あなたにたべられたい

いちや

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ルイス編

後編(※)

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注意事項:アナルセックスなどがありますので、NGな方はそっと閉じてください。

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「最近、薬の使用量が多いな」
「まぁ……そうだな」

 ちらり、とルイスが視線をそちらへ投げかければ、どこにでもいそうな草色の髪をした男は小さく肩を竦めて見せる。

 ルイスが薬の調合の腕を取り戻して早五年―――ライラを拾ってからそろそろ10年が経とうか、というほどの年月が過ぎていた。

 最近というのも微妙な話だがおおよそ数年前に、キースとルイスの紐付き先の家であるバルバス家にて雇われたという執事見習いの青年は、実にふてぶてしく、馴れ馴れしい態度であった。が、それもそのはず、そもそもルイスと彼は、彼がバルバス家に入る前、軍にいた頃からの知り合いである。表立って交友関係は晒していないが、それでも5年以上の付き合いにもなれば、それなりに相手のことはわかるもので、双方、仕事上の付き合いという建前は早々に崩れ去り、必要最低限以外の気遣いはかなぐり捨てた。

 顔立ちだけを見れば二枚目だが、その軽薄そうな雰囲気がマイナスで、少し崩れた二枚目、といった彼は、軍にいた頃から女性にもてていた。結果、彼は裏の世界の女性たちともそれなりに知り合いとなってしまい、その伝手もあって、こちら側にたどり着いたのである。
 当初は本当に事務的にしかやり取りしていなかったのだが、彼―――セリムには、元から薬草の知識がそれなりにあったらしく、ルイスが独り言のように言う考え事にあれやこれやと反応を返してくるようになり、ルイスも彼が来ればお茶を出すぐらいのことはするようになっていた。

 数年前に「軍を辞めるつもりだ」と言われた時は、そろそろこの微妙な友人関係も終わるものかと思っていたのだが、その後、彼がバルバス家に就職して、窓口係になったと聞かされた時には何の因果か、と考えあぐねたものだった。が、しかし、彼がバルバス家に就職した理由が「初恋の女性がバルバス家に就職したからだ」と、けろりとした顔で言った時には、返す言葉を失い、匙を大きく投げたものだった。
 バルバス家当主の陰謀説、などを考えた自分が実に馬鹿馬鹿しくて、深酒に走ってしまい、ライラに泣きそうな顔で酒場まで迎えに来られた日には、「死にたい」とすら口走ってしまった。

 今回、彼がルイスの元を訪ねたのは、バルバス家の当主、ジェド・バルバスの命によるものであり―――つまるところ、単なる「お使い」なのだが、そのお使いとして望まれた薬の一覧を見やり、ルイスはわずかに顔をしかめた。
 大きく態度には示さなかったものの、それでも不穏な薬を羅列されると、心臓に悪い。
 中でも多いのは自白剤系の薬剤なのだが、薬の使われ方を考えると、平穏とは言い難い事態である。

「裏で派手に動いてる連中がいるらしいな」
「……残念ながらそっちの情報はオレも詳しくない。ただ最近お嬢様をつけ狙ってる連中が動いてるらしいのは掴んでるし、対応してる」

 「お嬢様」というのはバルバス家にて飼われている人族のとある少女のことである。
 人族の奴隷制度が完全廃止される直前に、バルバス家の当主が保護したとか、浚ってきたと噂されている少女は、極上の美少女であり、バルバス家本家にて隠されるかのようにひっそりと当主に溺愛されているのだと言われているが、ルイスはまだ実物を見たことがなかった。
 一応、キースが主治医を務めているので、少なくともそんな人族の少女がバルバス家にいることだけは確からしい、と知っているのだが、その少女の出自やら、もらわれてきた経緯、現在置かれている状況がどこまで正しいのかは不明である。

