さちれいにサチアレ!

壊れ始めたラジオ

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お仕事三番勝負編

スローガンその30「私を高みへ連れてって~Take me higher~」

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 少しの息苦しさが、急激に僕、番門碧つがいかどあおいを引き戻した。現実へと。

 土埃。先刻の爆風が、その原因だろう。

 上体を起こすと、前方に蝶茶韻理どうりょうの後ろ姿が。腰に手を当て、立っているのがうかがえる。

 ……しかし。
 明らかな違和感がある。……いや、違和感などとオブラートに包む意味も無い。

「……なんだ、そのカツラは」
「カツラじゃないわ。ヅr……」
「なんだ、と聞いているんだ」
「爆発っていったらコレしかないでしょ?」

 座ったまま見渡すと、爆発に巻き込まれた全員が一様に、アフロのカツラを被せられたまま気絶していた。
 全員……僕もその一人だった。頭を覆っていたソレを外し、見つめ、溜め息を吐き出す。

「……なあ、蝶茶韻理ちょうさいんり
「ん?」

 そう短く聞いてきたアイツがこちらへ振り向いたのと同時に、太陽が本日最後の光を僕らへ突き刺したかと思うと、すぐに地平の向こうへと落ちていってしまった。

「爆発オチって、サイテーじゃないか?」


 ◇


「いや~、花見は良いっすねぇ~」
「甘酒は最高なのぜorz~」
「(~>_<~)サ、サムイデス・・・・・・」
「子どもは風の子、どんぶらこっすよ。先生www」

 ……いや、ここにいる「子ども」って大須多十羽おおずたとば皇甫麗亞こうほれいあくらいだろ。そもそも二月は外でメシを食っていい時期だとはとても思えないが。

「おほん。……え~本日はわたくしさっちゃん主催の『桜を見るk』……」
「ここに咲いているの梅らしいぞ」
「……『梅を見る会』にお越しいただき、ありがとうございます。ここで、わたしのマイ・スイート・ハニーである麗亞れいあに一言もらおうかしら?」
「適当に騒げばいいんじゃない?」

 蝶茶韻理ちょうさいんりからマイクを受け取って……即答だった。

「はい。たった今、一言をもらいました。こんなのナンボあってもいいですからね」

 ナンボもあったらそれはもう「一言」ではないだろ。

「あっ! メインディッシュが来たみたいっすよwww」

 草蒸莉苅菜くさむしりかりなが指した方を見やると、もはや懐かしいまでの男が土鍋を持って現れた。

「き、君は安倍拳史郎あべけんしろう!」

 半年以上前の三番勝負で横垣水晶よこがきすいしょうと死闘を繰り広げたムエタイ選手、『安倍氏あべし』こと安倍拳史郎あべけんしろうだ。

「あの勝負のあと、連絡を取って友達になったのよ!」
「我々の意思は完全に、一致、しました」
「あとはそのツテでアメリカのボランプ選手とも友達になったわよ!」
「My best friends! ha ha ha!!」
「屈強な男が二人もやってきたせいでむさ苦しくなってきた……。いや、寒かったから良いのか?」
「それで? 二人は何を持ってきてくれたのかしら? 料理担当大臣に任命したはずよ?」
「ええ。もちろん、あります。わたしが、え~持ってきたのは、はい。完全に、完全に、ふぐ鍋、で、あります」
「最高ね!」
「ワタシ、持ってキマシタ。オハヨー州の、メーサンヒン。マサチューチュッチュ百合工科ユニバーシティで作った……」

 女性同士で接吻ばかりしていそうな大学名だ。まあ、外国語が偶然そう聞こえるだけだろう。

「キリタンポ、デス」
「なんでだ!?」
「アメリカできりたんぽ作ってても全然不思議じゃないわよね~?」
「完全に、同意、で、あります」
「マコトニ、ソノトオリデ~ス! ……アッ、ワタシのキリタンポが~!」
「本日二度目のなんでだ!?」

 あのきりたんぽの質量はどうなっているんだ。大皿に載せられていたうちの一本がふわりと風に乗って飛んでいってしまった。

 突拍子もない登場の仕方をしたが、あれは一応食べ物だ。落ちてしまったら勿体ない。

 桜模様のピクニックシートの外側に置いていた靴を急いで履き、追いかける。だが仮にもきりたんぽだ。ちょっとでも風が弱くなった瞬間……僕の前方五十メートルほどで、急激に高度を下げた。

 このままでは間に合わない。三秒ルールで行くか……!?

 まずい、落ちる……っ!

