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591 閑話 一方その頃のあの人達やこの人達 2
ロンとサイにそれぞれ呼ばれてやってきたコルヴァ・コローネ近衛騎士団長と、ルイズ・パトリス第一騎士団長。パトリスは肩に付くミディアムの長さの黒髪をハーフアップしていて、ヘーゼル色のきりっとした瞳の中性的な細マッチョである。黒豹の獣人で年齢は四二歳だが、三〇代半ばと言ってもおかしくない若々しさだ。
第一騎士団は主に貴族家に関係する事柄を受け持つ騎士団なので、以前、薬師ギルドや錬金術師ギルドを摘発した第二騎士団とは管轄が違う。
今回は貴族の犯罪なので、第一騎士団長が呼ばれたわけだ。
先にリオラルの執務室に到着したのは、王族や国外の賓客を護衛する近衛騎士団長コローネだった。
これは近衛騎士団の詰め所が近かったせいでもある。
近衛騎士団とは違い、騎士団の詰め所は第一も第二騎士団と同じ場所で王族の執務室からはやや離れているため、パトリスは十数分ほど遅れてやってきた。
「失礼致します。第一騎士団長ルイズ・パトリスが参りました」
「──入れ」
「は」
急ぎ足で来たため、深呼吸をして乱れた息を整える。そしてノックからの応えを受けてすぐに中に足を踏み入れ──
最初に目に入った光景に、一瞬ポカンとした。
「──は?」
「ああ、気にしなくていい。さっさと中に入って扉を閉めろ、パトリス第一騎士団長」
「あ、え、はい」
リオラルに言われてハッとする第一騎士団長。動揺しまくっているが、とにかく扉を閉めねばならないと思い、急いで中に入る。
……いや、これ、どういう状況なんだ!? と内心では大混乱である。
だって、リオラル王太子殿下の面前に土下座をする近衛騎士団長の姿があるのだから。
え、近衛騎士団長殿、だよな?
頭に疑問符を幾つも浮かべながら、そろりと移動してチラリと足元の人物を再確認する。
うん、間違いなくコローネ近衛騎士団長殿だ。何で?
その疑問がありありと顔に出ていたらしい。宰相オウランが苦笑しながら教えてくれた。
「あー、身内のやらかしがあってだな、それに対しての土下座だ。殿下がおっしゃってもこの状態のまま、すでに一〇分ほど」
「え、それは……恐れ入りますが近衛騎士団長殿、殿下の言に従わないのは不敬では?」
一〇分もこの状態では殿下方も話が続かないだろうと思い、パトリスはそう声をかける。何より、緊急の用件だと言われてやってきたのだ。こんなことをしている状況ではないのではないか、と。
「その通りだ、コローネ近衛騎士団長。すべきことをなしてからなら、幾らでも謝罪は受けよう。というわけで二人とも一旦ソファに座りたまえ」
リオラルの言葉に、ようやく頭を上げた近衛騎士団長の顔が強張って恐ろしい形相で、部屋にいた者全員がギョッとする。
しかし、パトリス以外の事情を知る者は然もありなんと溜め息をつく。
その後、一人蚊帳の外のパトリスにも説明をすると、コローネと同じように顔を怒らせた。美人が怒ると恐いと、身をもって知ったリオラル達である。
「そういう訳で、近衛騎士副団長と彼の母親──コローネ近衛騎士団長の夫なわけだが、彼らの捕縛をパトリス第一騎士団長の方で動いてもらおうかと──」
「いえ、殿下。そちらは私の方でお受け致します」
リオラルが気を遣ってそう言うと、途中でコローネが口を挟んだ。その顔には決意が見えた。
「しかし、自分の息子と夫だぞ。幾ら何でも平常心ではいられまい」
「いえ、身内だからこそ。あんな罪を犯していたこと、それを気付けなかった己への怒りと罪悪感でいっぱいで、己の手で引導を渡さねば気が済みませぬ!」
まさしく憤怒という言葉がピッタリのコローネは、曲がったことが大嫌いな性分だった。だからこそ、名実ともに近衛騎士団長という役職に就いているのだから。
「……分かった。ではそちらはコローネ近衛騎士団長に任せる。そしてオリヴァン侯爵家の方はパトリス第一騎士団長、そちらに頼む」
少し考えてからリオラルが指示を出す。コローネとパトリスは頭を下げて了承の意を表す。
「は」
「畏まりました」
「では各自、あの者達に悟られぬように速やかに準備を整え、行動に移すように。頼むぞ」
こうして準備を整えた近衛騎士団と第一騎士団は、抜かりなく犯人達を捉えて、物的証拠の押収まで済ませるのだった。