 この時代、年若い人族の少女は実に希少だ。
 新しく制定された法により、新しい人族の奴隷は入ってくることがない。それに加えて、昔からいた人族の奴隷たちは徐々に解放の一途をたどっており、年々魔族国内での数を減らしている。
 一部の貴族が所持している人族の奴隷も国自体が主導して解放する動きが出ているので、むしろ貴族たちの間には金欲しさに人族を捨てる動きも出ているほどだという。
 そして、国はと言うと、それらの奴隷たちを人族の国に返却する代わりに、同様の対応を―――つまるところ、人族国内における魔族の奴隷解放と、国交の復旧とを求めていると聞くのだが、それもどこまで本気なのかは分からない。

 現魔王は実に何を考えているのか。どこまで先を、何を見通して動いているのか分からない御仁なのである。
 事実、奴隷解放の動きを見せながらも、自分自身で人族の奴隷を一人所有していることからもそれは伺えるし、その矛盾した言動は常にやり玉にあげられているほどだった。

 元々「王」たる存在を自分のような一介の医師が慮ろうなど、無謀にもほどがある話なのだが、それでも近々キースが医師を退く、となれば当然そのバルバス家の「お嬢様」もまた自分の担当となるので、まったくの無関係でもいられない。
 セリムの言葉が正しいのであれば、バルバス家の当主は決して、その「お嬢様」を手放さないだろう。そのうち、「奴隷」という身分自体からは解放されるかもしれないが、それでも彼女が人族の国に戻される可能性はごくごく低そうであった。
 だからむしろ、ルイスが悩むべきは、その人族が年頃となり、バルバス家の当主によって孕まされた時のことである。

 とにかく人族は虚弱だ。
 付け加え、魔力が極端に低い―――場合によっては皆無なので、魔族によって孕まされやすいという厄介な性質を持つ。

 魔族の場合、女性と男性にはそれぞれ異なる種の魔力が宿っている。
 女性が子を孕むためには、自分とは異なる男性の魔力を胎内に受け入れて、受精へと至る必要があるわけだが、女性に比べて男性の魔力値が低い場合、女性の胎内に入った瞬間に男性の魔力の詰まった精子が死滅させられてしまい、なかなか孕めない、という現象が発生する。
 無論、魔力には相性と言うものもあるので、一概に言える話でもないのだが、場合によっては一時的に女性の魔力を弱める、もしくは男性の魔力を増強させる特殊な薬剤を投与してから性行為に及ばないと子作りすら敵わないケースがごまんとある。
 そこへくると、人族の女性は元から魔力が低いか皆無なのだから、普通に性交渉に及ぶだけであっさりと孕んでしまう可能性が高く、それだけ魔族の男性には注意が必要であった。

 今更キースに注意を促す必要はないし、当然、バルバス家当主にも注意喚起の必要はないのだろうけれど、それでも虚弱な人族の妊娠と出産を思うと頭が痛い。ましてや、彼女はまだ未成年だと聞いているので、その虚弱さたるや、並の魔族しか看たことのない医者ではほぼ対処不能なレベルである。実際、キースが頭を掻きむしってバカ高い効能の薬を入手しようとしているときは、大体その「お嬢様」が関連していることがほとんどであった。
 今からでも人族の出産に関連した書籍を手に入れたいところではあるのだが、その手の本はおそらく一介の医師程度では手が届かない。最悪、裏の伝手をたどるか、もしくは旧友たちをかたっぱしから頼るかなど、そろそろ対策をとる必要があるだろう。

 もっとも、その前に「バルバス家当主は己が妻を他の男性医師に診察させることに抵抗はないのか」自体も確認しておくべきである。
 最悪、他の女性医師―――この場合は助産師か産婆の手配ないしは紹介をせねばならないので、早急にことにあたるべきだった。

