7回目の婚約破棄を成し遂げたい悪女殿下は、天才公爵令息に溺愛されるとは思わない

結田龍

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天才公爵令息は、7番目の婚約者⁉

第18話

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(し、しまった……っ)


 一瞬で顔から血の気が引いた。
 売り言葉に買い言葉。勢いあまって、とんでもない約束をしてしまった。


「ひ、ひきょうよ!」

「ティナが許したんでしょう?」


 思わずシキの胸倉をつかんで、クリスティーナはギリリと睨みつけた。
 なんという腹黒。さすが兄に友と言わしめた人物。
 それに高位貴族の扱い方を分かっているのは、さすが公爵令息と言ったところか。


「閣下、カワイイ。萌える!」

「これは珍しいよな、モニカ。振り回されてるよ。閣下がお姫様にしか見えない」

「マルスさん。閣下は本物のカワイイお姫様ですよ。はぁ、カワイイ」

「カワイイって言わないで。わたくしはお姫様じゃなくて、軍人!」


 クリスティーナが噛みつけば、モニカとマルスぷっと吹き出し、意に介さず茶化す。
 シキもくすくすと笑うから、クリスティーナが子どもっぽくムッとしていると、胸倉をつかんでいる手にシキがそっと触れてきた。


「そろそろこの手を外しましょうか。ティナに触れられ続けると、私がどうにかなってしまうかもしれませんので」


 クリスティーナより一回り大きく無骨な手のひらが、彼女の手を優しく包み、きゅっと握りしめた。
 触れた硬い皮膚が彼の熱を伝えてくるようで、胸の鼓動が早鐘を打ち、落ち着かない。
 さらに蜂蜜のようなとろりとした視線を向けられて、クリスティーナは耐えられなくなり、パッと胸倉から手を放した。


(な、何なの! 調子が狂うわ。わたくしとしたことが、翻弄されている気がする……)


「コイツ、さっきから油断ならねーな!」


 戸惑うクリスティーナの意識を戻したのは、エドワードの叫びだった。
 ふうふうと動物のように呼吸を荒げるエドワードの背中を、ポンポンとマルスが軽く叩く。


「まあまあ、エドワード。落ち着けや」

「これが落ち着いていられるかよ!」

「面白いヤツがきたじゃねーか。第三師団にとって、いい刺激になるんじゃねーか?」


 ワハハと豪快にマルスが笑うが、エドワードは納得がいかず口をへの字に曲げる。
 シキがそれを見て苦笑しながら、マルスに声をかけた。


「そう言っていただけると助かります。あなたは?」

「俺はマルスって言うんだ。よろしくな。平民だから敬語は勘弁してくれよ?」


 茶目っ気たっぷりに挨拶をしたマルスに、貴族らしい嫌がるそぶりをみせず、シキがよろしく、と手を差し出し握手を交わした。


「ティナがあなた方の振る舞いを許しているのでしょう? だから私も気にしませんよ」


 さも当然だというような態度のシキに、クリスティーナはわずかに目を瞠る。
 確かにこれらの振る舞いについては、クリスティーナが許しているが、貴族社会や帝国軍の他の部隊では、身分に敬意を払わないのは許されないものだ。
 他から見れば異常な雰囲気なのに、それをあっさりと受け入れるのか。


(シキ・ザートツェントル……一体、どういう人物なのかしら?)


 クリスティーナがシキをじっと見ていると、彼はマルスの腰に佩く、魔導ライフルを指差した。


「ところで、その魔導武器は……魔導ライフルですね。見せてもらっても?」





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