※突発的に短編の投稿をし始めてしまって、こっちがお留守になりました。すみません。(ちょっと煮詰まってたのと、諸事情で時間が取れなくて…)まだちょくちょく、更新が遅れるかもしれませんが、お待ちいただけると嬉しいです。
第一騎士団は主に貴族家に関係する事柄を受け持つ騎士団なので、以前、薬師ギルドや錬金術師ギルドを摘発した第二騎士団とは管轄が違う。
今回は貴族の犯罪なので、第一騎士団長が呼ばれたわけだ。
先にリオラルの執務室に到着したのは、王族や国外の賓客を護衛する近衛騎士団長コローネだった。
これは近衛騎士団の詰め所が近かったせいでもある。
近衛騎士団とは違い、騎士団の詰め所は第一も第二騎士団と同じ場所で王族の執務室からはやや離れているため、パトリスは十数分ほど遅れてやってきた。
「失礼致します。第一騎士団長ルイズ・パトリスが参りました」
「──入れ」
「は」
急ぎ足で来たため、深呼吸をして乱れた息を整える。そしてノックからの応えを受けてすぐに中に足を踏み入れ──
最初に目に入った光景に、一瞬ポカンとした。
「──は?」
「ああ、気にしなくていい。さっさと中に入って扉を閉めろ、パトリス第一騎士団長」
「あ、え、はい」
リオラルに言われてハッとする第一騎士団長。動揺しまくっているが、とにかく扉を閉めねばならないと思い、急いで中に入る。
……いや、これ、どういう状況なんだ!? と内心では大混乱である。
だって、リオラル王太子殿下の面前に土下座をする近衛騎士団長の姿があるのだから。
え、近衛騎士団長殿、だよな?
頭に疑問符を幾つも浮かべながら、そろりと移動してチラリと足元の人物を再確認する。
うん、間違いなくコローネ近衛騎士団長殿だ。何で?
その疑問がありありと顔に出ていたらしい。宰相オウランが苦笑しながら教えてくれた。
「あー、身内のやらかしがあってだな、それに対しての土下座だ。殿下がおっしゃってもこの状態のまま、すでに一〇分ほど」
「え、それは……恐れ入りますが近衛騎士団長殿、殿下の言に従わないのは不敬では?」
一〇分もこの状態では殿下方も話が続かないだろうと思い、パトリスはそう声をかける。何より、緊急の用件だと言われてやってきたのだ。こんなことをしている状況ではないのではないか、と。
「その通りだ、コローネ近衛騎士団長。すべきことをなしてからなら、幾らでも謝罪は受けよう。というわけで二人とも一旦ソファに座りたまえ」
リオラルの言葉に、ようやく頭を上げた近衛騎士団長の顔が強張って恐ろしい形相で、部屋にいた者全員がギョッとする。
しかし、パトリス以外の事情を知る者は然もありなんと溜め息をつく。
その後、一人蚊帳の外のパトリスにも説明をすると、コローネと同じように顔を怒らせた。美人が怒ると恐いと、身をもって知ったリオラル達である。
「そういう訳で、近衛騎士副団長と彼の母親──コローネ近衛騎士団長の夫なわけだが、彼らの捕縛をパトリス第一騎士団長の方で動いてもらおうかと──」
「いえ、殿下。そちらは私の方でお受け致します」
リオラルが気を遣ってそう言うと、途中でコローネが口を挟んだ。その顔には決意が見えた。
「しかし、自分の息子と夫だぞ。幾ら何でも平常心ではいられまい」
「いえ、身内だからこそ。あんな罪を犯していたこと、それを気付けなかった己への怒りと罪悪感でいっぱいで、己の手で引導を渡さねば気が済みませぬ!」
まさしく憤怒という言葉がピッタリのコローネは、曲がったことが大嫌いな性分だった。だからこそ、名実ともに近衛騎士団長という役職に就いているのだから。
「……分かった。ではそちらはコローネ近衛騎士団長に任せる。そしてオリヴァン侯爵家の方はパトリス第一騎士団長、そちらに頼む」
少し考えてからリオラルが指示を出す。コローネとパトリスは頭を下げて了承の意を表す。
「は」
「畏まりました」
「では各自、あの者達に悟られぬように速やかに準備を整え、行動に移すように。頼むぞ」
こうして準備を整えた近衛騎士団と第一騎士団は、抜かりなく犯人達を捉えて、物的証拠の押収まで済ませるのだった。
※突発的に短編の投稿をし始めてしまって、こっちがお留守になりました。すみません。(ちょっと煮詰まってたのと、諸事情で時間が取れなくて…)まだちょくちょく、更新が遅れるかもしれませんが、お待ちいただけると嬉しいです。
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