 いろんな意味で頭を痛めつつ、ルイスは薬の準備を整えていたのだが、そういえば、と人族関連で思い出した事件があったので、ふとセリムに話題を振ってみた。
 先ほどの人族の女性の話に戻るのだが、魔力が些少な種族―――特に身体能力には優れているものの、魔力自体は豊富ではない獣人族の間では、なかなか子を孕まない同種族の女性よりも、人族の女性を「孕み袋」などと揶揄して、下劣な行動に出ている例が、ごく少数だが報告に上がっているのだという。
 もっとも、これは今に始まった事態ではなく、昔からあるそういった風習が一気に表面化してきたという話だ。人族の奴隷が消えていくのに伴い、彼らはなりふり構わず行動に出るようになったため、今更のようにそういった事態が明るみになってきたらしい、と話すとセリムは途端に顔をしかめた。
 だがしかし、それだけなら、まだ「地方でたまに起こっている胸糞の悪い事件」という話なのだが、今回は、それに併せて街中でも、特に魔力の低い魔族を対象とした誘拐事件が起こっている。
 あまり関連付けて考えたくない事件なのだが、あえて別々に知らせるよりも可能性の一つ、として「こういう事例が起こっている」ということをセリムに伝えると、同様の考えに至ったらしく、セリムの表情はさらに硬いものとなった。

「確証は取れていない。だが、少なくとも、下町の女性たちだと特に目立った魔力障害―――特に『魔力を表に出せない』『魔力が低い』という問題を抱えていた女性がここ1か月の間に数名いなくなっている」
「……旦那様の耳に入れておく」
「医師会でも少し耳に挟んだ程度だが、先月……ロイウェル侯爵領でも同様の事件が起こっていたそうだ」
「ロイウェル侯爵……」

 当時は魔力の低い魔族を浚って何をするのかと大いに訝しんだものである。魔力の高い者であるのなら、それこそ将来を見越しての養子にしたり、子を作るための道具やら、何らかの人体実験やらで人身売買の対象にもってこいだが、その逆はと言うと、とんと考えつかず、聞き流してしまっていた。
 実際、そういった魔力の低い女子供は、体も弱かったり、何らかの別の障害を抱えていて副次的な理由により、魔力を表に出せない、といった症状が出ている者がほとんどであり、事故などに遭遇した際の生存率は低くなる。遭難したときに火の一つ、水の一滴も起こすこともできず、毒を食らえば解毒はおろか、そもそも鑑定すらできない程の存在だから、事故に巻き込まれているのではないか、とむしろ付近の様子を訝しむ声も大きく、知能の高い魔獣が発生している可能性なども議論されていたほどだった。

 が、しかし、ここへきて、「魔力が低い」という特質自体に有用性が生まれ、その事実がじわじわと広まっているとなると、それ以外の可能性が出てくる。

 本来なら単なる「バルバス家の執事」風情が対応するような事態ではないのだが、バルバス家の当主は魔王軍全体を指揮する長であり、広くは国の治安維持を司ってもいる。
 あくまで一市民の自分が小耳にはさんだ話、であり、詳細な裏取りなどは、丸投げするしかないのだが、セリムの思考はすでにあらぬ方向へと飛んでいるようだった。

「なあ、ルイス。オレにも薬くんねぇ?」
「なんのだ? ……言っておくが、頭につける薬はないからな」
「いや胃薬……頭はもう諦めたからいいんだよ」

 ―――そこであっさり諦めるな。

 薬草の知識だけであるのならば自分に勝るとも劣らないはずの男の言葉に、ルイスは「重症だな」と呟いて素直に胃薬をおまけでつけてやったのだった


 * * * * * * * 


 ひきつれた喘ぎを耳にして、ようやくルイスは我へと返った。

「やぁ……せんせぇっ、せんせぇえ」

 必死にクッションを抱きしめては甘い女の声を漏らしつつ、もたらされる快楽に怯えている少女。その痴態を目の当たりにしてルイスは背筋がぞくぞくするのを感じていた。
 彼女との交わりの中で意識を半分ほど飛ばしてしまったいたようだったが、やることはきっちりやっていた自分に半ば驚きつつ、「惜しいことをした」と本気で悔やむ。

