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第1部 呪いの館 復讐編
プロローグ
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「俺、夏休みにあいつに告白するから」
牛乳パックを飲みながら、勇輝は隣に座る親友&幼馴染の怜に宣言した。
宣言と言っても、やっぱりそれは気恥ずかしく、勇輝の頬はほんのり赤い。それをごまかすように持ってたサンドイッチにかぶりつき無言で咀嚼する。
2人がいる場所は通っている高校の屋上。大事な話があるからと昼休みに怜を誘って、一緒に昼食を取りながら、勇輝は自分の一大決心を伝えた…のだが。
空は青く。屋上からの見晴らしも良い。風に乗って雲が流れて行く…。
「ーって無視かよ!」
いつまでも無言を貫く怜に、勇輝はツッコむ。
「…食べてる時に話しかけるから」
口に入っていた分を飲み込んで、怜は軽く勇輝を睨む。
「まぁ、頑張って」
「軽っ!」
「…玉砕したら骨は拾ってやる」
「ひどっ!」
「………まぁもしダメでも死ぬわけじゃないから」
「重っ!」
「…………はぁ」
いい加減ウザくなって怜は大きくため息を吐いた。
「何て言って欲しいの?」
2つ目のサンドイッチにかぶりつきながら、勇輝は拗ねた様に怜を見た。
「…お前はいいのかよ」
「…。」
「俺が知らないとでも思ってるのかよ。俺が告白して華と両思いになっちゃって、2人でラブラブになっちゃったら、お前お邪魔虫になっちゃうんだぞ!それでもいいのかよ!」
怜がポカンとした表情で包まれたままのおにぎりをポロッと落とした。
「…多分、華は勇輝の事、1mmも意識してないと思うけど…」
「ひどっ!心当たりしかないけどなっ!」
勇輝が両手で顔を覆って、ひどいっ、怜のバカッとか言いながら泣き真似した。
昼休みも半ばになり、徐々に学校内が騒がしくなってきた。
怜が冷たい、構ってくれない、とかまだ言ってる勇輝を怜はジッと見る。
怜の幼馴染で親友でもある勇輝は、背も高く体格も良い。見るからに体育会系だ。性格も明るいし、真っ直ぐな正確で男の自分から見ても好感が持てる。
「僕も…華のこと好きだよ」
怜の呟きに、勇輝がピクリと反応する。泣き真似をしてた両手の隙間から、怜を盗み見る。
いや、こっち覗いてるの見えてるし、と心の中で怜はツッコんだ。
「でも勇輝の事も同じくらい好きなんだよ」
勇輝がサーッと顔を青ざめ、自分を抱きしめブルブル顔をふった。
「いや、そういう意味じゃないから…」
どう言おうかと迷いながら怜は腕組みして、形の良い顎を触る。考える時の彼の癖だ。
「卒業したら僕は海外に行かないといけないし」
「何だよ。たまには帰ってくるだろ?」
「でも今までみたい何かあればすぐ会える距離じゃないだろ」
怜が寂しそうに笑って、それに…と続ける。
「勇輝なら華を任せられるって思うんだよ」
「怜…」
「華はおっとりしてるだろ。だから勇輝の積極的なとこがさ、華にはピッタリだと思うんだよ」
「それ言うなら、怜の方が頭良いし、美形だし、大人っぽいし、華のフォローうまいじゃん!」
「まぁ、そうだな」
「否定しないんかいっ!」
勇輝のツッコミに、怜が笑った。
自惚れではないが、怜は比較的頭が良い。サラサラの黒髪に切れ長の美しい黒眼でクール系の美形だ。背は平均より低めだが、筋肉だってそれなりについている。つまり、なかなかのイケメン君だ。
「だから応援してるって言ってるだろ?でも…もし華を不幸にしたら」
「…不幸にしたら?」
「その時は全力で僕の物にするから」
「…負けないからな」
「言っとくけど僕が本気になったら手強いよ」
「知ってる」
昼食を食べ終えた勇輝はゴロンと行儀悪く、その場に寝転んだ。