 ……と。一陣の風。
 いや、何だ?
 きりたんぽは、突如としてその高度と速度を上げた。

 その先にいたのは、一人の少女。

 まるで羽が生えたかのように、きりたんぽが宙を舞う。……いいや、その正体は。

「……鷹?」

 きりたんぽを咥えた、鷹。それが、なだらかな線を描いて少女の右腕へと着陸した。

「その特殊なグローブ……。鷹匠……だね?」
「『はい。鷹匠の布匠鷹子ふしょうたかこと申します』……と我が半身鷹子たかこが申しております」
「……ん?」

 タカコ……。この少女が「フショウタカコ」らしい。だが台詞からしてその鷹が話しているような内容だが……、どう見ても少女の頬も唇も動いている。「腹話術をしようとして全然そうなっていない」。そういう感じだ。

「『探し物はこれですか?』……と我が半身鷹子たかこが申しております」
「あ、あぁ。……だが……申し訳ない。こちらで捨てておくよ」

 行動はありがたいが、流石に鷹が咥えた物を食べる気にはなれない。彼らには悪いが、こっそり処分しておこう。

「ありがとう。礼を言う」
「『いいえ。こういうのは助け合いですから』……と我が半身鷹子たかこが申しております」


 ◇


 宴会の席へ戻ると……もう既に食べ始めていた。

「人がせっかく……、はぁ」
「ん」

 膝に手をついてうなだれる僕に、きりたんぽ入りふぐ鍋の入ったお椀と割り箸を差し出してくれたのは……蝶茶韻理ちょうさいんりの恋人、皇甫麗亞こうほれいあだ。

「……よくあんな騒がしい奴の恋人なんかになったものだねぇ」
「……。……退屈だったのよ。なにもかも、つまらなくて。縛られて」

 返答の前に、少しの沈黙があった。理由は、それだけではないのかもしれない。

「あの人といたら……絶対退屈しないでしょ?」
「……それは、確実に言えるな」

 アイツが静かになったところなど、想像できない。

 いつも草を生やしながらサポートに回る、スールの草蒸莉苅菜くさむしりかりな
 orzオーズorzオーズうるさい小学生の大須多十羽おおずたとば
 顔文字が見えそうなほど表情豊かで格闘戦が強い横垣水晶よこがきすいしょう
 そして、安倍拳史郎あべけんしろうらビックリドッキリフレンズ。
 蝶茶韻理早智かのじょの周囲は、いつだって騒がしい。
 うざったいと感じたことも多々ある。
 けれど……それが必要な時だってある……かも、しれない。
 少なくとも、皇甫麗亞こうほれいあには。
 貴女も……この輪に毒されてみてはいかがですか? ……甲ヶ崎華那こうがさきはな

「なあ、不躾な質問だが……君達二人はどこまで進んだんだ?」
「全部よ」
「……そうか」
「結婚の約束もさせられたわ」
「アイツめ……、ちゃっかりと誓わせていたとは」


「なァ~~~~~~に二人で喋ってんのよォ~~~?」
「酒臭いぞ、蝶茶韻理ちょうさいんり

 絡み酒か、面倒だな。ここは手刀で大人しくさせて……。

「さあ、物語のシメはダンスよ!」

 ……は?

「テレビの前のみんなも、一緒に踊って頂戴! 名付けて『さっちゃん音頭』! いざかん! 麗亞れいあにィ~……幸あれ!」
「(×○×)オ、オドリマス!」

(p)(字幕:『さっちゃん音頭』 作詞・作曲 蝶茶韻理早智)(/p)

「おい、コレ(↑)はなんだ? 蝶茶韻理ちょうさいんり? 蝶茶韻理ちょうさいんり!? 現実世界で字幕とか都合よく出ないからな!?」

「あっそれっ ワクワク楽しい さっちゃん音頭だよ~」
「「Search and Ray(幸あれ)!! Search and Ray(幸あれ)!!www」orz」
「ウキウキ楽しい さっちゃん音頭だよ~」
「「Search and Ray(幸あれ)!! Search and Ray(幸あれ)!!で、あります」デース」
「もっともっと楽しい さっちゃん音頭だよ~」
「「「「Search and Ray(幸あれ)!! Search and Ray(幸あれ)!!www」orz」で、あります」デース」

 何故踊る?
 何故皆合いの手がバッチリなんだ?
 物語のシメ、とは?

 いや、そもそも季節感が……。



「ち~が~う~だ~ろ~ォォォォォォッ!」



  ~『さちれいにサチアレ!』おしまい~
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