「そっち、いやぁああ」

 ―――素数を数えよう。

 先ほども行っていた行為を再度開始したのだが、また1から始めて5桁を超えた時点でルイスの意識はまた戻ってきた。そして、ベッドにうつぶせて、自分に尻を突き出した姿勢で喘ぎ泣く少女の痴態に、股間が滾る思いを募らせ―――再度、落ち着くために素数の数を数えだす。

 初めてライラと交わってから、すでに1週間が経過していた。

 年上だというのに情けないほど忘我の境地で、交わった初の行為では完全に避妊を忘れていたルイスだったが、その後、落ち着いて考えてみるといろいろと気になるところもあったので、改めてライラと一緒にお互いの体質と魔力をチェックした。
 結果、ライラの魔力はルイスの魔力と親和性が高く、魔力量はおおよそルイスの半分程度であることが判明したのである。

 一般的に考えて、ライラには妊娠しやすい要素が重なっており、むしろ、前回のセックスで妊娠してやしないかと内心では焦りも覚えたのだが、3日ほどたって確認したところ、ライラの胎内にあったルイスの魔力反応は根絶していることが確認されたため、ライラは妊娠していないことが分かった。
 それはそれで物悲しく、思わずライラの腹に顔を擦り寄せて、ため息をついてしまったのだが、ライラ本人も複雑そうな表情をしていた。そして、ルイスの唇から「妊娠」という言葉が飛び出ると、一気に青ざめた顔でびくりとその肩を揺らしていた。

 嫌われているわけではなく、単純に孤児だった自分が「母になる」というイメージがまだ掴めない。好きな人ができて、「結婚」という単語だけでも、ドキドキしっぱなしであるのに、そこへきて「妊娠」という言葉が加わると、対処しきれないのだということを素直に吐き出す彼女とルイスの距離は以前よりも近い。
 ごく自然と触れ合うほどの距離にいる彼女が好ましくて、ルイスも特に悪感情を持つことなく、「じゃあ、もう少し時間をおこう」と同意を示していた。

 エルフの血が混ざっているルイスは時間に対して寛容な方である。ましてや、ライラがまだ18歳、ということを加味して考えると、今すぐ何が何でも子供を作らねば、という話には、まずならない。キースが死ぬまでには孫を抱かせてやりたい、という程度のうっすらとした考えはあるものの、キースはまだ後数十年は軽く生きるだろうと思われるので、それもまた遠い話である。
 むしろ今作ったらキースに半殺しの目に遭いそうだとルイスが嘯くと、ライラも堪え切れずに笑って口元を覆っていたのだが、「あの父のことだから…」と考えると、それはあながち誇張表現でもない。

 ―――が、しかし、子を作らないからと言って、性交渉もしない、という話にはならない。

 ライラの体調と仕事具合などを確認しつつ、頃合いを見計らってルイスが声をかけると、ライラは真っ赤になりつつ頷いた。
 ルイスの方はと言うと、避妊具の類を一通り準備し、どれがもっともライラに負担をかけないものかと悩みあぐねたのだが、結局選びきることはできずに、一通りの品をライラの前に並べることとなった。
 また、その一環として、ルイスがお尻を使う方法を提示すると、ライラはぽかん、と呆けた顔を見せたのであった。

「え? あ、あのお…おし、りですか?」
「僕が浄化も治癒も使えるし、ライラへの負担も少ない方法だと思うんだ」
「え? えぇ?」
「薬は正直あまり使いたくない。ゴムは手軽だけど、激しくしすぎると破けちゃうし、アレルギーなんかの可能性もある」

 「どれがいい?」、と優しく問うたのだが、彼女はずらりと並べられた道具一式を見て、顔を赤くするやら青くするやらであった。右往左往として、最後の最後には小さく呻いて頭を抱えつつ、「若先生に任せます」と蚊の泣くような声で言った。
 下手に自分で選ぶより、専門的な知識を有しているルイスにゆだねた方がいいと考えたらしいのだが、そのルイスが変態的な思想を持ち合わせているとは思わない純真さがライラの美点でもあり欠点でもある。

