拾われた俺、最強のスパダリ閣下に全力で溺愛されてます 迷い子の月下美人

エウラ

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1巻

1-3

 ――俺、本当にアークの伴侶になったってことだよな?
 咬み痕の血は止まったようだが、それよりも俺は息を整えるのに必死だった。だって抜いてない俺の中のアークの剛直が再び硬くなったのを感じ取っていたから。
 俺がぎこちない動きで後ろを振り向くと、アークはニヤリと笑っていた。

「抜かずの二回戦な」

 それを聞いた俺はどんな顔をしていたのか。たぶん慄きながらも、期待と興奮で蕩けた顔をしていただろう。
 だってこんなに俺のこと好きって、愛してるって全身で語ってくれるんだぞ。そんな人がもう俺の旦那様なんだ。
 アークに抱かれると気持ちよくて、よすぎて抵抗できなくて。
 これが惚れた弱みってヤツなのかなあ。チョロくてもいいんだ。これから先、ずっと俺だけの旦那様なんだから。

「アーク、好きだ」
「俺も、愛してるよ。ノア」

 ほんの少し前までは失恋の痛みを感じていたのに、こんなに満たされるなんて。大切な人が側にいる、独りじゃない幸せ。
 ラグ爺さん、俺も幸せになれそうだよ。
 そんなことを考えているうちに二回戦に突入した。そうしてアークがやっと達した頃、俺は体力の限界で意識を失った。


 どのくらい気を失っていたか分からないが、意識が戻ると、いつもの自分の家にいるような感覚で、無意識のうちに食べ物や飲み物をテーブルに並べていた。――異空間収納魔法インベントリから。

「アーク、ご飯……」

 初めての性交セックスで疲れ果てていたうえに寝ぼけていた俺は、アークのギョッとした様子に理解が及ばず、首を傾げただけだった。

異空間収納魔法インベントリ――それも使えるのか。錬金術といい希少レアすぎだろう。不安要素が多いが、やっと見つけた唯一の番いだ」

 アークが俺の頭の上で何やら呟いていたのは分かったが、眠くて耳を素通りしてしまう。

「お前が何者でも、たとえ死に神だったとしても構わない。俺はノアに一生を捧げるつもりで番ったんだから」

 ぎゅっと背中から抱きしめるアークの言葉に応えられないまま、俺は背中に感じる温もりに安心して、再び睡魔に身を委ねたのだった。


    ◆ ◆ ◆


 俺――アルカンシエルがノアと出会う前日のこと。


 ここアインの街の迷宮ダンジョンに来たのは本当に偶然だった。
 俺はSランクの冒険者で自由気ままに世界中を周っている。いろんなクエストを受けていろんなヤツと後腐れのない一夜の関係も持った。中には執着してくるヤツもいたが、俺が少しお話しすれば皆、退いてくれた。お話? そりゃあ肉体言語だろう?
 面倒なら止めればいいって思うだろうが、長い人生、いや竜人生をともにする唯一の番いを探す旅だから、見つけるまでは続ける。何となくコイツかもって思うヤツと身体を合わせてみたが、いつも本能が違うと言うんだ。
 実は俺は竜王国という竜人の国の大公家の三男。祖父が現竜王の弟だ。
 竜人は普段は人型をとっているが、体長は数メートルに変化し、背中に蝙蝠のような翼膜を持つ完全な『竜体』にもなれる。まあ滅多なことじゃ竜体にはならないけどな。
 他の種族と比べてずば抜けた戦闘力と身体能力を持ち、寿命は圧倒的に長い。
 さらに、竜人の特徴として唯一無二の番いを欲し、番いが望めば国を滅ぼすくらい盲目的に溺愛する。
 過去に実際、『傾国の番い』っていうヤツがいたらしい。それを教訓に今は本人達も気を付けるし、周りのヤツらがやんわりと暴走を止めるようだが。
 とは言え、番いに巡り会える竜人は少ないから、恋愛結婚や政略結婚も普通にある。ただ俺の祖父母や両親は番い同士で仲睦まじく、それを幼少から見ていたから、俺は冒険者としてあちこち旅をしながら自分の番いを探し歩いているわけだ。
 そんな感じでのんびりやってきたこの街の冒険者ギルドに顔を出すと、誰も彼もが俺を見てぼーっと顔を赤らめた。
 またか、と思う。自惚れじゃないが俺の銀髪金瞳、褐色の肌は目立つ。顔もそれなりに整っているからな。
 どこでも最初はこんなモンだと諦めつつ、受付でポーションの確認をする。魔法はもちろん使えるが、万が一にも準備不足でやられたなんて初級クラスの冒険者じゃあるまいし、笑いのネタにもなりゃしねえ。
 ポーションの質は薬草にもよるが、ほとんどは薬師の腕によって左右される。粗悪なモンを掴まされては命取りになるからな。

