上 下
15 / 22

私が先輩を好きになった理由①(皇視点)

しおりを挟む

——とても良い天気の日だったのを覚えています。

空はどこまでも蒼くて、雲も一つもなくて。

部屋の窓を開ければ、そこから、スゥーと、心地よい風が吹いていて、本当に今日は絶好のテニス日和だな~ってワクワクしていました。

もちろん、私のコンディショニングも絶好調!

身体もウズウズして、試合は10時から開始だっていうのに、朝5時にはもう目が覚めてました。

「早く時間過ぎて~」って腕時計に何度も何度も念じていたっけ。

そのぐらい私はその日を楽しみにしていました。


☆★☆

――県大会女子シングルス4回戦。

勝てば、ベスト4に進出する大事な試合。

だけどですね……その試合。

実質勝てば優勝みたいな試合だったんですよ。

なにせ相手は去年全国大会で準優勝したみどり先輩。

メディアにも注目を浴びる程の先輩。

県大会ぐらいじゃ、優勝候補筆頭ですよ。

だからなんですかね……。

2・3回戦で先輩と当たった選手は、試合前から戦意喪失していました。

半ば「記念試合」みたいな感覚で臨んでいるので、そりゃとーぜんのように「瞬殺」されてましたよ。

3回戦で当たった人なんて、途中で棄権なんかしてましたしね。

え? 私ですか?

……私は違いましたよ。

大好きなテニス。

――300グラムに満たない黄色い球をラケットで打ち返す。

たったそれだけの単純な事だけど、テニスは奥が深くて、面白くて……ずっとずっと夢中になれるスポーツ。

テニスをすれば、時間なんかあっという間で、気がつけば私は県では名が知られるぐらいには、テニスが上手くなりました。

私にはスタミナがめちゃくちゃあります。

だから、スタミナを武器にして、ひとたび試合が始まったら、どんなに泥臭くても、どんなに追い詰められていても、絶対に諦めずにボールに食らいついて、粘り強く、ボールを相手コートに打ち返して……。

結果的になんですけど、先輩と試合するまで私、無敗だったんですよ。

無敗って凄くないですか!?

負けた事無かったんです。

だから、

(今日も私のテニスをして勝つ! 私なら勝てるっ!)

たとえ、それが全国クラスの相手でも、私は負けるなんて、これっぽっちも考えていなかったんです。

みどり先輩を倒せるのは私しかいないって、そう思い込んでいました。

でも、試合前までずっと一つだけ引っかかる事があったんです。

それは、3回戦で棄権した人が、試合後にこんな事を話していて。

——もう西条さんとは二度とテニスなんかやりたくない。

私はその時、一回ぐらい試合に負けたからってそんな言葉吐くなんてどうなの? って、思っていました。

でも、違ったんです。

試合が始まって、すぐに私はその選手の気持ちが分かりました。

先輩は私が想像していたよりもはるかにテニスが上手かったです。

少なくとも、あの試合から数年経った今でも、時々夢に出るぐらいのトラウマを私に植え付けるには十分なほど。
















しおりを挟む

処理中です...