 キースがさっさと寝たのを確認してからそーっと己の部屋を訪ねてきたライラの体からは自分とは全く異なる匂いがする。同じ浴室を使い、石鹸もシャンプーもなにもかもが同じものを使用しているというのに、その甘ったるい香りは彼女特有のものである。自分とはまったくことなる細い体を抱き寄せ、首元に顔をうずめるとそれだけで股間が疼いた。
 部屋にはきっちりと防音の魔術を施し、鍵も2重にかけてある。待ちきれなくて、キスもそこそこに、いそいそとライラの服を脱がせると、つい1週間前につけた痕はほぼ消えてしまっていた。そこを一つ一つなぞるように口づけ、甘い声でねだるように喘ぎだしたライラを布団にうつぶせに寝かしつけ、お腹のあたりに枕を押し込んだ。

「るい、す……もっと、きす、したい、の」

 顔が見えないことに少しだけ怯える素振りを見せる彼女に宥めるような口づけを送りながら、ルイスが手にしていたのは張方だ。一番細く、負担の少ないだろう張方にたっぷりと潤滑剤を塗布し、まだまだ硬いつぼみに指を滑らせれば、その途端に、ライラの体が硬くなった。

「ひっ」
「大丈夫、大丈夫だよ。ライラ」

 明らかに腰が引けて、逃げの様相を見せる彼女の顔は、青ざめてすらいた。
 さすがに急ぎ過ぎている自分を自覚し、そっと胸元に指を滑らせれば、ライラは甘えたような声音を漏らし、ひくひくと足を震わせていた。おそらくは膣が前回の快楽を覚えていて、欲しがっているのだろうを理解し、張型を一旦、枕元においで、指で花芽を抉り、そのまま人差し指を蜜壺に差し込む。

「ッ!!」
「たっぷり濡れてる…ああ、美味しそうに飲み込んで、そんなに期待してたの?」
「ちちちっ、ちが……あぁ!」

 二本目の指もあっさりと蜜壺に沈み込んでしまった。この1週間は触ってもいなかったのに、前回と比べてみても随分と指の滑りはなめらかで、少しもルイスの指を拒んだりする様子はない。むしろ、もっと奥へ、奥へ、と誘い込む様に収縮するその動きに、驚いてしまい、「自分で慰めた?」などと意地悪く聞いてしまったのだが、その瞬間にライラは雷でも受けたかのように、硬直してしまった。
 耳まで真っ赤になって必死に首を横に振り、拒絶の意思を示す彼女がなおも愛おしい。
 誰に言っても「変態」だとの誹りを受けるだろう己の性癖の新たな一面を知ってしまい、ルイスもまた些かの衝撃を受けていた。これでもこちらは淡白な方だとばかり思っていたのだが、そうでもなかったらしい。おそらく相手によるのだろう。

 そんなとりとめのないことを思いながらもルイスの指はあっさりと奥まで飲み込まれていき、ライラは恥じらいながらも、ルイスの腕の中で達してしまった。まださほど経験もないはずなのに、気持ちいいところを覚えているのか、自分でわずかに腰を動かしている素振りを見つけてしまい、背筋をぞくぞくと駆け上ってくる愉悦に浸る。
 「清楚」の一言でしか表せぬはずの彼女も、自分の腕の中では淫らに啼くのだと思うと、それを知っているのが自分ただ一人であることにただならぬ高ぶりを覚えてしまい、もうこのまま「孕ませてしまえ」と自分の中の悪魔が囁くのを感じる。
 ぴくぴくと快楽の余韻に浸る体を反転させて、足を大きく割り開かせると、そこはもうどろどろに濡れていた。

