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連載
546 隠密調査 3 sideカイリ
「──それで、ヴァン殿はこれからどうするので?」
テトラの奇行には目を瞑って、俺はテトラにぐりぐりされて遠い目をしているヴァン殿に尋ねる。
こちらは隠密行動中なのだから、いくらヴァン殿が認識阻害の魔法で姿を隠したとしても、一緒に動くのはマズい。そもそも認識阻害の魔法は、勘のいい者には気づかれるし、うっかり受け答えをしてしまっても魔法が解除されてしまう。そのため、けっこうバレやすいのだ。
そうでなくとも、ここは獣人国でフェンリルを崇めている獣人が多いのだ。気配を察知した獣人に違和感を持たれてしまうだろう。
『まあ、お主らの懸念も分かる。だが、今回はそれを逆手に取るのよ。前回のこともあるし、今日だって宰相辺りには連絡がいっておるから、我がうろうろしていても問題ない』
「……つまり?」
俺の言いたいことを察したヴァン殿が、しかし、自分の放浪癖を利用するような言葉を発した。それに反応したのはサンだ。俺達は黙ってヴァン殿の言葉を待つ。
『お主ら、行けるところは見て回って、成果なしだったんだろう? 残りは王族のプライベート区域だが、お主らでも侵入は難しい。だが我ならば、うろうろして入り込んでも咎められんということよ』
「──っそれは……」
要するに、自分を隠れみのにしろということか。それは魅力的な提案だが、いくらノア殿のことがあったとしても、何故そこまで協力的なのか。
『……実はな、さっき彷徨いているときに、匂ったのだ。あの毒の、な』
「! そういえば最初に毒に気づいたのがヴァン殿でしたね。その匂いは、どちらで匂ったのですか?」
ぐりぐりスーハーしているテトラ以外の俺達は、仔狼サイズのヴァン殿にデカい図体で詰め寄った。
ヴァン殿はギョッとしてビクついたが、テトラに抱きつかれていて逃げ場がなく、少しわたわたとしたあと、静かになった。
『はあ……。えーっとな、王族の警護をしていた近衛騎士の一人からやけに匂ってな。交代時間だったのか移動したので、こっそりあとをつけていたのよ』
「それで?」
『あー……っと、すまん。そこで此奴に捕まってな……見失ってしまって、分からん』
ちょっと顔を後ろに向けて気まずそうにそう言うヴァン殿に、俺達は憐憫の目を向けた。うん、ヴァン殿は悪くないと思うぞ。
テトラ、お前はタイミングがいいのか悪いのか……。ヴァン殿を吸ってないで、何とか言え。
「テートーラー?」
「ふぁい?」
「ふぁい、じゃない。お前のおかげで大事な手がかりをだなあ……」
「いやいや、だって、匂いで分かるんでしょ? だから連れてきたんじゃん。ヴァン殿に匂い辿ってもらおうと思ってぇ」
俺が呆れて突っ込むと、もふもふから顔を上げてケロッと笑うテトラ。
え、フェンリルをイッヌのように使う気?
