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東雲と黄昏が出逢う
しおりを挟む雨に煙る夕方。
夕日など見えない天気。
学校の屋上から落ちながら。
綺麗な瞳を見た気がする・・・。
黄昏時の綺麗な色の・・・。
キラキラと輝く、俺には無いモノだった。
それは一生交わることの無い瞳・・・・・・。
だったのに、何故・・・。
俺は貴方に抱かれているんだろう。
◇◇◇
俺の名は東雲玲という。
だが発音が難しいらしく、名前の音読みで『レイ』と名乗っている。
---何でこんな話をしているかというと、実は俺は異世界に転移した日本人なのだ。
これは別に秘密でも何でも無く、時々『渡り人』と呼ばれる異世界人が迷い込む為、この世界ではごく一般的に保護対象となるそうで。
見つけ次第、役所などに届け出る決まりなのだそうだ。
そこから保護対象者である渡り人に説明がなされて、後見人がつき、衣食住を与えられ、教育者もつけられてこの世界の事を学ばされる。
---この世界に落ちた渡り人は二度と元の世界には帰れないそうだ。
最初に聞かされる事である。
大人だろうが子供だろうが、一番最初に告げられる言葉。
『もう二度と帰れないから、この世界で頑張って生きて。私達が支えるから』
物心つかない子供なら良かっただろう。
分別のある大人だったら良かっただろう。
でも思春期真っ只中の子供は?
きっと現実に向き合うには経験が足りない。
それでも彼らは見放さずに寄り添い、やがて落ち着いてきた子供を可愛がるのだ。
---俺は普通の子供とは少し違った。
ちょうど14歳の誕生日だった。
誰にも祝われること無く、夕方、学校の屋上で殴られ、蹴られてフェンスを越えて落ちた。
これで楽になれる。
そう思って目を閉じたのに、次に目が覚めたらふかふかの布団で、手当てされていた。
---何だ、これ。
何で生きてる?
それとも夢・・・・・・?
「目が覚めた?」
「っ!」
誰?!
思わず布団の中に潜ってしまった。
その上からそっと手を添えられた。
ビクッとすると、そのまま宥めるようにゆっくり背中を撫でられた。
「心配ないよ。私はアレクシオという。君を保護して後見人になった者だよ」
保護? 後見人? 一体何の事?
気になってそうっと顔を出すと、どこの外国人モデルかというくらいイケメンな青年の顔が目の前にあってびっくりした。
「やっと綺麗な瞳が見られた」
「---綺麗?」
どこが?
両親に似ず、近所の大人はおろか学校の生徒達にも嫌われていたこの目が?
名前の通り東雲色の、黄みがかった桃色のようなこの目が?
「・・・・・・あんたの方がよっぽど綺麗だ」
藍色の髪に黄昏色の瞳・・・・・・。
あれ、なんか既視感が・・・?
・・・どこかで・・・?
「それはどうもありがとう。でも私は君の瞳が好きだな」
好き。
そんな事、初めて言われた。
顔がカーッと熱くなる。
「ふふ。君の名を教えて貰えるかい?」
優しく微笑んでいる彼に名前を告げる。
「東雲玲。しののめが家名であきらが名前、です」
「シノノムェ、アクィーラ? ア、キィラ」
「・・・・・・あの、れい、でいいです」
「レイ?」
「玲はれいとも読むので、言いにくそうだし」
「・・・あぁ、ごめんね? 発音が難しい。うん、レイって呼ばせて貰うね」
そういってにっこり笑った。
そうして俺はアレクシオの屋敷に世話になることになった。
元の世界に帰れない事は俺にとって幸いだったから、すんなりこの世界に馴染んだ。
両親から貰った名前だけど、嫌われ者でほとんど呼ばれない名だったから、俺は名前をレイにした。
アレクシオに呼ばれると、何とも言い難い気持ちになる。
心の奥がほっこりするような・・・。
だからこの世界で俺は『レイ』になった。
アレクシオは俺の事情を無理に聞き出そうとはしなかったし、俺も言わなかった。
その距離感が安心出来て、心地良かった。
アレクシオはこの世界でデュカス公爵家当主という地位にいるそうで今は大公家が無いから、国王陛下の次に位が高いんだって。
だからお屋敷も大きくて使用人もたくさんいるんだ。
何で俺の後見人になったのか聞いたら、この屋敷の庭にボコボコにされて気を失っていた俺が横たわっていたそうで。
屋敷への侵入経路とか不明だし、傷付いて気を失っているし、何より身形がこの世界のものじゃなくて、渡り人の情報と一致するって。
「最初見たときにピクリともしなくて、死んでるんじゃないかって思って焦ったよ」
それくらいぼろぼろだったらしい。
確かにあの時は肋骨とかぼきっといってた気がする。
血を吐いたもんな・・・。自分でもヤバいと思ったし。
「---あのまま死にたかったな」
思わずぽろっと出た言葉にハッとして顔をあげると、アレクシオが泣きそうな顔をしていた。
「---ごめん。助けてくれたのに、ヤなこと言った」
「・・・そう思うような辛い事があったんだろう? 今は、そうじゃないって思ってるけど」
「うん。今はアレクシオのお陰で生きてるよ。・・・ここで生きていきたいって思ってる。ありがとう、アレクシオ」
アレクシオは無言で俺を抱きしめてくれた。
人の温もりってこんなに温かかったんだって知ったら、涙が勝手に溢れてきて止まらなくなった。
アレクシオはただ、何も言わずに抱きしめて背中を摩ってくれた。
それが余計に涙を誘って、俺は人生で初めて誰かの腕の中で泣き疲れて寝落ちするということを経験した。
気恥ずかしくて、暫くアレクシオと目を合わせられなかった。
あの後暫くして、名前をレイにして新しく生きなおすと決めて今までの事を話した。
この目の事で苛められていて、親からも嫌われていた事。
暴力を受けて屋上から落ちた事も。
でもここではもう関係ない。
誰も俺を蔑まない。
---何よりアレクシオが居る。
◇◇◇
あれから4年。
俺は今日、成人する。
この世界は18歳で成人だそうだ。
立派に独り立ち出来る年齢だ。
仕事だってちゃんとしたモノに就けるんだって。
俺はアレクシオの元で勉強をしながら剣を習った。
そうそう、実は渡り人にはこの世界で生きていけるようにギフトと呼ばれるスキルが自動で付くそうで、もちろん自分で選べる訳ではないんだけどほとんどがこの世界で役立つモノだそうだ。
例えば料理スキルで美味しい料理を作って広めたり、便利な魔導具を作ったり。
その人の技能とかが関係しているようだった。
---俺は特にないなあ。
虐げられ、苛められた事しかないんだけど。
---で、神殿でギフトの確認をして貰ったら、俺は剣術や武術に特化したスキルだった。
「『剣聖』と『覇王』だって。凄いね」
「よく分かんないけど、鍛えれば良いの?」
「こちらで良い先生を探してつけようね」
「頑張る」
誰かを傷つけるんじゃない。
護るための力だ。
これでアレクシオに恩返ししたい。
その一心で、今まで無気力だったのが見違えるほどのやる気を出して取り組んだ。
俺の日常はアレクシオを中心にまわっていた。
そして俺はいつの間にか剣や体術では負け知らずの、デュカス公爵家の見習い騎士になっていた。
そして今日、成人の儀と共に、デュカス公爵家の騎士となる。
やっとここまできた。
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