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第三師団の魔獣討伐
第35話
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シキに続き、カヴァルリーから降りたクリスティーナは、四角錐の形をした石の塊に近づいた。
それは首が痛くなるほど見上げるくらいの高さがあり、その高さと同じくらいの辺で構成されている、四角錐の巨大な建造物だった。
「かなり大きいのね」
「文献で見ましたが、こんなに大きなものだったとは。文献通りなら、これがフリーエネルギーというものだそうです」
「これが……」
またフォォオンと独特な音が聞こえてきた。どうやら四角錐から発せられているようだ。
どんな仕組みになっているのだろう、とクリスティーナはうずうずしてしまう。
「ティナ、私はさっそく解析を始めます。しばらくかかると思いますが」
「わかったわ」
シキが建造物に近づくと、今度は革袋から薄い箱型の装置を取り出した。どうやら解析装置らしい。その装置から付随している数本のコードを、四角錐の側面に取りつける。
クリスティーナが解析装置を覗き込むと、ピピッと軽快な音が鳴った後、解析が始まったようだ。
邪魔をしないように離れたクリスティーナだったが、むくむくと育つ好奇心を抑えられず、手のひらで別の側面にそっと触れた。
「あら……温かい?」
じんわりとした温かさが、手のひらに伝わってきた。
遺跡の内部は、常にひんやりと冷たい空気が漂っていたのに。
「おそらくこの建造物から放たれている柱のようなエネルギーに核があり、それが熱を発しているのだと思います」
シキが画面から視線を動かさずに言った。
その横顔は真剣で、少し伏せた目元に色気が漂っているようで、クリスティーナの胸がドキリと鳴った。
(また意識を……きっとデートなんて言われたせいだわ)
胸がもやもやとして地団駄を踏みたいところだが、シキがこちらを見ていなことをいいことに、ジトっと睨んでおいた。そんなクリスティーナに気づかないシキは、言葉を続ける。
「解析を始めていますが、このエネルギーはこの建造物の中で、渦を巻きながらエネルギーが放たれているようですね」
「じゃあ、エネルギーの源はこの建造物なの?」
「いえ、どうやら違うようですよ。どうも空間にある、何らかのエネルギーを抽出しているらしい」
「空間?」
「文献で読んだことがあるのですが、空間にはあらゆるエネルギーに変換できる、空白エネルギーというものがあるそうです。そのエネルギーじゃないかと推測しています」
クリスティーナは息を飲んだ。全く聞いたこともない話だった。
エネルギーと言えば、この世界では魔導石のエネルギーを指す。当然、物質的なものだ。
それなのに、神代の時代は見えないものからエネルギーを作り出していたというのか。
「どういう仕組みで動いているのかしら……」
「それを解析し始めたところです。もう少し時間が必要ですね」
「ええ、もちろ……っ!?」
刹那、ぞわりと嫌なものが背筋に這い上がった。クリスティーナは勢いよく後ろを振り向く。
このエネルギーの煌々とした光が届かない、薄暗い通路の先に何か気配を感じる。目をすっと眇めて、気配を探った。
「何かいるわ」
「いますね」
シキもどうやら察していたらしい。
クリスティーナはシキを背に隠すようにして、薄暗い通路に向き合った。
「わたくしが対処するわ。シキは引き続き解析をして」
「ティナ、ひとりで大丈夫ですか?」
「平気よ。こんな時の護衛でしょう? 任せて」
クリスティーナはニッと唇の端を上げると、気配を感じる薄暗い通路に向って駆け出した。
走りながら腰のベルトに差していた、相棒の黒いロッドをさっと取り出し、それを右手でぐっと握りしめながら、なけなしの魔力を込めた。
「ハルバード!」
ロッドがブンッと低く短い音を発したと同時に、ぶわりと光を放ち、状態を変化させていく。
手のひらくらいの大きさだったロッドが、クリスティーナの身長を超える長い柄に変わる。
先端には魔力が放出され、魔力で作られた鋭い斧が生成され、右腕に重みが加わる。
