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連載
595 進捗報告 2
人目を気にしながら、ようやくリオラルの執務室に着いた。
先導していた侍従が中に声をかけると、返事があった。あの声はリオラルの側近のギンカさんかな。
「お待ちしておりました。どうぞ」
「失礼します」
俺達は挨拶をして一歩入ろうとしたが──
『おう、邪魔するぞ』
《すまんの》
そう言いながら俺達の横をすり抜けて先にズケズケと中に入っていくヴァンとエレフに、その場にいた全員が一瞬キョトンとする。
うん、いくら先触れを出したとはいえ、相変わらずマイペースが過ぎる。ルドヴィカは噴き出し、それにハッと我に返ったリオラル達は苦笑するに留めているが。
「……すみません」
俺もアークも苦笑するしかない。元々の性質が自由人だから。こう、好奇心の赴くままに行動しちゃうんだよね。
「い、いえいえ。先ほど幻獣殿と精霊王殿がいらっしゃるとは窺いましたが、なんと言うかその……やはりご自由と言いますか」
「あー、マイペースな人達なのであまり気にしないで放っておいていいです。下手に絡むと振り回されて大変なので」
関わると大変だと思う。まあ、こんな感じでもやるときはちゃんとやるんだけどね。今回は彼らが一番の功労者だと思うし。
「ええと、ノア殿の彼らに対する扱いが雑──コホン。大丈夫、ヴァン殿はすでに城の者には周知されているし精霊王殿も先ほどまで彷徨い──コホン、散策されていたようですし。うん、気にしないよ」
リオラルの言葉の中に色々と突っ込みどころがあったなと思いつつ、聞き流す。いや本当にすみません。
「ソファへどうぞ。ああ、すでに精霊王殿が座っておられるので、そちらの席に」
「うん、気を使わないで大丈夫です」
二人掛けソファの片方にさっさと座るエレフにギンカさんが苦笑して、向かい側のソファを勧める。ルドヴィカは一人用のソファに座る。俺はアークと並んで座り、ヴァンが足元に寝転ぶ。
ちなみにヴァンはエレフに連れてこられたときのまま、ずっと仔狼の姿だ。元のサイズは室内では大きくて大変だからね。
少しして侍従がお茶を淹れて去って行くと、リオラルが話し出す。
「事情聴取はおおよそは調書通りで、裏付けと動機の確認だな。後日、彼らはそれぞれ裁判にかけられ、獣人国の法に則った刑罰に処される」
「まあ、そうだろうな」
アークが頷く。俺も獣人国での犯罪だからそれはいいと思う。──けど、ルドヴィカの気持ちはそれじゃ晴れない。
知らなかったとはいえ、自分の番いが酷い目に合っていたのだ。あの幽閉塔を破壊するくらいじゃ気が収まらないだろう。
「裁判のあと、まあ全員は無理だろうが、主犯格はもちろん竜王国に引き渡してはくれるよな?」
アークが酷く真面目な表情で聞く。ルドヴィカもいつもの飄々とした雰囲気はなりを潜めて、無表情でリオラル達を見ている。
リオラル達はルドヴィカの無言の圧に無意識に唾を飲み込むと、頷いた。
「もちろんだ。竜王陛下との話し合いで、すでにハロス・コローネとオリヴァン侯爵夫人並びに子息達はそちらに引き渡す手筈になっている」
「他は?」
アークが問うと、リオラルは渋い顔になる。
「まあクレエ・コローネは引き渡せると思うが、他の者は直接的な関与がないことと、オリヴァン侯爵は領内での不正で裁くので難しい」
「うん、まあ、妥当だな。ルドヴィカの心情としては少しでも関与した輩は滅ぼしたいだろうが」
アークはそう言ってチラリとルドヴィカを見る。彼はさっきから無表情で感情が読めないが、醸し出す空気が重いので相当堪えていると思われる。
ここは俺がその空気を変えねば、と口を挟むことにした。
「あの、例の幽閉塔は消し炭にしていいんだよね?」
そう言えば、オウラン宰相と側近のギンカさんが思わずという感じで呟く。
「……消し炭」
「更地って意味ですかね?」
リオラルはハッとして応える。
「あ、ああ、そうだな。すでに中の調査も終えたからアルバトロス殿の好きにして構わない。他には被害のないように配慮してもらえると助かるが」
「それはもちろん、俺がやるから大丈夫」
俺がいつものえげつない結界魔法を張るから任せて!
