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8話
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道中特に魔物と会う事もなく、王都ヒュポリンへと無事に辿り着いた。
騎士団とは王都に入る門の前で別れ、俺たちパーティーは入場料を払うため受付に行く。
そう、王都に入るための入場料だ。どこの宿屋に泊まるかの確認もする。
門にある受付では、旅人や商人がどこで何をしに来たのか登録して安全をはかるのだ。
「冒険者様ですね、3名で15銅貨になります」
「はーい」
こういう金銭管理はシュタに全部任せてあるので、俺とアスリーは後ろでやり取りを見守っている。
ちなみに感覚的に銅貨は日本だと一枚百円的な感じだ。
「はい、確かに。どちらでお泊りですか?」
「うーん、鹿の宿屋って空いてる?」
「そうですね…こちらが確認してる情報では、まだ空いてるはずです」
「じゃあ、そこに泊まるよ」
「かしこまりました。それでは良いご滞在を」
受付での確認を済ませると、俺たちは早速ここから近い宿屋へと向かった。
シュタは騎士団の人に怪我の手当てをしてもらって調子がいいみたいだが、今日は皆クタクタだし宿屋でゆっくりするつもりだと思う。
(よし…このタイミングしかないな)
それぞれの部屋に荷物を置いたのを見て、俺は意を決して2人を部屋に呼び出した。
何の話かは言ってないが、今日の事だとは察しているのだろう。
2人は俺が話し出すのを黙って待っていてくれた。
「…今日、すぐ助けに行けなくてごめん。
2人にずっと今まで黙ってた事があって…」
「トラマル…」
何か言いかけたであろうシュタをアスリーが手で制して止める。
そう、俺の謝罪フェイズはまだ終了してない。
「…実は俺、あの大きい猫なんだ」
「えっ…?」
「なんだと…?」
信じられない、という顔の2人。そうだよな、普通そうなるよな。
でも実際に見せてみるしかない。これは身の潔白を証明したい、っていう俺の自己満足だけど…。
「見ててくれ、今変身するから」
そう言って倒れこむように身体の力を抜くと、俺は虎の姿へと変わっていく。
驚いた表情のシュタとアスリーを見ると、どうやら流石に信じてくれたようだ。
(問題は、受け入れてくれるかどうかだよな…)
今度は俺が2人を信じるしかない。
虎になった俺は覚悟を決めて、元の人間へと戻る。
「ごめん…これが、今まで黙ってた事なんだ」
「まさか…」
言葉も出ないアスリーに、まさに愕然とした様子のシュタが口を開く。
「トラマルがこんなに喋るなんて…!」
「あ、そっち?
もっとこう、他に驚くところが…」
「猫になろうが、お前はお前だろ。関係ねぇよ」
「アスリー…!
お前って奴は何でそんな男前でモテないんあででで」
すごーい筋肉ってこう使うんだね!痛い痛い。
余計な事をほざいた俺の頭を鷲掴みにして砕こうとするアスリーに抵抗していると、シュタがふと気づいたというように口を開く。
「今まで喋らなかったのって、そのせいなの?」
「いや…黙ってた方がカッコいいって言われたから」
途端に顔を見合わせる2人。
なんだその、こいつ…思ってたより馬鹿だな?っていう感じは。
「っていうか2人ともあんまり驚かないんだな」
俺としては、そっちの方が意外なんですけど…。
「うーん、今までそういう話聞かなかった訳じゃないからさ」
「そういう話?」
「うん」
シュタが頷くと、思い当たる事があったのかアスリーが「あれか」と話す。
「どこぞの王族は代々竜になれるとか、そういう噂話だ」
「へぇ~」
流石ファンタジーの世界だな。似たような話はあるらしい。
「僕はてっきりそういう魔法なんだと思ってた!違うの?」
「いや、俺は少なくとも魔法は覚えてない…」
はずだ。
そうシュタに返すと、何故かアスリーは眉間に皺を寄せる。
「つーか、あの事はどうすんだ?」
「ん?」
何が?