「ぐちゃぐちゃだね」
「るい、すぅっ」

 無言で、細い張型を手にし、そのまま無造作に彼女の膣へと突き入れる。途端、白い喉が大きく沿って、悲鳴のような嬌声が彼女の唇からこぼれだした。何をされたのか一瞬分からなかったようなのだが、すぐに視線を走らせて事態を把握できたらしく、ライラはなんとも言い難い表情をしていた。が、膣での快楽はきちんと覚えている体は貪欲に強請り、胎内に埋め込まれた張型をぎゅうぎゅうにしめつけは、より奥への刺激を望んでいるようで、すぐに嬌声が零れた。
 本来後ろの調教用に準備していた張型だが、指より長いため、より深いところを抉られるのか、悲鳴としか思えぬ派手な嬌声にそそられて、ルイスの方が我慢できなくなりそうだった。

 2度、3度と突き入れるうちに、気持ちよい場所を見つけた彼女がルイスの動きに合わせて腰を艶めかしく動かす。指摘すれば泣きそうな顔でその顔を隠すだろう、と分かっているので、今度は黙っておいたのだが、彼女はあっさりと2度目の絶頂に達してしまった。
 体力的にはすでについていけない境地なのか、くたくたになったライラを再びうつ伏せに寝かせ、腰を少しだけ持ち上げる。ルイスに尻を見せつけるかのような体勢を無理やり取らされているのだが、忘我の境地にいる彼女にはそれが認識できていないようだった。
 それでも後ろのすぼまりに指をあてると、小さな声が漏れた。

「だめぇ、だめなのにぃっ」
「大丈夫。ココはもうヒクヒクしてるよ」

 わずかに指で入り口を開き、浄化の魔術をかけると、すぼまった肉がひくひくと震えるとこがはっきりと見て取れた。完全に浄化されたことを確認した後、そのまま愛液と潤滑剤でたっぷりと濡れた張型をそっと押し込んでいくと、押し殺そうとして押し殺しきれないライラの声が部屋の中に響く。

 最初はごくごく浅いところを探るように、少しずつ動きを持たせて、奥を抉り始めると、さすがの違和感にライラの腕が何かを求めてシーツを掻いた。逃げるそぶりは見せないものの、不安定な姿勢に恐怖が煽られるのか、徐々に快楽の色が抜けて、我慢するような声が零れて初めている。
 ぽろり、と涙を零して耐える姿がさすがに哀れになってしまい、何かないかと部屋を見回したのだが、必要最低限のものしか置かない主義のルイスの部屋にはそれこそ何の変哲もないクッションしかなかった。
 これが彼女の部屋だったらこっそり部屋の隅に隠してあるぬいぐるみでも持ち出してくるところなのだが、ぬいぐるみであれど全裸のライラに抱きしめられているところを見せつけられた日には、狭量なルイスはそのぬいぐるみを殺処分する可能性がある。

 結局、無機質なクッションでいいかと妥協し、それをライラに手渡した。ライラは一瞬考えあぐねるような表情だったが、ルイスが無言で張型を奥へ突き入れると、条件反射のようにクッションを抱きしめ、そのままクッションに顔面を押し付けて、震え始めた。

 ―――ここからが実に苦行だった。

 元から自分の肉棒を彼女のお尻の穴に入れるためには、それなりの時間がかかるであろうことは想定していたルイスだったが、その慣らすための作業の最中に彼女のあげる甘い声が、ルイスに闇堕ちを誘いかけてくる。
 お尻の穴が裂けてしまっても、治癒の魔術さえあれば、どうということはない。一度無理やりでも入れてしまえば穴は広がるし……と危ういことを考えている自分に気づいて落ち着くために素数を数え出したルイスだったが、ライラの甘い嬌声を耳にすると、すぐさま理性が吹き飛びそうになる。

 ―――諦めようか?