俺がそう言ってドヤ顔で拳をグッと握ると、さっきまで硬かった空気が和らいで、皆が微笑ましげに俺を見る。
「ああ、頼むな、ノアちゃん」
「ノアの結界魔法なら安心だ」
無表情から一転して微笑んだルドヴィカとアークにそう言われて、俺は嬉しいけどちょっと注目を浴びて恥ずかしくなったのだった。
先導していた侍従が中に声をかけると、返事があった。あの声はリオラルの側近のギンカさんかな。
「お待ちしておりました。どうぞ」
「失礼します」
俺達は挨拶をして一歩入ろうとしたが──
『おう、邪魔するぞ』
《すまんの》
そう言いながら俺達の横をすり抜けて先にズケズケと中に入っていくヴァンとエレフに、その場にいた全員が一瞬キョトンとする。
うん、いくら先触れを出したとはいえ、相変わらずマイペースが過ぎる。ルドヴィカは噴き出し、それにハッと我に返ったリオラル達は苦笑するに留めているが。
「……すみません」
俺もアークも苦笑するしかない。元々の性質が自由人だから。こう、好奇心の赴くままに行動しちゃうんだよね。
「い、いえいえ。先ほど幻獣殿と精霊王殿がいらっしゃるとは窺いましたが、なんと言うかその……やはりご自由と言いますか」
「あー、マイペースな人達なのであまり気にしないで放っておいていいです。下手に絡むと振り回されて大変なので」
関わると大変だと思う。まあ、こんな感じでもやるときはちゃんとやるんだけどね。今回は彼らが一番の功労者だと思うし。
「ええと、ノア殿の彼らに対する扱いが雑──コホン。大丈夫、ヴァン殿はすでに城の者には周知されているし精霊王殿も先ほどまで彷徨い──コホン、散策されていたようですし。うん、気にしないよ」
リオラルの言葉の中に色々と突っ込みどころがあったなと思いつつ、聞き流す。いや本当にすみません。
「ソファへどうぞ。ああ、すでに精霊王殿が座っておられるので、そちらの席に」
「うん、気を使わないで大丈夫です」
二人掛けソファの片方にさっさと座るエレフにギンカさんが苦笑して、向かい側のソファを勧める。ルドヴィカは一人用のソファに座る。俺はアークと並んで座り、ヴァンが足元に寝転ぶ。
ちなみにヴァンはエレフに連れてこられたときのまま、ずっと仔狼の姿だ。元のサイズは室内では大きくて大変だからね。
少しして侍従がお茶を淹れて去って行くと、リオラルが話し出す。
「事情聴取はおおよそは調書通りで、裏付けと動機の確認だな。後日、彼らはそれぞれ裁判にかけられ、獣人国の法に則った刑罰に処される」
「まあ、そうだろうな」
アークが頷く。俺も獣人国での犯罪だからそれはいいと思う。──けど、ルドヴィカの気持ちはそれじゃ晴れない。
知らなかったとはいえ、自分の番いが酷い目に合っていたのだ。あの幽閉塔を破壊するくらいじゃ気が収まらないだろう。
「裁判のあと、まあ全員は無理だろうが、主犯格はもちろん竜王国に引き渡してはくれるよな?」
アークが酷く真面目な表情で聞く。ルドヴィカもいつもの飄々とした雰囲気はなりを潜めて、無表情でリオラル達を見ている。
リオラル達はルドヴィカの無言の圧に無意識に唾を飲み込むと、頷いた。
「もちろんだ。竜王陛下との話し合いで、すでにハロス・コローネとオリヴァン侯爵夫人並びに子息達はそちらに引き渡す手筈になっている」
「他は?」
アークが問うと、リオラルは渋い顔になる。
「まあクレエ・コローネは引き渡せると思うが、他の者は直接的な関与がないことと、オリヴァン侯爵は領内での不正で裁くので難しい」
「うん、まあ、妥当だな。ルドヴィカの心情としては少しでも関与した輩は滅ぼしたいだろうが」
アークはそう言ってチラリとルドヴィカを見る。彼はさっきから無表情で感情が読めないが、醸し出す空気が重いので相当堪えていると思われる。
ここは俺がその空気を変えねば、と口を挟むことにした。
「あの、例の幽閉塔は消し炭にしていいんだよね?」
そう言えば、オウラン宰相と側近のギンカさんが思わずという感じで呟く。
「……消し炭」
「更地って意味ですかね?」
リオラルはハッとして応える。
「あ、ああ、そうだな。すでに中の調査も終えたからアルバトロス殿の好きにして構わない。他には被害のないように配慮してもらえると助かるが」
「それはもちろん、俺がやるから大丈夫」
俺がいつものえげつない結界魔法を張るから任せて!
俺がそう言ってドヤ顔で拳をグッと握ると、さっきまで硬かった空気が和らいで、皆が微笑ましげに俺を見る。
「ああ、頼むな、ノアちゃん」
「ノアの結界魔法なら安心だ」
無表情から一転して微笑んだルドヴィカとアークにそう言われて、俺は嬉しいけどちょっと注目を浴びて恥ずかしくなったのだった。
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