『おう、我の嗅覚はノアのお墨付きじゃ! 誰にも負けぬぞ、遠慮せずに使うがよい!』
「……えええ、いいのか、それ」
「うーん、いいんじゃない? ノア様はたぶん、気にせずに『どうぞどうぞ』って言うと思う」
仔狼の小さな胸を張ってドヤ顔のヴァン殿に、俺達はちょっと戸惑ったが、ランが無表情ながら楽しげにそう言うので、まあいいかということになった。
『じゃあ昼休憩して、午後から頑張ろうかの』
「さんせーい! ノア殿に美味しいご飯もらってるんだよね。食べよう!」
『我も我も!』
「ヴァン殿は肉抜きご飯でしたよね?」
テトラに乗っかって、サラッと食べる気満々のヴァン殿だが、ノア殿にお仕置きで肉抜きご飯だったよな。
『──っ! そうだった……』
思わず萎れるヴァン殿にちょっと気持ちがグラつくが、いやいや、この方と精霊王のせいで死にかけたことを思い出せ。
ともかく、災い転じて福となすか。
こうして、幸運にもサムラート・オリヴァンの手がかりを掴んだ俺達は、ノア殿の美味しい手料理をいただき、午後に向けて英気を養うのだった。
テトラの奇行には目を瞑って、俺はテトラにぐりぐりされて遠い目をしているヴァン殿に尋ねる。
こちらは隠密行動中なのだから、いくらヴァン殿が認識阻害の魔法で姿を隠したとしても、一緒に動くのはマズい。そもそも認識阻害の魔法は、勘のいい者には気づかれるし、うっかり受け答えをしてしまっても魔法が解除されてしまう。そのため、けっこうバレやすいのだ。
そうでなくとも、ここは獣人国でフェンリルを崇めている獣人が多いのだ。気配を察知した獣人に違和感を持たれてしまうだろう。
『まあ、お主らの懸念も分かる。だが、今回はそれを逆手に取るのよ。前回のこともあるし、今日だって宰相辺りには連絡がいっておるから、我がうろうろしていても問題ない』
「……つまり?」
俺の言いたいことを察したヴァン殿が、しかし、自分の放浪癖を利用するような言葉を発した。それに反応したのはサンだ。俺達は黙ってヴァン殿の言葉を待つ。
『お主ら、行けるところは見て回って、成果なしだったんだろう? 残りは王族のプライベート区域だが、お主らでも侵入は難しい。だが我ならば、うろうろして入り込んでも咎められんということよ』
「──っそれは……」
要するに、自分を隠れみのにしろということか。それは魅力的な提案だが、いくらノア殿のことがあったとしても、何故そこまで協力的なのか。
『……実はな、さっき彷徨いているときに、匂ったのだ。あの毒の、な』
「! そういえば最初に毒に気づいたのがヴァン殿でしたね。その匂いは、どちらで匂ったのですか?」
ぐりぐりスーハーしているテトラ以外の俺達は、仔狼サイズのヴァン殿にデカい図体で詰め寄った。
ヴァン殿はギョッとしてビクついたが、テトラに抱きつかれていて逃げ場がなく、少しわたわたとしたあと、静かになった。
『はあ……。えーっとな、王族の警護をしていた近衛騎士の一人からやけに匂ってな。交代時間だったのか移動したので、こっそりあとをつけていたのよ』
「それで?」
『あー……っと、すまん。そこで此奴に捕まってな……見失ってしまって、分からん』
ちょっと顔を後ろに向けて気まずそうにそう言うヴァン殿に、俺達は憐憫の目を向けた。うん、ヴァン殿は悪くないと思うぞ。
テトラ、お前はタイミングがいいのか悪いのか……。ヴァン殿を吸ってないで、何とか言え。
「テートーラー?」
「ふぁい?」
「ふぁい、じゃない。お前のおかげで大事な手がかりをだなあ……」
「いやいや、だって、匂いで分かるんでしょ? だから連れてきたんじゃん。ヴァン殿に匂い辿ってもらおうと思ってぇ」
俺が呆れて突っ込むと、もふもふから顔を上げてケロッと笑うテトラ。
え、フェンリルをイッヌのように使う気?
『おう、我の嗅覚はノアのお墨付きじゃ! 誰にも負けぬぞ、遠慮せずに使うがよい!』
「……えええ、いいのか、それ」
「うーん、いいんじゃない? ノア様はたぶん、気にせずに『どうぞどうぞ』って言うと思う」
仔狼の小さな胸を張ってドヤ顔のヴァン殿に、俺達はちょっと戸惑ったが、ランが無表情ながら楽しげにそう言うので、まあいいかということになった。
『じゃあ昼休憩して、午後から頑張ろうかの』
「さんせーい! ノア殿に美味しいご飯もらってるんだよね。食べよう!」
『我も我も!』
「ヴァン殿は肉抜きご飯でしたよね?」
テトラに乗っかって、サラッと食べる気満々のヴァン殿だが、ノア殿にお仕置きで肉抜きご飯だったよな。
『──っ! そうだった……』
思わず萎れるヴァン殿にちょっと気持ちがグラつくが、いやいや、この方と精霊王のせいで死にかけたことを思い出せ。
ともかく、災い転じて福となすか。
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