『ポーション類を見せてもらえるか?』

 いつものようにSランクの冒険者ギルドタグを見せてから聞く。最初にこれを見せれば、ギルドの方もボッタクリ紛いのことはさすがにしてこない。まあ、たまに馬鹿もいるが。

『はい。ただいまお持ちいたしますね』

 ギルドの職員はそう言って忙しなく奥へ入っていき、間もなくポーション類を一つずつ持ってきた。

『お待たせいたしました。こちらです』

 カウンターに並んだポーション類を手に取り、俺は鑑定アナライズの魔法を使う。
 この魔法には下級・中級・上級のレベルがあり、級が上がるほど名前、品質、効果、製作者、所有者などの詳細な情報を読み取れる。上級者は希少レアで、ギルドや商人で高給で雇われるほど重宝される。ちなみに俺は上級だ。

【錬金術師ポーション(初級)
 品質:S
 効果:飲んでも塗っても効果は同じ。浅い傷を瞬時に治し、軽い病にも効く。通常の錬金術師ポーション(中級)と同等かそれ以上の効果あり。
 製作者:ノア】

 薬師ポーションではなく、錬金術師ポーションと出て驚いた。他のポーション類も鑑定アナライズしていくと、そのどれもが錬金術師ポーションで規格外の性能だった。

『いい腕だな。どれも最高品質だ。他所でも買えるのか?』
『あ、いえ、ここと製作者である薬師のノアさんのお店のみです。他はその、地元の薬師の方々の販売経路でして、薬師ギルドにも置いてません』
『――ふうん?』

 歯切れの悪い職員の言葉に、俺はピンと来た。
 おそらくこのノアはよそから来た人で、腕がいいせいで、薬師ギルドに妬まれて嫌がらせを受けているのだろう。地元の薬師ギルドは販売ルートを制限して、この薬師を仲間外れにしているようだ。

『このノアってどんなヤツなんだ?』

 興味を惹かれて受付の職員に聞いてみた。

『ノアさんは人見知りで無愛想でぱっと見はとっつきにくいですが、意外とお人好しで気のいい方ですよ』
『長い黒髪に金のメッシュが入っていて瞳は銀色。背は高い方ですがひょろっと痩せてます』
『彼は元々この街の生まれじゃないんですよ。他所から来た薬師だったお爺さんとここに住んでいるんです。そのお爺さんは六年前に亡くなりましたが』

 俺達の会話を聞いていた別の職員達が付け足すように横から言葉を挟んだ。

『なるほど。ではそのノアの店を教えてくれるか? そちらへ行ってみよう』

 そう言うと、職員が焦ったように教えてくれる。

『先日、彼はしばらく迷宮ダンジョンに潜ると言ってましたので、お店の方にはいないかと』
迷宮ダンジョンに? まあいいや、とりあえず各ポーション一つずつと店の場所を教えてくれ』

