に戦空艇の甲板に着艦した。
バラバラバラ……と、勢いよく回転する戦空艇のプロペラ音が、クリスティーナにとって耳に心地良い。
ひらりと飛び降りたクリスティーナは、エドワードを伴い、すぐに艇内へ向かった。
「閣下、待ってたぜ!」
「おかえりなさい、クリス閣下!」
「おかえりなさい!」
入り口である重厚な扉をガチャンと開けて入室すると、艇内に待機していた第三師団に所属する団員たちが、次々に声をかける。
皆、クリスティーナの婚約とともにキングスコート王国に着任し、この国の国防を担っていた。
「クリス閣下、ドレス姿じゃないか。軍服はどうした?」
団員の中でも最初に声をかけてきた筋骨隆々の男・マルスが、クリスティーナの姿を訝し気にじろじろと見た。
「公務だったのよ。ついでに、婚約破棄をしてきたわ」
「またかよ! 今回は随分早いな?」
「ふふ、最短記録よ」
胸を張って堂々と言ったクリスティーナに、団員たちは次々と笑い出した。笑い声つられて、クリスティーナも笑ってしまう。
団員たちはこれまでもクリスティーナの婚約破棄をみてきたため、受け入れるのも早かった。
「じゃあ、この国ともおさらばだな」
「そうね。最後に一仕事してちょうだい。総員、配置について!」
凛とした声でクリスティーナが司令を出すと、すぐさま、おう! と団員たちからの返事が艇内に響いた。クリスティーナは艇内にある司令室へ急ぎ、エドワードもその後に続く。
戦空艇の進路の先には、翼をはためかせた魔獣ワイバーンが五体いる。
大きな巨体だが、恐れおののく必要はない。空という同じ土俵で戦える、戦空艇団・第三師団であれば十分に戦える。
「目標確認、距離九十。クリス閣下、どうするんだ?」
司令室の副官の席に着いたエドワードが、クリスティーナに指示を求めた。
司令室の前面に張られた大きなガラスの向こうを見据えて、師団長としてクリスティーナが采配する。
「距離五十まで詰めて。魔導弾を撃ち込むわよ!」
「了解! 総員に告ぐ。魔導弾の装填を開始せよ。距離五十にて射出。カウントを開始する……」
エドワードのアナウンスで、団員たちが靴音を響かせながら、すばやく次の行動に移す。
戦空艇に搭載されている大砲が、ガゴンガゴンと鈍い音を響かせながらぐるりと動き、ワイバーンたちに照準を合わせた。
「戦っている時が、一番生きているって感じがするわ」
ワイバーンの群れを見据えたクリスティーナから、ぽつりと小さな呟きが零れた。
爽やかな笑顔で腕をぶんぶんと振りながら、クリスティーナに声をかけてきたのは、第三師団の副官を務めるエドワード・トリアトトだ。
紅の軍服に身につけている彼は、脚のない騎馬のような形をした、鋼鉄製の小型迎撃艇カヴァルリーに跨っていた。
「閣下、乗ってくれ。戦空艇に向かう」
頷いたクリスティーナはドレスにも拘わらず、ひらりとエドワードの後ろに乗った。
エドワードが操縦桿を操作すると、ブーンと低い羽音のようなモーター音が断続的に鳴り始める。
動力を得たカヴァルリーがふわりと浮いて、コバルトブルーの空へ向かって走り出した。
上空に浮かんでいるのは、巨大な木造の空飛ぶ戦艦・戦空艇。装甲は木造で、数基のプロペラを推進力としている戦艦だ。世界で唯一ヴィクトール帝国が持っている、空で戦える軍・戦空艇団が所有しているものだ。
(指示してからすでに上空で待機しているなんて、さすがわたくしの団員たち)
クリスティーナは目を細めて、戦空艇を見つめる。
カヴァルリーはぐんぐんスピードを上げて、あっという間に戦空艇の甲板に着艦した。
バラバラバラ……と、勢いよく回転する戦空艇のプロペラ音が、クリスティーナにとって耳に心地良い。
ひらりと飛び降りたクリスティーナは、エドワードを伴い、すぐに艇内へ向かった。
「閣下、待ってたぜ!」
「おかえりなさい、クリス閣下!」
「おかえりなさい!」
入り口である重厚な扉をガチャンと開けて入室すると、艇内に待機していた第三師団に所属する団員たちが、次々に声をかける。
皆、クリスティーナの婚約とともにキングスコート王国に着任し、この国の国防を担っていた。
「クリス閣下、ドレス姿じゃないか。軍服はどうした?」
団員の中でも最初に声をかけてきた筋骨隆々の男・マルスが、クリスティーナの姿を訝し気にじろじろと見た。
「公務だったのよ。ついでに、婚約破棄をしてきたわ」
「またかよ! 今回は随分早いな?」
「ふふ、最短記録よ」
胸を張って堂々と言ったクリスティーナに、団員たちは次々と笑い出した。笑い声つられて、クリスティーナも笑ってしまう。
団員たちはこれまでもクリスティーナの婚約破棄をみてきたため、受け入れるのも早かった。
「じゃあ、この国ともおさらばだな」
「そうね。最後に一仕事してちょうだい。総員、配置について!」
凛とした声でクリスティーナが司令を出すと、すぐさま、おう! と団員たちからの返事が艇内に響いた。クリスティーナは艇内にある司令室へ急ぎ、エドワードもその後に続く。
戦空艇の進路の先には、翼をはためかせた魔獣ワイバーンが五体いる。
大きな巨体だが、恐れおののく必要はない。空という同じ土俵で戦える、戦空艇団・第三師団であれば十分に戦える。
「目標確認、距離九十。クリス閣下、どうするんだ?」
司令室の副官の席に着いたエドワードが、クリスティーナに指示を求めた。
司令室の前面に張られた大きなガラスの向こうを見据えて、師団長としてクリスティーナが采配する。
「距離五十まで詰めて。魔導弾を撃ち込むわよ!」
「了解! 総員に告ぐ。魔導弾の装填を開始せよ。距離五十にて射出。カウントを開始する……」
エドワードのアナウンスで、団員たちが靴音を響かせながら、すばやく次の行動に移す。
戦空艇に搭載されている大砲が、ガゴンガゴンと鈍い音を響かせながらぐるりと動き、ワイバーンたちに照準を合わせた。
「戦っている時が、一番生きているって感じがするわ」
ワイバーンの群れを見据えたクリスティーナから、ぽつりと小さな呟きが零れた。
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