 準備してきた張型の中では4つ目―――2番目の太いものをぐりぐりと突き入れ、甘い声で啼いているライラの痴態を目の当たりにしながら、すでに痛いほどに張り詰めている自身の肉棒をみやり、ルイスはどうにもならない葛藤と戦っていた。
 今日のところは尻の穴に張型を入れるだけ入れて、あとは普通のゴムをつけて楽しんでも許されるのではないか、と思うのだが、張型を抜いた後、しばらく開いたままで戻らない穴をまじまじとのぞき込むと、もう十分にそこは広がっているように見えた。

「せんせぇ、もうむりぃ……むりだからっ……いれてぇ」
「ッ」

 どっちに、と意地悪く問うてやりたくなったがルイスだったが、ぐっとその質問を喉元にとどめる。代わりに、彼女に請われるがままに、すでにそそり立った肉棒を、尻の穴に触れさせると、「ひゃ」という気の抜けた声を零していた。
 わずかに腰を持ち上げて、ルイスが少しでも入れやすい姿勢を取ろうとしているのが、意識的な動作なのか、無意識的な動作なのか。

「ライラ、いれちゃうよ」
「ッ!! っっぃヤァアアア」

 切れるかもしれない、というほどに伸び切った尻の皺だったが、どうにか堪え切ったらしく血が出たりするようなことはなかった。が、ライラの体には相当の負担がかかっていることは間違いなく、ぼろぼろと零れ落ちる涙に少しばかりの罪悪感と、ほの暗い優越感が沸き起こり、ルイスはごくりと喉を鳴らした。
 ライラが命綱のように抱きしめているクッションをつかみ取って放り投げ、その空を掻く掌を握りしめる。後ろからではなく、正面から抱き合っていればもっと抱きしめてやりたりできたのだろうけれど、この体勢の方が楽であることは否めない。不安定に握りしめられたルイスの指に必死になって縋りついてくるライラの様子は、今にも死んでしまいそうなほどに真剣なものだが、ライラの尻の穴にルイスの強直が入り切っている様子はどこか現実味が薄く、気味の悪いジョークのようですらあった。
 ぎちぎちに痛いほど締めてくる感触はむしろ痛いほどだが、それもまた心地よくルイスは恍惚とした表情すら浮かべていたのだが、それに対するライラの負担や筆舌しがたい。

 それでも潤滑剤をたっぷりと塗布した張型で慣らしたおかげなのか随分と肉の滑りはよく、少しずつルイスが己の強直を動かして前後してやると、ライラの肉もそれに沿って徐々にほぐれてはいった。
 本人はもう死んでしまいそうなほどに息も絶え絶えの状態なのだが、ルイスはそんなライラに煽られるばかりである。

 ―――随分と酷いことをしている。

 ルイスのために、とライラは我慢をし過ぎる。そのためか、ライラはすでに無理やり強姦された時特有のすべてを諦めきったような顔でベッドを涙で濡らしているのだが、それに対するルイスはと言うと気持ち良すぎて多幸感に溺れてすらいた。
 ひどいことをしている自覚があるというのに、やめられない。もっともっと、と先を貪欲に望む自分の内面の汚さに反吐がでるのと同時に、そんな自分につけ狙われたライラを可哀そうにすら思ってしまう。
 そのまま出してしまおうか、と考えたのだがそれではひどすぎるとすんでのところで考え直し、ルイスは一度己の強直を引き抜いてライラの体を反転させた。

 腹を圧迫していた感触が消え失せ、急にルイスを正面に見ることになったライラは随分と面食らっていたのだが、ルイスが口づけると急に息を吹き返したように甘い顔になった。

「せん、せ?」
「あんまりそう呼ばれると、本当に……変な感じがするね」

 意味が分からない、というようにライラは首をかしげたのだが、ルイスは8歳のころからライラのことを知っている。下っ足らずな声で「先生」と呼ばれると、その時の記憶が刺激され、ひどく幼い子供に無体をしき、それこそ幼子を犯しているような倒錯的な気配を覚えてしまい、頭がくらくらとするのである。
 実際、キースにからかわれたときには、あんな幼子を手籠めになぞするか、と反発したものだったが、実際にはこのとおりなのである。