 職員にそう返してポーション類を購入する。

『畏まりました。ではこれで。お支払いはどういたしますか?』
『ギルドタグから引いてくれ』

 そう言って魔導具にギルドタグをかざす。ピッと音が鳴って支払い完了だ。

『はい、ちょうど頂きました。それと、こちらがノアさんのお店までの地図です』
『ありがとう。じゃあな』

 俺は腰に付けたポーチ型の異空間収納鞄マジックバッグにポーション類を収納して、冒険者ギルドを出る。
 そしてその手書きの地図通りに進むと、街外れに件の薬師の店があった。店舗兼住居のようだが、かなりボロい。
 それに長閑といえば聞こえはいいが、周りは林ばかりで『ご近所さん? 何それ美味しいの?』って感じだ。人も魔物の気配もない。ここまで何もないと、かえって気味が悪い。
 ギルドの職員が言った通り店は閉まっていて、ご丁寧にえげつない結界魔法がかけられていた。裏手も見たが、薬草畑と思われる場所にまで。
 素人目にはただの結界魔法に見えるが、人と魔物避けが組みこまれている。どうりで何の気配もないわけだ。

『コレはまた。面白い』

 俺はほくそ笑んで、異空間収納鞄マジックバッグから先ほどのポーションを一つ取り出して眺めた。

『錬金術師ポーション。初めて見たぜ。どんな錬成をしたらこんなのが作れるんだ? 病に効くって聞いたことないぞ。ノアは薬師だって言ってたよな?』

 こんなのを余所者が作って売ったら、そりゃあこの街の薬師は廃業だろうな。だからどう見ても商売にならなそうなこんな街外れに店があるんだろう。ハブられ確定だな。
 先ほどのギルドの職員のという発言がやや引っかかるが。

『すご腕薬師のノアに俄然興味が湧いた。明日、早速迷宮ダンジョン入りしよう』

 そうと決まれば必要な物の買い出しだ。
 久しぶりにワクワクしている。


 ――そうして、俺はノアに出会えたんだ。



    第二章 迷宮ダンジョン攻略と旅立ち


 唐突に意識がハッキリした。目が覚めると同時、俺は記憶を巡らす。
 俺、何してたっけ? ここはとても見覚えがある。テント内のベッドだ。
 でも何で寝てるんだろう……裸で。
 ――は だ か?

「裸ー!?」

 ガバッと起きようとして失敗した。俺のお腹に何かが巻き付いてて引っかかったから。
 んん? 何、なに、ナニー!?

「ぉぉおおお、えええっ? はあぁ?」

 巻き付いてたのはアークの腕。
 何でアークと寝てるの!? 何してた俺、思い出せ。思いだ、し……ぅあっ、あああ、ナニしてました!!

「っぷっくくっ、ははっ!」
「あっ、なっ何、アーク起きてっ!? っあぅ、あああっ!」

 覚えてる、ぼんやりだけど記憶があるぅ。テントにはアークが強引に入ったようなものだけど、そのあとは発情期で蕩けた俺に引きずられるようにせっ、せっ、性交セックスしまくってたような。
 ダメじゃん俺、迷惑かけっぱなし。

「あっあの、ごめっごめんなさ――」
「謝らなくていいよ。たぶんだけど、俺の薫りフェロモンにあてられたんだと思う」
「え?」

 俺が焦っているうちに笑いを収めたアークは、俺の言葉を遮るように言った。

「まだ発情期じゃなかったんだろ。実は俺達、好一対の番いだったんだよ」
「好一対、番い」

 発情期中に夢現ゆめうつつで聞いた気がする。
 何だっけ、伴侶とか結婚とか、ずっと一緒とか。
 それを思い出してハッとした。
 思わずガバッと自分の首の後ろに手をやる。そろっと触った肌には咬まれた歯形痕がかさぶたになっていた。

「ああ、強く咬みすぎた、ごめん。でも咬んだことは謝らないよ。ちゃんとノアに確認を取ってから咬んだし、合意だからな。何なら証拠もあるけど、見る?」

 そう言ってニヤリと笑うアークが触れた耳のピアス。
 それには見覚えがあった。記録媒体の魔導具だ。
 これは魔石に映像や音声を記録できるもので、ピアスや腕輪など、アクセサリーの形をしているものが多く、記録のタイミングは自分で決められる。記録した魔石は使い捨てで改ざんできず、犯罪の証拠品になるために商人や貴族に人気があった。
 それに記録してあるなら間違いなくそうなんだろう。確かに自分も咬んでくれと言った記憶がある。あるが! それって情事中の出来事だよね。ちょっと待って、ずっと録ってたのー!?
 思い至った事実にアークを見ると、否とも是とも言わずににっこり笑うだけ。
 たぶん俺の顔は真っ赤になってると思う。いや真っ青かも。ぅわあー! 怖い、怖いよぉー!
 ガクブルして首を横に振っていると、アークがとりあえず身支度を整えようと提案してきた。
 ……確かに、着替えよう。

