【完結】誰そ彼(黄昏)に濡れる

エウラ

文字の大きさ
1 / 12

東雲と黄昏が出逢う

しおりを挟む

雨に煙る夕方。

夕日など見えない天気。
学校の屋上から落ちながら。

綺麗な瞳を見た気がする・・・。
黄昏時の綺麗な色の・・・。

キラキラと輝く、俺には無いモノだった。

それは一生交わることの無いモノ・・・・・・。



だったのに、何故・・・。



俺は貴方に抱かれているんだろう。


◇◇◇


俺の名は東雲玲しののめあきらという。
だが発音が難しいらしく、名前の音読みで『レイ』と名乗っている。

---何でこんな話をしているかというと、実は俺は異世界に転移した日本人なのだ。

これは別に秘密でも何でも無く、時々『渡り人』と呼ばれる異世界人が迷い込む為、この世界ではごく一般的に保護対象となるそうで。

見つけ次第、役所などに届け出る決まりなのだそうだ。
そこから保護対象者である渡り人に説明がなされて、後見人がつき、衣食住を与えられ、教育者もつけられてこの世界の事を学ばされる。

---この世界に落ちた渡り人は二度と元の世界には帰れないそうだ。
最初に聞かされる事である。
大人だろうが子供だろうが、一番最初に告げられる言葉。

『もう二度と帰れないから、この世界で頑張って生きて。私達が支えるから』

物心つかない子供なら良かっただろう。
分別のある大人だったら良かっただろう。

でも思春期真っ只中の子供は?

きっと現実に向き合うには経験が足りない。

それでも彼らは見放さずに寄り添い、やがて落ち着いてきた子供を可愛がるのだ。


---俺は普通の子供とは少し違った。

ちょうど14歳の誕生日だった。
誰にも祝われること無く、夕方、学校の屋上で殴られ、蹴られてフェンスを越えて落ちた。

これで楽になれる。

そう思って目を閉じたのに、次に目が覚めたらふかふかの布団で、手当てされていた。


---何だ、これ。
何で生きてる?
それとも夢・・・・・・?

「目が覚めた?」
「っ!」

誰?!

思わず布団の中に潜ってしまった。
その上からそっと手を添えられた。
ビクッとすると、そのまま宥めるようにゆっくり背中を撫でられた。

「心配ないよ。私はアレクシオという。君を保護して後見人になった者だよ」

保護? 後見人? 一体何の事?

気になってそうっと顔を出すと、どこの外国人モデルかというくらいイケメンな青年の顔が目の前にあってびっくりした。


「やっと綺麗な瞳が見られた」
「---綺麗?」

どこが?
両親に似ず、近所の大人はおろか学校の生徒達にも嫌われていたこの目が?

名前の通り東雲色の、黄みがかった桃色のようなこの目が?

「・・・・・・あんたの方がよっぽど綺麗だ」

藍色の髪に黄昏色の瞳・・・・・・。
あれ、なんか既視感が・・・?

・・・どこかで・・・?


「それはどうもありがとう。でも私は君の瞳が好きだな」

好き。

そんな事、初めて言われた。
顔がカーッと熱くなる。

「ふふ。君の名を教えて貰えるかい?」

優しく微笑んでいる彼に名前を告げる。

「東雲玲。しののめが家名であきらが名前、です」
「シノノムェ、アクィーラ? ア、キィラ」
「・・・・・・あの、れい、でいいです」
「レイ?」
「玲はれいとも読むので、言いにくそうだし」
「・・・あぁ、ごめんね? 発音が難しい。うん、レイって呼ばせて貰うね」

そういってにっこり笑った。



そうして俺はアレクシオの屋敷に世話になることになった。

元の世界に帰れない事は俺にとって幸いだったから、すんなりこの世界に馴染んだ。

両親から貰った名前だけど、嫌われ者でほとんど呼ばれない名だったから、俺は名前をレイにした。

アレクシオに呼ばれると、何とも言い難い気持ちになる。
心の奥がほっこりするような・・・。

だからこの世界で俺は『レイ』になった。

アレクシオは俺の事情を無理に聞き出そうとはしなかったし、俺も言わなかった。

その距離感が安心出来て、心地良かった。

アレクシオはこの世界でデュカス公爵家当主という地位にいるそうで今は大公家が無いから、国王陛下の次に位が高いんだって。

だからお屋敷も大きくて使用人もたくさんいるんだ。

何で俺の後見人になったのか聞いたら、この屋敷の庭にボコボコにされて気を失っていた俺が横たわっていたそうで。

屋敷への侵入経路とか不明だし、傷付いて気を失っているし、何より身形がこの世界のものじゃなくて、渡り人の情報と一致するって。

「最初見たときにピクリともしなくて、死んでるんじゃないかって思って焦ったよ」

それくらいぼろぼろだったらしい。
確かにあの時は肋骨とかぼきっといってた気がする。
血を吐いたもんな・・・。自分でもヤバいと思ったし。

「---あのまま死にたかったな」

思わずぽろっと出た言葉にハッとして顔をあげると、アレクシオが泣きそうな顔をしていた。

「---ごめん。助けてくれたのに、ヤなこと言った」
「・・・そう思うような辛い事があったんだろう? 今は、そうじゃないって思ってるけど」
「うん。今はアレクシオのお陰で生きてるよ。・・・ここで生きていきたいって思ってる。ありがとう、アレクシオ」