「ゴオオオオオオォォン」
(魔物の咆哮だわ)
ザッと足を止めたクリスティーナは、ハルバードをブンッ、と一振りして構えた。
それは首が痛くなるほど見上げるくらいの高さがあり、その高さと同じくらいの辺で構成されている、四角錐の巨大な建造物だった。
「かなり大きいのね」
「文献で見ましたが、こんなに大きなものだったとは。文献通りなら、これがフリーエネルギーというものだそうです」
「これが……」
またフォォオンと独特な音が聞こえてきた。どうやら四角錐から発せられているようだ。
どんな仕組みになっているのだろう、とクリスティーナはうずうずしてしまう。
「ティナ、私はさっそく解析を始めます。しばらくかかると思いますが」
「わかったわ」
シキが建造物に近づくと、今度は革袋から薄い箱型の装置を取り出した。どうやら解析装置らしい。その装置から付随している数本のコードを、四角錐の側面に取りつける。
クリスティーナが解析装置を覗き込むと、ピピッと軽快な音が鳴った後、解析が始まったようだ。
邪魔をしないように離れたクリスティーナだったが、むくむくと育つ好奇心を抑えられず、手のひらで別の側面にそっと触れた。
「あら……温かい?」
じんわりとした温かさが、手のひらに伝わってきた。
遺跡の内部は、常にひんやりと冷たい空気が漂っていたのに。
「おそらくこの建造物から放たれている柱のようなエネルギーに核があり、それが熱を発しているのだと思います」
シキが画面から視線を動かさずに言った。
その横顔は真剣で、少し伏せた目元に色気が漂っているようで、クリスティーナの胸がドキリと鳴った。
(また意識を……きっとデートなんて言われたせいだわ)
胸がもやもやとして地団駄を踏みたいところだが、シキがこちらを見ていなことをいいことに、ジトっと睨んでおいた。そんなクリスティーナに気づかないシキは、言葉を続ける。
「解析を始めていますが、このエネルギーはこの建造物の中で、渦を巻きながらエネルギーが放たれているようですね」
「じゃあ、エネルギーの源はこの建造物なの?」
「いえ、どうやら違うようですよ。どうも空間にある、何らかのエネルギーを抽出しているらしい」
「空間?」
「文献で読んだことがあるのですが、空間にはあらゆるエネルギーに変換できる、空白エネルギーというものがあるそうです。そのエネルギーじゃないかと推測しています」
クリスティーナは息を飲んだ。全く聞いたこともない話だった。
エネルギーと言えば、この世界では魔導石のエネルギーを指す。当然、物質的なものだ。
それなのに、神代の時代は見えないものからエネルギーを作り出していたというのか。
「どういう仕組みで動いているのかしら……」
「それを解析し始めたところです。もう少し時間が必要ですね」
「ええ、もちろ……っ!?」
刹那、ぞわりと嫌なものが背筋に這い上がった。クリスティーナは勢いよく後ろを振り向く。
このエネルギーの煌々とした光が届かない、薄暗い通路の先に何か気配を感じる。目をすっと眇めて、気配を探った。
「何かいるわ」
「いますね」
シキもどうやら察していたらしい。
クリスティーナはシキを背に隠すようにして、薄暗い通路に向き合った。
「わたくしが対処するわ。シキは引き続き解析をして」
「ティナ、ひとりで大丈夫ですか?」
「平気よ。こんな時の護衛でしょう? 任せて」
クリスティーナはニッと唇の端を上げると、気配を感じる薄暗い通路に向って駆け出した。
走りながら腰のベルトに差していた、相棒の黒いロッドをさっと取り出し、それを右手でぐっと握りしめながら、なけなしの魔力を込めた。
「ハルバード!」
ロッドがブンッと低く短い音を発したと同時に、ぶわりと光を放ち、状態を変化させていく。
手のひらくらいの大きさだったロッドが、クリスティーナの身長を超える長い柄に変わる。
先端には魔力が放出され、魔力で作られた鋭い斧が生成され、右腕に重みが加わる。
「ゴオオオオオオォォン」
(魔物の咆哮だわ)
ザッと足を止めたクリスティーナは、ハルバードをブンッ、と一振りして構えた。
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