【完結】オタク女子はクラス転移で愛を知り哀を察る(しる)

秋空花林

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20話

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「ふわぁー、よく寝た」

 目を擦って、身体を起こすと、見慣れない場所だった。

 周りを見渡すと、そんなに広くないスペースに布を張った簡易のテントだとわかる。

 何でこんな所に?
 不思議に思ってると、外が何だか騒がしい。

「てやんでぇ!お嬢には指一本触れさせないぜぇ!」
「だから!あかりちゃんの容体を確認させてよ!」
「どうしてもって言うなら、オイラ達を倒す覚悟で来るんだなぁ!」
「わかった」

 ドゴッと何かを殴る音がして。

「おのれ~!無念なり~」

 悔しそうな声が遠ざかって行くのが聞こえた。な、何?

 慌ててテントから這い出すと。

 遥か空の彼方に何かがキラーンと光ったのが見えた。

 テントの入口には菜穂ちゃんとくるみちゃんがいて、私を見ると心配そうに駆け寄って来てくれた。

「あかりちゃん、良かった!気がついた?」

 菜穂ちゃんが私に近寄ってくると。

 カラフルレンジャーまでが「お嬢!お嬢!」と騒ぎながら駆け寄って来た!

 それを大河は笑いながら、鞘に入れたままの剣をフルスイングして再び星の彼方に飛ばしたのだった。カオス!



◇◇◇



「うーん。これが妄想召喚士の能力って事か」

 目の前の若ちんが、難しい顔をして何やら考えている。

 その目の前には、居た堪れない心境の私。

 周囲にはそんなわたし達を面白そうに見守る戦闘組のクラスメイト。

 その集団の横で、大河を先頭にクラスの男子数人が、おもしれー!と笑いながらフルスイングしてる。

 スイングされて星になってるのは、例のカラフルレンジャー達だ。

「あの特戦隊はどうやって出したんだ?」
「自分でもわかんないです。助けてって思ったら突然現れたの…弱っちいけど…」

 言いながら声が小さくなる。

 だってせっかく能力が開花しても、弱くて役に立たないカラフルレンジャーなんて、完全ギャグだ!

 ん?ギャグ?

 何かが引っかかって、わたしは鞄を漁る。古くてだいぶ年季の入ったノートを取り出す。

 そのノートを捲ると…。

「あぁ!やっぱり!」

 何だ何だと、若ちん、菜穂ちゃん、くるみちゃんが近寄って来て一緒に覗きこんだ。

 ノートには、子供の頃の私が描いた下手くそなカラフルレンジャーのイラスト。

 その横に解説の様に。



●すべり戦隊 スットコドッコイ

スットコレッド 威勢だけ良い
スットコブルー ナルシスト
スットコグリーン メンタル弱
スットコイエロー オナラ
スットコピンク うっふん



 と書いている。

 それを見た若ちん達が各々に感想を述べる。

「すべり戦隊…ギャグ漫画のキャラか。確かにまんまお笑い要員だな」
「…あの赤いの確かに威勢だけは良かった!」
「ふええ~、最後のうっふんて何ですか?」

 …居た堪れない。

 小学生の頃のわたしよ。何故こんな漫画を描こうと思った?

 心の中で泣いちゃうよ!

 情けなくて、くすんくすん、と密かに泣いてたら菜穂ちゃんに声をかけられた。

「あかりちゃん!もしかして、アレも出せる?」
「あれ?」
「前にみんなで話してた聖獣!」
「聖獣…」

 大河からもらったノートを鞄から取り出す。ページを捲ると、この前描いたイラストが出てきた。

 菜穂ちゃんに言われて描いたペガサスやユニコーンだ。

「もしかしてペガサスとユニコーンも出せるの?」

 菜穂ちゃんがキラキラした目で見てくる。

 気づくと、菜穂ちゃんだけじゃくて周りのクラスメイトまでも注目してた!

 こ、これは、やらない訳にはいかない!

 わたしは覚悟を決めて、ノートを片手に、もう片方で空を指差して叫んだ!

いでよ!ペガサス!ユニコーン!」

 しーん

 何も出ない。

 ぶはっ!と誰かが吹き出す音が聞こえ、周りが大爆笑に包まれた!
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