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吐血……そして
しおりを挟む(あぁ……畜生……。なんで今あの時の頃を俺はぁ……思い出してんだ……?)
噛まれた首筋から血がドバドバと流血する。
——青年は遠ざかる意識の中、噛みついた大蛇をどこか遠い目で眺めながら、昔を思い出す。
(『欲』って奴は良いもんだよなぁ。ありゃ、良い。実に良い。欲に俺は生かされてきたぁ……。どんなに消費しても、どんなに満たされても、どんなに抗っても、尽きねぇ……。病み付きになる。ジャンクフードみてぇなもんだぁ)
「げほっ」
吐血。
大蛇の牙には毒が含まれているのだ。
フラフラと足元も揺らぎかけるが、まだギリギリ立っている。
「しぶといな。蛇の王に噛まれてまだ耐えるとは意外だ」
アルフォルドが目を丸くする。意外そうだ。
(……こっちの台詞だぜ。異国のクソガキが……。意味わかんねぇよ。俺はこの街で覇者には敵わねーが、ナンバー2の剣術はあるって自負してるのによぉ……。単純に技術だけなら負けてんじゃねーかよ。全く、やってらんねーぜ……。おまけにこんな珍妙な技まで出しやがって、勝てる訳ねーだろ」
青年は、内心でアルフォルドに悪態をつきながら彼女を恨めしく睨みつける。
「グフ」
吐血が止まらない。
全身に毒が回り始めたのか。
青年は、自分の体温が急激に低下していくのを肌で理解した。
(死ぬのは怖くねぇ。元々セリエルが拾った命だ。俺はあの時ドブに捨てた。こんなカスみてぇな命が今更一つや二つ消えた所で気にはしねぇ。気にはしねぇ……が)
「——き、気にいらねぇ! 気にいらねぇよっ! クソガキがっ!」
「!?」
最後の力か。
火事場の力なのか。
青年は、首に巻きついたままの大蛇を退ける為に、首を左右横に、大きく振るが、当然その程度では不可能。
だが、それは。
その行為は、アルファルドにとっては——
「……面白い。どうしてまだそんな元気がある? 何かカラクリでもあるのか?」
とても興味がそそられた。
生き生きと顔を悦ばせ、青年に質問を投げかける。
「カ、カラクリなんかねぇよ。俺はこんな所で死にたくねぇ。死んでたまるかっ! ただ、それだけだ。ここは俺の死に場所じゃねぇ。死ぬなら『檻の外』だ。それしか認めねぇ。例えお天道様が俺にお茶とお菓子を出してあの世で待っていても、お断りだっつってんだよ!」
「———つまり、生存欲のみで耐えてると? 蛇の王の猛毒に?」
アルフォルドは不可解な青年の解に首を傾げ、もう一度青年に質問しようとするが。
「———グフッ。フー……フー……」
吐血。
これで三回目。
ここまでだ。
次に吐けば、間違いなく出血多量で青年は死んでしまう。
アルファルドもそれを素早く察した。
【来い 蛇の王 用済みだ】
命令を下す。
——スルスルと吸い込まれるように大蛇は青年の首に巻き付くのを止め、彼女の呪紋に入って消えていった。
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