アレクシオは無言で俺を抱きしめてくれた。
人の温もりってこんなに温かかったんだって知ったら、涙が勝手に溢れてきて止まらなくなった。

アレクシオはただ、何も言わずに抱きしめて背中を摩ってくれた。

それが余計に涙を誘って、俺は人生で初めて誰かの腕の中で泣き疲れて寝落ちするということを経験した。

気恥ずかしくて、暫くアレクシオと目を合わせられなかった。

あの後暫くして、名前をレイにして新しく生きなおすと決めて今までの事を話した。
この目の事で苛められていて、親からも嫌われていた事。
暴力を受けて屋上から落ちた事も。

でもここではもう関係ない。
誰も俺を蔑まない。

---何よりアレクシオが居る。


◇◇◇


あれから4年。

俺は今日、成人する。

この世界は18歳で成人だそうだ。
立派に独り立ち出来る年齢だ。
仕事だってちゃんとしたモノに就けるんだって。

俺はアレクシオの元で勉強をしながら剣を習った。

そうそう、実は渡り人にはこの世界で生きていけるようにギフトと呼ばれるスキルが自動で付くそうで、もちろん自分で選べる訳ではないんだけどほとんどがこの世界で役立つモノだそうだ。

例えば料理スキルで美味しい料理を作って広めたり、便利な魔導具を作ったり。

その人の技能とかが関係しているようだった。

---俺は特にないなあ。

虐げられ、苛められた事しかないんだけど。

---で、神殿でギフトの確認をして貰ったら、俺は剣術や武術に特化したスキルだった。

「『剣聖』と『覇王』だって。凄いね」
「よく分かんないけど、鍛えれば良いの?」
「こちらで良い先生を探してつけようね」
「頑張る」

誰かを傷つけるんじゃない。
護るための力だ。

これでアレクシオに恩返ししたい。

その一心で、今まで無気力だったのが見違えるほどのやる気を出して取り組んだ。

俺の日常はアレクシオを中心にまわっていた。

そして俺はいつの間にか剣や体術では負け知らずの、デュカス公爵家の見習い騎士になっていた。


そして今日、成人の儀と共に、デュカス公爵家の騎士となる。




やっとここまできた。








しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!

小池 月
BL
 男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。  それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。  ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。  ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。 ★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★ 性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪ 11月27日完結しました✨✨ ありがとうございました☆

あの日、北京の街角で

ゆまは なお
BL
5年前、一度だけ体を交わした彼が、通訳として出張に同行するーーー。 元留学生×駐在員。年下攻め。再会もの。 北京に留学していた上野孝弘は駐在員の高橋祐樹と街中で出会い、突然のアクシデントにより、その場で通訳を頼まれる。その後も友人としてつき合いが続くうちに、孝弘は祐樹に惹かれていくが、半年間の研修で来ていた祐樹の帰国予定が近づいてくる。 孝弘の告白は断られ、祐樹は逃げるように連絡を絶ってしまう。 その5年後、祐樹は中国出張に同行するコーディネーターとして孝弘と再会する。 3週間の出張に同行すると聞き、気持ちが波立つ祐樹に、大人になった孝弘が迫ってきて……? 2016年に発表した作品の改訂版。他サイトにも掲載しています。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

異世界から戻ってきた俺の身体が可笑しい

海林檎
BL
異世界転生で何故か勇者でも剣士でもましてや賢者でもなく【鞘】と、言う職業につかされたんだが まぁ、色々と省略する。 察してくれた読者なら俺の職業の事は分かってくれるはずだ。 まぁ、そんなこんなで世界が平和になったから異世界から現代に戻ってきたはずなのにだ 俺の身体が変なままなのはどぼじで??

【完結】しがない男爵令息だった僕が、ひょんなことから辺境最強の騎士と最強の剣の精霊から求愛されている件について B-side

325号室の住人
BL
☆同タイトルの作品(A-side)が恋愛ジャンルにありますが、こちらは話の最初と主人公の性別以外の境遇が同じだけの別の話となりますので、A-sideを読んでいなくて大丈夫です。 ☆同姓同名の騎士も出てきますが、別人仕様です。 ☆全7話 完結しました しがない男爵令息だったフレイオには日本で暮らした前世の記憶がある。 平民から男爵の隠し子だったことが判明し、引き取られたことから、もしかして異世界チートの魔法使いだったりして…なんて思っていたけれど、残念ながらどの話にも自分の名前のヒーローは居なかった。 けれど学園の入学式、自分からは名乗らない他称王子から自分がボーイズラブ系R18ゲームの主人公だと明かされ迫られる。 それからもろもろあって、辺境最強の騎士とその騎士の持ち物である最強の剣の精霊から求愛されることになってしまった。 フレイオの運命は、いかに!

【完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro
BL
「……僕、大人になったよ。だから……もう、───いいよね?」 最愛の人に先立たれて3年。今だ悲しみから立ち直れず、耐えられなくなった結(ゆい)はその生涯を終えようとする。しかし、次に目が覚めたのは、生命を見守る大樹がそびえ立つ異世界だった。 そこで亡き恋人の面影を持つ青年・ルークと出会う。 亡き恋人への想いを抱えながらも、優しく寄り添ってくれるルークに少しずつ惹かれていく結。そんなある日、ある出来事をきっかけに、彼から想いを告げられる。 「忘れる必要なんてない。誰かを想うユイを、俺はまるごと受け止めたい」 ルークの告白を受け入れ、幸せな日々を送る結だったが、それは突然終わりを迎える。 彼が成人を迎えたら一緒に村を出ようと約束を交わし、旅立つ準備を進めていた矢先、結は別の女性と口づけを交わすルークの姿を目撃してしまう。 悲しみの中で立ち止まっていた心が、異世界での出会いをきっかけに再び動き出す、救済の物語。 ※センシティブな表現のある回は「*」が付いてますので、閲覧にはご注意ください。   ストーリーはゆっくり展開していきます。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

処理中です...