退魔剣姫リオナは犯されてもなるべく諦めない

スンダヴ

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第2話-③:ヒールの策略で窮地に陥るリオナ

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 リオナはプロレスリングの柱の上から、リングの中心で待ち構える怪人、ヒールを冷静に観察した。

 女性型のゴブリンにボンテージを着せた奇異な姿。
 右手にはよくしなる棘のついた鞭。
 他の怪人とは違い知性を帯びた表情、ただし非常に凶悪。

 「あはははははっ!こんな所で退魔剣姫と会うとはねぇ!あんたみたいな澄まし顔のメス豚をどうやって調教するか、考えるだけでもゾクゾクするよぉ!」

 「挑発は無駄です。私は、どんなことがあってもあなたを倒します」

 「やってみなこのアバズレェ!」

 その名の通り、プロレスのヒール役のような下品なジェスチャーや罵詈雑言をリオナに浴びせた。

 (鞭による攻撃を主体とする怪人でしょうか。リーチは敵の方が長そうですが、スピードで撹乱すれば当たることはないはず…しかし、言葉を話す怪人を生産するとは、《ドミネイト》の技術力も侮れませんね)

 驚きはあるが、手を抜くつもりは毛頭ない。
 多くの女性を誘拐し辱めた極悪非道組織《ドミネイト》を、欲望のままに悪事を働く怪人をリオナは許せなかった。

 「どうしたぁ?心配するな。周りのゴブリンには手を出させたりしねえよ。こいつらの出番は、あんたを捕まえてからだ」
 
 「全力でお相手します。協奏曲コンチェルト!」

 戦闘開始。
 
 リオナは凛とした声と共に新たな剣技を発動する。
 体が白い光に包まれ、

 




 2人のリオナが新たに現れた。

 「な…分身だとぉ!?」

 そして、3人がそれぞれ別々の方向へと散開する。

 「「「あなたには、捕らえられませんっ!」」」

 右へ、左へ、ヒール怪人の背後へ。
 可憐なドレスをはためかせながら、女ゴブリンの目をくらませた。

 まさに電光石火。
 
 「ちいっ!!」

 ヒール怪人もさるもの。
 視線を前後左右に素早く向け、3人の位置を確認し、鞭を振るう。

 ヒュオオオオオオオオゥゥゥゥゥ…!

 巧みなコントロールで左側から迫るリオナに直撃。

 が、手応えはない。
 霞のようにリオナは消え、残り2人。

 「やはり幻かっ!!!」

 忌々しそうに叫び、背後から迫っていたもう1人にも鞭をふるうヒール。

 またもやハズレ。

 「だが手品のタネは分かった!次で…なっ!?」

 さらに鞭を振るおうとしていたヒールの手が止まる。

 どこにもいない。
 右にも、左にも、背後にも。

 「はぁあああああああああっ!」

 「上っ…!?」

 一瞬の隙をリオナは見逃さなかった。 

 一度空中にジャンプしてからの強襲。 

 ギリギリまで上空に移動しなかったのは、ヒール怪人を視野狭窄に陥らせるため。
 前後左右の動きに突如上下移動が加わると、咄嗟の判断が難しくなる。

 (ワーウルフよりも反応が遅い…これなら!)

 あとは、うろたえている怪人を仕留めるだけ。
 
 「鎮魂歌レクイエム!」

 「ギャアアアァァァアアアア!!腕があっっ!!!」



 リオナはヒールの右腕を鞭ごと両断した。


  ****


 「…胴体への一撃をギリギリでかわしましたか」

 「ぐううううううううっ!」

 うずくまるヒールに、リオナはサーベルを突きつける。
 まだ油断はできない。

 ゆっくりと近づき、相手の反応を見る。

 「この…このおぉぉぉあ…」

 ヒールは痛みで全身から脂汗を吹き出していたが、リオナを憎悪の目つきで睨み返し、抵抗の意思を捨てていない。

 (本当に、人間のようですね…)

 リオナの心に迷いが生まれはじめた。

 退魔剣士と言っても正体は16歳の少女。あっさりとどめを刺せるほどの冷徹さはまだ備わっていない。

 「…降伏してください」

 内心の憐れみを隠しながらリオナ、いや、莉緒奈は怪人に呼びかけた。

 「ああ?」

 「あなたも怪人とはいえ女性。《ドミネイト》の悪しき行動に従う必要はありません。今なら、償いができるはずです」

 彼女も幾多の悪事に手を染めてきたに違いない。リオナを非難する者も出るだろう。

 (それでも、万が一手を下さずに済むなら…分かり合えるなら…)



 「くくくくくくくっ…!馬鹿だねぇ、あんたは…!」

 ヒールの空気が変わる。
 
 嘲笑。  
 あざけるような表情。
 
 勝利を確信している…?