「着替え終わった。えと、お腹空いてない? 俺はお腹空いてて。話は食べながらでもいい?」
「ああ、俺も食べるよ。リビングに行こう」
「何か、アークの方が家主みたい」
「この三日間、ノアのお世話をずっとしてたからな。ははは」
「はぁ。ん、三日間? 一週間じゃなく?」

 俺、いつも一週間くらい続くんだけど。聞き間違い?

「ああ、俺と番ったからな。番いがいる場合は番いの体液、まあ精液だな、それを注ぐと満足するらしくて三日から五日くらいで終わるんだって」

 そうなんだ。それは知らなかった。

「その代わり、番うと一年に一度の発情期が何度か来るようになる。発情期が一番子を孕みやすいから、番うと頻繁に来るようになるらしい」
「え、マジ?」
「マジ。そして番いの俺にしか発情しなくなる。そうしたらすぐ抱いてやるし、発情期でなくても抱くから心配すんな。戦闘後とかも昂るから抱きたくなるし」

 そう言って笑うアークに溜め息をつきつつ、リビングへ移動した。そして、テーブルにご飯を出そうとして固まった。あれ、俺、発情期中に異空間収納魔法インベントリから出してなかった?

「あの、アーク、俺、その」

 内心冷や汗だらだらで声をかけると、アークは笑ってなんてことないように言ってきた。

異空間収納魔法インベントリのことなら、ノアがテント内で普通に使ってたから気にしてないよ。最初は驚いたがな。いつもは人前では使ってないんだろう? 発情期でぼんやりしていたし」

 ああ、やっぱりやらかしてた。

「うん、ごめん、変なことに巻きこんじゃって。秘密なんだ」

 見られたのがアークだけでよかった。ホッとした俺は、異空間収納魔法インベントリから料理を出した。
 発情期中は元々食べる余裕があまりないから、いつも終わったあとは腹ぺこだ。『空腹だとろくなことを考えないからひとまず腹ごしらえだ』とラグ爺さんはよく言ってたなあ。うん、よく分かった。

「どうぞ、召し上がれ」
「じゃあ遠慮なく」

 そうして和やかに食べ始めたアークを見て、自分も食べる。いつもより飢餓感がないのは、さっき言ってたようにアークが俺の面倒を見てくれたんだろう。時たま無理にでも食べさせてくれてたのかも。ありがたいな。独りじゃこうもいかなかった。

「――さて、じゃあお話しするか」
「ん?」

 腹が膨れて満足したあと、アークがそう言った。

「番いになったわけだし、俺はお前を死んでも護る。だからお互いの情報の開示をしよう。どうしても言えないことはあるかもしれんが、知らなかったからという理由で番いを失うなんて目に遭いたくねえし、遭わせねえ」

 そう言うアークの目は真剣だった。絶対に俺を裏切らない、護り抜くという目だ。
 だから俺も頷いた。番ったからか、心が通じ合っている気がする。

「分かった。言えないことっていうか、俺は自分の情報を少ししか持ってないけど話すよ」

 そう言って、まず俺は自分自身のことを話し出した。
 自分は捨て子で、生後間もない頃にラグ爺さんに拾われて育てられたこと。身元の分かるものはこの古代語の刻まれたプレートのみで、俺の名はコレから取ったもの。俺が一五歳になった頃にラグ爺さんが老衰でぽっくり逝ったこと。
 これはアークに最初に会ったときに話した内容とあまり変わらない情報だ。

