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三人目の元婚約者は、隣国の王弟殿下
第55話
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令嬢たちは煌びやかなドレスで着飾っており、この国の高位の貴族令嬢だと分かる。
(あらあら。下位の者が堂々とわたくしに声をかけて。礼儀がなっていないわね)
クリスティーナは帝国の皇女だ。彼女たちとは地位が違い過ぎる。
それなのに声をかけてきた。
軽く見ているのか、ひとりになったところを狙ってきたのか。
「わたくしに何か?」
「不躾にお声がけして申し訳ございません。せっかく殿下がいらっしゃっているから、帝国のお話を聞きたくって」
「あちらのテラスにお席をご用意しておりますの。ご案内させていただいても?」
有無を言わさないつもりらしい。
軽く見ている上に、ひとりになったところを狙ってきたことは確定だ。
一体誰の差し金か。
「ええ。よろしくてよ」
せっかくだから、クリスティーナはそれに乗ることにした。
シキの動向を追えば、ドルレアンの貴族と話をしていた。
知り合いであれば無下にできないだろう。ここへ戻ってくることが多少遅くなると推測する。
「まあ、うれしい」
「こちらですわ」
にこにこと微笑みながら、令嬢たちはクリスティーナを取り囲み、テラスへと向かった。
どこの貴族の令嬢たちなのか。
王弟ナガトと婚約していたのは、十九歳の時のわずか四か月のみ。その時はこの国の貴族についてある程度把握していたが、今はおぼろげだ。
どちらにせよ、こちらに好意がある家のものではないだろう。
「……どこまでわたくしを連れていくつもりかしら?」
テラスへ出てから、思っている以上に広間から離された。
「あら、本当にお席があると思っていて?」
「それであるならば、おめでたいですわ」
表情をぐにゃり歪め、令嬢たちはクリスティーナを蔑んだように見た。
「王弟殿下を手ひどく婚約破棄をなさって、よくもこの国にいらっしゃったものね」
「悪女はやはり常識がないの?」
「王弟殿下はひどく傷ついて、まだ新しい婚約者を決めていらっしゃらないのよ」
どうやら王弟の婚約者に収まりたいと考えているらしい。
ナガトの婚約が決まらないのは、ナガトの所業が目に余るほどのことだったからだ。
下手に臣下に下るような状況を作れば、何をしでかすかわからないと国王が判断していることに他ならない。
しかし、何をやらかしたのかは国民には隠ぺいしたのだろう。
「それなのにもう婚約者を見つけているだなんて、はしたないわ」
「王弟殿下が気遣って話しかけていたのに、無下になさっていたわね」
「容赦なさらないのね。お綺麗な顔して、怖い方だわ」
「それはそうよ。野蛮な軍人皇女様だもの」
クスクスとせせら笑い、クリスティーナを見下した。
その軍人皇女にこの国は何度防衛されたのかわかっているのか。残念なことに、深窓の令嬢たちにはわからないのだろう。
当然、今放たれた鋭い殺気にも。
「野蛮な軍人皇女様、口を閉ざしたままでどうしたのかしら?」
「ふふ、怯えているのかしら?」
「きっと自分のしたことの罪深さにやっと気がついたのよ」
「かわいそうな方ねぇ。私たちに言われないとわからないなんて」
令嬢たちはクスクスと笑い続ける。
瞬間、ビリビリビリッと布が引き裂かれた音が響き渡った。
「な、何をなさるの!?」
音の出どころはクリスティーナが自らのドレスの裾を、太ももまで一気に引き裂いた音だ。
(あらあら。下位の者が堂々とわたくしに声をかけて。礼儀がなっていないわね)
クリスティーナは帝国の皇女だ。彼女たちとは地位が違い過ぎる。
それなのに声をかけてきた。
軽く見ているのか、ひとりになったところを狙ってきたのか。
「わたくしに何か?」
「不躾にお声がけして申し訳ございません。せっかく殿下がいらっしゃっているから、帝国のお話を聞きたくって」
「あちらのテラスにお席をご用意しておりますの。ご案内させていただいても?」
有無を言わさないつもりらしい。
軽く見ている上に、ひとりになったところを狙ってきたことは確定だ。
一体誰の差し金か。
「ええ。よろしくてよ」
せっかくだから、クリスティーナはそれに乗ることにした。
シキの動向を追えば、ドルレアンの貴族と話をしていた。
知り合いであれば無下にできないだろう。ここへ戻ってくることが多少遅くなると推測する。
「まあ、うれしい」
「こちらですわ」
にこにこと微笑みながら、令嬢たちはクリスティーナを取り囲み、テラスへと向かった。
どこの貴族の令嬢たちなのか。
王弟ナガトと婚約していたのは、十九歳の時のわずか四か月のみ。その時はこの国の貴族についてある程度把握していたが、今はおぼろげだ。
どちらにせよ、こちらに好意がある家のものではないだろう。
「……どこまでわたくしを連れていくつもりかしら?」
テラスへ出てから、思っている以上に広間から離された。
「あら、本当にお席があると思っていて?」
「それであるならば、おめでたいですわ」
表情をぐにゃり歪め、令嬢たちはクリスティーナを蔑んだように見た。
「王弟殿下を手ひどく婚約破棄をなさって、よくもこの国にいらっしゃったものね」
「悪女はやはり常識がないの?」
「王弟殿下はひどく傷ついて、まだ新しい婚約者を決めていらっしゃらないのよ」
どうやら王弟の婚約者に収まりたいと考えているらしい。
ナガトの婚約が決まらないのは、ナガトの所業が目に余るほどのことだったからだ。
下手に臣下に下るような状況を作れば、何をしでかすかわからないと国王が判断していることに他ならない。
しかし、何をやらかしたのかは国民には隠ぺいしたのだろう。
「それなのにもう婚約者を見つけているだなんて、はしたないわ」
「王弟殿下が気遣って話しかけていたのに、無下になさっていたわね」
「容赦なさらないのね。お綺麗な顔して、怖い方だわ」
「それはそうよ。野蛮な軍人皇女様だもの」
クスクスとせせら笑い、クリスティーナを見下した。
その軍人皇女にこの国は何度防衛されたのかわかっているのか。残念なことに、深窓の令嬢たちにはわからないのだろう。
当然、今放たれた鋭い殺気にも。
「野蛮な軍人皇女様、口を閉ざしたままでどうしたのかしら?」
「ふふ、怯えているのかしら?」
「きっと自分のしたことの罪深さにやっと気がついたのよ」
「かわいそうな方ねぇ。私たちに言われないとわからないなんて」
令嬢たちはクスクスと笑い続ける。
瞬間、ビリビリビリッと布が引き裂かれた音が響き渡った。
「な、何をなさるの!?」
音の出どころはクリスティーナが自らのドレスの裾を、太ももまで一気に引き裂いた音だ。
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