 「レクイエ…!」

 やむなくトドメを刺そうとするリオナだったがー、



 「台本ブック!こいつの動きを封じ、声もほとんど出ないようにしろ!」

 「な…?」

 怪人にサーベルを突き立てようとした手が止まる。
 全身が硬直して動けない。
 声も出なくなった。

 策にはめられたことに気づくリオナだったが、時すでに遅し。
 ヒールはゆっくりと立ち上がり、驚愕した表情で硬直するリオナを見て嘲笑った。

 「いひひひひっ!このリングに足を踏み入れた時から勝敗は決まっていたのさ!台本ブック!私の傷を癒せ!」

 切り落としたはずの腕がみるみる復活する。

 「台本ブック!こいつの剣をリング外に飛ばし、一切の特殊能力を封印!こいつ自身はリング外から出られないようにしろ!」

 サーベルが音もなくリオナの手から吹き飛び、リングのはるか向こうに消える。

 「台本ブック!こいつを弱体化させろ!あたしがたーっぷり嬲るのを楽しめる程度でいい」

 リオナの全身から力が抜け、先ほどまでの急激な運動による負荷が一気にのしかかってきた。
 ブルージュエルの力が弱体化すれば、リオナは単なる女子高生、君原莉緒奈にすぎない。

 「ぐっ…卑怯、です…」

 リオナは立ち続けるのが難しくなり、リングに膝をついた。
 汗がダラダラと流れはじめる。
 体の震えが止まらない。

 (変身の力が、半分以上失われてます…だめ…このままじゃ…)

 「きゃはははははは!分身なんてチート技使う人間に言われたかないねぇ!ぺっ!」

 「くっ…」
  
 追い討ちで頬に唾を吐かれ、退魔剣士は羞恥で頬を染める。

 (まさか、こんな特殊なスキルを使う怪人がいるなんて…)

 一部怪人は特殊な技を使うとリオナは聞いていた。
 だが、これまで遭遇したのは肉体を武器にするパワー系だけ。

 「1つ、いいことを教えてやるよ」

 膝をついたリオナの耳元に背後から迫り、ヒールが嘯く。耳に軽く息を吹きかけられ、リオナはぞくぞくとした感覚に身震いした。

 「あんたも気づいたかもしれないが、あたしの戦闘力は低い。その代わり、プロレスリング内の事象を全てコントロールできる能力、台本ブックが使えるのさ。効果はあんたが今実感した通り」

 (そん…な…)

 リオナは絶望で目を見開く。

 完全なる初見殺し。鞭を大袈裟に振るったのも、単純なパワータイプと誤解させるための策略。

 「だから…あんたがこのリングに立った時から、敗北は決まってたの」

 敗北。

 その二文字にリオナの背筋が凍る。

 そしてー、






 衝撃。

 「かはっ…!」

 ヒールの膝が、リオナの柔らかなお腹を貫いた。
 弱体化したブルージュエルの力では防ぎきれない。
 リオナは激痛のあまり目を見開き、口から胃液を吹き出した。

 「くぅ…あぁっ…う…!」

 今のリオナにできることは、リングに倒れ込み、唇を噛んで痛みに耐えることだけ。
 
 「おやおやどうしたんだい?」

 もちろんヒールは容赦しない。
 リオナの美しい銀髪をむんずと掴み、無理やり立たせる。

 「あたし全力の20%しか出してないんだけど?死にそうな顔してるじゃない」

 「ぐ…あ…」

 「仕方ないから…15%で我慢してやるわよ!!!」

 「がっ…!はぁ…!」

 再びの衝撃。
 あまりの痛み、いや、熱さに涙が溢れる。

 めり込んだ膝がリオナのドレスを抉り、お腹の部分を引き裂いた。

 ヒールがリオナの髪から手を離すと、再びリングに崩れ落ちる。

 「~~~~~~…!」

 必死に唇を噛んで耐えるリオナだったが、心に宿っていた正義感が急速に萎え、恐怖に押しつぶされるのを止められなかった。

 (おなか…つぶされます…このままじゃ…なぶられ、て…おか、されて…いやぁ…)

 「なあんだ張り合いのありゃしない。すぐ泣きべそかく女はプロレスラーになれないわよ?」

 再び床に這いつくばるリオナを見てー、

 「台本ブック。この女を解放しな。ただし条件がある」



 ヒールは突如救いを与える。
 リオナの拘束の解除。 

 「条件は…」

 もちろん怪人に情は存在しない。
 解放したのは理由がある。




 「あたしがこの女の首に腕を巻きつけてからだっ!!!」

 背後からリオナの細い首に巻きつく、血管の浮き出たヒール怪人の両腕。

 ギチギチギチギチ…!



 「いゃああああああああああああああっ…!」



 リオナの悲鳴をじっくり堪能するためであった。


 

 
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