勇輝から見ても、怜はカッコいいし、頭もいい。どちらかといえばクールで自分とは違うタイプ。でも勇輝が1番信頼してる存在だった。だからこそー。
「俺だって、俺以外に任せるとしたらお前しかいないんだよ」
「どうも」
怜も軽く笑って隣に寝転んた。
今日は風が穏やかで、青空が広がっていて気持ち良い。
「やっぱ、告るなら花火祭りとか、海だよな~」
「その前にさ…」
「ん~?」
「お前、あれどうにかした方がいいんじゃない?」
「げっ」
屋上の入り口から女子2人が出て来た。1人は幼馴染で想いを寄せている華。もう1人は最近、3人と仲良くなった桃だ。
「やば、隠れるとこ…」
「こんな何もないとこで見つからないとかないから。いつまでも逃げ回るのやめたら?」
「だって、もし告白されて断ったら気まずいだろ!そしたら華にも気を使わせるし」
桃は明るくノリも良い。
友人としてなら最高だが…どうやら勇輝の事が好きらしく、隙をみては勇輝に絡んでくるのだ。
もし2人っきりになって告白でもされたら…100%断る。でもそれでギスギスするのも嫌なので、のらりくらりと桃のアピールから逃げ回っているのだ。
怜にはよく「潔く告白されて断れ!このヘタレが!」と怒られている。
隠れようにも、屋上のだだっ広い所に寝込んでいた為、場所もなく。2人はすぐ見つかった。
「あ~いたいた!勇くん、怜くん!」
桃が華を掴んだまま走ってくる。
「2人とも探したよ!」
いや俺、怜と大事な話あるから今日は2人で他で食べるって言ったよね!?
口に出す勇気がない勇輝は、顔で笑って心で泣いた。
どうもこの桃という女子は、あまり空気を読めない。もしくは、あえて読まない。
ふわふわの栗色の天然パーマに大きな黒眼。見た目はものすごく可愛いのに!見た目と性格のギャップが、勇輝としてはとても残念だった。
「勇ちゃん、怜ちゃん、ごめんね。今日大事な話してるって桃ちゃんにも言ったんだけど」
華が申し訳なさそうに謝った。
色白の肌にサラサラの黒髪のロングと、涼しげな黒眼。可愛い容姿の桃に比べて、華は清楚な美人だった。
そんな華にわかりやすくニコニコする勇輝。
あぁ癒される~。さすが俺の華!
…とか思ってるだろうな、と怜は勇輝の思考を看破した。
「で?どうしたの桃。わざわざ大事な話してるってわかってて、こんなとこまで探しに来たんでしょ?」
チクチクと、怜は桃に対する嫌味も忘れない。
怜からすると桃は空気を読めるのに読めないフリをしている。つまりはあざとい人種だ。
対応に苦慮してる勇輝と違って、怜は適当にあしらえるから、特に桃に苦手意識はない。
だが、事前に2人で大事な話をするから、と断ったのに割り込んでくるのは、流石に怒ってもいいだろう。
「もちろんよ!ねぇ、夏休みにみんなで旅行に行かない?」
桃の提案に、なになに?と勇輝が興味をそそられる。きっと華への告白場所にいいかもと思ってるに違いない。
反応の良い勇輝に桃がふふ、と嬉しそうに微笑んだ。
アリ地獄の罠にかかるアリ。もしくは釣り人が垂らした釣り餌にかかった魚。
あれほど気をつけろと言ったのに。
怜は面白いほど桃の話につられる単純な勇輝に、呆れてため息をついた。
「急にどうしたの?」
「この前話したでしょ?高校卒業後は、みんな進路がバラバラだねって!だから想い出作りにいいかな、と思って!」
「おー!それいいな!」
「勇輝くんならノッテくれると思った!」
「え?そんなに俺わかりやすい?」
「わかりやすすぎる」
怜がツッコミ、桃と華が頷く。
「勇ちゃんと桃ちゃんて仲良いよね!ノリも似てるし」
ふふっと華が笑う。
その言葉に勇輝はショックで固まり、怜は呆れてまたため息をつき、桃は嬉しそうに頬を染めた。
この時桃が持ち込んだ夏の思い出作りは、無事夏休みに開催されることになる。
