【完結】オタク女子はクラス転移で愛を知り哀を察る(しる)

秋空花林

文字の大きさ
8 / 45

6話

しおりを挟む
 続いてやって来たのは剣や槍等を扱う組だった。

 クラスでも運動神経が良い体育会系のメンバーが、大体ここに振り分けられたらしい。

 指導役の本職さん達と木刀を使って打ち合いや、素振り、打ち込みとかをしていた。
 数人だけど女子もいた。カッコいい!

 その中でも群を抜いて目立っていたのは、やっぱり勇者の大河だった!何ていうか、動きが他の人と違う。

 若ちん曰く、元々の能力値というのが他のメンバーより格段に高いらしい。

「おう、あかり。魔法系の練習はもういいのか?」

 大河がわたしに気づいて声をかけながら近寄って来た。

 その後ろに、見たことないゴージャスで派手で綺麗な女の人達が数人くっついて来た。

 綺麗だけど、なんか気が強そうなオーラが凄まじい!

「勇者様、誰ですの?その方は」
「あー。こいつも一緒にこっちに来たクラスメイトです」

 若干、大河は迷惑そうだ。

「まあ。この方も勇者様御一行ですの?」

 真ん中の1番綺麗な人が値踏みする様にジロジロ私を見てきた。

 ドキドキドキドキ。

 なんか緊張する。
 この状況は何だか嫌な場面を思い出させる。

「あかり。もう今日の特訓は終わりなんだろ?」
「う、うん」
「じゃあ、これやるよ。持ってた鞄に入ってたから」

 そう言って大河はノートと筆箱を渡してきた。

「もしかしたら何かヒントになるかもしれないだろ?スケッチとかしてみれば?」
「あ、ありがとう」

 大河の気遣いが嬉しい。紙と鉛筆はわたしの精神安定剤だ!

 軽く震える手でそれを受け取ろうとした時。
 
 先ほどの綺麗な女の人が、あぁ、なるほど!と声を上げた。

「貴女ですの。妄想なんたらという変わり種は。他の方達はすぐ能力開花したのに、未だに方向性がわからないって噂ですわね」

 女性から明確に伝わってくる悪意が怖くて、手の震えが止まらなくなった。ノートと筆箱が地に落ちた。

 怖い。怖い。怖い。
 恐怖で眩暈がしてきた。

「あかり!おい!大丈夫か!?」

 大河が焦ってわたしの肩に手を置いて顔を覗き込んできた。

「な、何よ急に。具合が悪いフリして」
「勇者様の気をひこうとしてるんですわ!」

 女性達が騒ぎ出す。
 そこに若ちんの声が加わった。

「おい!そこの着飾るしか能が無いクソ女ども!俺の大事な生徒に何しやがる!」
「まあ!私はこの国の王女よ!無礼だわ」
「俺らはこの国の人間じゃねぇからよ。そんなもんクソほどの価値もねえよ!」
「そうだ!そうだ!俺達の仲間をいじめるな!」
「気が散るから帰れー!」

 若ちんやクラスメイトの声が、遠くから聞こえてくるみたいだ。

「伊藤。こっちはいいから、田中を非戦闘の方へ連れて行ってくれ」
「はい」

 何だかフラフラする。もう目も開けてられなくて、思わず目を閉じた。身体がふわりと浮いて、どこかに運ばれていくのがわかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

処理中です...