「リュウゼン殿下だよ。お前のこと飼う気満々だったじゃねぇか」
「…あ」
そうだよ。どうすんだ俺。
騎士団とは王都に入る門の前で別れ、俺たちパーティーは入場料を払うため受付に行く。
そう、王都に入るための入場料だ。どこの宿屋に泊まるかの確認もする。
門にある受付では、旅人や商人がどこで何をしに来たのか登録して安全をはかるのだ。
「冒険者様ですね、3名で15銅貨になります」
「はーい」
こういう金銭管理はシュタに全部任せてあるので、俺とアスリーは後ろでやり取りを見守っている。
ちなみに感覚的に銅貨は日本だと一枚百円的な感じだ。
「はい、確かに。どちらでお泊りですか?」
「うーん、鹿の宿屋って空いてる?」
「そうですね…こちらが確認してる情報では、まだ空いてるはずです」
「じゃあ、そこに泊まるよ」
「かしこまりました。それでは良いご滞在を」
受付での確認を済ませると、俺たちは早速ここから近い宿屋へと向かった。
シュタは騎士団の人に怪我の手当てをしてもらって調子がいいみたいだが、今日は皆クタクタだし宿屋でゆっくりするつもりだと思う。
(よし…このタイミングしかないな)
それぞれの部屋に荷物を置いたのを見て、俺は意を決して2人を部屋に呼び出した。
何の話かは言ってないが、今日の事だとは察しているのだろう。
2人は俺が話し出すのを黙って待っていてくれた。
「…今日、すぐ助けに行けなくてごめん。
2人にずっと今まで黙ってた事があって…」
「トラマル…」
何か言いかけたであろうシュタをアスリーが手で制して止める。
そう、俺の謝罪フェイズはまだ終了してない。
「…実は俺、あの大きい猫なんだ」
「えっ…?」
「なんだと…?」
信じられない、という顔の2人。そうだよな、普通そうなるよな。
でも実際に見せてみるしかない。これは身の潔白を証明したい、っていう俺の自己満足だけど…。
「見ててくれ、今変身するから」
そう言って倒れこむように身体の力を抜くと、俺は虎の姿へと変わっていく。
驚いた表情のシュタとアスリーを見ると、どうやら流石に信じてくれたようだ。
(問題は、受け入れてくれるかどうかだよな…)
今度は俺が2人を信じるしかない。
虎になった俺は覚悟を決めて、元の人間へと戻る。
「ごめん…これが、今まで黙ってた事なんだ」
「まさか…」
言葉も出ないアスリーに、まさに愕然とした様子のシュタが口を開く。
「トラマルがこんなに喋るなんて…!」
「あ、そっち?
もっとこう、他に驚くところが…」
「猫になろうが、お前はお前だろ。関係ねぇよ」
「アスリー…!
お前って奴は何でそんな男前でモテないんあででで」
すごーい筋肉ってこう使うんだね!痛い痛い。
余計な事をほざいた俺の頭を鷲掴みにして砕こうとするアスリーに抵抗していると、シュタがふと気づいたというように口を開く。
「今まで喋らなかったのって、そのせいなの?」
「いや…黙ってた方がカッコいいって言われたから」
途端に顔を見合わせる2人。
なんだその、こいつ…思ってたより馬鹿だな?っていう感じは。
「っていうか2人ともあんまり驚かないんだな」
俺としては、そっちの方が意外なんですけど…。
「うーん、今までそういう話聞かなかった訳じゃないからさ」
「そういう話?」
「うん」
シュタが頷くと、思い当たる事があったのかアスリーが「あれか」と話す。
「どこぞの王族は代々竜になれるとか、そういう噂話だ」
「へぇ~」
流石ファンタジーの世界だな。似たような話はあるらしい。
「僕はてっきりそういう魔法なんだと思ってた!違うの?」
「いや、俺は少なくとも魔法は覚えてない…」
はずだ。
そうシュタに返すと、何故かアスリーは眉間に皺を寄せる。
「つーか、あの事はどうすんだ?」
「ん?」
何が?
「リュウゼン殿下だよ。お前のこと飼う気満々だったじゃねぇか」
「…あ」
そうだよ。どうすんだ俺。
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