楽しい筈の旅行が、4人を恐怖のドン底に陥れる事件になるとは知らずにー。
牛乳パックを飲みながら、勇輝は隣に座る親友&幼馴染の怜に宣言した。
宣言と言っても、やっぱりそれは気恥ずかしく、勇輝の頬はほんのり赤い。それをごまかすように持ってたサンドイッチにかぶりつき無言で咀嚼する。
2人がいる場所は通っている高校の屋上。大事な話があるからと昼休みに怜を誘って、一緒に昼食を取りながら、勇輝は自分の一大決心を伝えた…のだが。
空は青く。屋上からの見晴らしも良い。風に乗って雲が流れて行く…。
「ーって無視かよ!」
いつまでも無言を貫く怜に、勇輝はツッコむ。
「…食べてる時に話しかけるから」
口に入っていた分を飲み込んで、怜は軽く勇輝を睨む。
「まぁ、頑張って」
「軽っ!」
「…玉砕したら骨は拾ってやる」
「ひどっ!」
「………まぁもしダメでも死ぬわけじゃないから」
「重っ!」
「…………はぁ」
いい加減ウザくなって怜は大きくため息を吐いた。
「何て言って欲しいの?」
2つ目のサンドイッチにかぶりつきながら、勇輝は拗ねた様に怜を見た。
「…お前はいいのかよ」
「…。」
「俺が知らないとでも思ってるのかよ。俺が告白して華と両思いになっちゃって、2人でラブラブになっちゃったら、お前お邪魔虫になっちゃうんだぞ!それでもいいのかよ!」
怜がポカンとした表情で包まれたままのおにぎりをポロッと落とした。
「…多分、華は勇輝の事、1mmも意識してないと思うけど…」
「ひどっ!心当たりしかないけどなっ!」
勇輝が両手で顔を覆って、ひどいっ、怜のバカッとか言いながら泣き真似した。
昼休みも半ばになり、徐々に学校内が騒がしくなってきた。
怜が冷たい、構ってくれない、とかまだ言ってる勇輝を怜はジッと見る。
怜の幼馴染で親友でもある勇輝は、背も高く体格も良い。見るからに体育会系だ。性格も明るいし、真っ直ぐな正確で男の自分から見ても好感が持てる。
「僕も…華のこと好きだよ」
怜の呟きに、勇輝がピクリと反応する。泣き真似をしてた両手の隙間から、怜を盗み見る。
いや、こっち覗いてるの見えてるし、と心の中で怜はツッコんだ。
「でも勇輝の事も同じくらい好きなんだよ」
勇輝がサーッと顔を青ざめ、自分を抱きしめブルブル顔をふった。
「いや、そういう意味じゃないから…」
どう言おうかと迷いながら怜は腕組みして、形の良い顎を触る。考える時の彼の癖だ。
「卒業したら僕は海外に行かないといけないし」
「何だよ。たまには帰ってくるだろ?」
「でも今までみたい何かあればすぐ会える距離じゃないだろ」
怜が寂しそうに笑って、それに…と続ける。
「勇輝なら華を任せられるって思うんだよ」
「怜…」
「華はおっとりしてるだろ。だから勇輝の積極的なとこがさ、華にはピッタリだと思うんだよ」
「それ言うなら、怜の方が頭良いし、美形だし、大人っぽいし、華のフォローうまいじゃん!」
「まぁ、そうだな」
「否定しないんかいっ!」
勇輝のツッコミに、怜が笑った。
自惚れではないが、怜は比較的頭が良い。サラサラの黒髪に切れ長の美しい黒眼でクール系の美形だ。背は平均より低めだが、筋肉だってそれなりについている。つまり、なかなかのイケメン君だ。
「だから応援してるって言ってるだろ?でも…もし華を不幸にしたら」
「…不幸にしたら?」
「その時は全力で僕の物にするから」
「…負けないからな」
「言っとくけど僕が本気になったら手強いよ」
「知ってる」
昼食を食べ終えた勇輝はゴロンと行儀悪く、その場に寝転んだ。
勇輝から見ても、怜はカッコいいし、頭もいい。どちらかといえばクールで自分とは違うタイプ。でも勇輝が1番信頼してる存在だった。だからこそー。
「俺だって、俺以外に任せるとしたらお前しかいないんだよ」