「その養い親だったお爺さんの名前は? ラグがフルネーム?」
「いや、たぶん愛称だと思う」

 爺さんが死ぬまでは普通にそういう名前だと思ってたけど。

「遺品整理のときに爺さんに宛てた古い手紙が出てきて、その宛名が『ラグナロク・ニヴルヘイム』ってなってたから、それがフルネームだと思う」
「ラグナロク」

 その名前に聞き覚えがあるのか、アークは少し考える様子を見せた。

「アーク、何か知ってるの?」
「うーん、ちょっと気になることはあるが、まだ何とも言えないな。もしこの先、何か情報が手に入ったら話すよ。変に期待を持たせるのもアレだし」
「そっか、分かった。じゃあそのときは教えてね」
「ああ。他にノアのことでまだ何かあるか?」
「あー、あるって言うか、これが一番厄介と言うか」

 俺は戸惑いがちに言った。

「俺、自分の種族が分からないんだ」
「え、でも冒険者ギルドで登録するとき鑑定アナライズで出るよな。それでも分からないのか?」
「うん。種族不明アンノウンだったんだ。特にこれといった種族特性がないし、発情期なんて結構な種族が持つだろう?」

 俺はギルドタグの種族欄を開示してアークに見せた。

「確かに【種族不明アンノウン】だな。半分は俺と同じ種族だと思うんだけど」
「え?」
「番ったから分かるんだけど、俺と同じ感覚があるんだ。ただ、残りは未知のモノである可能性が高い」

 そう言って、今度はアークが種族開示したギルドタグを見せてくれた。おお、本物のオリハルコンだ、じゃなくて。

「竜人!?」

 竜人って、この世界の種族の中で頂点に位置する一番長命でとてつもなく強い種族だよね。確か大きな竜の姿にもなれるって。長命が故に子供ができにくくて数が少ないって、ラグ爺さんが言ってたっけ。

「ああ、俺は銀竜で天空の竜王国の王族なんだ。現王弟の嫡子の息子。自由気ままに冒険者なんてやってるけどね。ちなみに、俺のフルネームは『アルカンシエル・D・ヴァルハラ』な。ヴァルハラ大公家の三男だ」
「……は、はぁ」

 サラッと言うことじゃないよね? もう、どんな反応をすればいいのか分からない。とんでもない人と番ってしまった。これ、番い解消って――

「解消なんかしないぞ。そもそも竜人は番い至上主義だ。一度番ったら死んでも離さないからな」

 笑ってるのにその笑顔が怖い。ていうか何で分かった。まさか読心術!?

「無表情って聞いてたが、顔に出てるぞ。ちょっと分かりづらいけど。ちなみに読心術なんて魔法もないからな? 唇の動きを読む読唇術ならあるけど」
「はは、ソウデスカ」

 まあ、害がなければいいや。諦めよう、というか、番ってくれた旦那様を俺だって手放すつもりはない。
 それでアークの話だと、俺の片親がこの世界の頂点に立つ竜人らしいと。そう言われれば、アークも竜人の特徴が出てない。

「竜人は角や牙が残ったり耳が尖ったりする者もいるが、魔力が高いほど、純血なほど、人化が得意なんだ。ノアもめちゃくちゃ魔力あるだろう」
「だから何故心を読む。……確かに魔力は多いとは思うけど、比較対象がないからどのくらいか知らないや」

 無愛想だからいつも何考えてるか分からないって言われるんだけど、アーク相手に無表情ポーカーフェイスがちっとも仕事をしないな。

「普通は混血ミックスでも鑑定アナライズで分かるんだがな。まあ魔力は間違いなく多い。それで一つ提案があるんだが、俺と一緒に竜王国に向かわないか?」
「アークの故郷の?」
「ああ。ノアの両親の、せめて片親だけでも何か手がかりが掴めるかもしれない」

 そこに行けば俺のルーツが分かるかもしれない?