「あんっ」
「後ろはもうずいぶんほぐれたけど、まだ気持ちよくはないだろう? 前も全部かわいがってあげるよ」
「ひっ……あ、あんっ、あっ……あッ!」
「本当にどろどろだ。前はどうしようか。指じゃゆるゆるで楽しめないよね」

 体勢的には厳しくなるだろうと思いつつ、ルイスは正常位のままライラの尻の穴に己の肉棒を突き入れた。それと同時に、愛液でどろどろになっている膣に指を入れ、同じく蜜まみれになっている花芽を指でこすってやったのだが、張型まで突き入れて弄ばれていたライラの蜜壺は指などでは満足できないらしく、ルイスの指は滑ってばかりであった。
 前が気持ちよければ、後ろでもそれなりに感じていると錯覚するらしく、先ほどよりもよほど気持ちよさそうに喘ぎだしたライラに、ルイスは再度どうしたいかと尋ねたのだが、ライラは首を横に振るばかりで、ルイスの質問の意味すらも理解できていないようだった。
 仕方なく、準備してきた張型の4本目。先ほどまで後ろの穴に突き入れていたものを、そのままライラの膣にあてがい、ずるっ、と奥まで差し込んだのだが、その瞬間に一際高い喘ぎを漏らし、ライラの体から力が抜けてしまった。
 イってしまったことはわかっていたが、それでも今度はルイスの方が止まらない。

「イって……せ、せんせっ、わたっ……イって…!!」
「うん。いいよ。もっとイって? もう少しで僕もお尻に出してあげる」
「ち、ちがっ……や……と、とまっ……とまっ…!!!」

 「止まって」とライラが言う瞬間に合わせて、張型を大きく動かす。奥につきこまれるだけではなく、ぐりぐりと念入りに奥をいじられる感覚に、声のない悲鳴が零れ、がくんがくんと面白いほどに細い肢体が震えた。
 膣にある張型の感触を、尻に入っている肉棒で感じ取り、二本同時に動かすと、信じられないほどに後ろが締まってしまい、ルイスはこらえきれずに吐精してしまったのだが、一方でライラの方はすでに気を失ってしまった後だった。
 がっちりと張型を咥え込んでははなさなくなっている膣から無理やり張型を引っこ抜き、尻からも肉棒を抜き取ったのだが、尻の穴のほうはしばらくその穴が戻らず、中からは卑猥な白い液体がくぽくぽと零れてきていた。

 後ろも、前も、全部自分の物、という実感が沸き起こり、ルイスの背筋をぞくぞくとした感覚が襲う。

「ライラ、今日はここまでにしようね」
「ふぁ、い……」
「いい子だ。次はもっとのめり込ませてあげる」

 結局のところ、現在の行為はルイスばかりが気持ちよくて、ライラの方にしてみれば苦行である。
 ルイスだって、ライラの体が慣れるまでは辛抱強くまったりする必要があるので、それはそれで苦行なのだろうけれど、彼女の体が慣れれば慣れるほどお互い行為にのめり込むように溺れて行ってしまうだろう。

 ―――そのためにも。

 愛液まみれのシーツを手早く交換し、眠っているライラの体をお湯で濡らしたタオルで軽くふき取って浄化する。そのまま裸のままのライラをベッドに寝かしつけるや否や、ルイスはガウンだけをひっかけて、部屋の外に出た。

「さっさと邪魔者は処理してもらわないと」

 明日は一番にセリムと連絡を取ろう。それに合わせて旧友とも連絡をとり、ロイウェル侯爵領での事態の続報を聞く段取りを取らねばならない。

 世の中的には明日は安息日で、医院も休みなのだが、だからこそ、ルイスたちのようなものが動きやすくなろうというものである。一日も早く、ライラとイチャイチャして過ごせる平穏な日々が来ることを祈りつつ、ルイスはそっと薬草園の扉を開いた。
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