「どうも」
怜も軽く笑って隣に寝転んた。
今日は風が穏やかで、青空が広がっていて気持ち良い。
「やっぱ、告るなら花火祭りとか、海だよな~」
「その前にさ…」
「ん~?」
「お前、あれどうにかした方がいいんじゃない?」
「げっ」
屋上の入り口から女子2人が出て来た。1人は幼馴染で想いを寄せている華。もう1人は最近、3人と仲良くなった桃だ。
「やば、隠れるとこ…」
「こんな何もないとこで見つからないとかないから。いつまでも逃げ回るのやめたら?」
「だって、もし告白されて断ったら気まずいだろ!そしたら華にも気を使わせるし」
桃は明るくノリも良い。
友人としてなら最高だが…どうやら勇輝の事が好きらしく、隙をみては勇輝に絡んでくるのだ。
もし2人っきりになって告白でもされたら…100%断る。でもそれでギスギスするのも嫌なので、のらりくらりと桃のアピールから逃げ回っているのだ。
怜にはよく「潔く告白されて断れ!このヘタレが!」と怒られている。
隠れようにも、屋上のだだっ広い所に寝込んでいた為、場所もなく。2人はすぐ見つかった。
「あ~いたいた!勇くん、怜くん!」
桃が華を掴んだまま走ってくる。
「2人とも探したよ!」
いや俺、怜と大事な話あるから今日は2人で他で食べるって言ったよね!?
口に出す勇気がない勇輝は、顔で笑って心で泣いた。
どうもこの桃という女子は、あまり空気を読めない。もしくは、あえて読まない。
ふわふわの栗色の天然パーマに大きな黒眼。見た目はものすごく可愛いのに!見た目と性格のギャップが、勇輝としてはとても残念だった。
「勇ちゃん、怜ちゃん、ごめんね。今日大事な話してるって桃ちゃんにも言ったんだけど」
華が申し訳なさそうに謝った。
色白の肌にサラサラの黒髪のロングと、涼しげな黒眼。可愛い容姿の桃に比べて、華は清楚な美人だった。
そんな華にわかりやすくニコニコする勇輝。
あぁ癒される~。さすが俺の華!
…とか思ってるだろうな、と怜は勇輝の思考を看破した。
「で?どうしたの桃。わざわざ大事な話してるってわかってて、こんなとこまで探しに来たんでしょ?」
チクチクと、怜は桃に対する嫌味も忘れない。
怜からすると桃は空気を読めるのに読めないフリをしている。つまりはあざとい人種だ。
対応に苦慮してる勇輝と違って、怜は適当にあしらえるから、特に桃に苦手意識はない。
だが、事前に2人で大事な話をするから、と断ったのに割り込んでくるのは、流石に怒ってもいいだろう。
「もちろんよ!ねぇ、夏休みにみんなで旅行に行かない?」
桃の提案に、なになに?と勇輝が興味をそそられる。きっと華への告白場所にいいかもと思ってるに違いない。
反応の良い勇輝に桃がふふ、と嬉しそうに微笑んだ。
アリ地獄の罠にかかるアリ。もしくは釣り人が垂らした釣り餌にかかった魚。
あれほど気をつけろと言ったのに。
怜は面白いほど桃の話につられる単純な勇輝に、呆れてため息をついた。
「急にどうしたの?」
「この前話したでしょ?高校卒業後は、みんな進路がバラバラだねって!だから想い出作りにいいかな、と思って!」
「おー!それいいな!」
「勇輝くんならノッテくれると思った!」
「え?そんなに俺わかりやすい?」
「わかりやすすぎる」
怜がツッコミ、桃と華が頷く。
「勇ちゃんと桃ちゃんて仲良いよね!ノリも似てるし」
ふふっと華が笑う。
その言葉に勇輝はショックで固まり、怜は呆れてまたため息をつき、桃は嬉しそうに頬を染めた。
この時桃が持ち込んだ夏の思い出作りは、無事夏休みに開催されることになる。
楽しい筈の旅行が、4人を恐怖のドン底に陥れる事件になるとは知らずにー。
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