「竜王国はここから北にある神聖な霊山セイクリッド・リョーゼンという標高の高い山の上に浮いている島だ」
「へえ、島が浮いてるんだ、すごいね。じゃあ翔べないと行けないってこと?」
「だから竜人が住んでいるんだよ。他種族もいるけど、翔べないと辿り着けないからな。浮遊魔法や飛行魔法が使えれば、まあ行けるな」

 はあ、すごいところがあるんだな。俺、この街から出たことないからビックリだよ。

「遠いから途中の街に寄りながらになるが、ひとまず北にある隣街のエイダンに向かおう。まあ行き先はともかく、今はとりあえず迷宮ダンジョン攻略しちまおうぜ。ノアは潜ってから今日は五日目だろう。そろそろギルドの職員も心配してるんじゃないか?」
「ぅあ、確かに」

 このままだとボス戦して戻るまでに一週間はかかる。いつもの俺にしては時間がかかりすぎだ。
 お互いにチェックをしてから装備を身に着けて外に出ると、誰もいないことを確認してテントを異空間収納魔法インベントリに収納する。

「じゃあサクッと進もうか」
「いやいや、頼まれた物の採集もあるからサクッとはいかないよ。この一〇階層ではもう採集は済んでるからこのまま先に進むけど、アークは何かある?」
「いや。この先ノアが欲しい物があれば、ドロップするまで倒すから言ってくれ」
「助かる」
「番いへ貢ぐのは当然だからな」
「貢ぐって、言い方」

 ドヤ顔のアークに呆れつつ次の階層へ下りていく。アークは有言実行で、どんどん魔物を倒して素材を手に入れ、嬉々として俺に貢いでくれた。正直ありがたい。


 ――さて、いよいよ三〇階層。
 この階層は森林で構成されている。たぶん他の迷宮ダンジョンも階層によって平原とか岩場とかあるんだろう。何故なのか誰にも理解できない迷宮ダンジョンの不思議。

「最後の『森水晶』の採集っと」

 ボス戦の前に素材収集がある。ギルドで頼まれてたリストの最後の一つだ。

「森水晶? 聞かない名前だな。この迷宮ダンジョン独自の物か?」
「たぶんね」

 不思議そうなアークに答える。他の迷宮ダンジョンを知らないから断言できないけど。
 森水晶はここ最下層でしか手に入らない水晶で、その名の通り森にある水晶だ。

「おいちょっと待て、何だありゃ」

 ああアーク、見つけちゃったか。森水晶は鉱石に分類されてるけど、実はとある魔物のドロップアイテムなんだよね。

「見るのは初めて? を倒すとドロップするんだ。手伝ってくれる?」
「ノアの頼みだからやるけど。うわあ、えげつない数だな」

 アークがちょっと引いてる。新鮮な反応で面白い。まあ確かに木々の間にみっちりと詰まっているのを見るとそうなるか。
 森水晶をドロップする魔物は直径三〇センチメートルほどの真っ白な毛玉、そう毛玉である。『ケサランパサラン』と呼ばれる実質無害な魔物で、特に何をするでもなく、ふよふよと森に漂っているだけ。
 ただし、とてつもなく数が多い。
 もふもふな体毛で火に弱いが、森の中で密集しているので火は使用不可。いくら迷宮ダンジョン内は原状回復するといっても、大火事になって巻きこまれたら最悪死ぬから。
 さらに、ドロップ率が尋常じゃなく低いという中々に厄介で希少レアなモノで。

「どうやって倒すんだ。斬ってもいいが時間がかかるだろう」
「うん。だからこうして『レイン』」

 まず、まとめて水魔法で濡らす。濡れて体毛が重くなって、べしょっと地面に落ちたところを。

「『サンダー』」

 広範囲の雷魔法で感電死。ドロップしたら回収するだけの簡単なお仕事です。

「ああ、あそこに一つ。ラッキー」

 俺はいそいそと拾ってくる。

「こんな感じで倒すから、アークは適当に倒しつつドロップしてたら拾ってね。あ、感電に注意してね。ヘマはしないつもりだけど」
「お、おう」

 そう言って始まった採集。
 アークは何とも言えない顔をしながら、黙々とケサランパサランを屠ってはドロップアイテムを回収していく。ごめんね、最後に変な仕事させて。

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