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初めての共同作業 前
しおりを挟むお昼ご飯を食べた後は、セインの案内で街を見てまわり、宿が同じだというので一緒に戻って夕ご飯を食べた。
「おやすみ、アルク」
「おやすみ、セイン。今日はありがとう」
お互いに挨拶をして部屋へと入った。
鍵をかけた途端、力が抜けてズルズルとドアに凭れてへたり込んだ。
「・・・・・・無理だろ、あんなの・・・・・・」
右手で顔を覆って蹲る。
耳まで真っ赤で、熱を持っているのが丸わかりだ。
「・・・はぁ、参ったなあ」
こんな見た目の俺の話を聞いてくれただけでなく、俺の言うことを不快に思わないどころか否定しなかった。
「俺は俺で良いって、言ってくれたようなもんだよな・・・」
そんなん、言われたら・・・。
「惚れちゃうだろ」
ははっと、乾いた笑いが零れる。
ずっと、シリウスだけが心の支えだった。
シリウスへの想いだけは疑いようがないほど、恋い焦がれている。
「---うん。分かってるよ。俺はシリウスを探すんだ。だって、約束したんだ」
『およめさんになる』
『ああ、待ってるよ』
・・・たとえ子どもの戯れ言と一笑に付されても、俺はあの時本気だった。
それは今でも同じ。
シリウスが戯れに慰めた言葉でも。
見つけて、はっきりと振られるまでは・・・。
だからこの想いは封じなくては・・・。
「---ごめんね、俺の淡い恋心」
誰になんと言われようと、俺の1番はシリウスなんだ。
翌朝、部屋を出ると申し合わせたようにセインがいた。
「おはよう、眠れた?」
「おはよう。うん、よく眠れたよ。これから下で朝ご飯食べたらギルドに行こうと思って。セインは?」
「俺も一緒に行くよ。エミルがまた暴走するかもだし、クエストボードを確認したいしね」
そういって俺と下に下りて朝食を食べるとギルドに向かった。
今朝は早い時間帯なので、結構な人数の冒険者で溢れかえっていた。
「先にクエストボードを見に行こう」
セインに促されて足を運ぶ。
冒険者達はBランクまでが多いのか、Aランク用のボードには余りいなかった。
自分のランクの一つ上までは依頼を受けられるから俺達はSランクの依頼も受けられるんだが、さすがに一人ではキツいので俺は今まで受けたことは無い。
俺とセインは端から依頼票を見ていく。
セインはザッと流し見て、Sランクのボードを読み出した。
うん。
セインはそれくらいの実力者だよな・・・とのんびりAランクのボードを見ていたら、不意にセインが一枚の依頼票を手に取った。
「なあ、この依頼、俺と一緒に受けてみないか?」
そういってセインが見せてくれた依頼は・・・。
「おはよう、エミル」
「あっ、おはようございます! アルクさん、昨日の買い取りの報酬ですね。用意出来てますよ!」
そういって明細を出しながら硬貨を準備してくれた。
「薬草がどれも高品質でしたので、イロを付けてこれだけです。魔石も半分以上高品質でその他もほぼほぼ高品質でした! ありがとうございます!!」
「それは良かった。うん。金額はちゃんとあるよ。こちらこそありがとう」
「いえいえ、またよろしくお願いします! 暫くはこの街にいらっしゃるんでしょう?」
「うん、とりあえず一週間、宿を取ってるから、また売りに来るよ」
エミルに苦笑して応える。
「今日は何か依頼を受けるんですか?」
「・・・ああ、セインと」
「俺と一緒にちょっと行ってくるんだ。アルクと初めての共同作業! 期待して待ってて」
「・・・・・・セイン・・・・・・はあ、まあ、そういうわけでちょっと行ってくるね」
「えと、はい。お気を付けて!」
手をひらりと振ってギルドをあとにした。
「・・・何が『初めての共同作業』だ」
「え? だって俺とは初めてだよね?」
「・・・・・・あんた以外とも無い。文字通り初めての共同作業だよ、俺は」
「---え、嬉しい!」
「はあ?!」
・・・どうもセインといると調子が狂うな。
さっき買い取りカウンターに行く前にセインが受けた依頼。
この街から南にある岩山に巣くうグリフォンの討伐と羽根の納品というものだ。
羽根は装飾品になるのだが、グリフォンは気性が荒い上に高ランクの魔物で討伐が難しい。
どこぞの貴族がその希少性に目をつけて欲しがっているそうだ。
ギルドとしてもこれ以上焦げ付かせるわけには行かなかったのか、すんなりと許可が出た。
セインならイケると判断したのかもしれない。
ソレを一時的にパーティー登録して俺とやることになったのだ。
まあ、一人よりは二人の方が効率も良いんだが。
昨日の今日だぞ、俺をそんなに信用して良いのか、と俺の方が心配になった。
「そういうヤツに悪いヤツはいないよ」
キョトンとしてから、セインはそういって笑った。
なので俺も馬鹿らしくなって、言うのを止めたのだった。
街の南側の門を出てひたすら歩く。
途中に出て来る弱い魔物は放置した。
一度、休憩で軽く水分補給と携帯食を腹におさめた。
セインが言うにはあの岩山にグリフォンが棲み着いたのはここ数か月らしいとのこと。
セインがこの街に来たときにはすでにいたらしい。
討伐出来るような高ランクの冒険者がちょうどいなくて、ギルドも困っていたようだと。
「・・・セインだけでも倒せるだろう?」
「腕を買ってくれるのは嬉しいけど、まあ、倒すだけならね。でも素材を集めたりするのが苦手なんだよ。最近は素材の為に上手く倒したり出来るようにはなったけど、余裕がないと、ぐちゃぐちゃに・・・」
「・・・・・・なるほど?」
つまり、力加減が上手くいかないと、そういうことか。
「ふむ、なら俺の方が向いてるかな。何処をどうすれば傷を少なく倒せるかという点では、俺は負けていないと思う。分かった。二人で頑張ろう」
「助かるよ!」
そうして岩山に辿り着いたのはお昼に差し掛かった頃だった。
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