拾われた俺、最強のスパダリ閣下に全力で溺愛されてます 迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
534 / 638
連載

591 閑話 一方その頃のあの人達やこの人達 2

ロンとサイにそれぞれ呼ばれてやってきたコルヴァ・コローネ近衛騎士団長と、ルイズ・パトリス第一騎士団長。パトリスは肩に付くミディアムの長さの黒髪をハーフアップしていて、ヘーゼル色のきりっとした瞳の中性的な細マッチョである。黒豹の獣人で年齢は四二歳だが、三〇代半ばと言ってもおかしくない若々しさだ。

第一騎士団は主に貴族家に関係する事柄を受け持つ騎士団なので、以前、薬師ギルドや錬金術師ギルドを摘発した第二騎士団とは管轄が違う。
今回は貴族の犯罪なので、第一騎士団長が呼ばれたわけだ。

先にリオラルの執務室に到着したのは、王族や国外の賓客を護衛する近衛騎士団長コローネだった。
これは近衛騎士団の詰め所が近かったせいでもある。

近衛騎士団とは違い、騎士団の詰め所は第一も第二騎士団と同じ場所で王族の執務室からはやや離れているため、パトリスは十数分ほど遅れてやってきた。

「失礼致します。第一騎士団長ルイズ・パトリスが参りました」
「──入れ」
「は」

急ぎ足で来たため、深呼吸をして乱れた息を整える。そしてノックからの応えを受けてすぐに中に足を踏み入れ──
最初に目に入った光景に、一瞬ポカンとした。

「──は?」
「ああ、気にしなくていい。さっさと中に入って扉を閉めろ、パトリス第一騎士団長」
「あ、え、はい」

リオラルに言われてハッとする第一騎士団長。動揺しまくっているが、とにかく扉を閉めねばならないと思い、急いで中に入る。

……いや、これ、どういう状況なんだ!? と内心では大混乱である。

だって、リオラル王太子殿下の面前に土下座をする近衛騎士団長の姿があるのだから。

え、近衛騎士団長殿、だよな?

頭に疑問符を幾つも浮かべながら、そろりと移動してチラリと足元の人物を再確認する。

うん、間違いなくコローネ近衛騎士団長殿だ。何で?

その疑問がありありと顔に出ていたらしい。宰相オウランが苦笑しながら教えてくれた。

「あー、身内のやらかしがあってだな、それに対しての土下座だ。殿下がおっしゃってもこの状態のまま、すでに一〇分ほど」
「え、それは……恐れ入りますが近衛騎士団長殿、殿下の言に従わないのは不敬では?」

一〇分もこの状態では殿下方も話が続かないだろうと思い、パトリスはそう声をかける。何より、緊急の用件だと言われてやってきたのだ。こんなことをしている状況ではないのではないか、と。

「その通りだ、コローネ近衛騎士団長。すべきことをなしてからなら、幾らでも謝罪は受けよう。というわけで二人とも一旦ソファに座りたまえ」

リオラルの言葉に、ようやく頭を上げた近衛騎士団長の顔が強張って恐ろしい形相で、部屋にいた者全員がギョッとする。
しかし、パトリス以外の事情を知る者は然もありなんと溜め息をつく。

その後、一人蚊帳の外のパトリスにも説明をすると、コローネと同じように顔を怒らせた。美人が怒ると恐いと、身をもって知ったリオラル達である。

「そういう訳で、近衛騎士副団長と彼の母親──コローネ近衛騎士団長のつまなわけだが、彼らの捕縛をパトリス第一騎士団長の方で動いてもらおうかと──」
「いえ、殿下。そちらは私の方でお受け致します」

リオラルが気を遣ってそう言うと、途中でコローネが口を挟んだ。その顔には決意が見えた。

「しかし、自分の息子と夫だぞ。幾ら何でも平常心ではいられまい」
「いえ、身内だからこそ。あんな罪を犯していたこと、それを気付けなかった己への怒りと罪悪感でいっぱいで、己の手で引導を渡さねば気が済みませぬ!」

まさしく憤怒という言葉がピッタリのコローネは、曲がったことが大嫌いな性分だった。だからこそ、名実ともに近衛騎士団長という役職に就いているのだから。

「……分かった。ではそちらはコローネ近衛騎士団長に任せる。そしてオリヴァン侯爵家の方はパトリス第一騎士団長、そちらに頼む」

少し考えてからリオラルが指示を出す。コローネとパトリスは頭を下げて了承の意を表す。

「は」
「畏まりました」
「では各自、あの者達に悟られぬように速やかに準備を整え、行動に移すように。頼むぞ」

こうして準備を整えた近衛騎士団と第一騎士団は、抜かりなく犯人達を捉えて、物的証拠の押収まで済ませるのだった。














※突発的に短編の投稿をし始めてしまって、こっちがお留守になりました。すみません。(ちょっと煮詰まってたのと、諸事情で時間が取れなくて…)まだちょくちょく、更新が遅れるかもしれませんが、お待ちいただけると嬉しいです。
感想 1,584

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)